美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

「クレテ人(びと)は常に虚偽(いつわり)をいう」とクレテ人がいう

2020年09月25日 | 瓶詰の古本

クレテ人の中なる或る預言者いふ『クレテ人は常に虚偽をいふ者、あしき獣、また懶惰の腹なり』
(「新約聖書」 日本聖書協会)


「子どもは嘘をつかない」
「大人(男or女)は果てもなく嘘をつく」
などの言いぐさが全く無意味な与太に過ぎないとは子どもにも(大人にも)分かっていることであり、わざわざ声高な口先で主張するところの論拠にする人がいるとしたら、今どき希有の論理破綻者である。

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昔の英雄豪傑は金銭問題に細心の注意を払っていた(竹越與三郎)

2020年09月23日 | 瓶詰の古本

〔記者〕 増田長盛、長束正家――かう云ふ人が秀吉の大蔵大臣だつたと云ひますね。
〔先生〕 さうです。 だから、秀吉は非常な驕りを極めたやうに云はれるが、実は金をうまく散じて人心を収攬した。 金を生かして使つたのです。 が、一方金を集める事も巧みだつた。
〔記者〕 所謂太閤検地をやつて税金を取り立てたのも其の一つでせう?
〔先生〕 さう。 久しく乱れてゐた税制を確立したわけです。 同時に金銀の採掘を、盛んにやつた。 尤も、これは当時の英雄が皆心掛けた事で、謙信は佐渡の金山からドンドン砂金をとつてゐたし、信玄も夙に此の事に目を付けて砂金を採集し、ホルトガル式鋳造の方法を採用してゐた。 税制も、甲斐独特の大切、小切と云ふ税制をしいて、うまくやつてゐた。 勢力のある大名は皆この心掛があつたのです。 そこへ行くと佐久間信盛などは、武勇と云ふやうな事ばかりに懸命なので、結局当時の落伍者になつて了つた。
〔記者〕 信長はケチだつたと云ひますが。
〔先生〕 ケチと云ふ点では家康もケチだつたが、ケチと云ふよりは金の値打ちをよく知つてゐたのだね。 或る時、山城の八幡宮が荒廃したので、樋をかけ替へると云ふ時、信長は従来の木造の樋を見て、木造は損だ、鋳物で造つた方が長く持つと云ふので、今までは大工に頼んでゐたのを、鋳物屋に命じて六間の鋳物樋を造らせた。 織田家は父の代から富裕だつたのだが、信長は此の家に生れても、かく迄金銭に細かつた。 だから、金銭に困つたと云ふやうな事はなかつた。
〔記者〕 さう云へば、長篠の合戦に強敵武田に痛撃を加へ得たのも、信長には三千挺の鉄砲があつたからだと云ひます。 金があつたから、鉄砲の準備が出来たのですな。
〔先生〕 たしかにさうです。 信玄以来の強国甲州勢を破つたのは、一に信長に貯財があつたからで、決してたゞ武勇智略ばかりではなかつたのです。

(「三叉小品」 竹越與三郎)

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ニヒリズムに不覚の献身をする大望家は、自分自身の誇らしい優越性に人びとを額突かせることによって私欲をほしいままにできると信じている

2020年09月13日 | 瓶詰の古本

しんずる【信ずる】(動サ変)①本当であると思う。疑わない。「その話は信じがたい」②人を信用する。「私を信じてくれ」「信じやすい人は欺かれやすい」③宗教を信仰する。「キリスト(教)を――
(「例解国語辞典」)

 

しんじる【信じる】(動上一) ①ほんとうだと思う。◎正しいと信じることをやりとおす。↔疑(うたが)う。②ある宗教(しゆう-きよう)にはいりこむ。◎あの人は、キリスト教を信じている。=信仰(しん-こう)する。信心する。=信ずる。
(「講談社国語辞典ジュニア版」)

 

しんじる【信じる】 ①うたがわず、ほんとうだと思いこむ。②信仰する。
(「プリンス国語辞典」)

 

しん・じる03【信じる】(他上一)①うたがわずに、真実と思いこむ。②帰依(キエ)する。[文]しんず0(サ)
(「明解国語辞典 改訂版」)

 

