中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,131話 人材への投資に向けた取組

2022年08月31日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「トップの方針で研修の予算が削られることになってしまいました。人事部としてもトップの判断に正直驚いていますし、ショックです」

これはコロナ禍の少し前、4,000人規模の社員がいるA組織の研修担当者からお聞きした言葉です。弊社がこの組織の研修を担当させていただくようになって以降、その時点で10年経過していましたので、こちらとしても非常に残念だと感じました。研修を中止した理由をお聞きしたところ、人材育成にかかわるコストを今後は顧客へのサービス提供に振り向けるというトップの考え方ということでした。

顧客へのサービスを厚くすることは組織の戦略としてとても大切なことだと思います。しかしサービスを提供する担い手である社員の育成を中止や削減してしまって、よりよいサービスを提供することはできるのだろうか、目的と手段がちぐはぐになってしまってはいないだろうかと感じたことを覚えています。

組織にとって「ヒト・モノ・カネ」は重要な経営資源です。中でも「ヒト」は最も大切な資源だと考えられており、ここ数年、様々な組織で人材への投資に関心が高まってきています。先が見えない時代と言われて久しいですが、そういう時代だからこそ競争力の源泉は人だと考えられるようになってきているのです。そのために、組織の将来を見据えて自組織にはどういう人材が必要なのか、それをどのように育成するのか。あるべき姿から逆算して考える必要性がこれまで以上に高まってきているということなのでしょう。このように人材とその育成に注目が集まるようになってきたことにより、企業に投資する際に人材戦略が重要な判断材料になる傾向にもあるようです。

かつて、景気が悪くなるとコスト削減の一環として早々にカットされていたのが、広告費、交通費、交際費と並んで教育費でした。実際、「設備投資したため、教育はしばらくお預けにします」という話を経営者から聞いたこともあります。確かに社員を採用し、社員教育を行うなどの人材への投資は、今日行ったからといって必ずしもすぐに効果が現れるものでもありません。設備投資などに比べ目に見えないだけに、その意味や価値がはっきりしないと思われてしまい、費用対効果の面などから効果がすぐに見込めないものは、当然のように後回しにされてしまっていた時代でもあったのです。 

そのような時代を経て、最近はようやく人材の価値を高めることに注目が集まるようになってきています。今後、投資家の関心もますます人材への投資に向けた取組に関する情報に向かっていくのではないでしょうか。

しかし言うまでもなく、人は簡単に育つものではありません。そのための投資も時間をかけてようやく回収ができるものであり、費用対効果の観点から急ぎすぎることなく、じっくり丁寧に行っていただきたいと思うのです。そして、先述のA組織のように人材育成を一旦中止してしまったところも人材育成の重要性を再認識し、取り組みを再開することを期待したいと考えています。

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第1,130話 社会的手抜きをしてしまうのも人間

2022年08月24日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「アイディアを出す際には、一人で考えるよりも4~5人のチームでディスカッションをする。さらにそれを全員で共有すれば、たくさんのアイディアを知ることができる」との考えから、弊社が研修を担当させていただく際には、様々な演習に取り組んでいただいています。

はじめに個々で課題に取り組み、次にそのアイディアを補足し強化するために、チーム内で共有する。そして最後には受講者全員で共有をしています。そうすることによって、たとえば一人で考えたときには5つくらいしかアイディアが浮かばなかったとしても、チームで共有することにより20くらいのアイディアになり、さらには受講者全員で共有することで、さらに多くのアイディアを知ることができるようになるのです。

研修のみならず仕事においても、個人で取り組むよりもチームで取り組んだ方が成果が上がることが多いからこそ、チームを作り共通の目標を持ち、お互いに協力し合って仕事を進めているわけです。これに加え、やり方やしくみ、手順などの見直しを行うことにより、単純に個々人の能力を合計した以上の力が発揮できるわけです。

