人材育成社のブログ

 人粒を実らす人材育成の日々
(一粒=ひとつぶ)

能力は使わなければ低下して行く

2016年08月31日 | コンサルティング

皆さんは、英会話スクールで英語を学んだことがありますか?最近は、管理職昇格要件にTOEICの点数を課したり、社内会議の「公用語」を英語にする企業も出てきました。企業側も、社員が通う英会話スクールの授業料を補助したり、終業後に社内で英会話の授業を行ったりするなど積極的に支援するようになってきました。

さて、英会話スクールに通われたことのある皆さん、その成果はいかがでしたか?もともと英語がある程度できた人は別として、あまり得意ではなかった人はどのくらい上達したのでしょうか。

私の知る限りですが「外国人との商談が何不自由なくできるようになった」という方は、ほとんどいませんでした。多くの人は「使ったお金の割には上達しなかった」ということでした。

考えてみれば、これは仕方のないことです。日本で生活し続ける限り、英語を使うことはそう多くないからです。たとえ会社の会議で英語を使ったとしても、会議が終われば同僚や部下、顧客、取引先とは日本語で話します。もちろん、家の中での会話は言うまでもありません。

当たり前のことですが「能力は使わなければ低下して行く」のです。

企業の研修で学ぶ様々なスキルや知識についても全く同じことです。

研修で身につけたものは、仕事の中で繰り返し使い続けなければなりません。使い続けることでようやく研修の成果が出てくるのです。

私たちがこうしたことを口にすると、一部の人たちから反論が来ます。ある会社の営業課長のAさんに、次のように言われたことがあります。

「この忙しい時に、うちのT主任を研修に出せって人事が言ってきたんで迷惑してるよ。あなた達みたいな研修屋さんに文句言っても仕方ないけどさ。T主任が2日も抜けると、うちの課の売上に影響するんだよ。その損失の分を穴埋めできなかったら、あなた達が弁償してくれるの?だったら良いんだけどね。やれやれ。」

最初から研修の成果どころか、研修の存在自体を否定してかかっています。これではまったく時間とお金の無駄です。

研修の成果は、上司であるA課長がT主任から「引き出す」ことでしか得られません。少なくとも研修が終わって職場に戻ってきたら「どういう知識を身につけたのか。それを仕事の中でどうやって生かしていくのか」を部下に真剣に問いかけなければなりません。それが上司の仕事であり義務です。

さて、ちなみにA課長は一時期熱心に英会話スクールに通っていたそうです。先ほどの「使ったお金の割には上達しなかった」というセリフもA課長のものです。

「能力は使わなければ低下して行く」ことを身銭を切って理解しているはずなのですが・・・どうしたものでしょうか。

(人材育成社)

 

 

 

 

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営業力ってなんだろう?

2016年08月28日 | コンサルティング

中小企業庁によれば、中小企業が重視する経営課題の第1位が「コストの削減、業務効率化」、第2位が「営業力・販売力の維持・強化」です※。「コストの削減、業務効率化」については、取り組むべきことは比較的はっきりしています。原価や経費の明細、業務手順などを具体的に洗い出して、無駄があれば取り除き、よりよい手段があれば置き換えるといった活動を継続的に行ないます。

しかし「営業力・販売力の維持・強化」については、そう簡単には行きません。なぜなら、営業力とはなにかがはっきりしていないからです。

先日、当社のコンサルティング先のある中小企業の社長とその話になりました。この会社はよい商品を扱っているのですが、売り上げが伸び悩んでいました。

「社長、少し難しい質問をしますが、営業力ってなんでしょう?」
「そんなのは簡単だよ。お客様からカネを引っ張ってくる力だね」
「ということは営業マンの力量ですか?」
「そう。同じ商品でも売れる奴とそうでない奴がいるからね」
「じゃあ、売れない営業マンは一生そのままですか?」
「いや、いや、そんなことはない。うちのトップセールスのK君だって最初は全然売れなかったよ。」
「どうしてK君は売れる営業マンになったんですか?」
「そりゃあ、彼が努力をしたからさ」
「どういう努力ですか?」
「営業力をつける努力さ」
「その“営業力”ってなんでしょう?」
「だから、お客様からカネを引っ張って・・・あれ??」

