中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,110話 若者たちはなぜ成長を焦るのか?

2022年03月30日 | キャリア

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「若手で活躍をしていた人が複数人退職することになってしまって・・・とても残念です。」

これはつい先日、ある1,000人規模のサービス業の人事部の管理職から聞いた言葉です。

詳しく話を聞いてみると、退職を表明した人はいずれも20~30歳代だそうですが、彼らは若手の中でも中心的な存在で、生き生きとした表情で仕事をしていたそうです。上司からの評価も高く、周囲との関係性もよく将来を期待されていた逸材だったということです。

このように周囲に期待され、生き生きと仕事をしていたのにも関わらず、彼らはなぜ退職を決意したのでしょうか?

直属の上司、そして人事部が個々に面談し退職理由を聞いたところ、「もっとキャリアアップしたい」、「自分の能力や技能をより活かせるところに転職する」とのことだったそうです。いずれの理由も非常に前向きな理由だと感じます。

私が様々な組織で研修を担当させていただいたり、上述のように人事部のご担当者の話を聞かせていただいたりする中で感じているのは、近年、若手社員のスキルアップへの関心がますます強くなったり、成長欲求が高まっているという傾向です。

スキルアップへの関心や成長欲求が強いことは、前向きでとても素晴らしいことだと感じます。一方ですぐには成長感を得られにくい部署での仕事だったり、学生時代の友人との相対的に比較して成長感を得られていない場合、そのことに焦ってしまう人が多いように感じます。

たとえば、学生時代の友人が上司の同行なしに一人で営業に出かけているような話を聞いた場合に、自身はまだ上司の同行のもとに営業活動をしていたりすると、友人は目覚ましく成長しているのに自身は置いてきぼりにされているように感じてしまうことがあるようです。その結果「早くキャリアップできる会社へ転職しよう」と考えてしまうこともあるようなのです。

では、そもそも「成長する」とはどのような状態をいうのでしょうか?実際に若手社員にインタビューをしたことがあるのですが、多くの人は「できないことができるようになること」と答えます。具体的には「素晴らしい企画書が作成できるようになる」、「大勢の前でも堂々とプレゼンテーションができる」など、華々しい状態をイメージする人が圧倒的に多いようです。

しかし、机上で習得できる知識やスキルならともかく、働く中で身につける知識やスキルは時間をかけながら、経験を重ねる中でようやく身につくものであり、それはそう簡単に手に入れることはできないものだと私は考えています。時間をかけて真面目に仕事に取り組んだ結果、ようやく手に入れることができるものであり、「成長する」ことはそれほど簡単なことではないと思っているのです。

成長欲求が強いこと自体は悪いことではありません。しかし、くれぐれも目に見える成長感を得ることが目的にならないでほしい、そのために焦らないでじっくりと仕事に打ち込んでほしいと老婆心ながら思っています。

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第1,109話 中小企業が大企業に「勝てる」ものとは?

2022年03月27日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

唐突ですが、中小企業には大企業に「勝てる」ものと「引き分け」にできるものの2つがあることをご存じでしょうか。まず「勝てる」ものですが、それは経営者と社員とのコミュニケーションの深さです。会社に限らずすべての組織はチームワークで成り立っています。メンバー間の意思疎通が滞れば、チームは機能しなくなります。そして組織の規模が大きくなるにつれ、コミュニケーションは難しくなっていきます。

1対1のコミュニケーションを糸電話に例えてみます。メンバーが2人だけなら1本の糸(“パス”と言います)で済みます。3人ならパス数は3、4人なら6・・と増えていきます。n人のときのパス数は(n(n−1))/2で計算できます。人数が増加するにつれ指数的にパスが増え、コミュニケーションが上手く行かなくなっていきます。

通常はそうした事態を避けるために、チームを分割することでコミュニケーションを行いやすくするという手段を取ります。はじめはそれで上手く行きますが、やがて時間が経つにつれチームの「タコつぼ化」がはじまります。「タコつぼ化」とは小さなチーム内でのコミュニケーションが行き過ぎて、他のチームと情報共有ができなくなる(“しなくなる”の方が正しいかもしれません)状態を指します。

企業で起こる「不祥事」の背景には、こうした「タコつぼ化」した組織構造があります。大きな組織では、それを避けるためITをはじめとした様々な技術や手法を使いますが、結局は人間の心理が生み出すものですからそう簡単には解決できません。

