中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,093話 ロジックツリーを使うときに注意すること

2022年01月30日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

ロジカルシンキング(論理思考)は最も人気がある研修テーマのひとつです。ご存じの方も多いと思いますが、ロジカルシンキングとは筋道を立てて物事を考える思考法です。仕事を進める上で曖昧な情報や思い込みを取り除き、正しい結論を導くことができます。非常に役に立つ思考法ですから、研修のテーマとして人気があるのは当然のことでしょう。

ロジカルシンキングの中心的なフレームワーク(考え方の枠組み)に「ロジックツリー」という手法があります。たとえば仕事上、ある大きな問題が生じたとします。それにはいくつかの要因が絡んでおり、そう簡単に片付かないものだとします。ロジックツリーは、上位概念となる大きな「問題」を枝のようにどんどん細分化していきます。その過程を、図を描きながら進めるのです。問題を構成する要素を分解して描きだしていくうちに思考が整理され、最終的に全体像をすっきりと把握することができます。

しかし、ロジックツリーを使うときには注意が必要です。それは「問題」をどう定義するかという点です。ここでは「採用活動の問題」を例にして説明をします。まず、悪い例を挙げるならば、「優秀な人材を採用するためには」を問題としてしまうことです。

「優秀な人材を採用するためには」を分解しようとすると、「そのためには何をしたらよいか」というやり方(How)を考えることになります。いったんHowが現れてしまうと「人材情報誌に広告を出す」、「インターンシップを実施する」、「就活フェアに出展する」といった具体策が次々に出てきます。それでも良いと思われるかもしれませんが、これではロジックツリーを作る意味がありません。むしろ「アイデア出し会議」でもやった方がマシです。

正しく定義された問題は「優秀な人材を採用できていない」です。これに対しては「どうしてできていないのか?」というなぜ(Why)を考えます。なぜ(Why)には問題を掘り下げる力があります。どこまで深く掘り下げるかは決まっていませんが、適当なところまで来たら途中で何を(What)を入れてみます。

「なぜ優秀な人材を採用できていないのか?」→ 採用したくなるような人材が応募してこないから。「なぜ応募してこないのか?」→ 当社が優秀な人材にとって魅力があるように見えていないから。「なぜ見えていないのか?」→ 当社の魅力を伝えていないから。

ここまで掘り下げたところで(What)を使ってみます。「ちょっと待った!?うちの会社の魅力っていったい何だ(What)?」そもそも「会社の魅力」がはっきりしていないとしたら、広告費をたくさん使ってもまったく意味がありません。

このように問題の本質(私は“問題の根”と呼んでいます)を探るためにWhyというスコップを使うのです。ツリー(枝)は空に向かって目に見える形で伸びて行きますが、大事なことは「根」のように地面の下、つまり見えないところに埋まっています。

ロジックツリーを使うときはWhyというロジックスコップで「根」を掘り出しましょう。

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第1,092話 時間へのこだわり

2022年01月26日 | 仕事

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2020年の日本の時間当たりの労働生産性(日本生産性本部)は、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中23位と順位を下げたとのことです。この数十年はほぼ20~21位で推移していましたが、ここにきて1970年以降最低の順位になったそうです。

新型コロナウイルス感染拡大下の2021年4~6月期の労働生産性でも、38カ国中半数以上がコロナ以前(19年4~6月期)と比べてプラスだったのに対して、日本はマイナス2.8%だったそうです。その要因の一つには、「柔軟な働き方への準備不足」があるとのことです。(2022年1月17日 日本経済新聞)

ところで、この労働生産性の国際比較で14位に位置しているのが北欧フィンランドで、毎年ほぼこの順位をキープしています。このたび、「フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか」(堀内都喜子 ポプラ社) を読む機会がありましたが、それによるとフィンランドでは午後4時には仕事が終わり、残業もほとんどしない(仮に残業をしたら、その分の時間をまとめて休暇として取得する)し、有給休暇の消化率も100%。さらに、夏季には1か月以上の長期連続休暇をとる。このように休暇にこだわっても、1人あたりのGDPは日本の1.25倍、最新の幸福度ランキングも2年連続で世界一とのことです。

なぜこのような結果を出せているのかについては、休みに対する考え方の違い、アウトドアやサウナへの愛着、硬派で諦めない強い気持ちを表す「シス」、フィンランドのシンプルで心地よいライフスタイルを表す言葉である「ムカヴァ」、サスティナブルな社会づくりなど、フィンランドのもともとの文化や志向や価値観などによるところが大きく影響していることが紹介されています。具体的なノウハウなどによるものではなく、文化や価値観などによるものが大きいと考えられますが、それらは一朝一夕で築けるものではないことから、残念ながら日本人には簡単に真似できるものではないということかもしれません。

