ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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フリン米大統領補佐官の辞任とロシア・コネクション

2017-02-17 09:32:07 | 国際関係
 2月14日マイケル・フリン米大統領補佐官が突然の辞任。フリンが担っていた国家安全保障担当の大統領補佐官は、米政府の安保政策の方針を決める国家安全保障会議(NSC)の事実上の司令塔といわれる。政権発足3週間余りで、重要側近の辞任は、トランプ政権にとって大きなダメージとなる。

 フリンは、まだ政権が発足しておらず、一民間人だった昨年末、駐米ロシア大使と外交問題に関する政策を何度か協議したとのこと。米国では建国直後から民間人が外交活動を行うことは法律で禁止されている。バレれば罪に問われるというリスクをおかしてでもロシア大使と対露制裁について協議(解除か緩和のはず)したということは、よほど緊急の必要があったのだろう。

 昨年12月29日、オバマ大統領はロシアの選挙戦へのサイバー攻撃に怒って、駐米ロシア外交官35人を国外退去処分にした。その同じ日に、フリンは駐米ロシア大使に電話して、新政権が制裁を解除する方針を伝えたもの。当時のオバマ政権に対しては、反政府的な行動になる。この時、プーチンはオバマによる外交官追放処分に対抗せず、鷹揚に構えた。外交の常識から言っても、プーチンの行動パターンから見ても、通常考えられない態度だった。そうしたプーチンをトランプは、頭がいいと絶賛した。その背後に、フリンとロシア大使のやりとりがあったわけである。

 FBIは、フリンがロシア大使に電話した交信記録を証拠として持っているという。ロシア大使の動きは、米国の担当官が何人もついて常時監視している。その中で記録の残る手段で連絡したフリンは、如何に緊急の必要性があったとしても、情報のプロとしてあるまじき愚行をした。トランプがロシアに極めて不利な情報(破廉恥行為等)を握られているため、ロシアとの取引によほど焦っていたのではないかと推察される。

 フリンは、軍で30年以上、情報畑を中心に活躍した。個人的にプーチン露大統領と親しく、何度もロシアに行ってプーチンと食事をしたり、講演をして講演料をもらっていたりしたとのこと。2015年には、国営テレビの晩さん会に費用向こう持ちで参加し、会の間中、プーチンの隣に坐っていたと報じられる。こういう人物が選挙戦でトランプ陣営の主要スタッフとして活動し、その後、大統領補佐官に就任。ロシアとの関係改善に異常に積極的なトランプに、親ロシアのフリンが着いているわけだから、対ロシア強硬派の共和党主流派や諜報機関幹部にとっては、フリンは国の進路を誤らせる危険な存在だったことだろう。

 フリンが早期に辞任したのは、疑惑がトランプ大統領や他の側近等に及ばないようにしたのではないか。トランプ側については、選挙期間中、ロシアから金銭を受け取っていたのではないか、政権のスタッフに今も金銭をもらっている者がいるのではないかと、当局が捜査しているとの情報がある。フリンの辞任だけで収まるかどうか。さらに問題が拡大する可能性をはらんでいる。
 トランプ大統領及び側近・閣僚のロシア・コネクションは、政権の正統性を疑わせるだけでなく、米国の独立主権国家としてのあり方を根底から揺るがす恐れがある。

 フリンの辞任は、安倍=トランプ首脳会談の後だった。これは、日本にとってはタイミングが良かったと思う。これが首脳会談の前だったら、何らかの影響が出ただろう。安倍首相にとって、ひいては我が国にとって、運気の流れがよい方に向いていると感じる。