中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,122話 人柄をフルに発揮して組織で活躍する女性管理職

2022年06月29日 | キャリア

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「部下に注意したり指摘したりする際に、『私自身はできているのだろうか?』と考えてしまうのです。」

これは、先日ある組織で中間管理職として活躍している女性Aさんから聞いた言葉です。Aさんは入社後すぐに研修の部署に配属されたため、そのご縁で私はAさんと知り合いました。

Aさんは、バリバリとリーダーシップを発揮するというよりも、職場のメンバーの間をうまく調整したり、ご本人は気づいていないかもしれませんが、積極的にコミュニケーションをとることで温かな雰囲気の場を作るタイプです。そうしたこともあって外部の人間である私もAさんをはじめ、同じ組織の方たち数人と定期的に交流する機会を持たせていただいてきました。

そのAさんも入社後27年が経過し、今では課長補佐として働いています。先日久しぶりにお会いする機会がありましたので、女性管理職としての悩みについて尋ねてみました。そのときにAさんから聞いたのが冒頭の言葉です。これまでAさんが多くの人と接する姿を見てきた私は、Aさんは言うべきときに言うべきことを、きちんと穏やかに発言できる女性だと考えていましたが、そこに経験も加わり、Aさんらしい管理職になっていることが伝わってきました。

管理職として部下や後輩を注意したり、叱ったりしなければならない場面で、Aさんのように「自分はできているのだろうか」と内省することができる管理職は、どれくらいいるのでしょうか?一般的には、部下等の行為に対して「あるべき論」から指摘をする人が圧倒的に多いのではないかと思います。内省(reflection)とは、自己を深くかえりみること、自分自身と向き合い、自分の考えや言動を振り返り、気付くことを自ら観察することですが、Aさんは部下と接するときに、まさに内省をしているのです。

冒頭の発言の後に、私から「注意したり、指摘したり、叱ったりしなければならないとき、たとえば部下が遅刻を繰り返すようなことが起きた際には、どうしていますか?」と伺ったところ、Aさんは少し考えてから、「遅刻をした理由をまず質問します。遅刻するには、何らかの理由があるはずだと思うから」と答えました。

弊社が行う研修では、上司が部下を注意したり叱ったりする際には、まず質問し(事実を確認する)、そして相手の言い分を聞くステップを踏むことが大切であるとお伝えしていますが、Aさんはまさにこれを自然に行っていたのです。これはAさんが経験から学んだことなのか、元々の人柄なのだろうかと思いましたが、おそらくは両方なのだと思います。このように考えると、Aさんは自分ならではのリーダーシップをしっかりと発揮されていると言えます。

我が国では、女性管理職の割合が少ないことが以前から問題として顕在化しています。これは、Aさんのような力を持つ女性がちゃんといるのにも関わらず、管理職というポジションに就いていない組織がいまだに少なくないことを表しているのではないでしょうか。

私は、Aさんのように人柄をフルに発揮して組織で活躍する女性が増えれば、その組織はより活性化し、結果、組織の業績等も上がっていくのではないかと考えています。こうした女性リーダー・管理職がもっともっと増え、活躍できるようにするために、組織はどのようにすればよいのか、あらためてしっかり考える必要があるのではないでしょうか。

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第1,121話 嘱託職員として求められるプロ意識

2022年06月22日 | キャリア

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「後ほど上の者から説明します」

これは先日、私の知り合いがあるメガバンクを訪れた際に、待ち時間を質問したところ、対応した行員から返された答えとのことです。

具体的には、知り合いが店舗を訪れた際、既に5~6人が待っていたため、シルバーと思しき行員におおよその待ち時間を質問したのだそうです。その行員の説明では、「既に待っている人以外にも、今後予約をしたうえで来店する顧客がいる可能性もあるため、待ち時間はわからない」とのことだったとのこと。そこで「では、予約の人は何名くらいいるのですか?」と続けて尋ねたところ、その行員は近くにいた他の行員数人に声をかけ、話を始めたそうです。その際、その行員の「私は嘱託ですから・・・」や別の行員の「いや、私も〇〇で・・・」との声が聞こえてきたそうです。そして、知り合いのところに戻ってきて発したのが、冒頭の言葉だったのです。

