星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

ピエロオ

2002-12-16 | …まつわる日もいろいろ
 明日で試験は終わるので、課題に関係ないものが読めるわ、ということで、松岡正剛さんの『フラジャイル』を図書館から借りてきた。何回か手にとってつまみ読んでいるけど、最後まで読んでなかったし、忘れてる部分も多いので。

 やっぱり忘れてた・・「ヴィアンが死んだとき、レイモン・クノーらのごく少数の例外をのぞいて、世間はほとんどヴィアンの文学的価値を認めていなかった。ヴィアンはジャズのトランペット奏者であり・・(略)・・シャンソン屋にすぎなかった。実際にもヴィアンの日々はそんなものだった。美輪明宏の『紫の履歴書』には、そんなヴィアンの初期に似た場面がたくさん出てくる」(P16)こう松岡さんは書いて、ヴィアンや、ラフォルグや、ヴィスコンティの『ベニスに死す』などを繋げていく。

 ラフォルグの詩はほんの少ししか知らない。その中で、憶えているもの・・

   また一人ピエロオが
   慢性孤独病で死んだ
   見てくれは滑稽(をかし)かったが
   垢抜(あかぬけ)のした奴だった
    (ピエロオの詞 より抜粋/上田敏 訳)

 ヴィアンにも、たしかに通じますね。そして、ワイルドの童話をどうしても思い出してしまう。王女さまに恋してしまった道化の話。王女さまが笑ってくれるのが嬉しくて、でも、王女さまは道化の醜さを笑っていた。。

 淋しいのでもないし、鬱状態でもないけど、何事かを憂いているというか、そっと物事を考えていたい時、というか、そんな私が聴いているのがBECKに、Spiritualized(グラストンベリーでの「Out of sight」の演奏は圧巻でした)に、マーキュリー・レヴ、、。昨年の発売時に迷って結局買わずにいたプリファブ・スプラウトを図書館で見つけて、今聴いてます。このプロデュースはトニー・ヴィスコンティですが、マーキュリー・レヴでもストリングスアレンジをトニーがしていたという事、忘れていました(ライナーちっとも読まないから・・)。

 プリファブ・スプラウト、、あの押さえ気味に途切れがちに囁きかけるようなヴォーカルが懐かしい。変ってない。こちらを高ぶらせてくれる声も好きだけど、安心させてくれる声が欲しい時もある。ベック・ハンセンの声も好きだな。

 祈りにも似た詠唱を聴きながら、フラジャイルな心の物語を読んでいたい、そんな日がつづいています。

Time is on my side~果報は寝て待て~

2002-12-03 | 文学にまつわるあれこれ(詩人の海)
いつか・・なんて言っているうちはいつかは来ない!、、というわけで(それほど大袈裟な話じゃないよ・笑)下の日記のストーンズの詩、今日図書館で見てみました。ありました! 井上光晴の『荒れた海辺』でした。同名の詩集が76年に出ていました。詩、というより随筆に近いものです。作家自身が出会った「ひとつの情景」です。

 台風の近づく海辺、作家の耳にとどいたのは<タイム・イズ・オン・マイ・サイド>・・転載できないので中ほどを少しだけ抜粋します。

 ***
 
  「キース・リチャードのギターが好きなんだ」
  私がそういうと、途端に若者たちの顔つきが変った。
  なんだ年甲斐もない、お前さんも狂っているのか。
  多分声には出さずにそう呟いたに違いない。


(・・出会った若者は海に潜って貝を採る漁師でした)


  潜っとっても、ミック・ジャガーの歌がきこえるもんな。

 ***

・・荒れた海辺で作家と若者たちはこうしてひととき、同じ時を過ごすのです。そう、確かにこの文章でした、私が読んだのは。井上光晴氏の詩集などまだ読む筈もなく、もしかしてレコードのライナーに書かれていた?? でもね、この情景描写をきっととても気に入ったんだと思う。時代と人生とロックが文章の中でひとつになって生きている、子供の私もきっとこういうものを書きたいと思ったんだね。

消えていく詩集

2002-12-02 | 文学にまつわるあれこれ(詩人の海)
この前から少し昔の詩を読みたいなあ、と思っていた所、種村季弘さんの書評で、明治・大正期の詩人の事が書かれていて、ふと思い立ちBOOK OFFへ。。神田の古本店からは考えられないような値段で本が売られているので、このところのシェイクスピアも、ポー全集もみんなここで揃いました。大作家なら文庫でいくらでもあるのですが、詩集などはこの世から消えていく一方。そして、たぶんお年寄りが亡くなると書斎の整理をして全集を一気に出すのでしょう。それらが全部100円。その中から詩人の巻だけ救出してきました。開いてみれば・・栞のヒモの様子でわかるんですよね、たぶん買ってから一度も使われた感じが無い。文学全集の中の詩集なんて、そんなものかもしれません。

 1975年ごろだと思うんだけど、ローリングストーンズに捧げた詩を読んだ覚えがあって、たぶん井上光晴じゃないかと思うけど、それ以来再会していない。いつか調べてみようかな。