しん・じる3【信じる】(他上一) ①(なに・だれ――)あらゆる点から見て、それが真実で疑う余地がないと思い込む。「神(あの世)の存在を――/天動説が正しいと信じて疑わない時代があった」②(なに(なんだ)――)その事に関する自分の判断が正しいと思い、他の考えを入れる余地が全く無いものとする。「成功を信じて出発/――ところに従って行動する/彼がそんな事をするなんて信じられない」③(なに・だれヲ――まちがいが無いものと認めて、その言った(行なった)事などを積極的に受け入れる。「君を信じて〔=信用して〕頼むんだ/信ずべき筋〔=出所が確かな方面〕の情報」④(なに・だれヲ――神や仏などの絶対的な力に心から従って、その教えの通りにしようとする。信ずる(サ変)。
(「新明解国語辞典」)

 

しん・じる【信じる】〈他サ変〉①ほんとうと思い込む。信用する。↔疑う②信仰する。信心しんじんする。「仏教を――」 [補足説明]「信ずる」ともいう。
(「学習百科大事典[アカデミア]国語辞典」)

 

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強く願えば「特別に選ばれた人」を何度でも繰り返し生きることが可能という夢想(ドストエフスキー)

2020年09月06日 | 瓶詰の古本

 しかし、今少しユーリヤ・ミハイローヴナのことを述べよう。此の憐れな夫人(私は彼女に対して大層気の毒に感じて居る)は、氏の前へ来た最初から自分で決めて懸つたやうな、あんな猛烈な、突飛な手段を取らないでも、あれ程永い間彼女を牽引し魅惑してゐたやうなもの(名声その他のもの)は皆獲得することが出来たのだつた。所で、誇大されたロマンテイツクな情熱からか、それとも若い時余りに屡々希望が挫折した所為か、兎に角彼女は運命の転変と同時に、突然自分が何か特別に選ばれた人でもあるやうな、殆ど神から油を塗られた一人でもあるやうな、そして「頭の上には燃える火焔の舌が輝いて居る」やうな気になつた。此火焔の舌が災の因になつたのだつた。つまりそれはどんな婦人の頭にも似合ふやうな束髪とは違ふからであつた。しかし世の中にその理を婦人に説得する位ゐ困難なことはない。その反対に、婦人の幻影を焚きつける者は、常に成功疑ひなしである。所で、皆が争つてユーリヤ・ミハイローヴナの幻影を焚きつけようとしたのだつた。憐れな夫人は忽ちにして相撞着する種々雑多な影響に翻弄せられた。然も当人は飽まで自分の独創を信じて居たのだからお目出度い。夫人の短い滞在期の間に、狡猾な連中は皆彼女の周囲に集つて、そのお人よしを利用して自分の懐を肥した。又此の一人合点な独創の下には、どれだけの混乱が含まれて居たらう。貴族的分子も、大地主制度も、知事の権力拡張も、又民主的分子も、新しい改革や新しい主義も、自由思想や社会主義的断想も、又貴族的客間の厳正な儀式的な調子も、彼女を取巻く若者どもの居酒屋式な自堕落な態度も、悉く夫人の気に入つたのだつた。彼女は人間に「幸福を与へる」ことを、又調和すべからざるものを調和することを、と言ふよりは寧ろ、彼女自身の人格の崇拝の中にあらゆるものを統一しようと夢想して居た。

(「惡靈」 ドストイエフスキイ 古館清太郎譯)

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後継が自分より若かったら、もしものときに再登板しにくくなる(微妙な)年齢とは何歳ぐらいだろうか

2020年09月03日 | 瓶詰の古本

こおけいこう――【後継】(体)あるもののあとをついで前と同じ場所を占めること。あとつぎ。またあとをつぐもの。「――が見つかるまで現職を続ける」「――内閣〔者〕」
(「例解国語辞典」)

 

こうけい【後継】(名) あとつぎ。あとをひきうけること。◎後継者(―しや)。
(「講談社国語辞典ジュニア版」)

 

こうけい【後継】あとをうけつぐこと。または、その人。[用例]社長の後継者。
(「プリンス国語辞典」)

 

こお けい0【後継】コウ―(名)あとつぎ。「――者3」
(「明解国語辞典 改訂版」)

 

こう けい0【後継】 やめた人に代わって、その地位・職務などに就く・こと(人)。「――内閣5・――首班5・――者3:――(=あとつぎ)を育成する」
(「新明解国語辞典」)

 

こうけい【後継】〈名〉あとをつぐこと。あととり。「――者」
(「学習百科大事典[アカデミア]国語辞典」)

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