さて、それでは今後私たち日本人はどうすればもっと生産性を上げることができるのかを考えてみましょう。私が日々様々な研修を担当させていただいている中で感じるのは、「時間や納期について、今よりもっと意識してみることが必要ではないか」ということです。研修では個人やチームで様々な演習に取り組んでいただいていますが、その際に納期管理(演習の終了時間を守ること)の重要性をはじめにお伝えしても、それを徹底する人やチームがある一方で、全くこだわらずにマイペースで演習を進める人やチームも少なくありません。それは成果の完成度を追求するあまり、納期(時間)への意識が希薄になってしまっているのだろうとは思いますが、まずは「与えられた時間の中で最大限の結果を出すことに、もっとこだわりを持ってほしい」と感じることが多々あります。

言うまでもありませんが、時間はとても大切な経営資源の一つです。価値を生み出すためには経営資源は最大限に有効活用するべきものであり、反対に価値を生み出すことに使われなかった時間は結果として経営資源の無駄遣いをしたことになってしまうのです。

コロナ禍においてテレワークが日常のものになりましたが、同時に生産性の問題を抱えている例も少なくないようです。一人一人が「時間」という経営資源を有効活用することをしっかり意識して、取り組んでいくことが必要だと考えています。

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第1,091話 会議は長いほどいい!?

2022年01月23日 | コンサルティング

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朝日新聞・朝刊の1面に哲学者の鷲田清一氏が執筆している「折々のことば」という小さな連載コラムがあります。毎回とても良いことばが選ばれているので楽しみにしています。今回は「会議とはものごとを決める場ではない(出版社代表・木村元氏)」ということばでした。

仕事と会議は切っても切れない関係にあります。大企業の社員であれフリーランスであれ、会議を経験したことがない人はいないと思います。ですから、会議を「決める場ではない」と言い切ってしまうことに「え?」と思ってしまうことでしょう。

木村氏は「会議は異なる『声』や視点を提示し共有しあう機会。だから長いほどいい」と言います。

ビジネスパーソンならば「共有しあう機会」には納得できても「長いほどいい」というところには拒否反応を示すはずです。私もそうです。会議は、異なる声(意見)や視点(ものの見方)を全員で共有する機会であることは間違いありません。ただし「長いほどいい」とは思いません。

会議で声や視点を共有する目的は、結論というアウトプットを得るためです。もし結論が不要ならばそれは会議ではなく、座談会か独演会、せいぜい「井戸端会議」でしょう。いずれにしても会社のコストを費やして行うべきものではありません。以前にも書きましたが、会議とは結論という製品を製造する工場なのです。製品を作らない工場に存在意義はありません。

さて、私の知り合いに木村氏と同じような言葉を口にする経営者がいます。日頃社員に「大いに会議をしなさい」と会議を奨励しています。彼はどちらかと言えば気が短いタイプなので意外に思い、それはなぜかと聞いてみました。「会議は決定する場だ。決めたことは参加者の責任になる。そうすればどんなに小さな仕事でも責任をもって取り組むようになる」とのことでした。

そして「責任が伴うからこそ、色々な意見や視点を示して話し合うことが必要だ。そのためには長い時間がかかってもいいじゃないか」と言っていました。

「折々のことば」とは含む意味が逆になりますが、私は大変素晴らしい考え方だと思いました。たとえ短時間で「効率良く」会議を行ったとしても、あいまいな結論や責任の所在がはっきりしない決定しか得られないならば、その会議は無意味だからです。

私は彼の言葉に感銘を受け「なるほど。会議はいくら長くても良いのですね?」と聞いてみました。「もちろんだよ。私も気が短いとよく言われるのだが、会議に関しては長くても構わないと思っている・・・30分以内ならね」という答えが返ってきました。

あなたの会社の会議はどのくらい長いですか?

