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田原総一朗「天皇・皇太子が踏み込んだ日本国憲法論」
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現在政権を握っている自由民主党は、2012年4月27日に「憲法改正草案」を決めて発表した。
だが、憲法を改定するには、憲法96条で「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」が必要で、その上で「国民投票において過半数の賛成」を得なければならないと決まっている。だから、安倍晋三首相は96条を改定し、総議員の過半数で憲法改定の発議ができるようにすべきだと力説していた。ともかく自民党は「改憲」を党の大目標にしているのである。
ところが、2月23日に54歳の誕生日を迎えた皇太子は、これに先立って21日に元赤坂の東宮御所で記者会見し、次のように発表した。
「今日の日本は、戦後、日本国憲法を基礎として築き上げられ、現在、我が国は、平和と繁栄を享受しております。今後とも、憲法を遵守する立場に立って、必要な助言を得ながら、事に当たっていくことが大切だと考えております」
この発言は、どう考えても現憲法を守る考え方、つまり「護憲」の表明である。しかも、このような認識を示しているのは皇太子だけではないのである。天皇も、昨年12月23日の誕生日に先立つ会見で、次のように表明している。
「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています。また、当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います」
天皇の声明は、皇太子よりもさらに踏み込んだ内容である。現在のこの国の保守派には、現憲法は占領下に米軍によって押し付けられたもので無効だとする人物が多いが、天皇も皇太子も、そうした保守派とは明らかに対照的な認識に立っている。
日本は民主主義の国で言論の自由が保障されているので、天皇や皇太子が「間違っている」と言っても問題はないが、そうした人間たちは保守とはいえないのではないか。
いや、こういう決めつけはやめよう。ただ、天皇や皇太子は、日本国憲法第1条の「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」はもちろん、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という第9条、さらに言論や表現の自由の保障など、丸ごと現在の憲法を守るという考えとしか思えない。そして、それのどこが間違っているというのだろうか。
繰り返し記すが、日本は言論、表現の自由が保障されているので、誰をどう批判するのも自由だが、「現憲法は占領軍から押し付けられたもので無効だ」というのは、乱暴というより無知だ。
当時、日本人の手だけでは「主権在民」という現憲法の制定は不可能だったのだから。皮肉な言い方をすれば、当時、世界の理想となる平和で民主的な国をつくろうという「知日派の米国人の協力」があったからこそ、このような素晴らしい憲法ができたのである。
自民党の改正案では、個人の権利や自由を規制する条項が随所にある。これは改正ではなく、改悪と言わねばならない。
※週刊朝日 2014年3月21日号
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