確かに、あえて「営業力」とは何かと問われても答えに窮します。この後、社長といろいろ話をした結果、営業力とは「お客様に商品の良さをわかってもらうための行動がきちんとできること」という結論に至りました。

そこで、お客様との初回コンタクトから受注・納品にいたるまでの間に行なった「商品の良さをわかってもらうための行動」とは何だったのかを明らかにすることにしました。具体的には、「いつ、どこで、なにを、誰に対して、どうやったか」を、社長と営業担当役員に細かく書き出してもらいました。

次に、この会社の営業担当者5名の過去の営業日報の精読と、各人に対する2時間程度の個別インタビュー、客先訪問に同行しての行動観察などを1か月かけて行い、ようやく「お客様に商品の良さをわかってもらうための行動」の実態を明らかにすることができました。

「いやあ、驚いた。こんなに細かいことをタイミングを外さずに、きちんきちんとこなして行くのは大変だなあ」社長はそう言って、トップセールスのK君をやや尊敬の眼差しで見ました。

しかし、一番驚いていたのはK君自身でした。「自分は何も考えずに、ただがむしゃらにやってきただけですが、こうして改めて見てみると何かパターンみたいなものが確かにありますね」

最終的に「パターンみたいなもの」は、セールス・プロセス・ガイドマップという形にまとめられ、営業担当者全員の共有財産となりました。

セールス・プロセス・ガイドマップの成果は、半年を過ぎたあたりからじわじわと現れてきました。そして翌年の売り上げは大きく改善し、新たに営業担当者を増員することになりました。

皆さんも是非「営業力」を定義してみてください。当社は喜んでお手伝いいたします!

中小企業の営課題

(人材育成社)

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日本のビジネスは安心から信頼へ

2016年08月24日 | コンサルティング

企業が新たな取引先と商売を始めようとするときは、与信調査を行います。「この会社に商品を販売したときに、代金をきちんと入金してくれるだろうか」ということを調査するものです。通常、その企業の決算書や帝国データバンク等の調査会社からの情報に基づいて、取引限度額や支払い条件を決めます。つまり、与信とは「信頼の程度を金額で表現したもの」です。

信頼には2つのパターンがあると言われています。1つは「相手の行動傾向がわかっている」ことを前提にした信頼です(パターンA)。もう1つは、「もし自分のことを裏切れば相手も損をすることがわかっている」場合の信頼です(パターンB)。

パターンAは、相手がどの程度信頼できるかが、事前に知識としてわかっている状態です。与信調査は取引開始前に行いますので、このパターンです。これを本当の「信頼」と呼びます。

パターンBは、相手が裏切りを働けば、相手も損をする状態です。組織や共同体に所属している人間、たとえばヤクザの親分が子分に命令を下すとき、子分の忠誠心を測定する必要はありません。裏切れば痛い目にあうことがわかっているからです。これを信頼ではなく「安心」と呼びます。

日本は「安心社会」であり、アメリカは「信頼社会」であるという説があります※。日本は島国(狭い世間)であり、お互いに同じ言葉を話し、見た目も大差はない人間同士の集まりですから、「信頼」よりも「安心」を重視します。

一方、アメリカは土地も広い多民族国家(広い世間)であり、お互いに見た目も宗教も違うことが多いので、相手に関する知識を得ることで「信頼」するしかありません。

その結果、アメリカ人は言葉やジェスチャーを多用してコミュニケーションを図り、なんとかして相手のことを知ろうとします。その点、日本人は、相手が所属している共同体がわかれば、どの程度信頼して良いのかがなんとなくわかります。どうやら「安心」の方が効率が良いと言えそうです。