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第1,090話 あなたは『機嫌がいい』ですか

2022年01月19日 | コミュニケーション

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部下B:「今はタイミングが悪いと思う。もう少し経ってからの方がいいんじゃないかな」

部下C:「あの上司は朝は機嫌が良くないことが多いからね」

これは、上司へ仕事の相談をするタイミングを見計らっている部下同士の会話です。私自身も経験がありますが、上司によっては同じ報告をするにしても、また同じような決裁を仰ぐにしても、機嫌の良し悪しで事の次第が決まってしまうことがあるのです。そのため、上司と接点を持つ必要があるときには、あらかじめ部下同士で上司の機嫌の情報を共有することがありました。同様に、現在も若手を対象にした研修を担当させていただく際に、部下の悩みの一つとして上司の機嫌についての話を耳にすることが少なくありません。

それでは、当の管理職は自身のマネジメントに関してどのように感じているのでしょうか?実際に弊社が管理職研修を担当させていただくと、自身のリーダーシップに問題意識を持っている管理職が多いように感じています。具体的な悩みとしては「指導力がない、統率力がない、影響力がない、カリスマ性がない」など、ないない尽くしの話をお聞きします。

リーダーシップは生まれつきのものではなく、訓練などで身に付けることができるとは言われているものの、カリスマ性などは努力で簡単に身に付くものではないもののように思えます。

それでは、自身のリーダーシップに悩んでいる管理職は何から始めればよいのでしょうか?そこでお勧めしたいのが、「一所懸命仕事をする中で、できるだけ機嫌よくしている」ことです。

私が最近読んだ本に、「チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論」(畑中翔太 朝日新聞出版2021年)があります。お笑いタレント「ウッチャンナンチャン」のウッチャンこと内村光良氏は「自らはリーダー論などは決して語らないけれども、内村氏がいる現場では必ずいいチームができる」そうで、周囲の人が感じている内村氏のリーダーシップをまとめた内容です。

内村氏のリーダーシップは上からプレッシャーを与えるアプローチではなく、携わるチームメンバーが自発的に動き出し伸びていくという特徴があるとのことです。具体的には、自ら仕事を一所懸命にやっている姿を見せたり、話を聴いたり、成果を認めるなど様々な要素があるようです。中でも私が印象に残ったのが、内村氏は周囲が機嫌をとらなくても「いつも機嫌がいい」のだそうです。つまり、周囲が機嫌を伺うような状況になることもなく、感情に浮き沈みがなく絶えずフラットだということです。

上司に限らず、調子の良いときも悪いときもあるのが人間というものですし、それを表に出すことなく「普通に機嫌よい状態」でいることは簡単なことではないのかもしれません。しかし、部下をはじめとして、周囲が仕事の相談をする際に、まず機嫌を仰がれるようなことでは良いリーダーとは言えません。

あなたが経営者や管理職でいらっしゃるのならば、まずは自分自身は「(普通に)機嫌よくしてるか」と己を振り返ってみることをお勧めします。

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第1,089話 営業支援ITツールの使い方にご注意を!

2022年01月16日 | コンサルティング

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どのような仕事にも必ず前工程と後工程があります。少なくとも自分が行った仕事のアウトプットは、自分以外の誰かに渡されます。それは開発門なら製造部、総務部なら社員全員、営業部なら顧客・・・いずれにしても自分の仕事のゴールが後工程の仕事のスタートになります。つまり、仕事の出来不出来を決めるのは後工程ということです。

この数年でテレワークが一気に普及し、仕事の進め方が大きく変わってしまいました。テレワークのプラス面は多々ありますが、最大の難点はコミュニケーションの取り辛さでしょう。それによって後工程からのフィードバックが十分になされなくなってしまう恐れがあります。特に営業部門では「目立たない形で」その難点が問題になっているようです。

「いや、そんなことはない。当社はSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)を導入してから営業担当者別の案件の進捗状況を把握しやすくなった」、「顧客とのやりとりも十分かどうかデータを見ればわかる。何かあれば私から担当者に直接アドバイスできる」これは、ある中堅商社の営業担当役員の言葉です。

しかし、この会社の営業部長はこう言っています。「役員が直接担当者に指示を出すのは極力控えてもらうよう頼んでいます」管理者の頭ごなしに担当者に「アドバイス」されては現場が混乱するというわけです。営業担当者も、役員からの言葉がたとえ「ズレて」いたとしても無視することができず困ってしまうとのことです。

テレワークの普及により、企業では様々なITツールが使われるようになってきました。コミュニケーション上の問題を解決するために大いに役に立っている反面、こうしたマイナス面も無視できなくなりつつあります。

さて、役員をはじめとした経営層の後工程は誰でしょうか?それは株主、社員、顧客、取引先など「全て」です。正確に言うならば「ステークホルダー」です。「後工程はお客様」という言葉があります。多少極端かもしれませんが役員にとっては、いち担当者も「お客様」です。

では、役員は勝手に口を出さないようにすれば良いのでしょうか。ところがそう簡単には行きません。まず役員自身のフラストレーションが溜まります。それが溜まりに溜まると「大噴火」することもあります。それをまともに食らった管理者や担当者はたまったものではありません。