一方、社員が100人を下回る企業ならば経営者が全社員と良好なコミュニケーションを行うことが可能です。たとえば、社長が全社員の名前を憶えるだけで社内のコミュニケーションはかなり深くなります。これは大企業には決して真似できないことです。

さて、もうひとつの「引き分け」にできるものは「時間」です。人材や資金、設備や技術を多く持っている大企業でも社員1人の1人の時間だけは「多く」持つことができません。大企業の1時間も中小企業の1時間も同じなのです。会社の規模が小さくても、全社員、1人1人が時間を上手く使いこなせば、少なくとも時間という資源の使い方では大企業と「引き分け」に持ち込むことができます。

ところが、残念ながら時間の使い方に関しては中小企業よりも大企業の経営者、社員の方が優れているように思います。遅刻をしない、納期を守る、仕事中は徹底して集中するといった「基本動作」においては、大企業の従業員の方が厳しく躾(しつけ)られているようです。せっかく同じ資源を与えられていながら非常にもったいない気がします。

経営者の皆さんにお願いします。時間という資源を無駄にしないために、ぜひ社員教育をしっかりと行ってください。社員全員に「トヨタもうちの会社も時間は対等だ」ということを徹底して分からせてください。そうすれば大企業と十分に「引き分ける」ことができます。

中小企業の経営者が重視しなければならないことは、いついかなる時でも「コミュニケーション」と「時間」の2つです。4月、新しい仲間がやって来ます。あなたの会社を「勝てる会社」に変える絶好のチャンスです。

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第1,108話 職場で活躍できるシニア社員とは

2022年03月23日 | キャリア

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昨年(2021年)4月に高年齢者雇用安定法(高年法)が改正され、企業には70歳までの就業確保が努力義務として課されました。さて、皆さんの職場では高齢者の人数は増えていますか?

官民問わず様々な組織にお邪魔すると、以前と比べシニア社員の数は明らかに増えていると感じます。人事部門に確認すると多くは65歳までの人であり、66歳以上の就業を積極的に取り入れている組織はあまり多くはないと感じています。

60歳から65歳までのシニア社員が働くことはもはや一般的といってもいい状況ですが、ではその人たちは職場でどのように働いているのでしょうか?私は、これまでシニア社員にお会いするたびにインタビューをさせていただいてきましたが、それぞれの職場で知識・技術・人脈などをフル活用し、また後輩の育成にも積極的で組織にプラスの影響力を発揮している人が想像以上に多いと感じました。一方で、あまり職場で活躍せずに、どちらかというと組織のお荷物的な存在になってしまい、周囲へマイナスの影響を与えてしまっている人がいるのも、また事実のようです。

周囲に話を聞いてみると、そういう人はことあるごとに「もう年だから・・・」と繰り返し、仕事に対して前向きに取り組もうとはしないのだそうです。確かに体力の低下は否めないかもしれませんが、こうした状況ではその人が在籍する意義に疑問譜が付くだけでなく、周囲のモチベーションまで下がってしまいかねません。

では、このようなシニア社員に力を発揮してもらうには、どうすればよいのでしょうか?

そこでお伝えしたいのが、心理学者のレイモンド・キャッテル(Raymond Cattell)の話です。キャッテルの功績は様々ありますが、その一つが知能を「流動性知能」と「結晶性知能」とに分けたことです。流動性知能は記憶力や暗記力・集中力などで、情報を獲得したり処理したりする能力のことであり、また新たな環境に適応したり、問題の解決策を模索したりする能力のことです。これは40歳頃をピークに低下すると言われていますので、流動性知能に関しては「もう年だから・・・できない」というのは、一理あるのかもしれません。

もう一方の結晶性知能は判断力のことで、知識や経験を生かして応用する能力であり、こちらは年齢と共に上昇し続けると言われています。そのように考えると、シニア社員はまさにこの結晶性知能である判断力をフル活用して、職場に貢献することができるというわけです。

どのように結晶性知能を使うのか、それは過去の経験によるところが大きいようです。今後、シニア社員になる前のタイミングで一度、獲得している知識・技能等を顕在化してみてはいかかでしょうか。

なお、キャッテルは「結晶性知能の発達は、個人の流動性知能によって左右される」とも言っています。つまり、同じ経験を積もうとする人が二人いるとすると、流動性知能の高い人のほうが、より結晶性知能を発達させることができるということです。

自身はシニア社員になるのはまだ当分先だという年齢の方も、将来自分がシニアになった際に職場になくてはならない存在になるためにも、流動性知能と結晶性知能の双方の重要性を認識し、今からそれを高める努力をしておくことが大切だということを、しっかり意識しておくことが必要ではないでしょうか。

