中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,101話 「知っていることばかり」はなぜ残念か

2022年02月27日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

研修終了後のアンケートで、たまにですが「講師の話は全部知っていることだった。もっと新しいことが聞きたかった」というコメントをいただくことがあります。30名以上が参加する公開セミナーの場合、それはほとんど毎回と言って良いでしょう。こうしたコメントをいただくと、私は講師として大変残念な気持ちになります。

この話を知り合いの研修講師にしたところ「たとえ知っていることでも学ぶ姿勢があれば自分のためになるはずです。それをしない人がいても残念に思うことはありませんよ」と少し憤慨した様子で言いました。

たしかにその通りです。ただし、私が残念に思っている理由は受講者を「救ってあげられなかった」からです。「知ってるよ、そんなこと!」と書く受講者のほとんどは(知っているけど)実行していません。「講師の言っていることは全部職場で実行しているので、違う話を聞きたかった」ではなく、ただ「知っている」と言いたかっただけなのです。

講師が伝えたことを実践すれば、仕事は多少なりと改善します。実践しなければそれはありません。つまり、知っていようが知っていまいが、仕事には何の影響も与えないのです。

実際、「知っている」のに実践できないとすれば、手の打ちようがありません。たとえば、机の上に置いてあるコップが倒れて水がこぼれてしまったとします。すぐに雑巾で拭き取らないと書類やキーボードが濡れてしまいます。そのとき「雑巾で拭けばいいんでしょ。知ってるよ!」と言って傍観していたらどうなるでしょう。

無知な人と知識のある人の境界には実践というラインが引かれています。そのラインを超えない限り知識は役に立ちません。それは、仕事でも全く同じことなのです。

「知っているけどやらない」・・・私はこういう考え方をする人のお力にはなれません。だから、残念な気持ちになるのです。いや、むしろ可哀そうに思ってしまいます。

ひとつだけ方法があるとすれば、「実践したいけどできていない。どうすれば良いのか?」と講師に質問してください。その時は必ず「実践できない理由」を述べてください。とはいえ、私が今までに経験した範囲ですが残念ながら「できない理由」のほとんどは「したくない理由」でした。その場合は大変申し訳ないのですが、なす術がありません。

そして「もっと新しいことが聞きたかった」という方には、関連する書籍をご紹介します。さらに知識を増やすことができるでしょう。

知識が増えることで満足されるならば受講した意味があったと言えるかもしれません。

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第1,100話 「いただく」と「くださる」の使い分けを改めて考えてみる

2022年02月23日 | コミュニケーション

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

新入社員フォロー研修や、入社してからの経験年数が少ない若手社員を対象にした研修を担当させていただく際に、必ずと言ってよいくらい受講者から挙がるのが、敬語の使い方の難しさです。敬語をはじめとして言葉遣いについては、新入社員の研修の際にも練習をしているはずですが、実務についたからこそ感じる疑問がたくさんあるようです。

疑問の具体的な内容を聞いてみると、「敬語を使い慣れていないと、こんな細かい点まで疑問に感じるのか」というような微笑ましいものから、完全に間違っているものまで実に様々出てきます。そういうときには、「間違ってもよいからどんどん使ってみることで、一つずつ身に付けていくこと」がいかに大切なのかということをあらためて認識することが多いのです。

しかし、社会人歴が40年近くなってきた私自身も、最近改めて使い分けが難しいと感じるものがひとつあります。それは「いただく」と「くださる」です。たとえば、「ご連絡をいただきありがとうございました」と、「ご連絡をくださりありがとうございました」とするのと、どちらが適切な表現なのかということです。

これまで様々な人から受け取ったメールを改めて確認してみると、このような場合には「くださる」よりも「いただく」を使う人の方が圧倒的に多かったのですが、では実際のところ、どちらが適切なのでしょうか。私自身は、これまで「いただく」は「もらう」の謙譲語、「くださる」は「くれる」の尊敬語であるという程度に考えていました。そのため、どちらであっても相手に対しては少なくとも失礼な表現ではないのではないかという程度に考えていましたが、この際もう少し明らかにしてみたいと思い、いろいろと調べてみました。