こうした事態に至らないための特効薬はないのですが、有効な手段の一つとして「会議」の有効活用をお勧めしています。会議という一種「公(おおやけ)の場」でしっかりと話し合うのです。多少の叱責やお小言もやむを得ないでしょう。ただし、会議以外の場では役員クラスからの「直接指示」は厳禁とします(多少の例外的なルールは仕方がありません)。

その前提として、経営層はステークホルダーとは何か(誰か)を十分に理解しておくことが重要です。そして会議は控えめにするよう心がけましょう。

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第1,088話 ルールの徹底にはナッジを利用する

2022年01月12日 | コンサルティング

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「仕組みを作っても、社員がその通りにやらない」、「なかなかルールが徹底されない」

これは弊社がお付き合いをいただいている中小企業の社長や、様々な企業の問題発見・課題解決研修を担当させていただいた際に受講者からよく聞く言葉です。

組織に人が2人以上存在する場合には、データの管理方法や書類の保管場所など、大なり小なり仕組みやルールが必要になります。仕組みやルールを作ったり、必要に応じて変更したりすること自体簡単なことではありませんが、さらにエネルギーを要するのが、それを守ること、徹底することです。

几帳面にルールを守る人がいる一方、ほとんど気にしないような人がいることも事実です。このため、ルールを全員で共有し徹底するためには、5W1Hなどの具体的な行動計画にしたり、面倒なものにし過ぎるなど敷居を高くしないようにしたりすることがポイントになります。

とはいえ、どんなに工夫をしてもルールを徹底することは簡単なことではないと思います。また、ルールを設けてしばらくの間は徹底されたとしても、時間の経過とともにいつの間にか形骸化してしまったり、ルールを徹底している人だけが煩わしい思いをしたり、損をしているような気持ちになってしまったりするようなことも起きてしまうこともあります。

こうした場合に私がお勧めしているのが、「ナッジ(nudge)」です。ご存じの方も多いとは思いますが、ナッジとは心理学や行動経済学において明らかになってきた人間の行動の原理に基づき行動のきっかけを提供する手法です。

もともとは「肘で軽く押す」という意味のナッジですが、2017年にシカゴ大学のリチャード・セイラー教授がナッジの研究でノーベル経済学賞を受賞して注目が高まるようになりました。

ナッジは、「人は客観的にみると、誤ったり損したりするような選択を知らぬ間にしてしまう」という前提に立った経済モデルを行動経済学とし、大きな費用をかけずに伝え方や表現の工夫だけで一定の成果を挙げることができるとされています。

実際の取り組み例として、宇治市役所では手洗いを促すための工夫として、庁舎のトイレに「手をしっかり洗いましょう」という通常の表現でなく「となりの人は石鹸で手を洗っていますか」というポスターを張ったところ、手洗いをする人が増えたそうです。これは、自分が手洗いをしているかどうかを周囲から見られていることが気になるという意識が働いた結果だと考えられます。これ以外にも、定期検診の受診率を上げるためにナッジを利用している八王子市役所の例など様々なところで取り組まれており、功を奏しているようです。

組織のみならず社会には守らなければならないルールや仕組みが様々あるわけですが、前述のように徹底することはなかなか難しいものです。しかし、そうした前提のもとでナッジのように表現や伝え方を工夫することで改善を試みてみることも一案です。なかなかうまくいかないと思っていらっしゃる方は、一度試してみてはいかがでしょうか。

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第1,087話  STEAM教育というインパクトに備えよう

2022年01月09日 | 研修

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STEAMとはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)のそれぞれの頭文字を取った言葉です。STEAM教育の目的は将来社会で活躍できる人材を育てることです。一例として、2020年小学校でのプログラミング教育が必修化されたように、文部科学省が積極的に推進している政策です。

STEAM教育の特徴のひとつに文理融合があります。これは「文系・理系」という分類ではなく、領域横断的な知識と発想を学生に身に付けさせる教育方針です。すでに九州大学、滋賀大学、新潟大学などで新しい学部・学科が作られています。早稲田大学政治経済学部の入試で数学が必須になったのもその一端かもしれません。「・・・だから何?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。

「STEAM?うちは営業で成り立っている会社だから関係ないよ」ある企業の営業担当役員の言葉です。この企業は食品メーカーから商品を購入し小売店に販売をする卸売業です。主な業務は、顧客からの注文を受けて出荷指示を出し請求書を発行して売掛金を回収する、という流れになっています。