(冒頭の写真はWikipediaより)

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第1,107話 就きたくない職種ナンバー1

2022年03月20日 | 研修

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「あなたが就きたくないと思う職種を教えてください」と聞いたところ、最も割合が高かったのは「営業」の43%で、「営業」職は男女とも非常に敬遠されていることが明確となったそうです※。

この結果について「意外だ」と思う人は少ないでしょう。営業の仕事といえば「ノルマに追われ、嫌な客に頭を下げ、その挙句断られ、上司から怒られる」というイメージだと思います。

では、世の中から営業の仕事が一切なくなったらどうなるでしょう。必要な商品やサービスに関する情報はすべてネットから手に入るとします。そして、欲しいものがあればAmazonで買い物をするように何でも手に入り、すぐに届けてくれるならば別に営業など必要なさそうです。「わざわざ売り込みに来てくれなくても結構!」つまり、営業が無くなっても全く困らないと言いたくなります。

たとえば「スマホが欲しい」という人のニーズは千差万別です。先端の機能を使いたい人もいれば仕事で使うだけなので並みの機能で良いという人もいます。また、お年寄りは古いタイプの携帯電話が使えなくなったので買い替えたいだけ、ということもあるでしょう。そうした細かいニーズに応えることができるウェブサイトもありますし、AIを使った電話応対もあります。

しかし、現状はそう上手く行っているとは思えません。

スマホを買おうと思ってウェブサイトにアクセスしても、よく分からないので電話をしてみました。録音された音声ガイダンスに従って何度か番号を押したり、#を押したりしました。ようやく繋がるかと思ったら「ただいま大変込み合っています。しばらくしてからおかけ直しください」という音声が聞こえてきました。

こうした経験で気分を害したという方も多いでしょう。私たち「生身の人間」には感情があります。機械には(今のところ)感情を読み取って対応する機能はありません。

一方、優秀な営業担当者は「生身の人間」が発する複雑な感情を感覚的にキャッチして的確な対応をとります。そして、様々な視点から情報を引き出して真のニーズを見つけ出します。そんな高度なスキルを持った営業担当者は、今後ますます必要とされることでしょう。

しかし、それができる優秀な人材はそう簡単には現れません。非効率で面倒な手法ですが、結局は「ノルマに追われ、その挙句断られ、上司から怒られる」という辛い営業を経て生き残った少数の人たちからそういう人材が現れるのだと思います。

AIはまだまだ人間の営業力に追いついていません。営業は「就きたくない職種ナンバー1」かもしれませんが、生き残ることができればAIをしのぐ凄いスキルを手に入れることができます。

来月、もしあなたの会社の新入社員が営業に配属されて不満そうにしていたら「AIに勝てる職種だよ!」と言ってあげてください。

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※ 「ジョブ図鑑」(株式会社Agooraが運営)の調査による https://job-zukan.jp/

 


第1,106話 情報をそのまま鵜呑みにしてしまうのは危険

2022年03月16日 | コミュニケーション

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コミュニケーションの行き違いを避けるための方法の一つに、あいまいな表現を使わずに「数値化する」ことがあります。数値化は仕事の指示をしたり、逆に指示を受けたりする際などには特に大切です。たとえば、上司が部下へ「なるべく早くやってね」と仕事の指示をした場合に、上司は「1時間以内には完成させてほしい」と考えていたのに、一方の部下は「今日中に仕上げればよい」と考えているなど、「なるべく」という言葉からイメージされる状態が双方で異なることはよくあることです。

弊社が研修を担当させていただく際に、「コミュニケーションミスをなくすために、数値にできるものは数値にしましょう」と繰り返しお伝えしているのは、そういった理由からなのです。

このように、数値化にはメリットがあるわけですが、一方で数値化したことによってそこだけが一人歩きしてしまい、本来の意味や主旨とは異なる形で伝わってしまうようなことも起こりえます。

この具体的な例として挙げられるのが、お聞きになった方も多いとは思いますが、「メラビアンの法則」です。メラビアンは、コミュニケーションに影響を与える要素には3点あり、1つ目が表情・視線・態度等、2つ目が声の調子(口調、速さ、大きさ)、3つ目が言葉そのもの・内容とし、調査の結果それぞれがコミュニケーションに与える影響の割合を順に55%、38%、7%としました。

