書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

横山宏章 『素顔の孫文 国父になった大ぼら吹き』

2014年07月30日 | 伝記
 2013年07月17日「孫文 『対駐広州湘軍的演説』」および
 2014年07月22日「孫文の『天下為公』」より続き。

 孫文は10(満8)才からハワイに行くまでの3年間、故郷の塾で伝統的な教育を受けた。内容は「四書五経」。「第1章 広東の田舎育ち」、9頁。記述は陳錫祺編『孫中山年譜長編』また羅家倫編『国父年譜増訂本』に基づくとある。
 そこで『孫中山年譜長編』と『国父年譜増訂本』とを見てみることにする。
 先ず『孫中山年譜長編』上(中華書局出版 1991年8月)。『三字経』『千字文』『幼学故事瓊林』および「四書五経の選読ほか」を習ったとある(「1875(清光緒元年 乙亥)九歳」条、18頁)。意味を説明せずに暗誦だけを強いる教師に抵抗して内容の解説を求めたが拒否され、なんとか自分で探ろうとしたとある。出典は『孫中山的家庭出身和早期事跡』および『孫中山先生在翠亨』『孫逸仙伝記』45-47頁。
 次に『國父年譜』上(中華民國各界紀念國父百年誕辰籌備委員会 1965年11月)。増訂本は入手できなかった。「民國紀元前四十年―清同治十一年,壬申(西暦一八七二年)」条に、「初めて『三字経』と『千字文』とを学び、瞬く間に暗記するも、内容が解らないことに非常に不満を感じる」との記述あり(13頁、七才になっている。出典は林百克『孫逸仙伝記』と羅香林『国父家世源流考』38頁に引く妙清老姑太の談話)。そして「民國紀元前三十七年―清光緒元年,乙亥(西暦一八七五年)」条に、「四書五経を学ぶ」とある。同書16頁、出典は同じく羅香林『国父家世源流考』38頁に引く妙清老姑太の談話と、広東省文献館等三団体主弁『国父文物展覧会特刊』(1946年)中の解説文である。さらに、「民國紀元前三十四年―清光緒四年,戊寅(西暦一八七八年)先生十三歳」条に、「四書五経を畢える」とある。ここの出典は『総理年譜長編初稿』。

 小結。彼は『尚書』を含む四書五経の古典教育を中国で受け、原典を原語で読んでいる。しかしその内容と逐語的な意味をきちんと理解していたかについては疑念が残る。

(岩波書店 2014年4月)

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堀池信夫総編集 『知のユーラシア』 1 「知は東から」

2014年07月30日 | 地域研究
 石川文康「排中律を超えて」および井手義次「西洋近代哲学の形成と中国哲学」に、ノエルとクプレの翻訳が引用されているが、ひどいものだ。意訳どころか超訳の類いである。後者の『大学』「修身斉家治国平天下」の箇所の訳など、誤訳といっていい。

(明治書院 2013年5月)

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高島敏夫 「《天亡[キ]》私考 : 殷周革命論ノート(1)」

2014年07月30日 | 東洋史
 『立命館白川靜記念東洋文字文化研究所紀要』7、2013年7月所収、同誌1-12頁。

 いまはただ勉強あるのみの分野。
 論文中、天室という「天亡[キ]」の銘文中にも見える西周時代の建築物の構造図が引用紹介されている。正方形の屋根の上にさらに円形の屋根が載っかるという、一見奇妙な形をしている。学術用語では「天円地方」というのだが、私的には「上円下方屋」と呼びたくなる。息抜きの余談。

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羅欽順 『羅整庵先生困知記』

2014年07月30日 | 東洋史
 羅欽順

 同書、清朝時代の版本の景印本が大学図書館にあるが、和装帙入りで貸し出し不可、館内閲覧のみ、コピーも駄目ということで、鉛筆を片手に読んできた。いまのところ私には喫緊の書ではなさそうである。先学諸家の研究や解説で目下の用は足りるという意味。たとえば上に引いた維基百科の説明。

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間野英二 『バーブル ムガル帝国の創設者』

2014年07月30日 | 東洋史
 薄いリブレット=小冊子にぎっしりと詰まった中身。

(山川出版社 2013年4月)

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松田宏一郎 『江戸の知識から明治の政治へ』

2014年07月30日 | 日本史
 「第一部第四章 福沢諭吉における知の『分権』」と「第二部第三章 『封建』と『自治』、そして『公共心』というイデオロギー」が、問題とする範囲が私のそれと重なり、具体的に取り上げられる事項が私ときわめて類似しているが、私のそれとは異なるまったく問題意識と議論の前提と論理とであることを、興味深く拝読しつつ確認した。

(ぺりかん社 2008年2月)

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松田宏一郎 「福澤諭吉と明治国家」

2014年07月28日 | 日本史
 苅部直/黒住真/佐藤弘夫/末木文美士/田尻祐一郎編『日本思想史講座』4「近代」(ぺりかん社 2013年6月)所収、同書67-107頁。

 福澤における「均分」もしくは「平均」と、「約束」の概念を鍵概念にした論考。私の福澤を観る場所から言ってそれらが最重要なそれどうかは、直ちには判らないが、重要であることは間違いない。

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桃木至朗 「中世大越(ベトナム)の農村社会に関する比較史的検討」

2014年07月28日 | 地域研究
 秋田茂/桃木至朗編『グローバルヒストリーと帝国』(大阪大学出版会 2013年3月)所収、同書107-134頁。

 中国もそうだが、ベトナムの歴史学は、イデオロギーに束縛されて、相当硬直しているらしい。学校教科書からもそれは窺えた。こちらまたこちら。実証研究が中国より遥かに進んでいないといった印象を受ける。例えばいまだに史料読解に世界史の基本法則を当てはめて解釈してこと足れりとしている感じが。

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森部豊 『安禄山 「安史の乱」を起こしたソグド人』

2014年07月28日 | 東洋史
 個人的な、勝手な見立てだが、菅沼愛語氏と対照もしくは対極的な手法と視角の唐代史もしくは東ユーラシア史かと思える。

(山川出版社 2013年6月)

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伊藤正子 『エスニシティ「創生」と国民国家ベトナム 中越国境地域タイー族・ヌン族の近代』

2014年07月28日 | 地域研究
 様々な事実と、その事実を生み出した諸状況が、様々な角度と意味から言って、非常に興味深い。もとは同源の人々が片や中国でチワン族となり、片やベトナムにおいては、さらに、タイー族・ヌーン族へと二分した経緯。

(三元社 2003年10月)

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