しかし、人が集まって目標に向かうことにはメリットがある一方で、マイナスの面もあるのです。それは、複数人がともに一つのことに取り組むことによって、「社会的手抜き」が発生してしまう可能性があるからです。

「社会的手抜き」とは、20世紀初めのフランスの農学者であるマクシミリアン・リンゲルマン(Maximilien Ringelmann)によって示された心理的な働きを示す言葉です。人間が集団で作業を行うと、個人や少人数で作業をするときよりも1人あたりの生産性が低くなってしまうという現象を言います。社会的手抜きは「他のメンバーがやっているから自分は適当にやっても大丈夫だろう」「誰かがやってくれるだろう」という思いから生じるものです。そのように考える理由としては自分の頑張りにかかわらず結局は集団として評価される、自分の頑張りは評価されないということがあります。

人は他者の存在があると、意識しなくても社会的手抜きを起こしてしまいかねないということです。集団のサイズが大きくなり大人数で作業を行う環境下であるほど、結果として1人当たりの作業量は小さくなってしまい、期待通りの成果が得られないということも考えられるわけです。

確かに、私自身も以前あるプロジェクトのメンバーになった際に、自分の負担が増えることを恐れてしまい、積極的に発言をしなかったという経験があります。また、最近プライベートで合唱の練習をしているのですが、歌唱力に自信のない私はつい他の人の歌唱力におんぶをしてしまったという経験もあります。これらはいずれも、私自身が社会的手抜きをしていたということです。

チームを組み、互いに目標やゴールを十分に理解したうえで、最大限の成果を目指して取り組んだとしても、一方でメンバーが社会的手抜きを起こしてしまう可能性もある。チーム力を最大限発揮するためには、人はこうした両面を持つということを踏まえたうえで、一人一人に課題を与える、一人一人の貢献をきちんと評価するなど社会的手抜きを起こさせないための取り組みを同時に行うことが求められます。あなたのチームでは、どのように取り組んでいますか?

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第1,129話 「三五館シンシャの日記シリーズ」が興味深い

2022年08月17日 | キャリア

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「何歳まで働くのか」、近年注目されることの多いキーワードだと思います。年金の受給開始年齢や保有している財産の有無、さらには健康状態や社会のニーズなど様々なことが関係しますので、必ずしも本人の希望どおりにはいかないとは思います。内閣府の令和2(2020)年度の調査でも、60歳以上の人の9割近くが70歳以上まで働きたいと考えているとのことです。

このように高齢者の労働について注目されることが多い近年ですが、私がここ数年、興味を持って読んでいるのが、三五館シンシャの「職業日記シリーズ」です。読んだことがあるという方も多いと思いますが、この日記シリーズは中高年(高齢者が中心)の働く日々のドキュメンタリーです。既に11冊が出版されていますが、交通誘導員、派遣添乗員、メーター検針員に始まり、ディズニーキャスト、そしてコールセンターと続き、最新版は住宅営業マンに関する内容です。私はたまたま最初に出版された交通誘導員の日記について、新聞広告で知ったことがきっかけで読み始め、その後は新しいものが出るたびに必ず読んでいます。

このシリーズが面白いのは、我々が生活していく中で接点はあるものの、知り合いなどに勤めている人がいない限り、なかなかその実情を知りえない職業について、著者のリアルな体験を通して知ることができることだと考えています。

また、それぞれその職業に就くまでの経緯は著者自身の希望とは異なり、様々な事情からいたし方なく就いたケースがほとんどであり、さらに肉体的・精神的にも大変なのにもかかわらず、その多くは低賃金なのです。しかし、それぞれの著者は、顧客から怒鳴られたりクレームに対応に奔走したりする中で、まれに感謝されることもあり、そうした時々に小さなやりがいを感じながら、明日へのモチベーションにつなげて仕事に励んでおり、読者である私たちはそうした姿に共感するのだと思うのです。