まず、文化庁日本語国語研究所の 『日本語の研究』第3 巻2 号2007 .4,1〔研究ノート〕「〜てくださる」と「〜ていただく」について 金澤裕之 によると、以下のとおりです。

「いただく(もらう)」は自分が相手にしてもらうのであり、 「くださる(くれる)」は相手が自分にしてくれるのです。行為の主体が逆になり、 行為の方向が反対になります。自分なのか、相手なのか、どちらを行為の主体として表現するかの違いということです。

また、「近年「OC (=相手) が、△ △ していただく」表現が好まれつつある背景には、こうした状況において心理的に「~てくださる」が使いにくくなっているため、それに代えて「~ていただく」を使用することにより、自身の側で感じる「ありがたさ」だけに焦点が当てられて相手側と直接関わる(意識を持つ) ことなく事態を終了させることが可能となるというところに、問題のポイントがあるのではないかと推測される」ともありました。

上記によれば、主語を相手とする行為の場合は、「くださる」が正しいわけですから、「ご連絡をくださり、ありがとうございます」が正しいということになります。しかし、「ご連絡をいただき、ありがとうございます」であっても、それを受け取った人が不快な気持ちになるわけでもないと思いますし、「くださる」「いただく」のどちらを使っても相手に対して失礼にあたることはないのではないかと私は考えています。

つまりは、あるべき姿や正しい使い方を把握することはもちろん大切ですが、要は状況に応じて適切に使い分けることが一番大切だということなのではないでしょうか。

とはいえ、実際のところ「状況に応じて適切に使い分ける」ことこそが、実は一番難しいのかもしれません。そのためには、少しずつでも構わないので一つ一つの事柄をしっかり意識して、きちんと選択して使い分ける練習が必要です。まずは、前述のような身近な言葉遣いからトライしてみるのはいかがでしょうか。

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第1,099話 「できる部下」に育てる方法

2022年02月20日 | 研修

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社長は「できる役員」が、役員は「できる管理職」が、管理職は「できる部下」が欲しいというのが何よりも望んでいることでしょう。かなり前のことですが、ある会社で係長研修の打合せをしているときに、人事部長から「うちの社員はあまりデキが良くないから、なんとかできる社員にしてほしい」と言われたことがあります。私は「”できる”の定義は何ですか?」と聞きたかったのですが、できませんでした。同じ質問をされたときの答えを明確に持っていなかったからです。

その後「できる社員」にはどんな特徴があるのかを調べてみました。Webサイトはもちろん、書籍やインタビューなどを通じて「できる」を追求しました。その結果、できる社員は概ね次のような特徴を持っていることがわかりました。

1.率先して動く
2.レスポンスが早い 
3.メンタルが安定している
4.論理的である
5.納期意識がある
6.集中力がある
7.向上心がある
8.忍耐力がある

これらの特徴はどれも納得できるものでした。何年か後、前述の人事部長にこのキーワードを見てもらいました。すると「こんな社員・・・いや人間なんていないよ」と笑われてしまいました。彼が言う「できる社員」とは「成果を上げる社員」とのことでした。

要は、いかにレスポンスが早かろうが、論理的であろうが、向上心があろうが「関係ない」ということです。営業ならたくさん売る、開発なら新製品を作る、経理なら正確な数字をまとめるのが「できる社員」の定義です。

一見、納得できそうです。しかし、お気付きのことと思いますがこれは「原因と結果」を逆にしています。私は上記の8つの特徴は「生まれつき」に依るものが大きいと思っています。とはいえ、いずれも最初からはっきりとしていることはなく「どちらかと言えばそういう傾向がある」といった感じではないでしょうか。

