幹事クリタのコーカイブログ

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米津玄師の絶妙さ

2024-05-08 23:56:29 | 音楽
 朝ドラ『虎に翼』の主題歌「さよーならまたいつか!」は米津玄師が歌っています。朝ドラの主題歌はこれまでも多くのトップアーティストが手掛けてきていて、多くはヒットしていますし、その年の紅白歌合戦にも出演することも多いので、アーティストとしては「おいしい」仕事でしょうが、反面朝ドラテイストがハッキリしているので、自分の作家性との折り合いをつけるのが難しい場合もあるのではないかと思います。

 何より毎日朝から聴く曲ですから爽やかで飽きないことが大事ですし、前向きな応援ソングであること、さらにドラマの内容をポジティブにイメージさせることも求められるでしょう。これまでの印象的な朝ドラの主題歌と言えば、ドリカムの「晴れたらいいね」、松任谷由実「春よ、来い」、Kiroro「Best Friend」、いきものがかり「ありがとう」、ゆず「雨のち晴レルヤ」、絢香「にじいろ」、中島みゆき「麦の唄」、AKB48「365日の紙飛行機」、星野源「アイデア」、あいみょん「愛の花」などがあり、どれも朝ドラのレギュレーションから外れていません。どちらかと言えばロックよりもフォーク系のアーティストと相性が良いのがわかります。

 そこで米津玄師です。彼の楽曲はどちらかというと暗くて、歌詞も重く強いし「応援歌」という感じもしません。いかにも朝ドラと相性が悪そうですし、本人もNHKから依頼が来て驚いたそうです。僕も米津が作るというニュースを見て、どうなるのかと興味がありました。そして実際に「さよーならまたいつか!」を聞いたら、米津の個性と朝ドラのテイストの際のところを攻めていて、大きな違和感はないけれども米津らしさも消えていないので、ものすごく緻密に計算されていると思いました。

 歌詞だけ読むとかなり朝ドラ主題歌にしては攻撃的です。「したり顔で 触らないで 背中を殴りつける的外れ 人が宣う地獄の先にこそ わたしは春を見る」なんて、とてもこれまでの朝ドラ主題歌の歌詞ではありません。ただドラマの内容には合っています。社会に抑圧されてきた女性が打たれながらも権利を勝ち取っていく長い戦いの心情を映しています。繰り返される「100年先」もドラマの時代から100年経った今に向けての強いメッセージ性を感じさせます。

 そして歌詞の重さに反比例するような軽快なサウンドと歌唱で、いかにも朝ドラらしい爽やかさや前向きさを表現していて、このあたりのバランスの取り方が絶妙です。あと個人的には「しぐるるやしぐるる町へ歩み入る」という歌詞があり、これは種田山頭火の俳句「しぐるるやしぐるる山へ歩み入る」から取っていますが、使い方が上手いし洒落が効いているなと思いました。この先によくないことがあるとわかっていても避けずに真っ直ぐ向かっていく意志の強さは、まさにドラマの主人公そのものです。ドラマの進展に合わせてますます主題歌とのシンクロ具合が進んでいくので感心しています。
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