ビジネスにおけるコミュニケーションでは、この「安心」と「信頼」を意識しておいた方が良いでしょう。

ただし、同じ「安心社会」の日本人同士であっても、基本的にビジネスは「信頼社会」だということを忘れてはいけません。

もちろん、「信頼」も完全ではなく、裏切りや貸し倒れの可能性もあります。しかし近年の、伝統ある大手企業という「安心社会」の粉飾決算の例を見るにつけ、「安心社会」の危うさを感じます。

私は決して「安心社会」を否定するものではありませんが、日本のビジネスパーソンがコミュニケーション能力を高めることは、「安心社会」から「信頼社会」への移行を推し進める大きな流れになると考えます。

この流れはこれからも加速して行くことでしょう。

安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書) : 山岸 俊男 

 

(人材育成社)

 

 

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道端に転がっている石でもなんでも売ってみせる

2016年08月21日 | コンサルティング

こう言い切ったのは、ある商社の営業マンA氏でした。それは今から10年ほど前のことで、当時A氏は45歳、食品を扱う中堅商社の営業課長で会社の中でもエース的な存在でした。

「道に転がっている石に価値があるんですか?」と私が聞くと、「価値があろうがなかろうが、私の営業力ならなんでも買わせることができますよ。」と自信満々で答えました。

私はA氏のセールストークを一度聞いたことがありました。確かに「雄弁かつ、立て板に水」、「明るい表情と前向きな態度」、「清潔感を感じる服装」などパーフェクト・セールスマンとはこういう人なのかと思わせるものがありました。

その後A氏に再び会ったのはそれから10年後、つい最近のことです。さぞや出世していることだろうと思ったのですが、意外にも営業課長のままでした。多少老けた感じはありますが、相変わらずの「ザ・セールスマン」という感じでした。

「いやー、7年くらい前のことですけど、私の上司に社内でも頭が固いので有名なBって奴がなっちゃいましてね。」A氏が愚痴をこぼしはじめました。B氏は私も面識があり、年齢的にはA氏とほぼ同じくらいで、とても真面目な印象の方です。

「B部長は、売るためにはまず商品知識をつけろ!って言い始めて、営業部の若手連中を仕入先の食品メーカーに出向させたり、食品衛生法の専門家を呼んで講習会をやったり、もう、お客そっちのけで勉強ばかりさせて・・・おかげでみんな頭でっかちの営業マンになってしまったんですよ。」

その後もA氏のB部長に対する愚痴は止まりませんでした。最後に私からの質問で「道端に転がっている石でも売るのが営業マンですよね?」と聞いてみると、「そのとおり。なんでも売ってくるのが営業ですよ。」と相変わらずの口ぶりで答えました。

さて、A氏が勤務する商社の業績をネットで調べてみると、彼が所属する冷凍食品部門の売り上げが5年ほど前から大きく伸びていることがわかりました。それ以前は、横ばいというよりもむしろ低下気味でした。今や冷凍食品部門は、同社の主流である飲料部門に迫る大きさになっています。これはどう考えてもB部長の功績です。

営業力とは何かを簡単に定義することはできませんが、少なくとも営業担当者が扱っている商品に関しては、顧客よりも深くそして広い知識が必要です。その典型的な例はMR(Medical Representatives)でしょう。

MRは、製薬会社の営業担当者です。その仕事は自社の製品を売ることですが、同時に、医薬品に関連する様々な情報を医師、薬剤師、看護師に提供し、安全性に関する情報を医療の現場から収集して、自社にフィードバックする役割を担っています。

MRとまではいかなくとも、営業担当者にとってその商品に関する深い知識と応用についての情報は何よりも大切なのではないでしょうか。

顧客が知りたいことにしっかりと答えるためには、「その商品」についての圧倒的な知識量が要求されます。また専門知識だけではなく、日々新しい情報についても学び続ける必要があります。「なんでも」売れる営業力というのはまったくの幻想にすぎません。

だから優秀な営業担当者は「なんでも」なんて決して口にしないのです。


(人材育成社)

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一見キャッチボール風のコミュニケーション、でも違う!

