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近代革命の社会力学(連載第475回)

2022-08-15 | 〆近代革命の社会力学

六十六ノ二 ロジャヴァ・クルド革命

(1)概観
 「アラブの春」の一環としてのシリア革命は未遂に終わったが、革命過程で、シリア北部のロジャヴァ地方では少数民族クルド人が2012年7月に武装蜂起し、政府軍も反政府軍・自由シリア軍をも排して独自の革命自治体を構築することに成功した。
 このロジャヴァ・クルド革命はシリア革命の副産物ではあるが、革命を担ったのは、クルド人の連合組織及びその軍事部門であり、シリア革命そのものとは独立した力学から派生した一種の地方革命である。
 シリアにおける少数民族として長く迫害・差別されてきたクルド人主体の革命という点では民族革命としての色彩も強いが、シリアからの完全な独立を目指すものではなく、あくまでも地方自治の枠内のものである。
 しかし、長引く内戦によりシリア政府のロジャヴァ地方への実効支配は及ばなくなっており、現時点でのロジャヴァ地方は事実上の独立状態にあり、シリア政府もまた事実上現状を容認し、協調関係にあるという点では、メキシコのチアパス州におけるサパティスタ自治体制と類似の状況にある。
 理念的な面でサパティスタと直接のつながりは認められないが、ともに民族解放組織を基盤としながら、直接民主主義的な要素を取り入れ、協同経済を志向するアナーキズム系社会主義に傾斜した独自の政治経済システムを営む点で、共通項も認められる。
 ただし、ロジャヴァ・クルド革命では政党の結成が先行したため、自治体制も基本的に選挙に基づく代議制システムによっており、政党なき直接民主主義を実践しているサパティスタ自治体制に比べれば、直接民主主義的な要素はより希薄で、西欧的な代議制民主主義に近い。
 また、サパティスタ自治体制はすでに連邦政府との内戦も終結し、30年近く持続しているのに対し、ロジャヴァ自治体制は依然終結しないシリア内戦の流動性に加え、隣接するトルコが長く紛争関係にある国内の少数民族クルド人とロジャヴァ自治体制の連携を警戒し、2016年以来、たびたび侵攻、一部地域を占領しているため(拙稿)、支配領域の縮小を余儀なくされている。
 それゆえ、今後の持続性については予断を許さないが、現時点において、ロジャヴァ自治体制は、サパティスタ自治体制と並び、地球上で最も先端的な理念と制度を備えた持続的な脱国家的革命体制として注目すべき存在となっていることは確かである。

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