できる社員を育てようとするならば、部下の「良い特徴」を見つけて伸ばすことです。そのためには部下を正しく観察することです。観察と言うと小学校の理科のような感じがするかもしれません。しかし「観る」とは視覚に限らず広く、感覚を働かして、探りとらえること、「察する」とは(人の心中や物事の事情を)おしはかる、おもいやる、同情することです。観察することは大変手間のかかる作業です。

「できる社員」を育てたいなら手間を惜しんではいけません。さっそく明日から部下を観察してみてください。

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第1,098話 自己啓発意欲と仕事の成果の関係

2022年02月16日 | キャリア

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「自己啓発意欲が高く熱心に取り組んでいる人は、仕事の成果も上がっているのではないか」と私が思うようになったのは、今から20年以上前のことです。人材育成の仕事をするようになって早30年になりますが、様々な企業で研修を担当させていただいたり、研修のご担当者と打ち合わせをしたりする中で、上記のように考えるようになりました。

自己啓発と仕事の成果との間には本当に因果関係があるのか、一度しっかり調査をしてみたいと考えたのですが、そのように意気込んではみたものの、実際に調査に取り組もうとしたところ、仕事の成果とは何を基準に考えればよいのかなど様々な壁が立ちはだかり、調査・研究を断念した経緯があります。

それから10数年が経過しましたが、近年では企業の教育訓練投資の重要性がますます話題になってきています。先日(2月15日)の日経新聞の記事(「従業員への教育訓練投資」)によると、内閣府が「過去1年間に語学や業務改善につながる学習、資格取得をした人の年収を調べたところ、学習をしなかった人に比べ30~40万円ほど高く、具体的には正規雇用で44万円、非正規雇用で29万円の差があった」とのことです。以前から私が感じていたことがこれで裏付けられたものと思っています。

では、実際に自己啓発に取り組んでいる人はどれくらいいるのか調べてみたところ、厚労省が毎年行っている「能力開発基本調査」によると、令和2年(2020年)度に自己啓発に取り組んだのは「労働者全体」では32.1%であり、「正社員」で41.4%、「正社員以外」で16.1%とのことです。自己啓発を行った平均延べ自己啓発実施時間は「労働者全体」では40.7時間であり、「正社員」の41.8時間に対して、「正社員以外」は35.8時間と少なくなっています。正社員の年間の受講時間は41.8時間というのは、1日当たり僅か6.9分、週にして1.5時間弱(48.3分)ということになります。

因みに、10年ほど前の平成21(2009)年度の同調査では、自己啓発を行った人は正社員では42.1%、正社員以外では20.0%であり、ともに前年度を下回ったとあります。この数字から、10年前と比べ自己啓発時間が減少していることがわかるわけですが、10年前ですら少ないと考えていたのに、さらに減っていることに驚きました。

同調査によると、「自己啓発における問題点」の内訳で最も多かったのは、正社員では「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」(54.7%)だったそうですが、この理由自体も10年前から変わっていません。この事実には私もちょっと驚きを隠せなかったのですが、皆さんはどのように感じられたでしょうか。

コロナ禍により、仕事も生活環境も大きく変わりましたので、今後のこの調査の結果は変わっていく可能性もありますが、今後組織と個人の関わり方が大きく変化し、自己選択と自己責任の重要性がますます高まっていくと考えられる中で、自身の能力をどう上げていくのか、そのために私たちはどのように自己啓発を行うのかはとても大きな課題になっていくはずです。

「忙しい」を理由にすることなく、一人一人がどのように取り組んでいくのか、今後これまで以上に問われることになりそうです。そうでなければ、社員個人だけでなく組織そのものも世界の中でだんだんと取り残されていってしまい、やがては取り返しのつかないことになりかねないのではないかという気がしています。

