書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

ウィキペディア「概念メタファー」項

2018年01月19日 | 人文科学
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A6%82%E5%BF%B5%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC

 自分のわかる英語版ロシア語版もあわせて覧てみたが(その前に参考文献欄の文献は2件を除きすべて目を通している)、私に言わせれば英語圏以外でのこの理論は核心部に鬆が入っている。これではconceptual metaphorの翻訳概念にすぎない。
 中文版がないのが残念だ。あって、もし内容が日・露語版と同じだったら、「それでは『史記』項羽本紀の「夫搏牛之虻不可以破蟣虱」の比喩のメカニズムは解明できまい」と言うところだ。

この記事をはてなブックマークに追加

藤原敬士 『商人たちの広州 一七五〇年代の英清貿易』

2018年01月18日 | 東洋史
 出版社による紹介

 「序論」の第1節のタイトルが「商人たちの視線に寄り添って」という。そういう発想で書かれている。まあ発想はいいのだが、この語彙と表現を用いる文体で精密な論証は難しいだろうと思ったら、実際できていない。「のようである」「と理解できる」「考えられる」「と言えるだろう」等で文および文章の最後を締め括る思考では、仮説(という言葉が出てくる)は、推論なく、それを支持する確たる論拠なくして、実証されず、推測は推測空想は空想に終わり、その上に立って続く“以下同文”の過程の繰り返しは、すべて無効となる。
 これは史料をふんだんに使ってはいるがあくまで概説書で、研究書ではないのかもしれない。

(東京大学出版会 2017年9月)

この記事をはてなブックマークに追加

箱田裕司/都築誉史/川畑秀明/萩原滋 『認知心理学』

2018年01月18日 | 人文科学
 出版社による紹介

 1昨年院生対象に行った講義・演習テーマの続きで閲読。
 認知心理学自体、disciplineとしては若い分野らしいが、そのせいもあってか、自身および心理学全体としてのschemeやpremiseに疑問を呈しているところが、共著のせいもあろうが相互の齟齬というかたちで現れていて、非常に興味深い。

(有斐閣 2010年6月)

この記事をはてなブックマークに追加

恐ろしい話

2018年01月18日 | 思考の断片
 いま調べ考えているテーマに関して、何年も前に読んで大いに感銘は受けたが内容は自分の頭で消化しきれず、それから寝かしたままにしてあったある大先達の論著を、いまあらためて開いてみると、今考えていることとほとんど同じ方向性で、ときに個別の議論さえ同じところがある。それを見て、自分がようやくそこまで進歩したのか、それとも無意識のうちにその先達の論著をなぞったのかと、恐ろしくなっている。



この記事をはてなブックマークに追加

DennisPeng AmandaLee ‏ @dennispamandal 1月15日のツイートを見て雑感

2018年01月17日 | 思考の断片
  阿扁在和媽媽和朋友聚餐,高歌一曲客家本色影片外流,嗜血的媒體卻大作文章! 結果台中監獄當裁判,不是打分數,而是說:不要將家庭聚會po上網。網友毒舌、外界謾罵讓阿扁病情惡化,扁醫療團隊建議出國治療,沒有意外,又再度遭到刁難! ! 台中監獄又回應說:要讓阿扁總統出國治療,除非棄保潛逃

 上のTW、「po上網」の"po"とは英語postの略だそうだが、その略しようが興味深い。ほかの例としては「po文」とも言うそうだし、poは「貼る」という意味の、漢字をもたない漢語となった感もしくは観がある。漢語のいわゆる「方言」の、漢字をもたない語彙や表現と、同列に扱ってもよいかもしれない。


この記事をはてなブックマークに追加

魯迅の『域外小説集』について

2018年01月16日 | 地域研究
 ある面において、2013年10月02日「厳復 『天演論』「訳例言」」より続く。
この本で同作につき「特殊な文語」という先達(川本邦衛氏)の形容があったので読んでみた。読んでみると、これは文言文ではなくて、私の定義では書面語(当世の新事物の語彙を受け入れた文言文)である。訳文に魯迅兄弟の思う格調高さを求めるのは白話では――少なくとも彼らの当時駆使できた白話では――無理で、だから書面語にしたのだろうと考えた。純粋な文言文では翻訳できないコトとモノがある。
 1909年の初版から十数年後に白話で書かれた周作人の改訂版「序」と合わせ読むと、その書面語の採用もほかに選択肢がなくて仕方なくではなかったかという印象を与えられる。
 その改訂版「序」で、周作人は意識してかせずか、文言文では不可能、書面語でも表現困難な内容(具体的にはこのアンソロジーの作成・編纂・紹介の理由)を、白話文で語っている。いま(1921年)の白話文ならあるいは努力すればできるかもしれない、もしそうならこの書を再版する意義はなくなるとも。