「職業日記シリーズ」を発行している、三五館シンシャの代表取締役 中野長武氏によると、「このシリーズは、すべて著者の持ち込みの企画であり、仕事のハッピーな側面だけを描くものではありません。私生活の痛みも、全てをさらけ出す覚悟が決まっているかどうか。それがコンセプトであり、著者に求める“条件”です」(DAIMOND online)とのことです。

このシリーズを読むたびに、「あの職業の内情はこうなんだ」、「いずれの職業も大変だ」などと感じられ、あらためて「働くということは決して簡単なことではない」と率直に感じるのは、プライベートも含めて著者がすべてをさらけ出している、つまり建前ではなく本音で書かれているからなのでしょう。

高齢者に限らず、我々は日々仕事をする中で、ふと自身の今後のキャリアをどのように築いていくか、何歳まで働くのか、どのように生きるのかなどについて考えることがあると思います。

そういう時に、このシリーズをとおしてそれぞれの職業や人生の喜怒哀楽に触れることで、何からのヒントになるところがあるように感じます。年代に関わらず、読んでいただきたいと思う1冊です。

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第1,128話 自分自身のことを、どれくらいしっかりと理解できているのか

2022年08月10日 | コミュニケーション

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「私は元来、いい加減な性格だから・・・」、「私は神経質だから・・・」など、私たちは自分自身の性格や性質について口にすることがあります。しかし、実際のところ私たちは自分自身のことを、どれくらいしっかりと理解できているのでしょうか?

「易者身の上知らず」という諺があります。他人の身の上について占う易者も、自分の運命を占うことはできない。他人のことについてはあれこれ言えるが、自分のこととなると正しい判断が下せないのが人間の人間たるところという意味です。

以前、「穏やかな性格」であると自称し、他者からもそのように認識されていたと思われていたのに、自身の都合の悪い状況になった途端、一転して怒鳴ったり周囲へ嫌がらせをしたりして、一瞬にして周囲からの信頼を失った人を見たことがあります。その場に居合わせた人は皆、呆気に取られてしまいましたが、窮地に陥ったときにどう対応するのか、そのときにこそ人間の大きさがわかるような気がしました。自分が窮地に陥った場合どうなる(する)のか想像できないという人は意外に多いのではないかと思います。このように考えると、自分自身のことをわかっているつもりであっても案外わかっていない。それが人間というものなのかもしれません。

しかし、私たちが社会生活の中で自分のことを少しでも知ろうと努めたり、他者に理解してもらえるように努めることは、とても大切なことだと思います。それは、私たちは仕事のみならず生活のすべてにおいて、他者とのかかわりの中で生きているからであり、そうすることにより周囲とのコミュニケーションもより一層とりやすくできると考えているからです。

「ジョハリの窓」と呼ばれる心理学モデルがあります。自己分析に使用するものですが、自身が見た自己と、他者から見た自己の情報を分析し4つに区分することで、自己理解を深め対人関係におけるコミュニケーションを改善する際に役に立つモデルです。

その4つとは、 ① 自分も他者も知っている自分(開かれた窓)、② 自分はわかないが、他者は知っている自分(気づかない窓)、③ 自分は知っているが、他者は知らない自分(秘密の窓)、④ 自分も他者も知らない自分(閉ざされた窓)です。

他者とコミュニケーションをよりよくとるためには、①の開かれた窓を大きくすることができればよいわけですが、ではどうすればこの窓を大きくすることができるのでしょうか?

そのためには、②の気づかない窓に基づき、他者から「あなたは、こういう良いところがあるね」や、「このようなところを改善すれば、もっと仕事が進めやすくなるよ」などのフィードバックを得られると、自身の気づきにつなげることができるのではないかと考えます。

しかし、このフィードバックを得るということも、そうそう簡単なことではありません。他者に対しては、だれしもプラスの面は比較的伝えやすいのですが、改善点を伝えるとなると敷居が高いと感じる人が多いのではないでしょうか?

