書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

安本美典 『文章心理学入門』

2017年02月22日 | 人文科学
 因子分析法で因子の一つにあげられる比喩がなぜ直喩(だけ)なのか、説明もなく全然わからない。因子は四つ、直喩・声喩(オノマトペ)・色彩語・センテンスの長さ。

(誠信書房 1965年5月) 

佐藤=ロスベアグ・ナナ 『文化を翻訳する 知里真志保のアイヌ神謡訳における創造』

2017年02月22日 | 哲学
 参考:http://www.arsvi.com/b2010/1103sn.htm

 エドワード・サピア『言語 Language』の議論が援用されて出てきたので喜ぶ。第四章および第五章。

 それゆえクローチェが、文芸作品は決して翻訳できないといっているのは至当である。それにも拘わらず文学は現に翻訳され、時には驚くほど適切に翻訳されている。〔後略〕

(みすず書房 2011年10月)

フリードリッヒ・ニーチェ著 塩屋竹男訳 『悲劇の誕生 ニーチェ全集〈2〉』

2017年02月22日 | 哲学
 訳注ありて原注なし。いきなり定義もなしに 「アポロン的なるもの」と「ディオニュソス的なるもの」 の二分法が出てくるのだが、定義はおいおい(きれぎれに、だらだらと)なされるとしても、ギリシア悲劇がなぜこの二分法で捉えられるのかの説明がない。たしかに、自論開陳のためのたんなるダシですな。

(筑摩書房 1993年11月)

秋山真之著 秋山真之会編 『天気晴朗ナレドモ波高シ 「提督秋山真之」と「日本海海戦誌」』

2017年02月22日 | 日本史
 書中とくに説明はないが、「提督」は真之死後の敬称である(彼は中将で死去した)。冒頭「刊行によせて」で福井雄三氏が指摘するとおり、まさしく司馬遼太郎『坂の上の雲』の種本の一つであろう。以下は、個人的にとくに興味を惹かれた箇所。

 提督は部下の将校に対して言葉の綺麗な人であった。軍隊生活をしていれば、部下に対して『お前』『貴様』など呼ぶのが普通であるが、提督は決してそんな言葉は使わなかった。必ず『あなた』と呼び、何を命ずるにも『下さい』をつける。そして仕事をやらしたあとでは大抵『有難う』を言うことを忘れない。 (第三章「提督の晩年」 本書194頁)

 NHKドラマ『坂の上の雲』で、本木雅弘さんがまさにこの喋り方で演じておられたことを想起させる。第七回「子規、逝く」、海軍大学校における兵棋演習のシーン。

(毎日ワンズ 2009年12月)