知り合いは予約者の数を質問しただけなのに、「上の者から説明します」とはどういうことなのかと、一瞬呆気にとられてしまったそうです。

行員同士の会話から、対応した行員は嘱託職員のようでしたが、それは顧客の側には関係のないことで、顧客の前ではプロとしてしっかり回答してもらう必要があります。そもそも、このような簡単な質問にも嘱託職員が返答する権限が与えられていないとしたら、それも問題です。もしかしたら、知り合いの質問はルーチンの質問ではなかったのかもしれませんが、この行員の対応は顧客の質問に考えようとすることすら放棄してしまっているように思えます。これでは、嘱託職員としての存在意義がないのではないでしょうか?

「嘱託」とは、一般的には定年退職後に契約のもと勤務していた組織に続けて勤務する人のことです。また、有期契約で1年単位で契約を更新し、現役時代の経験を活かし、サポート的な業務を担当し、給与は定年前に比べ7割~半分程度に下がることが多いようです。そのような事情から、モチベーションが大きく下がってしまう人がいることも事実で、問題として顕在化しているところもあり、組織としてやる気を維持し力を発揮してもらうための取り組みの必要性が言われているところです。

実際、これまで私自身がお会いした嘱託として働いている人達は、過去の経験をもとに部下や後輩への知識やスキルの継承に力を注いでいたり、積極的にクレーム対応にあたったりするなど、意欲的に働いている人がほとんどでした。しかし、今回のメガバンクの嘱託職員のようでは、残念ながら戦力としてカウントするのは難しいと言わざるをえません。

新規に人を採用することが難しい状況の今、嘱託職員はこれまで以上に組織にとって大切な戦力となるべき人材です。外部から新たな人材を採用しゼロから育成するよりも、高い生産性を期待できるだけでなく、定年退職者を嘱託社員として再雇用することは現在、組織に課せられた社会的な義務にもなっています。そうであるならば、嘱託社員には、これまでに培った能力を最大限発揮してもらい、組織に貢献してもらわなくてはなりません。同時に、そのためには嘱託社員のモチベーションを維持することも大切なことです。

顧客対応をはじめ仕事の上では立場に関係なく、みなプロであるはずです。嘱託職員として対応する際にも、プロ意識が必要であることをあらためて認識していただくとともに、組織の側にもモチベーションを維持してもらうための取り組みが必要であると考えています。

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第1,120話 なぜパワハラが繰り返されてしまう組織があるのか?

2022年06月15日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「胸ぐらをつかんだり、蹴りを入れたりするのはパワハラになりますか?また、給料泥棒と言うのはどうでしょうか?」

これは、弊社が来月パワーハラスメント(以下パワハラ)防止を目的とした研修を担当させていただく予定のA企業の研修担当者から質問された内容です。A企業はこれまでに2回パワハラ研修を実施されていたのですが、改善されないため再度研修を行いたいとのことでした。

本年4月より労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されましたので、例年よりもパワハラに関する研修のご依頼をいただくことが多くなったと感じています。しかし、その多くは現時点ではパワハラを把握していないけれど、万が一確認できていないところで起きていたりすると大変なので、パワハラ防止のメッセージを送る意味合いでの研修の実施を考えられているようです。

一方、冒頭のA企業の状況は少々異なり、質問のような行為によるパワハラが顕在化しているとのことです。胸ぐらをつかんだり蹴りをいれたりする行為は、もちろんパワハラです。厚生労働省が示している職場のパワハラの6類型の中の身体的な攻撃にあたるだけでなく、さらに言えば状況によっては犯罪に該当してしまう可能性さえある行為です。また、給料泥棒というような言動も精神的な攻撃に該当します。ハラスメントには、ハラスメントかどうかの判断に迷うような「グレーゾーン」といわれるものがありますが、冒頭のこれらの行為は明確に「ブラック」な行為です。

そういう行為なのにもかかわらず、また過去に2回パワハラ防止の研修を行ったにもかかわらず、研修担当者がこのような質問をするのは、なぜなのでしょうか?

