時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

あきない世傳金と銀11~風待ち篇~

2021-09-23 | 読書
湯上りの身拭いにすぎなかった「湯帷子」を
夕涼みや寛ぎ着としての「浴衣」に
そんな思いから売り出した
五鈴屋の藍染め浴衣地は
江戸中の支持を集めた
店主の幸は
「一時の流行りで終らせないためにはどうすべきか」
を考え続ける
折しも宝暦十年 辰の年
かねてよりの予言通り
江戸の街を災禍が襲う
困難を極める状況の中で
「買うての幸い、売っての幸せ」を貫くため
幸のくだす決断とは何か
大海に出るために
風を信じて帆を上げる五鈴屋の主従と
仲間たちの奮闘を描く
シリーズ第11弾



五鈴やのお梅さんと
型彫師・梅松さんが
祝言をあげる
吉ことから始まりました

その後に起きたのが
江戸の広範囲が
大火に見舞われます
幸や菊栄らは
古い浴衣を解き
赤子の襁褓にして貰おうと
あれやこれやと心を砕きます
本両替商・音羽屋と
日本橋音羽屋も全焼と聞き及んでは
幸と
幸の心中を察した
五鈴屋の従業員が
危険な焼け跡に向かい
結の安否を気遣うも
音羽屋忠兵衛と
その妻・結が
別宅にいて
生きてる…

しかも
幸の妹を思うお悔やみに対し
裏切者がその報いをうけたて
そない思うてはりますのやろ
それとも私のこと
憐れんではるんか
私を憐れに思うてはるのなら
いずれ悔いることになりますやろ

          (『第三章 日向雨』80頁より一部抜粋)
と激昂・罵詈荘厳の数々
(実際、『第六章 悪手、妙手』で仕掛けてきます)

ですが
今の幸には
五鈴屋には
五鈴屋四代目店主の前妻・菊栄がいます
両替商井筒屋三代目店主・保晴こと
五鈴屋五代目徳兵衛がいます
そして
浅草太物屋仲間がいます

『湯屋船の浴衣』に続き
幸は大胆な発想で周囲を驚かせます
まずは
五鈴屋門外不出
両面糊置き型染めの技を
浅草太物仲間に無償で伝授
音羽屋忠兵衛の
白生地買占めや
両面糊置き型染めの技を盗む等々
卑劣な罠にも
浅草太物仲間が一致団結
藍染浴衣地を売り出し
大成功
だけじゃ~ない!
勧進相撲の興行に携わる
砥川額之介なる人物から
五鈴屋の揃いの藍染め浴衣を
力士全員分作って欲しい
と言う依頼が舞い込みます

断ったりしないでほしい
私はもう十年近く
五鈴屋の商いを見守らせてもらい
『ここなら間違いない』と思っているのです

          (『第八章 天赦日の客』208頁より一部抜粋)        
何と
この砥川なる人物
新年の初売り日
足かけ9年通い続けていた
夫婦の旦那さんだったんです

五鈴屋が受けた
依頼にもかかわらず
またもや
浅草太物仲間全員に声がけして
期待以上の品を完成させる
だけじゃ~ない    … この結末は
               『第十章 土俵際』237頁以降を一読下さい


他にも
以前登場した(何巻だったか…)
縮緬十反を売って貰った
下野国の呉服商いの男が登場
吉報の足掛かりとなる情報を知らせてくれます
菊栄さんの簪も
中村座の二代目吉之亟と富五郎の
妙案によって一気に
その存在を広く知られることとなり
かつて
犬猿の仲だった
両替商井筒屋三代目店主・保晴の
後方支援を受け
商いは順調

だけじゃ~ない
五鈴屋の
お客さんでもある
紬商いに定評のある
呉服屋丸屋の呉服屋から太物屋への
商い替えの申し出に端を発した
浅草太物仲間が全店
浅草呉服太物仲間に転身する
作戦です … 詳しくは『第十二章 触太鼓』300頁以降参照

今度は我々が
真っ当な恩返しで
五鈴屋さんに報いる番ではないだろうか
私は思うのですよ
呉服太物仲間となることで
五鈴屋さんもお再び呉服を商えるようになる



ここまできましたよ!
ここまで来たのね!
いよいよ
呉服屋五鈴屋の復活!
単なる復活ではありません!
経験も知恵も人材も信用も
桁違いです
幸のことだから
丸屋の女将に教えを受け
紬の商いでも
工夫してくると思われます
下野国の綿栽培でも
活路を見出すとみた!

正攻法で
真っ当な商いで
認められる日も近い
女主としての集大成
早く見たい!

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