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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

侯外廬 『中国思想通史』 第5巻 「清:十七世紀至十九世紀四十年代中国早期啓蒙思想史」

2012年01月25日 | 東洋史
 これは最終巻だが、阿片戦争の前で止まっている。内容はほぼ清朝考証学とその周辺学術の歴史である。啓蒙思想とは、清(中国)内発の啓蒙思想のことらしい。もっとも読んでもそれが何を指すのかよくわからないのだが(戴震が啓蒙思想家か?)。その前の巻であった明末清初の西洋科学思想の影響についての言及はまったく影を潜める。すべて中国独自のそれのことである。いまなら“中国特色の”と謂うところであろう。
 この大部の書は、こんにちでも中国の思想史研究の最高峰にして教科書的存在らしい(→こちら)。つまり、現在でも、中国(特色)の唯物論とは、原子ではなく五行(さらに遡れば気)を、この世の全ての物質の構成元素とする思想のことなのである。さらに言葉を足せば、中国という国家は、公式にはこんにちでも原子の存在を認めていないということである。ついで理の当然として、真空の存在も認めていない筈である。これは、驚くべきことだ。

(北京 人民出版社 1956年8月第1版 1958年1月北京第2次印刷)