この記事をはてなブックマークに追加

和久希『六朝言語思想史研究 』(2017年9月29日) - 尚書省 三國志部

2018年01月12日 | 
 http://d.hatena.ne.jp/kyoudan/20171006/1507260178

 該書、書名だけ見て昨日図書館で借りてきたのだが、内容は、私が思っていた『六朝(の)言語(と)思想(の歴)史(の)研究』ではなく、『六朝(の)言語(に関する/で書き表された、あるいは書き表されないというかたちで書き表された)思想(の歴)史(の)研究』だった。出版社による紹介を見なかった私が悪い。 …

この記事をはてなブックマークに追加

コトバンク 「文選読み」(其の二)

2018年01月12日 | 人文科学
 2017年12月15日「コトバンク 「文選読み」」より続き。

 金文京先生の『漢文と東アジア訓読の文化圏』(岩波書店 2010年8月)によれば、文選読みに類した漢文の訓読方法(自国語で漢語を解釈しつつ読み下す)は、韓国にもあり、たとえば『千字文』の読み方がそうである由。ただし我が国のそれとは訓・音の順が基本逆で、ハングルによる訓→漢字音となる。同書「第2章ー1 朝鮮半島の訓読」、98頁。
 朝鮮における訓読は新羅時代からあり、その事実を踏まえて金先生は、日本の訓読という漢文の読解形式は新羅から仏教とその経典とともに伝わったものである可能性を、同書において指摘しておられる。

この記事をはてなブックマークに追加

漢語「一步一个脚印儿」 weblio

2018年01月12日 | 人文科学
 https://cjjc.weblio.jp/content/%e4%b8%80%e6%ad%a5%e4%b8%80%e4%b8%aa%e8%84%9a%e5%8d%b0%e5%84%bf

 ロシア語訳で"один след на каждый шаг (обр. в знач.: твёрдым шагом, уверенно, твёрдо, решительно)"と2段階(カッコの前と後)に分けて訳してあるのが面白い。カッコの前は漢語の直訳もしくは漢字のほぼ逐語訳であり、後は、その旨明示してあるように、ロシア語において該当する語彙表現への翻訳である。4種類ある。それを看ていると意訳とはなんぞやということを考えさせられて愉快である。
 このロシア語訳は、一条兼良の『和秘抄』における『源氏物語』に対する注釈と相似している。
 『和秘抄』の注釈は、その内容から、凡そ以下の3種に分けることができる。

 ①兼良の時代には使われない古語を兼良当時の現代語で解釈し言い直す
 ②同じく古代の事物を現代語で説明する
 ③同じく古代の事物を相当する当時の事物に言い換えることで説明に替える。
 (拠ったテクストは中野幸一編『源氏物語古註釈叢刊』2(武蔵野書院1978/12)収録のそれ)

 ①漢語をロシア語で解釈し言い直す(これが直訳に相当):один след на каждый шаг
 ②漢語をロシア語にある語彙(と概念)で説明する:уверенно, твёрдо, решительно
 ③漢語世界の事物の概念をロシア語世界で相当する事物のそれに言い換えることで説明に替える:твёрдым шагом

この記事をはてなブックマークに追加

吉川英治 「田崎草雲とその子」

2018年01月12日 | 文学
 テクストは青空文庫

 昭和七年。戦後の司馬遼太郎「喧嘩草雲」に先行する当作は、題名のとおり、前者にはまったく出てこない一人息子格太郎が、草雲とほぼ同等の主人公となっている。そして司馬作ではやや陰の薄い妻お菊は、話半ばで死没するまで、草雲のかけがえのない伴侶として(これも司馬作ではまったく触れられるところがないが、豪快な草雲と馬の合う彼女の実家の破天荒な兄弟たちとともに)、重要な副主人公であり続ける。

この記事をはてなブックマークに追加