いかに自己啓発を行える環境を作り実行するか、このことが社員自身と組織の今後の成長のカギになるのではないかと考えています。

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第1,097話 MBWAは有効な管理手法だが・・

2022年02月13日 | 研修

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MBWA(Management By Walking Around)とは直訳すれば「歩きまわる管理」ですが、「現場をぶらぶら歩きまわりながらマネジメントすること」という意味です。私がこの言葉に最初に出会ったのは、MBWAをポリシーにしている会社に中途入社したときでした。

もちろん、管理者がただ社内をぶらぶら歩き回っているわけではありません。管理者の手が空いたら現場に行って、そこにいる人たちから色々な話を聞くという感じでした。そうすることで、ちょっとした問題の芽を摘んだり、良いやり方を見つけたりすることができます。MBWAは非常に有効な管理手法と言えるでしょう。

ただし、MBWAがきちんと機能するためには、「管理」と「現場」がお互いに信頼し合っていることが大前提となります。両者に信頼関係がなければ、管理者はただの「歩き回る厄介者」、ゾンビみたいなものです。面倒なことは隠され、かえって問題の芽を大きく育てることになります。

ここで注意しなければならないのは、「信頼」は「依存」ではないということです。現場の社員が管理者を頼るのは良いことなのですが、問題を丸投げするのは厳禁です。

現場にふらりと現れた管理者を「待ってました」とばかりに取り囲んで、「忙しいので人手を増やしてください」、「機械が古いので新しくしてください」、「AさんとBさんは仲が良いので同じチームにしてあげてください」等々、管理者に一方的に要求する。それを管理者が、信頼関係の証(あかし)とばかりに受け入れるとしたらどうなるでしょう。

管理者が職場の不満の代弁者となり、組織そのものが崩壊してしまいます。また、もし管理者が要求に対して「ノー」と言ったら、現場は管理者を味方ではない、つまり敵だと認識することもあるでしょう。

MBWAは一見楽そうに見えて、とても難しい管理手法です。管理者と現場の社員、双方が管理(マネジメント)とは何かを十分に理解しておかなければなりません。管理者は管理される側から、現場の社員は管理する側からの「視点」を知ることが必要です。現場で起こる問題を「双方向」から見ることで、一方的な依存関係は生じにくくなります。

最終的に、現場が管理者を一緒になって問題解決をおこなう「共同解決者」として受け入れることができれば、MBWAは大きな効果を生み、信頼関係はより強固になっていきます。

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第1,096話 断捨離すべきはモノだけではない

2022年02月09日 | 研修

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東京都の2021年10月の調査によるとテレワークの導入率は55.4%で、週3日以上実施している企業は48.7%とのことです。

新型コロナウイルスの感染拡大により一気に導入が進んだテレワークですが、早や3年目に入ろうとしています。テレワークは、もともと働き方改革の一つの手段として注目されてはいましたが、感染の拡大を受けて多くの組織が一斉に導入に動いたのは記憶に新しいところです。

テレワークの功罪については既に様々語られていますが、通勤時間の解消をはじめとしたメリットを感じている人や組織が多いようです。逆に、導入当初からテレワークのデメリットとして1番にあげられているのが、情報共有の難しさ、部下の育成などコミュニケーションに係るものであり、それは現在でも続いています。

多くの企業では、オンラインを通じて社員同士の接点を増やし上司と部下で面談したり、デジタルツールによる情報共有を図るなど、コミュニケーションの不足を補うように工夫をしていますが、問題の解消は簡単ではないようです。

その結果、問題が発生するとコミュニケーションや情報共有の不足を補うために、次から次へと立て続けに報告を求める例が少なくないだけでなく、それをルール化している組織も多いように聞いています。

先日弊社が担当させていただいた研修でも、多くの受講者からテレワーク時の報告の煩雑さについての話がありました。詳しく聞いてみると、「様々な場面で、一日のスケジュールから始まり終業に至るまでの業務ごとの報告が求められる。しかし、それらはルールに基づいており対応しなければならないものであるため、報告に始まり報告に追われているような1日になってしまっている」とのことでした。

