対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

自己表出はアブダクションである4

2024-03-22 | ノート
カッシラーの三段階論(1擬態的・2類推的・3象徴的)

2進化の特性では、まず、言語が現実から離れてゆく過程(言語成立の過程)に着目した2つの三段階論を紹介し検討している。カッシラーとマリノウスキーの三段階論である。そしてこの後に、表出論の図解を提示している。

カッシラーの三段階論(1擬態的・2類推的・3象徴的)は、音声と対象との関係で言語成立の過程を見ているものである。
1擬態的
擬声的と同じで、ニャーンで猫を指すたぐい。音声の意識は特定のものと離れられず、対象とつるんでいる。「この段階では意識から見られた世界はまだなにもない薄明である。」
2類推的
音声形式と事象の関係形式との間に類推が成り立つ段階。多くの言語で、母音a・o・uが遠方、e・iが近くを表わすたぐい。『言語の本質』第二章「アイコン性――形式と意味の類似性」ではさまざまな例が挙げられている。「音声と対象とが面をつきあわせている段階」
3象徴的 
いわば比喩的で、抽象的な前置詞後置詞のかわりに具体的な身体部分の名詞が空間表現として用いられる。「前に、後に、上に、中に」のかわりに「眼、背、頂、腹」が使われるたぐい。(音声が空間のなかに対象を見ている段階)

カッシラーの三段階論の意義は認めるが、その当否を実証することは難しいし、また言語の進化の過程には法則性は想定できない。だから、もっと確実にあとづけるには、ある「原理」に身をよせてその移行をみたほうがよいと吉本は考えた。そこで検討されるのがオグデン・リチャーズの三角形を原理として適用したマリノウスキーの三段階論である。

「カッシラーが擬声的、類推的、象徴的とよんでいる三段階は、マリノフスキーの象徴、指示、指示物の関係がオグデン・リチャーズの三角形としてなりたっていく過程とおきかえことができる。」