過去に2回行った研修の内容をお聞きしてみると、パワハラ防止に関する一般的な内容は網羅されていたようでしたが、結果として研修の効果は全く出ていないようで、その後も変わらず冒頭のような行為が繰り返されているそうです。そしてその結果、新人や若手が退職してしまうケースが多くなっているとのことです。厚労省が令和3(2021)年10月22日に発表した新規就職者の3年以内の離職状況は、新規高卒就職者36.9%、新規大卒就職者31.2%ですが、A企業では新入社員および若手社員の退職率はそれを上回っているのです。

それでは、パワハラ防止の研修を何度も行っているのにもかかわらず、なぜパワハラが繰り返されてしまうのでしょうか?私は、A企業にはパワハラを許してしまう企業の文化や風土があるからではないかと考えています。文化や風土といったものは、長年かけて少しずつ醸成され形成されるものですから、研修を数回行ったからと言って簡単に変わるものではないのかもしれません。

しかし、パワハラは決して許される行為ではありません。もしパワハラを許してしまうと、被害者(おおむね部下)が委縮し、職場の雰囲気が悪化し、仕事の生産性が下がり、退職者が続いてしまう、大変大きな弊害を生じてしまいかねないのです。

パワハラを許容してしまうような文化や風土は改めなくてはなりませんが、本気でパワハラを撲滅させたいと考えるのであれば、研修だけを行っていればそれでよしとするのでなく、企業全体で真剣に取り組む必要があります。その際にもっとも大切なのは、トップが腹をくくり、先頭に立って撲滅に取り組むという姿勢を示し、組織をあげて粘り強く取り組み続けることだと考えています。あなたの組織の状況はいかがですか。

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第1,119話 コロナ禍で働き方改革は進んだのか!

2022年06月08日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「以前は週に数日テレワークを取り入れていましたが、現在は毎日出社しています」

これは最近、研修のご担当者や受講者にお会いした際に聞くことが多くなった言葉です。

新型コロナウイルスの感染防止もあり、一気に導入が進んだと感じていたテレワークですが、実際のところ現在の状況はどうなっているのでしょうか?

弊社が担当させていただいている公開セミナーの際に、参加者にテレワークをしているか否かを伺うことがありますが、その結果は現在もテレワークを導入している企業は、毎回ほぼ3割前後だと認識しています。東京商工会議所の2022年2月に行った調査でも、この2年間のテレワーク実施率は、緊急事態宣言や蔓延防止の期間はテレワークの実施率が上がるものの、それ以外はおおむね3割程度で推移しているようです。

また感染状況とは別に、規模の小さい企業ほどテレワークの実施率が低いようですが、前記の調査データでは企業規模の大小を問わずテレワーク実施率は増加しているとしていますので、この点はセミナーや研修の現場で感じる状況とは少し乖離があるようです。

現在の導入状況には多少の差はありそうですが、それではテレワークの導入によって働き方改革は進んだのでしょうか?働き方改革はもともと政府が主導して進めていたものであり、コロナ禍で一気に進展したとも言われていますが、本当に進んだのでしょうか?

