ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

ユダヤ112~反ユダヤ主義に対抗するユダヤ人団体

2017-10-10 09:28:50 | ユダヤ的価値観
●反ユダヤ主義に対抗するユダヤ人団体

 アメリカには、反ユダヤ主義に対抗するために活発に活動しているユダヤ人団体が多くある。
 現存する最古の近代的なユダヤ人相互扶助団体が、ブナイ・ブリスである。「契約の子孫」を意味する。1843年にニューヨークで設立された。ユダヤ人のみのフリーメイソン組織として誕生し、組織をロッジと呼び、様々な秘儀を行い、イディッシュを使用していた。南北戦争の時には、ロンドンの金融界から指示を受けてアメリカにおいて戦争工作を担当した。その後も、ロスチャイルド家やユダヤ系メイソンと連携しながら、米国の政治・外交・経済・金融に影響を与えてきたと推察される。メイソン組織として様々な秘儀を行っていたが、1920年に組織憲章において、秘儀性と訣別することを決定し、以後は、ロータリー・クラブ、ライオンズ・クラブ等の親睦団体との交流を積極的に展開している。
 ブナイ・ブリスは、イスラエルを熱心に支持し、反ユダヤ主義の活動をしている。それ以外に、人種差別・ヘイトクライムへの反対、人権向上、自然災害犠牲者の援助、ユダヤ人大学生に対する奨学金授与、福祉等の活動を行っている。
 この団体は、1913年にユダヤ人の権利擁護、少数民族との友好促進を目的として、名誉毀損防止同盟(ADL)を発足させた。ADLは、ブナイ・ブリスの下部組織である。ともに改革派ユダヤ教徒によって創設された。
 現在アメリカには、ユダヤ人の権利擁護、反ユダヤ主義の打破、偏見や差別と闘う団体との連携を目的として活動する組織が大きいもので5つあり、その中で最大の団体が、ADLである。
 ADLは、米国全土に約200の下部組織を擁し、全国有色人種地位向上協会(NAACP)や黒人市民権組織都市連盟の活動にも影響力を持っている。1990年に、マーケッティ元CIA副長官付上級補佐官は、ADLについて次のように語っている。「今日のウォール街は、ADLやいわゆるユダヤ人新興勢力のなすがままになっている。アメリカ国内に張り巡らされたユダヤ人組織網を使うことで、ADLは議会員を当選させたり、クビにしたり好きなようにできる力を持っている。マスコミの人間も、ADLとADLの支持者に脅えながら仕事をしている」と。
 次に、注目すべきユダヤ人団体は、世界ユダヤ人会議(WJC)である。ユダヤ人社会に対する全世界規模での脅威に対処することを任務とする最も戦闘的なユダヤ人団体として知られる。
1936年に、ナチス・ドイツへの抵抗運動を世界中で行うために、スイスのジュネーヴで設立された。本部はニューヨークにある。
 この組織は第2次大戦の戦前・戦中に、特に米国において反ナチ集会を組織化し、ヨーロッパのユダヤ人を保護するよう政府に働きかけた。戦後は、ナチ戦犯の追及、ホロコーストを生き延びたユダヤ人の保護運動、ネオナチや反ユダヤ主義者への対抗、各国ユダヤ人の救援活動等を行ってきた。また、欧米では、ユダヤ教育などを通じてユダヤ人文化の保護に努めている。
一国一団体を原則とし、86カ国(1994年現在)の団体が加盟している。国際連合・ユネスコなどの国際機関にNGOとして参加している。ユダヤ人の国際組織は、国際連合の設立期から影響力を振るってきている。
 アメリカには、現在約300の全国的ユダヤ人団体があるとされる。これらの団体のうち、政治活動を行う団体は、アメリカ=イスラエル公共問題委員会(AIPAC)をはじめとする十数団体である。それらのユダヤ・ロビーについては、後にアメリカ・ユダヤ人の政治力に関する項目に書く。
 次に、ユダヤ人に関する言論・表現への圧力において、最も強力な活動を行っている団体を挙げたい。サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)である。1977年に米ロサンゼルスに開設された。ロスに本部を置き、イスラエル、カナダ、フランス、ブラジル等に事務所を展開して、ホロコーストの記録保存や反ユダヤ主義の監視を行っている。
 個人名が団体名につけられているサイモン・ヴィーゼンタールは、オーストリア=ハンガリー二重帝国出身のユダヤ人で、第2次大戦中は、ナチス・ドイツによって各地の強制収容所に収容された。戦後は、戦争犯罪の疑いがあるナチス党員の追及に尽力し、1100名以上の起訴に貢献した。
 1987年にSWCに、カリフォルニア州議会の決議によって、「寛容博物館」が建設された。同館ではアメリカにおける人種差別の歴史とホロコーストに関する展示がされている。
 SWCの副所長を務めるのが、エイブラハム・クーパーである。ニューヨーク生まれで、ラビにしてユダヤ人権利問題の活動家である。ユネスコの反ユダヤ主義に関する国際会議、ホロコーストの被害補償に関するジュネーヴ会議等を組織したことで、国際的に知られる。
 わが国との関係も深い。SWCは、1995年1月、雑誌『マルコ=ポーロ』がユダヤ人大虐殺説を検証した記事を載せた際、発行元の文藝春秋社に抗議し、雑誌の広告主に圧力をかけて、同誌を廃刊に追い込んだ。クーパーは、その活動の中心となったと見られる。事件後は、同社で開かれたユダヤ人理解のためのセミナーで講師を務めた。1999年10月、『週刊ポスト』が「長銀『われらが血税5兆円』を食うユダヤ資本人脈」を掲載した際にも、SWCは広告主に圧力をかけた。同誌は記事を撤回し、謝罪文を載せた。クーパーは、この時にも、発行元の小学館で開かれた人権セミナーの講師を務めた。その後も、SWCによるメディアへの抗議が行われる際、常にクーパーが登場している。
 自由民主主義の諸国では、言論や表現の自由が保障されているが、多くの情報は所有者集団が所有するマスメディアが流して、大衆の意識を操作している。そうしたマスメディアの報道を厳しく、また常時監視し、積極的に働きかけているのが、ユダヤ人団体である。

 次回に続く。