2016年08月17日 | コンサルティング

Aさん:「お住まいはどちらですか?」

Bさん:「世田谷区です」

Aさん:「世田谷ですか。世田谷は緑がとても豊かですし、住みやすいでしょうね。」

Bさん:「はい、有名人もたくさん住んでいますし、高級住宅街もあります。私は○○駅の近くですが、あの辺りは買い物もしやすいですし、とても便利です」

Aさん:「そうですか、いいですね。世田谷区には長く住んでいらっしゃるのですか?」

Bさん:「10年以上です。」

Aさん「そうですか。世田谷区が気に入ってらっしゃるのですね」

Bさん:「はい、当面住み続ける予定です」

Aさん:「そうですか」

Bさん:・・・・・・ 

Aさん:・・・・・・(「で、あなたは?」と聞いてほしい)

これは、AさんからBさんへの問いかけからコミュニケーションがスタートして、その後もAさんの問いかけ→Bさんの返答→Aさんの問いかけ→Bさんの返答とやりとりが続いていますが、逆にBさんからAさんへの問いかけはなされないまま、会話が終了した例です。

Aさんとしては、Bさんから「Aさんはどちらにお住まいですか?」と聞いてもらえれば、自分のことについて話をするきっかけを得られたわけですが、結局Bさんからの問いかけはなく少々がっかりしているのですが、皆さんもAさんと同じように感じた経験はありませんか?

このようなコミュニケーションは一見、双方向で行われて傍から見ると会話のキャッチボールがうまくいっているように見えますが、Aさんはコミュニケーションのきっかけを作り続け、Bさんはそれに返答することばかりが繰り返されているため、実はAさんが自分のことについて話をするきっかけを得られていないのです。

もちろん、Bさんからの問いかけがなくても、Aさんから「私は○○に住んでいるのですが」と話し始めても良いわけですが、Bさんから「Aさんはどちらにお住まいですか?」と聞いてもらうほうが、スムーズに話しに入れると思います。

これは「返報性の原理」(人は他者から何らかをしてもらった場合に、お返しをしなければならないと感じる心理)が生かされていないコミュニケーションの典型例です。

たとえば、上司が部下と面接をするときや営業が顧客にヒアリングをするような場面では、一方が質問をし続け他方がそれに答え続けるような場面はあり得ます。しかし、通常のコミュニケーションでは、一方が問いかけを続けるばかりで相手からの問いかけがないと、答えている方は自分の話がたくさんできるので楽しく感じるかもしれません。一方で問いかけ役になってしまった方は自分から話ができる場面が少ないため、フラストレーションを感じかねず、その結果、双方が楽しめるコミュニケーションにはならないのではないかと思います。

このように、通常のコミュニケーションで双方が楽しいと感じることができるようにするためには、双方が話しをする割合が大きく異なってしまうことのないように意識してコミュニケーションをすることがコツだと思います

相手が問いかけ上手だったり聴き上手だったりすると、つい自分ばかりが話をしてしまいがちですが、もし自分の話ばかりが続いてしまっているなと感じたら、相手にもコミュニケーションが楽しいと感じてもらうため、お返しに「それで、あなたは?」と問いかけてみることが必要だと考えていますが、皆さんはどう思われますか。

(人材育成社)

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お客は「落とす」もの?