営業担当役員が言うように「うちの仕事はこまめに小売店の経営者のところに行って信頼関係を築くことだ」という認識がほとんどの役員、管理職に浸透しています。もちろん、それは間違っていません。しかし、一人の営業部長が次のように言っていました。「この数年でかなり顧客の考え方が変わってきた。今までのように”顔と顔”でする営業ができなくなってきた。」

「顔と顔」というのは直接対面してコミュニケーションをとるやり方を指しています。確かに何回も顔を合わせていれば、気持ちも通じ合い商談も進めやすくなります。ところがコロナ禍で営業のスタイルを変えざるを得なくなったこと、そして顧客である小売店側の意識が変わったことが大きな変化をもたらしました。ひとつの例として、ある大口の顧客企業の窓口(担当者)が交代したことを話してくれました。

「長い付き合いだったAさん(窓口)が急に代わったんだ。新しい担当者はまだ20代だよ」、「前の担当者のように融通が利かない上、業務に関する知識も少ない。話をしようにも共通の話題が無い」と少しぼやき気味です。とはいえ、仕事に支障はなく売上も特に落ちることはなかったとのことです。よく話を聞いてみると、どうやら顧客である小売店が積極的にデータ分析を行い、需要予測に基づいた発注を行うようになったことがその理由のようです。

STEAMで人材そのものがまるっきり変わってしまうというわけではありませんが、この企業のようにデータ分析や論理的な思考ができる若手社員が徐々に増えていくことは間違いありません。企業としてもこれから先、社会に出てくるSTEAM人材を受け入れ、活用できる環境を整えておく必要があります。

今から子供と一緒になってSTEAMを学ぶ必要はもちろんありませんが、STEAM教育によってどのような人材が育てられるのかについては十分理解しておくべきです。企業としてはこうした点を念頭に置いて「あるべき人材像」を考えなければなりません。経営者は今すぐに採用と人材育成に関して、何らかの対策を打つように人事部門に指示しておくことをお勧めします。

あなたの会社が20年後も存在しているとしたら、社員の大半はSTEAM教育を受けてきているのですから。

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第1,086話  反省しないことをモットーにしている人

2022年01月05日 | 仕事

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「反省する人は成功する。誰でもそうやけど、反省する人はきっと成功するな。 本当に正しく反省する。・・・」

ご存知の方も多いかと思いますが、これはあの松下幸之助氏の言葉です。この言葉のとおり、松下氏自身もその日あったことに思いを巡らし、失敗体験を振り返り「次はこうしよう、こうすればうまくいくかもしれない」と考え、反対にうまくいったことに対しても、そのままにしておくのでなく、ことがうまく運んだ理由を考えて次にもっとうまくやるためにはどうすればよいか、日々考えていたとのことです。

おそらく、多くの人たちは子どもの頃から松下氏の言葉のように「失敗したら反省すること、次に同じようなことが起きた際には前の失敗を活かすように」と周囲の大人から繰り返し言われてきたと思います。そのため、特に意識することなく「日々反省をしている」ように思うのです。

しかし、先日タレントのタモリ氏が「反省しないことをモットーにしている」との話をしているのを聞いて、新鮮に感じたのと同時にその理由に「なるほど」と思わされました。

今年喜寿を迎えるタモリ氏は、同一司会者による長寿番組のギネス記録を2つ持っているそうですが、長く番組を続ける秘訣の質問に対して、「反省しないこと。過去のことをいくら反省してあの時こう言えばよかった、こうすればよかったと言っても、一生同じ状況になることはない。だからそれを反省してもしょうがない。それよりも、未来に目を向けましょう」と答えていました。

「反省」とは過去の時間に思いを巡らすことです。それよりも、「同じ時間を使うのであれば未来を考えることが大切だ」というタモリ氏の言葉は、私にはすっと腑に落ちるように感じられました。

確かに、32年間続いたフジテレビの「笑っていいとも」の最終回の際にも、周囲の出演者が感傷的になっている中で、タモリ氏が淡々と番組の終わりを迎えていたことが強く印象に残っています。このときも、32年という過ぎ去った時間を振り返るのではなく、タモリ氏の目は既に未来に向いていたということなのでしょう。実際に、「笑っていいとも」終了後に、やりたいと考えていたことにいろいろ取り組んだとのことです。

振り返ってみて、私自身は日ごろから失敗したら反省し、次に活かすことが大切だと考えてきたのですが、タモリ氏の言葉に刺激を受けて、2022年は反省の時間は大切にしつつも、より「未来のために今の時間を使うこと」をモットーに取り組んでみたいと考えています。

新年の始まりにあたり、皆さんはどう思われますか。

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