このように報告事項が増えた理由としては、前述のようにコミュニケーションの増加、情報共有、部下の育成、仕事の生産性の向上などを考えてのことでしょうが、そうは言っても報告すること自体が目的になって業務の生産性が下がってしまっては元も子もありません。さらにこの受講者によると、報告をきちんと行ったとしても、上司からのフィードバックは残念ながらほとんどないのだそうです。もしかすると、それはあまりにも報告が増えてしまった結果、それを受ける上司自身もフィードバックをする余裕がなくなってしまっているのかもしれません。

テレワークが導入され3年目に突入した今、テレワークにあわせて導入した様々なルールについて、その結果何らかの問題などを生じさせていないか、生産性の向上の阻害要因になっていないか、一度見直しをするタイミングに来ているのかもしれません。徹底的に見直し、ルールの断捨離を行い、不要な報告などは止めるなどの検討をされることを、ぜひお勧めします。断捨離は不要な「モノ」を捨てることですが、ぜひこの機会に不要な「ルール」についても断捨離してみてはいかがでしょうか。

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第1,095話 QCはオワコンか?

2022年02月06日 | 研修

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QC(Quality Control)とは品質管理を指す言葉です。50代後半で製造業に勤務経験のある方はQCサークルを思い出すかもしれません。QCサークルというのは、現場で自主的に作業の改善を行う少人数の集団活動のことです。

1980年代の日本の製造業ではQCサークルは非常に活発でした。おおよそ「係」に1つはあったように思います。自主的な活動とはいえ、職場のメンバー全員参加というのが「常識」でした。私もQCサークルのリーダーやQC大会で発表をした経験があります。

QCサークルは90年のバブル崩壊とともに下火になり多くの企業から消えていきました。さらに今世紀になると、勤務時間外のQC活動は「自主的」とはいえ無給の労働と見なされるようになり、ほぼ消滅したようです。

もともと品質管理とは製品やサービスを作り上げ提供する際に、目標とする品質が備わっているかを検証して保証することです。日本の製造業では品質保証部(品質管理部)という部署または「仕事」は必ずあります。そうした組織的な品質への取り組みが「メイド・イン・ジャパン」を世界的な信頼の証にまで持ち上げたことは間違いありません。

さて、現在組織としての品質保証部はしっかりと仕事をしていますが、それ以外の部署、特に間接部門においては品質という概念がかなり失われてしまったように思います。品質保証の考え方に「後工程はお客様」というものがあります。要は、自分たちの仕事はそこで完結するものではなく、後に待っている「お客様」に成果をお渡しすることなのだ、というわけです。

たとえば工場ならば、部品の調達部門にとって製造部門という後工程が「お客様」になります。製造部門の中でも、部品加工なら後工程の組立てが、組立てにとっては検査が、検査にとっては物流が「お客様」です。お客様に提供するものですから、粗相があってはいけません。しっかりと「品質」を作り込みましょうという考え方です。

今世紀に入りQCサークルが消滅するにつれ、マーケティングや営業といった非製造部門からこうした品質に対する考え方も薄れていきました。しかし、改善活動としてのQCサークルが無くなっても、品質という会社にとって大切な考え方まで無くなってしまうのは非常にな危険ことです。

ある大手企業のマーケティング部門では、海外に販売する製品の価格を決定する際に、現地の代理店にあまりヒアリングせず、経営計画に沿った利益率だけを重視していました。同時に経理部門がはじいた為替の変動リスクなども考えていなかったのです。その結果、現地法人の売上が大きく変動したり、為替が乱高下したりするたびに、製品の品切れや過剰在庫といった「症状」に振り回されていました。

問題はそうした「症状」に対していつも対症療法で臨んでいたことです。ちょうど「歩いていたら転んで膝を擦りむいたので絆創膏を貼っておこう」を繰り返しているようなものです。本来は「なぜ転んだのか」を解明して「靴を変えよう、足腰を鍛えよう」といった対策を打ち出す必要があります。マーケティング部門が、エンドユーザーに製品が渡るまでの流れを品質管理という視点から見ていれば、多少の短期的な損失があっても会社としては長期的な利益を得ることができたはずです。

