中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,155話 権限を与えてはいけない人とは

2023年02月22日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「パワハラの定義やパワハラの6類型(厚労省)には該当しないと思うのですが、上司が部下に対してパワハラだと思われる行為をしていて困っています」

これは先日、弊社が公開セミナーを担当させていただいた際に、受講者A氏から聞いた言葉です。A氏は製造業(中小企業)の生産課の課長ですが、役員でもある上司のB部長がA氏の部下のC氏をターゲットに、執拗な行為を繰り返しているとのことでした。

具体的に聞いてみると、B部長はパワハラの定義やパワハラの6類型についての知識は持ち合わせているため、それを踏まえパワハラにはならないと考えられるぎりぎりの行為を繰り返しているようなのです。しかし、それは周囲から見ても明らかな嫌がらせではあるため、C氏も周囲も辟易しているとのことでした。

A氏はこれまで何度もB部長に対してC氏との間を取りなしたり、やんわりといさめたりしているほか、C氏に対してもフォローをしているのだそうです。しかし、B部長がC氏への行為を止める気持ちが全くないため、事態は一向に改善しないとのことです。B部長がA氏の上司でなければ、もっと毅然とした対応をとることもできるでしょうし、B部長が役員でなければ人事部への相談もできることでしょう。しかし、A氏が勤めるのは中小企業であり、人事部=役員という組織のため、それも叶わないようでした。

弊社では「パワハラ防止研修」を担当させていただく際には、パワハラ解消に向け対応してもなお改善しないときには、加害者の行為を撮影したり録音するなど、パワハラの事実を収集しておくことの重要性について話をしています。しかし、冒頭の例ではB部長はパワハラに関する知識を承知の上で、パワハラに抵触しないぎりぎりの行為を繰り返しているため、「事実の収集」は残念ながらあまり役には立たないように思えます。

このような状況をふまえると、そもそもこの会社はなぜB部長のような人を役員にしたのかという思いを持たざるをえません。

もちろん、人は誰しも「様々な顔」を持ち合わせています。B部長は、自分よりも上の立場でさらに権限を持つ人に対しては「好い顔」をするのではないかと思いますが、立場が下の人に対してパワハラ的な行為をする人は、人事権を持っているような上司に対しては良い顔を見せ、一方の部下に対しては別のマイナスの顔を見せることが少なくないのではないでしょうか。

以前、私はある組織で管理職昇格者をアセスメントする際の面接官を担当したことがあります。一次の筆記試験をクリアして管理職候補者として二次試験に臨んだ人の面接を担当したのですが、実はその人は日頃からパワハラを繰り返している人だったのです。しかし、面接においては質問に対し簡潔明瞭に受け答えをし、いかにもリーダーシップがありそうで管理職としての能力が高そうだと見受けられる人でした。面接の受け答えからだけでは、パワハラをしているとは想像もつかなかったのですが、後になってその話を聞き、改めて人間にはいろいろな顔があるものだと感じざるをえませんでした。

そのように考えると、ある人を人の上につける、例えば管理職に昇格させる際には、仕事の成果のみならず、同時にその人の「人間性」をも確認することが重要だと思わざるをえません。もちろん、その人の人間性を確認するということは決して簡単なものではありませんが、その結果として部下を傷つけるだけでなく、結果として組織にも損害を与えるような事態は絶対に避けなければなりません。人を傷つけることに疑問を持ったり、人の痛みを感じられない人間ではないか時間がかかってでも確認することが必要です。たとえ一般的にはパワハラにならないとしても、それに類する行為はされた人に必ず痛みを与えるものであり、その痛みを感じられないような人には権限を付与してはいけないとあらためて申し上げたいと思います。

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第1,154話 腕組みをするときの心理とは

2023年02月15日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「たくさんの聴講者が腕組みをしていたので、話をしていてとても辛かった」

これは私の知り合いの研修講師が、先日ある企業で管理職を対象に対面で講演をしたときの、受講者の態度についての感想です。受講者は課長や部長を中心に70名ほどだったそうですが、およそ半分の人が腕組みをしていたり、少々ふんぞり返ったような姿勢で椅子に座っていたりしたため、警戒心や威圧感のようなものが感じられ、非常に話しづらかったとのことでした。

 人の話を聴いたり接したりする際に、このように腕組みをする人が少なからずいますが、皆さんはいかがでしょうか?