2016年08月14日 | コンサルティング

「コミュニケーションはキャッチボールである」とよく言われます。話をするときに一方的に言葉を投げつけるのはコミュニケーションではありません。あくまでも双方向でのやり取りでなければなりません。このことはビジネスパーソンにとって特に大切なことです。

さらに、人と話すときに注意するべき点は次の3つです。1.相手が話をしているときは前向きな姿勢で聴く(眼を見る、うなずくなど非言語を使って聴く) 2.話の腰を折らない(途中で余計なことを言わない) 3.反論したくなってもすぐに「ちがう」と言わない(とりあえず最後まで聴く)

この3つを守るだけでビジネスの場で行うコミュニケーションはほぼ万全と言えます。

ところが、それを守っていても上手く意思疎通できない場合もあります。特に、商談中にそうした事態に陥ることがあります。次は、ある営業担当者(営業、と省略)と顧客企業の担当者(顧客、と省略)の商談の様子です。

営業 「来年度、工場の空調機を更新されるご計画とお聞きしました。」
顧客 「一応検討はしてみたのですが、まずはNCマシンが先かなと思っています。」
営業 「なるほどNCですね。では空調機の予算は取られていないのでしょうか。」
顧客 「取っていません。設備に回す予算がそこまで無いので。」
営業 「NCマシンは設置環境によっては故障しがちです。空調は問題ありませんか?」
顧客 「たぶん、大丈夫でしょう。」
営業 「温度や湿度は測定してみましたか?」
顧客 「現状で問題ないと思いますので、測定していません。」
営業 「そうですか。実はXX社さんでも同じような設備のリプレースをしたことがあったのですが、設置環境が悪くて上手く動作しないときがあったのです。やはり一度測定をすることをお勧めします。当社のサービスで、設置環境事前調査プログラムというものがありまして、無料で10点までの温度、湿度、振動、その他のデータを収集してお客様に・・・」

顧客 「あの・・・もう結構です。では、時間ですので失礼します。」

結局、この営業担当者はセールスに失敗してしまいました。それは、いかにコミュニケーションのルールを守ったとしても、「売らんかな」という姿勢があまりも強すぎたからです。

この営業担当者のように、「売る」ということをお客様との攻防戦(城を守る敵を攻め落とす)のように捉えている限り、商談は上手く行きません。

営業とは、お客様を「説得して落とす」ことではありません(少なくともBtoBでは)。

様々な本やセミナーで問題解決型、ソリューション型、提案型などが紹介されていますが、少なくともお客様の「味方」として、同じ方向を目指して話を進めるのが商談の基本です。

「落とそうとすれば、自分が落ちる」のが営業ではないでしょうか。

(人材育成社)

 

 

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「聴く」ではなく、「訊く」がコミュニケーションのスタートなのではないか

2016年08月10日 | コンサルティング

 コミュニケーションの中で、「きく」ことの重要性はビジネス書をはじめとして、研修やセミナーでたびたび取り上げられます。

これらの研修やセミナーでは、一般的に「きく」には「聞く」、「聴く」という違いがあり、コミュニケーションにおいて最も重要なのは、こちらが主体的に相手の話の内容に関心を持ち理解しながら「きく」=「聴く」であるとされています。

さらに、相手の話に相槌を打ったり、積極的な態度で丁寧に聴く=「傾聴」と、反対に特に興味や関心を示さない「きき方」との違いをロールプレイングによって体感していただき、「傾聴」がコミュニケーションにとっていかに大切なことであるかを説明することが多いです。

私自身も過去に同様の演習を取り入れたこともありますので、もちろん、これを否定するわけではないのですが、最近改めて思うのは、コミュニケーションのスタートは傾聴よりも、むしろ「訊く」ことではないのか、ということです。

「訊」は常用漢字ではありませんので、普段はあまり使うことのない漢字ですが、その意味は「相手に尋ねる」ことで、コミュニケーションにおいては具体的には「質問をすること」です。

質問というと、多くの場合は相手に疑問や理由を確認したり情報を聞き出すために行うものであると定義されますが、それ以外にも相手に重要なポイントを気づかせたり、考えを整理させたりするために行うという面もあります。