実は、この数値のとおりになるのにはある条件があるのですが、その部分が置いてきぼりになってしまい、結果としての数値だけが強調されて伝わってしまっている例が多いようなのです。

その条件とは、非言語と言語の内容が一致していることであり、それが一致していない場合には非言語の影響のほうがより大きくなるというものです。

たとえば、遅刻を繰り返す部下に対して上司が注意する際に、にこやかな表情や優しい口調で「遅刻はしてはいけないよ」と伝えたりすると、メッセージの中身よりもやさしい表情と口調の方がより強く相手に伝わってしまい、部下の方は注意をされたとは受け取らないということになってしまうケースがあるのです。

このように、コミュニケーションを行う際には言語、聴覚、視覚のそれぞれの情報を一致させた上で相手に伝えなければいけないというのが重要な条件です。しかし、メラビアンの法則のように数値そのもののインパクトが大きいと、その部分だけが独り歩きしてしまい、大事な前提部分が抜けてしまったり、その結果として伝えたかったメッセージが正しく伝わらないということもあるわけです。

仕事の状況を的確に把握するためや、コミュニケーションにおけるミスをなくすために、物事を数値でとらえることは大切なことです。

しかし、同時に数値の背景にあるもの(条件等)をきちんと捉えておかないと、誤った理解をしてしまい、結果として間違った情報が伝わることになってしまいかねません。

私たちは忙しかったりすると、つい情報をそのまま鵜呑みにしがちですが、状況に応じてその出所や根拠をあらためて確認したり、別の観点から検証してみたりすることが重要だということなのです。

情報が簡単に入手できてしまう現代だからこそ、情報のソースや前提などをしっかり確認することの大切さ、重要性を改めて感じています。

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第1,105話 「見えないスキル」の市場価値について考える

2022年03月13日 | 研修

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最近は副業を認める企業が増えてきました。マイナビの調査※によると、副業・兼業を認めている企業は全体で49.6%だそうです。副業の多くは「スキルマーケット」を利用する場合が多いようです。スキルマーケットとはネット上で個人の技術や知識を売買する仕組みです。イラストやホームページの作成、外国語の翻訳、様々なアドバイスなど、個人が持つ得意技をマーケット上に公開して、それらを必要とする顧客が検索して比較し、購入します。フリマの一種のようなものでしょうか。

さて、副業は関係ないという方にとっては、そんな話はどうでも良いことだと思われたかもしれません。しかし、個人の知識やスキルが「売り買いできる」つまり金額で評価されるものだということは十分に認識しておくべきです。

現在、雇用形態がメンバーシップ型からジョブ型に変わりつつあります。簡単に言えば、終身雇用のようなチームワーク重視の組織から米国のようなプロフェッショナル集団の組織へと変化しています。明日からいきなりジョブ型に変わるということはないでしょうが、徐々に個人のスキルが企業の中でクローズアップされてくることは間違いありません。

そのうち社員1人ひとりのスキルを市場価格で評価する仕組みが現れるでしょう。そのときの「スキル」とは資格や技能に限らず、論理的な思考力やコミュニケーション能力、部下育成力といった客観的に判断することが難しいものも含まれると思います。

たとえば、エンジニアの技術的なスキルは比較的はっきりと知ることができますが、人を育てる技術を測ることは大変難しいのです。一方、企業にとってはコミュニケーション能力に欠ける優秀なエンジニアを採用するよりも、若手の技術者を育てることができるマネージャーを採用した方が中長期的にはより大きな利益が得られると考えるかもしれません。

そうした企業のニーズが、部下育成力のような「見えないスキル」を可視化していくことは間違いありません。その方法が「テスト」なのか、あるいはAIを使ったまた別の手法なのかはっきりとは言えませんが、社員の「見えないスキル」が市場価格で判定される日も遠くないでしょう。

「その日」が来る前に、若手だけではなく、すべての社員が自己啓発や研修を通じて「見えないスキル」を付けておく必要があります。

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※ マイナビ「働き方、副業・兼業に関するレポート(2020年)」:2020年1~7月に中途採用業務を行った企業、1,910社の人事担当者を対象


第1,104話 女性管理職を増やすための意識改革とは

2022年03月09日 | コンサルティング

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「活躍してもらいたくて女性管理職に任命したけれど、実は本人がそれを歓迎していないのです」

これは、ある500人規模の組織の女性副社長から聞いた言葉です。その方は初の女性副社長として社外から抜擢されたのです。その使命の一つに女性社員の活躍支援があったため、女性社員の声を積極的に取り上げたり、活躍が期待される女性を積極的に管理職に登用するために働きかけを行ったとのことです。

