まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

泣き寝入りはしない!

2016-07-26 | 日本映画
 ショッキングすぎる、信じられない信じたくない悪夢のような事件が起きてしまいましたね…
 どうしてこんなことが…何の罪もない、弱い立場の人たちが犠牲になってしまう事件は後を絶ちませんが、今回の悲劇はかつてない甚大さ、残虐さ、冷酷非情さ、卑劣さです。事件には関係ないから!と平然とスルーすることなど、人間ならできません。事件が前代未聞すぎるし、事件の全容がまだ見えてこないので、まだ衝撃で麻痺したまま恐怖や怒りはまだ湧いてこない。犯人の男のことよりも、今は被害者の方々のご冥福を祈るばかりです…ああ、つらい、悲しいことばかり起こる世の中ですね…

 懐かしの70・80年代邦画映画祭①
 「衝動殺人 息子よ」
 工場を営む川瀬夫妻は、跡継ぎである一人息子の武志の結婚を楽しみにしていた。しかし、武志は通り魔に刺されて命を落としてしまい…
 名匠、木下惠介監督の1979年(昭和54年)の作品。
 通り魔…この世で私が最も恐れているもの。私が小さい頃、日本中を震撼とさせた残虐な通り魔事件が起きたのですが、TVで流れる忌まわしい犯人の姿と、ショッキングすぎる事件現場の映像は、私の幼心に大きなダメージを与えました。高熱を出し、2日ほどプチ外出拒否をしたほど。今も時どき通り魔に襲われる悪夢を見るなど、消えないトラウマになってます。残念ながら、凄惨で理不尽すぎる通り魔事件は後を絶たず、もはやこの世に安全な場所などどこにもない、という恐怖と絶望に暗澹となってしまいます。白昼、フツーに道を歩いてただけで、スーパーで買い物してただけで、駅のホームに立ってただけで、無残に殺されちゃうのだから…
 通り魔に殺されてしまうなんて、犬死以外のナニモノでもありません。覚せい剤で錯乱とか、死刑になりたかったからだとか、ムシャクシャしてたから誰でもよかったとか、理由にもならない加害者の身勝手さに、どれだけ救いのない虚しさを抱かされてきたでしょうか。まさに殺したもん勝ち、殺され損、ですよ。

 この映画の被害者、遺族も、何の落ち度もない、社会や家族のために頑張って生きてた善良な人たちなのに、なぜあんな目に遭わねばならないのか。ほんと、神も仏もない無情さです。彼らの無念や怒り、苦しみは、決して他人事ではありません。なので、観ていてすごく辛かったです。犯罪被害者遺族の救済のための闘いを描いた作品なのですが、あらためて日本って加害者天国だな~と思い知らされました。被害者は殺され損、遺族のことはほぼ無視で、手厚く加害者を守る法の非情さ、不公平さ、矛盾は、実際に起きた数々の凶悪事件でも痛感させられ続けてますよね。神戸の少年Aとか、その最たるもの。幼い私を打ちのめしたあの通り魔も、赤ん坊や子どもを含む4人も惨殺しておきながら、死刑にならず無期懲役。もうとっくに出所してるはず。どんな気持ちで生きてるんだろう…
 敵討ちができないのなら、せめて被害者遺族の心情や生活のための救済を、と主人公夫妻は苦闘、奮闘するのですが。ある日突然、愛する人を奪われ幸せを破壊された二人の、怒りと悲しみはホント胸が痛みました。こんなこと、私なら耐えられない、発狂するか自殺…と安易に楽になろうとしてしまうことでしょう。夫妻の強さは超人的なまでに驚異的でした。時おり挿入される、幸せだった頃の家族の姿、それにカブる音楽とかが、ちょっとお涙ちょうだい的で、冷血人間な私にはちょっとシラけてしまいましたが、昭和の日本人の生活風景や人情が、温かくノスタルジックに描かれていました。
 主人公の老夫婦役は、若山富三郎と高峰秀子。今は亡き名優と名女優が、感動的な名演。

 若山富三郎の、悲壮かつエネルギッシュな熱演が圧巻。裁判や社会運動で戦うよりも、日本刀もって法廷に殴り込みするほうが似合ってそうな若山さんですが、繊細で情愛深い役も素晴らしかったです。大きな体を縮こませて弱ったり悲しんだりしてる姿が、何だか愛おしかったです。この映画を最後に引退した高峰秀子の、庶民的で気丈な演技も好感度が高かったです。悲劇や不幸にもメソメソせず夫を支える姿に、やっぱ男より女のほうが強いよな~と感嘆。
 息子役の田中健がイケメン!その婚約者役の大竹しのぶも可愛い。飾り気のない素朴な感じがいいですね。夫妻を支える甥っ子役、尾藤イサオの好演も忘れがたいです。あと、別の通り魔事件の犯人役、若き日の大地康雄が怖い!大地さんといえば、私を恐怖のドン底に叩き落としたあの通り魔役を、実写ドラマで演じてましたよね~。あれは再放送不可能だろうな~。

 この映画、被害者の遺族や関係者を演じてる脇役が、なかなか豪華です。藤田まこと、加藤剛、近藤正臣(昭和の都会的な色男って感じで素敵!)、そして何と、吉永小百合!小百合さまが助演って、珍しくて新鮮でした。フツーの主婦役、しかもすごいチョイ役で、正味5分も出てなかったけど、やっぱフツーの女優とは違う美しさ、オーラがありますね。あと、若山富三郎の義妹、中村玉緒も出てます。
 
コメント (2)
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