なんのためらいもなくゴミ箱へ放り込んだくせに、時折こらえ切れない未練・後悔が噴き出して来る。その後しばらく心内で続くのは、無知な遺棄者を見返す(もう手の届かない)古本の面影がする執拗にして非情ないたぶり。
こうして古本病者は絶えずおのれの愚かしさと相対して涙するから、元々あるかなきかの自尊心は痩せ衰えて行くばかりである。
【捨ててしまったほんの数例】
「辭林」(金澤庄三郎編 三省堂)
「辭苑」(新村出編 博文館)
「ポケット言林」(新村出編 全国書房)
「新明解国語辞典 初版第一刷」(金田一京助他編 三省堂)