ところが、管理職に任命して1年が経過したころ、当の女性から「本当は管理職にはなりたくなかった。」との話を聴いたのだそうです。組織のため、本人のため、後進のために良かれと思って登用したつもりなのに、歓迎されるどころか職を解いてほしいという声を聴いて残念に思ったのだそうです。同時に、女性管理職を増やすことの難しさを改めて感じたという話をしてくださいました。

さて、3月8日は「国際女性デー」でした。国際女性デーとは「国や民族、言語、文化、経済、政治の壁に関係なく、女性が達成してきた成果を認識する日」とのことです。日本では、諸外国と比較して依然として女性リーダーの数が少ない状態が続いています。女性管理職の割合のトップであるフランスの約4割と比べ、日本はわずか1割強(厚生労働省の「雇用均等基本調査」課長相当職以上の「女性管理職割合」は12.4%)です。

私は時々、女性管理職として活躍をされている方々の話を聴く機会がありますが、自ら管理職を志望して職位に就いた人は1割ほどで、それ以外は管理職になることを躊躇したものの、推薦や人事によってなったという人の方が圧倒的に多いと感じています。これらを踏まえると、多くの女性は管理職というポジションに対して、敷居の高さを感じてしまっているのではないかと思っています。

その理由としては、女性管理職として活躍しているロールモデルの数が圧倒的に少ないことがあるのではないかと考えていますが、それに加え男性の側にも女性管理職を受け入れる意識が醸成されていないことも大きいのではないかと思っています。現にある女性管理職から聞いた話では、管理職になった後に一部の男性社員から無視をされたり、意地悪をされたりするなど困った経験があるとのことでした。冒頭で紹介した女性管理職も、こうしたことが壁になっていたのかもしれません。

一方で、管理職になったがゆえのプラスの声もたくさん聴きます。具体的には管理職になって組織全体を俯瞰して見られるようになったという感想は多くの人が口にします。これは上のポジションに就いたからこそ得られた経験によるものだと思います。

それでは、今後女性管理職を増やしていくためにはどのようにすればよいのでしょうか。これまで様々な女性社員の声を聴いてきて私が強く思うのは、女性だけに意識変革を求めるのではなく、男性社員にも意識を変えてもらうために様々な場面で積極的に働きかけていくこと。それを少しずつであっても、根気強く進めていくことが何より大切ではないかと感じています。

日本において女性管理職がなかなか増えないのは、これまで長い時間の中で培われてきた日本の文化や風土といったものも影響しているはずです。だからこそ、焦らず、諦めず、女性にも男性にも意識変革を求め続けることが大切だと改めて思うのです。

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第1,103話 会社の寿命は24年?

2022年03月06日 | 研修

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日経ビジネス1983年9月19日号の特集「会社の寿命は30年」は、当時のビジネスパーソンの大きな話題となりました。その内容は、主に大企業の過去のデータを集約してみると企業が繁栄できる期間は30年というものです。会社の寿命を「繁栄期」と定義していますので、30年で倒産してしまうという意味ではありません。

では中小企業はどうなのでしょう。大企業とは違ってズバリ「寿命」が示されています。東京商工リサーチによれば、2021年の全国企業倒産は6,030件(新型コロナが原因の倒産は1,668件)で、会社の平均寿命は23.3年でした。そのうち負債1億円未満の「小規模倒産」は4,503件(構成比74.6%)ですから「中小企業の寿命は24年くらい」と言えそうです。

倒産理由ですが、1位が販売不振71%、2位が既往のしわ寄せ 10%、以下連鎖倒産、過少資本、放漫経営と5%程度の要因が続きます

さて、「既往のしわ寄せ」とは聞きなれない言葉ですが、経営者が会社の状態が悪化し始めても「具体的な手を打たず放置すること、それによって経営が危うくなってしまうこと」を言います。たとえば、売上が徐々に低下してきたときに「そのうち景気が回復して売上も戻るだろう」と、何の手も打たないでいると、やがて致命的な事態に至り倒産してしまうことです。

「既往のしわ寄せ」の原因は、設備の老朽化、社員の高齢化、デジタル化への対応の遅れなどが挙げられています。こうしたまずい状況に対して経営者が何の手も打たないことが「しわ寄せ」となって会社を倒産させるのです。