さて、上記のようにコミュニケーションにおいては、とにかく相手の話をよく「聴く」ことが大切であるということが定説のようになっていますが、相手が話をしたくてうずうずしている人ならば、こちらが一所懸命に聴いてあげれば嬉しくなって、どんどん話をすると思います。

でも世の中、話をしたくてうずうずしている人ばかりではありません。相手との関係性がまだ出来ていなかったり、上司と部下の関係であったり、顧客と営業の関係であったりする場合には、必ずしも積極的に話をしたい人ばかりではないと思います。

そのような場面でも一方がタイミングよく質問をすることで、もう一方は話しだすきっかけを得られ、さらに聴き手が熱心に聴いてくれれば、話を続けやすくなるわけです。さらに、自分が話したいと思っている内容についてタイミングよく質問してくれれば、「もっともっと話を続けたい」という気持ちになるだろうと思います。

 

しかし、実際のコミュニケーションの場面では、話のきっかけとなるような質問をしてくれる相手ばかりではありませんから、そういう場面ではつい関係のない雑談を始めてしまったり、自分の話を一方的にしてしまったり、相手に聴くことを求めることになってしまっていることが非常に多いように感じています。

聴き手がどんなに「あなたの話を聴きますよ」という態度を示してくれたとしても、話のきっかけがなければ、話を始めることすら難しいのではないか。

そのように考えると、コミュニケーションのスタートは「聴く」ではなく、実は積極的にこちらの「訊く」から始めるべきではないのかと考えているのですが、いかがでしょうか。

(人材育成社)

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営業マンは失敗から学ぶ

2016年08月07日 | コンサルティング

「XX社(競合他社)の製品を使ったら絶対に損をしますよ!」商談で勢いに任せてつい言い過ぎてしまう。やる気満々の営業マンなら、一度や二度はこうした経験があるはずです。「買って欲しい」一心で、お客さんに向かってグイグイ押して行けば行くほど相手が引いてしまい、結局失注ということになります。

若手の営業マンがこうした失敗を繰り返すのは、決して悪いことではありません。むしろ失敗を恐れて腰が引けてしまい、言うべき時に言えないようになってしまっては、成長は望めません。

営業は基本的に辛い仕事です。お客さんの中には「営業マン=押し売り」と思っている人も少なくありません。営業マンは低く見られたり、怪しまれたり、ひどい時には怒鳴られたりすることだってあります。

さて、営業経験を積むにつれ失敗は少なくなっていきます。優秀な人ほど経験から学ぶことができるからです。

ところが、それがなかなかできない人もいます。しかも驚くべきことに少なからず存在します。

当社のコンサルティング先でのことです。若手、中堅の営業マンの行動特性を調査・分析した結果、どうやら営業プロセス(商談のステップ)で顧客対応にばらつきがあることがわかりました。

例えば、購入のための予算を確保していないのに性急にクロージングを行ったり、競合他社製品の強み・弱みを全く無視して自社製品の特徴だけを繰り返しプレゼンしたりと、どうも行動がちぐはぐです。

疑問に思って社長に尋ねてみたところ「営業のやり方については全部Kさんに任せてあるんだ。私は元々技術屋なんでね」とのこと。そのKさんですが、確かに30年近く営業活動を一人で支えてきたと言っても良い超ベテランです。

この会社は10年ほど前から製品の技術力が評価されはじめ、売り上げも急速に伸びてきました。それに伴って中途入社や新人の営業マンの人数も増えてきたため、Kさんには部下の育成という仕事の比重が増してきました。

Kさんは非常に優秀な営業マンです。さらに「営業は失敗を積み重ねて成長するもの」という考えを持っています。

その考え自体は間違っていないのですが、「失敗から学ぶ」能力は人によってかなり個人差があります。何度も同じ失敗を繰り返す人も少なくありません。この会社の中堅、若手営業マンはほとんどがそうでした。

Kさんは一流選手にありがちな「そんなことぐらい簡単にできるはず」という思い込みにとらわれていたのです。Kさんには簡単なことでも、普通の人にとっては難しいことでした。

