星のひとかけ

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ぬくもりを…

2023-11-10 | …まつわる日もいろいろ
 
 この上もない大混乱だ。鉄道も、人の心も、食糧も…… 明日にはよくなるというのだろうか、冬にはなにかが変わるだろうか、あとひと月でけりがつくのか、それとも百年このままだろうか? 平和への期待はみんなの頭上に、剣のようにぶらさがっている……
    (エルザ・トリオレ「最初のほころびは二百フランかかる」 広田正敏・訳)


前回、 戦間期のパリのところで名前だけあげたエルザ・トリオレ、 1944年の仏ゴンクール賞受賞の本からの引用です。

この本のことはまた改めて書こうと思いますが、 エルザ・トリオレというロシア生まれの女性作家、、 裕福な家の出身で1920年代のパリでシュルレアリスムの芸術家や作家たちと交流し、 やがて詩人ルイ・アラゴンと出会い… 、、そんな経歴をかんたんに読んで、 つい「エイジ・オブ・イノセンス」――これも先日書いた、イーディス・ウォートンの本『無垢の時代』に出てくるパリに移り住んだ伯爵夫人のようなイメージを勝手に想像していました。 だから作品もパリの芸術家や社交界のことだろうかと…

でも、 時代がくだって第二次大戦下に書かれた、冒頭にあげた作品は、 ドイツ占領下のパリ、、 1944年の6月のノルマンディー上陸作戦から8月のドラグーン作戦に至る時期のことを、 パリの内部から見た強烈な抵抗の物語でした。


1年半前、 ウクライナへのロシア侵攻が始まった時、 ピエール・ルメートルの大戦三部作の『われらが痛みの鏡』を挙げて、 とにかく逃げて、 逃げて生き延びて、、 と書きましたが、、 上記の「最初のほころびは…」は、 逃げずにとどまった人々が描かれていました。 行くところのない人々もいたでしょうし… 逃げるよりたたかうことを選んだひともいたでしょう… そうしなければ占領され、奪われてしまうのですから…  ウクライナも、 ガザも…


 ……だが、妻や子供たちはどこだろう? どこにいるんだろう? どこに?

  それに答えることは差し控える。あまりにもむごい恐怖の入口から、これ以上すすむつもりはない……
 殺戮、略奪、強奪の的となった村は、恐怖で無気力になってしまった。ただ、人を呪うぐらいが関の山だった。……



 作品の末尾には 「一九四四年 十一月 パリにて」と書かれています。 パリ解放は8月25日だったそうです。 

いま、 この作品のことを検索してもほとんど何も出てきません。 ですが80年近く経った現在の世界でも まったく同じ状況なんだと、、 とても複雑な気持ちになります。 Wikiなどに載っているエルザ・トリオレの美しいポートレートからは想像できなかった、 強いレジスタンスの短篇でした。 

意外な思いもいだきつつ、 いま読むことの偶然をも感じています。。 エルザ・トリオレのもう少し前の作品も読んでいます。。

このつづきはまたいずれ・・・

 ***


立冬が過ぎて…  季節が急にすすみました。

お台所に立つのもずいぶんとらくになりました。。 夏の暑さはたいへんでしたから…




先日、、 お料理にあわせるのに ワインでも… と思ったのですが、 ワインはすぐに頭が痛くなってしまうので、、 そろそろ日本酒もよい季節かと思い立って 冷酒を買ってみました。 

上の写真、、 リキュールを飲むときの古いカットグラスにそそいでみました。 亡き父の持っていたグラス。 たぶん60年くらい前の…


古いものはなんとなくそれだけでホッとする趣きがあります。



心にもぬくもりが恋しくなる日々…



どうぞよい週末を…
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