それでは腕組みをするのは、どういう心理状態のときなのでしょうか?様々な理由があるかと思いますが、まず考えられるのは相手を警戒しているときや拒絶したいとき、自分を強く見せたいときなどがあります。ほかにも、自分を強く見せたいということもあるかもしれません。中には腕組みが癖になっていて、無意識にしている人もいることでしょう。

日本では大手の企業に限らず、新興の企業であっても、また外国の企業であっても、年齢にかかわらず社長が腕組みをしている写真がホームページに使用されていることが少なくありません。これはまさに「自分を強く見せたい、自信があることを伝えたい、自分をアピールしたい」ことの現れなのだと思います。そして、私のこれまでの経験からすると、腕組みをする人はどちらかというと女性より男性に多いように感じています。

 このように、腕組みをする際の心理について私は以前から疑問に感じていましたので、先日臨床心理士として50年にわたり活躍されている知り合いにその点を尋ねてみました。それによると、腕組みをする人の心理には、ずばり相手への「防衛」があるとのことでした。防衛する気持ちが働く結果、自分を強く見せたいときや相手を拒絶したいときに腕組みをすることになるのだそうです。

 そう考えると、先述の知り合いが講演会の講師を担当した際に、多くの管理職が腕組みをしていたのは「自分を指名したりしないように」、「自分たちのような管理職という立場の人にわざわざこのような話を聴かせるなんて時間の無駄だ」というように、研修を少々ネガティブに捉える中で防衛本能が働いた結果なのかもしれません。

反対に、たとえば入社試験の面接に臨むときや営業パーソンが顧客と面談するようなときには、結果を得るためにも自ら積極的に取り組むことになりますので、腕組みをするようなことはまずないと思います。

研修に携わる者にとっては、いかにして「受講者が腕組みをしない」ような研修を行うことができるのかが、大きな課題と言えるのかもしれません。

たかが「腕組み」されど「腕組み」。腕組みをすることが多いなと思う人は、一度自分はどういうときに腕組みをするのか、そのときの自分の心理状態を探ってみていただきたいと思います。

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第1,153話 「どうする!」現状維持バイアスを克服するためには

2023年02月08日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

ご存じのとおり、2023年のNHK大河ドラマは「どうする家康」です。徳川家康は江戸幕府を開いた初代将軍であり、どっしりと構えた威厳のあるイメージを持っている人が多いのではないかと思いますが、そのイメージからすると「どうする」は少々意外に思えるタイトルかもしれません。

これまで既に5回放映されていますが、そこに登場する家康はたびたび直面するピンチに頭を抱えて悩み、家中の者を頼ったり、挙句には逃げ出してしまうこともあったりと、どうにも頼りない存在であり、上記のような家康像とは大きく異なります。脚本家の古沢良太氏によると、頼りない家康から天下人へとどのように成長していくのか、そこがこのドラマの見所だそうです。

古今東西、人は生きていくうえで絶えず様々な局面に遭遇し、その都度判断や対応を迫られています。まさに「どうする」の連続なわけですが、そうしたときにどのように対応するのか、そこでその人の人間性や器の大きさが問われるわけです。

以前、ビジネスの世界で独立して仕事をし成功している人達に何か共通するものはあるかについて数人でディスカッションをしたことがあります。そのときに多くの人が言った一つに、「決断のスピードが速い、行動に移すのが早い」ということがありました。確かに私の周囲でも、多くの成功者は「先延ばしにする」ことがほとんどないように感じます。メールの返事一本にしても、クイックレスポンスです。

さて、誰もが知っているビジネスの成功者の一人に、ソフトバンクの孫正義氏がいます。私は以前、同社の社長室長として孫氏のもとで働いた経験を持つ三木雄信氏の講演を聞く機会がありましたが、「孫氏はとにかく意思決定や行動のスピードが速い」と話されていました。

もちろん、成功のためポイントとして「即」決断し行動に移すことはとても重要なことだと思いますが、しかし同時に、それは決して簡単なものではないはずです。成功に向け決断と行動の必要性はわかっていても、その前の情報収集だけで満足してしまって、結局その先にはつながらないということも少なくないわけで、かほどに迅速な決断と行動とは難しいものなのです。