そこで「簡単なこと」を全てリストにし、一つ一つ積み重ねるように営業活動を進める仕組みを作りました。ほどなく成果は現れ、利益率は改善していきました。

営業は、他の職種に比べて個人のスキルに大きく依存します。だからこそ外部の視点が必要であり、有効なのです。

(人材育成社)

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営業マンが観察すべきは、顧客のネクタイの色ではない

2016年08月03日 | コンサルティング

私:「その質問をしたとき、お客様はどういう表情をしていましたか?」

A営業マン:「お客様の表情ですか?あまり印象に残っていません。でも、お客様がしていたネクタイの色やデザインはチェックしましたので、よく覚えています」

これは以前、ある営業マン(Aさん)に同行してお客様を訪問した後の、反省会でのやりとりです。

Aさんは、その1月ほど前にこのお客様にある企画書を提出しており、この日はその結果を伺うための訪問でした。今回は3社のコンペだったのですが、お客様が選択したのは他社のものであり、残念ながらAさんの会社のサービスは見送られることになったのです。

ところが、Aさんはお客様から「他社のものに決めました」と言われたにもかかわらず、どういうわけか再び自社のサービスの説明を熱心に始めたのです。お客様も少しの間は説明を聞いていたのですが、数分後には表情が曇り、やがて明らかに迷惑そうな感じになりました。

そこで、慌てて私が「今回は別の会社のサービスを導入されるとのことですが、ポイントになったのはどの点だったのでしょうか。お差支えない範囲で結構ですので、お教えくださいますか」と助け船を出したのでした。

こうしたやり取りを経て、帰社後に冒頭の会話に至ったのです。Aさんは、自分が新人の時に出席した営業研修でお客様を観察することの重要性を学び、「まずお客様のネクタイの色を確認すること」が大切と習ったのです。その以降は真っ先にお客様のネクタイを観察するようになり、相手の表情のことなどはあまり気にしていなかったとのことでした。

今回の場合、既に他社に決定したと言っている顧客に対して採用されなかった自社のサービスの説明を再び始めてしまうことと、またそのときにお客様が明らかに困惑した表情をしていたことにも気が付かなかったことは、営業マンとしては2重の問題があります。

この話だけで判断すると、「Aさんの営業マンとして資質の問題でしょう。また、人としても少々鈍感な人なのではないのですか」と思われるかもしれませんが、実はAさんは営業以外の場面では、老若男女いろいろなタイプの人ときちんとコミュニケーションがとれますし、人の気持ちにも決して鈍感な人ではありません。

さらに、飲み会などで場を盛り上げることもとても上手な人ですので、これらだけで判断すると、いわゆる「営業マンに向いている人」と思われていました。

そういうAさんが実際の営業の場面になると、なぜか営業の基本的なポイントも、お客様の表情を観察することも、なかなかできなかったのです。

これは以前の営業研修でお客様の観察についてポイントを間違って理解してしまったことと、その後、今に至るまでそれを修正する研修などの機会や上司の指導がなかったことなどが大きな原因でしょう。

一般的にはコミュニケーションの量が多かったり、場を盛り上げることがうまかったりする人を「営業マン向き」というように思われがちですが、このように営業の基本部分で間違ってしまっていれば、話はそう単純ではすまないということです。

その後、Aさんはその会社を去りましたが、私は今でも営業のコンサルティングでこの「売れない営業マン」の話を例に出していろいろ指導や助言をする際に、Aさんのことを思い出すことがあります。

お客様を「観察」するのは、決してお客様のネクタイの色をチェックすることではないですし、コミュニケーション力があること=売れることではないわけです。まずはお客様の「表情」をきちんと観察し、それに応じてしっかりとコミュニケーションをとること、この基本をきっちり押さえることが何よりも大事だということをしっかりとお伝えなくてはと思っています。

(人材育成社)

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