マイナス面も伝え合えることができる関係になるためには、日ごろからの良好なコミュニケーションが必要と、そうなると話が堂々巡りになってしまうようにも思えます。

かように、自分を知り、他者に理解してもらい、コミュニケーションに役立てるということは思うほど簡単にはいかないかもしれません。その第一歩としてあなたから他者に対し、本人が気が付いていないプラスの面を積極的にフィードバックする、そこから始めてみてはいかがでしょうか?

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第1,127話 主体的な人が求められているわけ

2022年08月03日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「積極的に、前向きに、主体的に取り組んできたことがよかったのだと思います」

これは、つい先日お会いした、ある製造業に勤める女性(Aさん)から聞いた言葉です。

Aさんは34年前に高校を卒業後、新卒として製造業であるB社に入社したとのことです。入社後何度か異動し、その都度主体的に精一杯働くことでキャリアを重ねてこられ、現在は総務部で育成と採用の仕事をされています。

Aさんは入社後の自身のキャリアを、次のように話してくれました。

「はじめは営業管理部に配属されました。そこでは、自社の製品を覚えることができたのです。また、電話を積極的に取っていたら、どういう会社と取引しているのかを知ることもできるようになり、次第に相手の声を聴いただけで、どのお客様からの電話で、どういう用件でかけてきたのかがわかるようになりました。次は生産管理に行きました。そこでは、生産を管理するのですから、一気に製造業の理解が深まりましたね。その次は製造部門でした。男性ほどには重いものを持ち上げることはできませんでしたが、プレス加工の現場に女性として入りました。面白かったです。でも、製造部門にいるときにリーマンショックがきてしまい、会社は人員の整理もすることになりました。その次に起きたのは東日本大震災でした。そのときは、初めての夜勤もしました。大変でした。そうしているうちに、今度はインドネシアからも実習生がやってくるようになりました。何とか彼らとコミュニケーションをとりたくて、インドネシア語の会話集を購入して勉強したら、ようやく挨拶ができるようになり、少しずつコミュニケーションもとれるようになりました。その後、帰国してしまっても次の実習生がまたやってきて、前に来ていた人からの手紙を言付かってきてくれたりしたため、元気にやっている様子がわかりました。そして、18年前から総務部で仕事をしています。それまでの経験を買ってもらえたようで、声がかかったのです。現在は採用や育成をしていますが、とても楽しいですし、幸せです」とのことでした。

これがAさんの34年間のキャリアですが、この話をした後に「積極的に、前向きに、主体的に取り組んできたことがよかったのだと思います」と、生き生きとした表情で語ってくれました。

「主体的」という言葉、これは企業の経営者が新卒を採用する際に、切に願うキーワードではないでしょうか。2018年度まで毎年日本生産性本部が実施していた「経営者が大卒新人を採用時に重視すること」で、10年連続で主体性が2位にはいっていました(因みに1位は16年連続でコミュニケーション能力でした)。

この「主体性」については、様々な企業の経営理念や求める人材像に取り上げられることの多いワードだと感じます。自分から率先して行動できる人材を求める、何事にも好奇心を持ち、チャレンジできる人材を求めるなど、多くの企業が主体性に関わる人材を求めていることがよくわかります。これだけ多くの企業が求めている主体性ですが、裏を返せば主体的な人はさほど多くないからこそ、重要視され求められているということなのではないかと思うのです。

実際のところ、主体的に仕事をしたり生きていくということは、口で言うほど簡単なものではないのだと思います。だからこそ、主体的な人が求められるわけですし貴ばれるのです。そして、主体的に生きてきた人だからこそ、手にできる経験やキャリアがあるのだとも思います。

Aさんの様々な部署での経験は、一朝一夕で培うことができるものばかりではなかったでしょうが、それを経たからこそ今があるわけです。

Aさんの話には続きがあります。昨年技能検定を受験し、合格をしています。さらに、今後別の科目で技能検定を受験することも視野に入れて、現在は中学の理科の教科書を読み直しているそうです。「勉強も楽しくて」と語るAさん、どこまでも前向きで主体的な人です。

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