さらに、私たちが意思決定を迫られる多くの事柄において、メリットと同時にデメリットも引き受けなければならないような状況が少なくないのではないかと思います。いわゆるトレードオフを迫られるわけですが、そうなるとますます決断は困難となり、わざわざデメリットを引き受けるよりは現状を維持したほうが良いという「現状維持バイアス」が働くケースが出てくるのです。 しかし、当然ながらこの現状維持バイアスが働いている限り状況は今とは大きく変わらず、大きな成功もおぼつかないということにもなってしまうのです。

それでは、私たちが「どうする」と決断を迫られた場合、先延ばしや現状維持バイアスを克服するためには、どうすればよいのでしょうか。あらゆる情報を得たうえで、それでもなお判断に迷ったときには、勇気をもってあえて変化を取るという選択も大切だと私は思うのです。現状維持より変化を選択することはリスクも想定され、大変なエネルギーがいることです。しかし敢えてそれをすることによって、「どうする家康」のように世界が広がっていくのではないでしょうか。

もちろん、これは大変に難しい問題で軽々にどちらと言えるものではありませんが、家康が数々の「どうする」においてどう決断し行動するのか。それを通じて成長していく姿を見られるとともに、何らかのヒントが得られることも楽しみにしています。

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第1,152話 「楽しい」と感じられ成果も上がる指導法とは

2023年02月01日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

本日(2月1日)の朝日新聞の朝刊はスポーツ面と教育面の2面で、暴力による運動部活動やスポーツ指導を取り上げていて、行き過ぎた指導が今も続いているとのことです。私自身も自宅の近隣の公園を散歩しているときに、野球の試合を終えた少年を前に監督と思しき人が試合中のプレーを問い詰めている場面に出くわしたことが何度もあります。そのような場面に遭遇すると、私自身が問い詰められているわけでもないのに居たたまれないような気持になり、足早にその場を立ち去っています。

なぜスポーツの世界で行き過ぎた指導が起きてしまうのでしょうか。原因は様々あるのだと思いますが、その関連で1月28日の朝日新聞では、「脱スパルタ」指導で春の選抜高校野球大会に12年ぶりに出場する東北高校のことが取り上げられていました。

かつてプロ野球の巨人軍でプレーした佐藤洋監督が丸刈りをやめる、アップ練習のときは部員の好きな曲をスピーカーで流す、練習メニューは各ポジションのリーダーらが自ら決める、ジャンピングスローを解禁した、練習風景をインスタグラムに投稿するなど、「楽しい野球」を大事にした指導を行っているそうです。

このように具体的に指導を変更したのは、自身の「怒られるのが当たり前」の指導を受けてきて「楽しいわけがなかった」経験を踏まえているのだそうです。厳しい指導に耐え抜くのではなく、野球を始めたころの楽しさを取り戻すということがねらいとのことです。

「怒られるのが当たり前」のような指導はスポーツに限ったことではありません。こうしたネガティブな指導による恐怖感によって取り組ませるのではなく、「楽しい」と感じさえる指導は、とても大切なことであり、同時に合理的であるとも思うのです。同じ時間でも楽しいと感じているときの方が有意義に感じられるわけですし、その反対もしかりです。

実際に「楽しい」と感じているときには、幸福物質であるドーパミンが出ていると言われています。ドーパミンは意欲や動機・学習に重要な役割を担っていて、仕事や勉強、スポーツを楽しんでやることによりドーパミンが分泌され、モチベーションがアップしてさらに意欲的に取組もうとするのです。

私は、仕事においても同様のことが言えると考えています。たとえば、上司が部下の指導する際に檄を飛ばしても部下がなかなか伸びない、成長しないとしたら、一度自身の指導を振り返ってみることが必要ではないかということです。

以前、ある企業で上司が部下の営業パーソンに一人ずつ顧客の訪問件数を発表させ、訪問件数を少ない人を叱咤する場面に居合わせたことがあります。その後、叱咤された営業パーソンは顧客への訪問件数こそ増えたものの営業成績は上がることはなく、やがてはやる気を失い結局は退職してしまったそうですが、これでは本末転倒です。

もちろん、「楽しい」と感じさせることだけを指導の目的にしてしまっては、スポーツでも仕事でも結果に結びつけることはなかなか期待できないわけです。しかし、少なくとも「楽しくない、面白くない、逃げたい」という気持ちからは、決して良い成果は生まれないということなのではないでしょうか。

このことは、弊社が提供している研修やセミナー、コンサルティングにおいても同様です。今後も「楽しい」と感じられ成果も上がる指導法を目指してしていきたいと考えています。

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