働き方改革では、長時間労働の是正をはじめとして雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保、柔軟な働き方ができる環境の整備等々が掲げられていました。そしてこれによってもたらされるメリットには、生産性の向上がありました。しかし、前記の商工会議所の調査においては、テレワークの実施によって定型的な業務の生産性は確かに向上したものの、一方では社内外におけるコミュニケーションが不足してしまったり、労務管理がうまくいかなかったりということも起こってしまっているようです。その結果、当初の狙いとは逆に長時間の労働に至ってしまうケースも少なくないようです。

このように考えると、テレワークを通じた働き方改革は現時点では残念ながら期待していたほどには進んではないようです。もちろん、この間にオンラインツールを活用した会議などによって生産性が向上したというケースはありますし、マスコミなどでも大企業などでは目に見えて働き方が変わったという人のことは頻繁に取り上げられています。しかし、働き方改革が進んだのか否かという観点で全体を通してみれば、まだ一進一退と言わざるを得ないのが実際のところではないでしょうか。

コロナ禍をきっかけにしたテレワークの導入が大きな弾みになったことは確かですが、最近ではテレワークから出社へと戻す例も出てきているようです。今現在は様々な試行錯誤を続けている段階と言えるのかもしれませんが、日本において本当の意味での働き方改革が進むまでには、もう少し時間がかかるのかもしれません。

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第1,118話 ホワイトボードはディスカッションの強力な味方である

2022年06月01日 | 研修

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「可能であれば、グループに1台ずつホワイトボードの準備をお願いします」

これは、弊社が対面での研修を担当させていただく際に、事前に研修のご担当者にご連絡することの一つです。研修では、テーマに関係なく様々なグループ演習に取り組んでいただいていますが、その際可能なかぎり準備していただきたい用具等の一つにホワイドボードがあります。ホワイトボードがあれば、短時間であっても話し合いが円滑に進んだり、ディスカッションの精度が高くなったりと、生産性の高い演習にすることができるからです。

それでは、なぜホワイトボードがあると、演習の生産性を高くすることができるのでしょうか?

その理由としては、まず話し合いのテーマをホワイトボードに記入することで主題が明確になり、ディスカッションの途中で横道に逸れてしまうようなことを防げるからです。 また、記入の際は箇条書きにするために、論点を瞬時に理解できるということもあります。加えて、私がホワイトボードの一番のメリットと考えているのが、ディスカッションが活発になり盛り上がるということです。具体的には、ディスカッションの開始時には書記を担当した人のみが起立してホワイトボードに板書をしているのですが、多くの場合はその後徐々に全員が立ちあがってワイガヤ(ワイワイガヤガヤ)の活発なディスカッションになるのです。

もう一つ、ホワイトボードと同じような役割のものに模造紙があります。模造紙も話し合いをする際にはとても有効なツールの一つではありますが、私はホワイトボードの方に軍配があがると考えています。理由は数点ありますが、まず模造紙よりも記入が簡単だということです。模造紙は、書き慣れていないと記入する際に「間違えて書いてしまったらどうしよう」という少々の緊張感があります。しかし、ホワイトボードであればすぐに消して書き直すことができるので、記入の際の敷居がより低く感じられます。

次に、ホワイトボードの大きさにもよりますが、時間が足りない場合には複数名が同時に記入することもできるのです。さらに、模造紙を記入する際は多くの場合は机の上に広げるため、目線が下がり姿勢が悪くなってしまうことが活発な進行に多少影響があるように感じます。

このように考えると、話し合いをする際に、ホワイトボードを使うことで「ゴール(目的)に向けて皆が迷わずに、効率的にディスカッションを進めることができる」ことから、もはや「話し合いの際の地図」と言ってもいいのではないでしょうか。

以上のことから、私は可能な限りグループごとにホワイトボードを準備していただきたいと考えていますが、そうは言ってもスペースの関係や受講者人数が多い研修だとグループ数も多くなり、一方で用意できるホワイトボードの数には限りがあるというのも、また現実です。実際、先日弊社が担当させていただいた研修では受講者人数が100名以上いたため、17グループにもなったことから、全てにホワイトボードを準備いただくことはかないませんでした。

現在もまだコロナ禍が続いている中、ホワイトボードの前に集まってディスカッションをしたら、感染のリスクがあるのではないかとの危惧もあるかもしれません。しかし研修の成果を最大限あげるためにも、感染防止をしっかり行ったうえでディスカッション時にホワイトボードを使うと、生産性の高い話し合いができるという効果を改めて認識しているところです。

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