QCサークルはオワコン(終わったコンテンツ)かもしれませんがQC(品質管理)はますます重要度を増しています。今のような経済の停滞期にこそ、しっかりとQCの考え方を全社員に身に付けさせてください。

それが会社を発展させる原動力に必ずなります。

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第1,094話 組織の断トツ一位として挙げられる問題

2022年02月02日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

弊社ではこれまで問題発見・課題解決研修を何百回と担当させていただいてきましたが、官民問わず、業種業態を問わず、断トツの一位として挙げられる問題があります。

それは何だと思われますか?

答えは、「情報が共有されていないことによる問題」です。いうまでもなく「情報」はとても大切な経営資源の一つであり、これによる弊害は様々な形で表出するのですが、いずれにしても真の原因として考えられるのは「情報がきちんと共有されていない」ことに尽きます。

たとえば、様々な企業における不祥事の報道を見聞きすることがよくありますが、それらも本をただせば「情報が共有されていない」ことで起こったものが大半ではないかと考えられます。

近年、この情報共有するための方法としてクローズアップされているのが、デジタル化です。実際、大なり小なりデジタルツールを導入している組織が多いと思いますが、それではデジタルツールによって情報の共有は進んだのでしょうか?また、デジタルツールの導入によって組織の不祥事は減ったのでしょうか?

私がコンサルティングや研修を担当させていただく企業を見ている限り、残念ながらデジタルツールを導入しても、結局のところ情報の共有に関して目に見えるような効果が出ているところは少ないと感じています。

さて、それではどうして情報共有が進まないのでしょうか?理由は様々あると思いますし、既に語りつくされている感もありますが、私は一言で言うと「共有するメリットを感じない」人が少なくないということではないかと考えています。具体的には、「情報を共有したことによって怒られた経験がある、一方的に提供ばかりしていて享受するものがない、共有するルールはあっても面倒であるため優先順位が低い」などにより情報の共有への意識が低くなってしまうのではないかと考えているのです。

実際に、これまで様々な組織を見てきて感じるのは、共有すべき情報を決めたり、その方法を皆で考えたりしてもなかなか簡単には進まないようです。積極的に情報共有をしようと人がいる一方で、そうでない人がいるのも事実です。また、一度メンバー間で共有した情報であっても、時間の経過とともに記憶が薄れるなどで結果的に共有されなくなったり、ルール自体が忘れ去られたりすることさえあります。

そうすると共有したはずの情報に従わない人(仮にA)が出てきてしまい、それを発見した人(仮にB)が「○○については一年前に相談して△△で行くことに決まったよね」と注意しても、一方のAは「全く覚えていない。そんなことあったけ?」というように、勝手な行動をとったりしてしまうのです。

それでは、継続的にきちんとした情報共有を続けていくためには、どのようにすればよいのでしょうか?

これまでの私の経験から考えるのは、まず「情報を共有すること、し続けることはそもそも容易なものではない」という前提に立つことが肝要ということです。その前提に立ったうえで、特に共有しないとリスクを伴うような情報に関してはその都度繰り返し繰り返し、また複数の手段を使用して伝え続ける。これしかないということです。もちろん伝える側からすると、これには大変なエネルギーが要りますし非効率なことのようにも思えますが、情報が共有されなかった結果発生してしまう弊害の大きさを考えれば、これを進めるしかないと思うのです。

組織に2人以上の人が存在すれば、考え方はおのずと異なるはずです。それを踏まえ、対面で仕事をしようがテレワークであろうが、情報を共有するためにはトップの明確な意思と継続的な努力が必要だということをしっかりと意識したうえで、取組んでいくことが求められていると考えているこの頃です。

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