たとえば、昨今話題のDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、最新のシステムを導入しただけでは「手を打った」とはいえません。なぜならシステムを稼働させ、有効活用するのは人=社員だからです。社員に知識とスキルを与えることではじめてシステムが動き出すのです。

それはDXに限ったことではありません。販売を拡大する手法も、製造を効率化するノウハウも、品質を維持するための知識も・・・すべては人(社員)に属するスキルであり知識です。それは社員を教育する以外に身に付ける術はありません。

「企業は人なり」と言います。特に中小企業は「人」が全てだと言えます。経営者が社員に投資しなければ、確実に将来大きな「しわ寄せ」となって会社を襲うことになります。

会社の寿命を24年で終わらせないために、今こそ社員に対する教育投資を実行するときです。

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第1,102話 オンラインセミナーの参加条件とは

2022年03月02日 | 研修

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コロナ禍になって以降、オンラインで行われる研修やセミナーが多くなりました。対面型とオンラインのそれぞれにメリットとデメリットがありますが、既に言い尽くされた感もありますので、ここではその点にはふれません。しかしながら、オンラインに関しては最近改めて顕在化してきた問題点が2点あると考えていますので、ここで紹介したいと思います。

1点目は、オンラインで行われるセミナー(公開型)の時に「ビデオをオフにして、画面に顔を出さない」こと、さらに2点目として「セミナーで、講師からブレイクアウトセッション(数名のグループに分かれて話し合いをする)に参加するよう促されても、それに従わない人がいる」ことです。

1点目の顔を出さないことについては、既に本ブログでも言及している(第1,028話 オンライン研修で顔を出さない人の心理とは?)ところですが、最近はオンライン研修に慣れたからなのか、以前よりも顔を出さない人が増えていると感じます。

先日、私自身が受講者としてあるオンラインセミナーに参加したときのことですが、顔を出しているのは1割くらいであり、さらに講師から「これから4~5名のグループに分かれて話し合いをしてください」との指示があったのですが、オンライン上のグループ討議に参加したのは私を含めて2名のみでした。他の人が参加しなかった理由はわかりませんが、4~5名での話し合いをイメージしていた私としては、2名しか参加しなかったことも少々驚きでした。

そこで、講師として研修やセミナーを担当する際に、顔を出さない人に対してどのように感じているのかを同業者に聞いてみたところ、一部に「全く気にならない、DJになったと思えばよいのでは」と答えた人もいましたが、大半は「顔を出さない、グループ討議に参加しない人がいるとセミナーの進行上、支障があると感じている」ようでした。

それでは、今後こうした状況を解決するためにはどのようにすればよいのでしょうか。通常、公開型のセミナーは主催者に強制力がありませんので、顔を出すか出さないか、グループ討議に参加するかどうかは受講者の自己判断に委ねられる部分が多いのです。そうした状態だからこそ、今後、主催者側は研修やセミナーの募集をする際に顔を出すこと、グループ討議にも参加することなどを参加条件として事前にアナウンスすることが大切だと考えています。

実際、2週間ほど前に私が担当させていただいた公開型のオンラインセミナーでは、冒頭に主催者が「この研修はビデオはオンにし、途中にグループ討議もあります。」ときちんとアナウンスをされましたので、参加者全員が顔を出し、さらに積極的に討議に参加し、各グループに私が入室した際も熱心に意見交換をされていました。

また、先週担当させていただいたオンラインセミナーでは、開始時には半分くらいの人しかビデオがオンになっていませんでしたが、冒頭で主催者が顔を出す意味を丁寧に説明してくださったところ、物理的な理由で顔を出せない一人を除き全員が顔を出してくれました。その結果、演習も双方向で進めることができ、受講された方にとっても講師の話を一方的に聞くより理解が深まったのではないかと考えています。

受講者が研修やセミナーに求めていることは様々だと思います。講師からテーマに基づく話を一方向で聴きたいのか、あるいは特定のテーマについて講師から情報を得るだけでなく、演習やディスカッションを通して理解を深め、知識やスキルを獲得することを目的として参加しているのか、人によって異なるかとは思います。しかし、だからこそ対面型とオンラインと選択することができる今はある意味でチャンスであり、積極的に活かすべき機会ではないかと考えています。    

オンラインによるセミナーのメリットはたくさんありますので、今後ますます拡大していくと思います。受講者にとって有用なものとするためにも、主催者側は参加条件などの事前のアナウンスをしっかり行い、受講者はそれを納得したうえで積極的に受講していただきたいと考えています。

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