中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,151話 リスキリングは何から始めればよいのか

2023年01月25日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

最近、様々なメディアをはじめ注目を浴びている「リスキリング」ですが、その意味は全てが「DX教育」とイコールではないものと考えられるものの、「技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために新しい知識やスキルを学ぶこと」とされています。今後DX化がますます進んでいった際に対応できるように、新たなスキルの習得することが推奨されているのです。

しかし、現段階では具体的にリスキリングを始めているという人はあまり多くはないです。その理由としては、「具体的に何から始めたらよいのかわからない」と考えている人が多いようです。また、リスキリング以前にも「AIの知識が必要」と発破をかけられたり、過去にも定期的に様々な知識やスキルを身に付けることを推奨されても、さほどの広がりを見せずに結局は形骸化してしまった例もあります。そういうことから「またか」と考えてしまっている人も少なくないのではないでしょうか。

しかし、私たち人間にとって新たなことを学んだり挑戦したりすることは、長いビジネス人生を考える上で、また仕事をしていなかったとしても人生を豊かなものにする上で大切なものであることは確かなことです。

先日、NHKの「あさイチ」にモデルや女優として活躍している冨永愛さんが出演していました。冨永さんは現在NHKで放送されている「大奥」に主演していますが、ドラマの乗馬シーンの撮影時にはエキストラではなく、冨永さん本人が乗馬し撮影に臨んだとのことでした。

冨永さんによれば、今回の撮影のために乗馬を練習したのではなく、「いつか乗馬のシーンに臨むことがあるかもしれない。そのときにはエキストラでなく、自ら馬に乗って撮影ができるようにしたい」と以前から考えていて、乗馬に取り組んでいたとのことでした。そうしたところ、ある番組で「いつか自ら乗馬するドラマに挑戦したい」と話す機会が訪れ、たまたまその放送を見ていたNHKの番組プロデューサーが今回の大奥の吉宗役に冨永さんを抜擢したとのことでした。冨永さんは「チャンスが来た時につかめる自分であれ」ということを大切にしているそうで、そのための準備を日ごろから怠らないようにしているとのことでした。

この話を聴いて私が感じたのは、「学びなおし」というような大げさなものでなくても、「乗馬のシーンを自ら演じたい」というように、いつか自分がやりたいと考えることを具体的にイメージして実際に動くことの大切さです。リスキリングというように大上段に構えなくても、シンプルに自分が将来手に入れたい、こうなりたいと思うことをはっきりイメージし、それに向けて準備をしていくということが大事であると思うのです。

ちなみに冨永さんの話で、もう一つ私自身が見習いたいと思ったのは、「自分が手に入れたいと考えることを他者に話す」ということです。冨永さんのようにメディアで話をすることは普通のビジネスパーソンにはなかなかかなわないことなのかもしれませんが、「他者に伝える」ことは誰でもできることです。自分の声で語ることによって、自身の想いをあらためて認識することになるでしょうし、もしかするとそれを聴いた人がチャンスをくれるということもあるかもしれません。

「リスキリング」という言葉にプレッシャーを感じすぎたり踊らされたりするのではなく、自分がやりたいことをイメージしてそれに向け具体的に行動すること、そしてそのことを自ら語ることが大切なのだと思います。

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第1,150話 加藤清正のリーダーシップ

2023年01月18日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」 

これは、太平洋戦争時の海軍軍人 山本五十六の言葉です。人材育成において引用されることが多い言葉ですが、ここには人材育成のポイントとなることが示されています。

この言葉は、もともとは江戸時代中期の米沢藩の藩主 上杉鷹山の言葉「してみせて 言って聞かせて させてみる」が語源という説のほか、さらに遡れば中国の史記にも同様の意味の言葉があるとも言われています。こうした言葉が生まれる背景には、古今東西、人材を育成することは決して簡単なものではないということがあるのではないでしょうか。

日本において「人材育成」に熱心だった歴史上の人物は様々いますが、本日は部下(職人)への細かい気遣いをしていたと言われる加藤清正について取り上げます。

ご存知の人も多いかと思いますが、加藤清正は安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将で、肥後熊本藩の初代藩主、虎退治や築城の名手として広く知られています。秀吉の子飼いから肥後の有力大名になりました。秀吉の九州平定に従い肥後国領主となった佐々成政が失政により改易されると、肥後北半国19万5,000石を与えられて隈本城に入り、後の天正19年(1591年)頃よりこれに改修を加え、熊本城としたのです。

その改修の際、加藤清正は築城職人に対して「大工の新左衛門の病気はどうだ?病気が良くなったら重ねて煩わないように、すべてに精を出して働くことは無用だ」や、「朝鮮から帰国した大工たちには10日間の休みを与えてから、城の建築に従事させること」など、細かい気遣いが感じられる発言をしていたと伝えられています。

歴史を振り返ると、配下の者を叱咤激励して城を築いた武将はたくさんいたでしょう。しかし、そういう中で加藤清正は19万石の大大名でありながら、直接接点を持つことが少なかったであろう職人に対してまで「大工の新左衛門」というように具体的な名前を挙げ、病状を気遣う気配りを見せていたのです。

このように自らの配下をとても大切にしていたと考えられる加藤清正ですが、その一方で城づくりにおいては一切の妥協をせず、作り終えたものに対して「本丸北の櫓は北側が下がってみえる。壊してやり直すこと」などやり直しを命じていたとの話もあります。指示についても、自ら筆を執り「馬屋を立てる場所の地割を厚い紙に書いて送れ。こちらから指示をするので、建てる用意をしておくこと」など実に具体的に行っていたようで、「うまくやれ」などといった曖昧な指示をすることはなかったのです。

我が国にも古今様々なリーダーがいたわけですが、19万石と言えば今なら大企業とも言える規模のはずです。そうした大きな組織のトップであっても部下を細やかに気遣いつつ、一方では仕事上の指示を具体的にしつつ妥協をしないという点で、加藤清正のリーダーシップには学ぶべき点が多いと思います。

こうした加藤清正の姿勢は、もしかすると「人たらし」と言われる一方で配下の武将を時に飴と鞭で巧みに支配した豊臣秀吉をロールモデルとしていたのかもしれません。様々なタイプのリーダーがいる中で、部下育成を含めたリーダーシップの一つのモデルとして、大いに参考にすべきものではないでしょうか。

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第1,149話 リスキリングを始める

2023年01月11日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「生き残るものは大きなものでも強いもでもない。変化していくものだ」

これは、作家で日本大学の理事長をしている林真理子さんが著書の「成熟スイッチ」(講談社現代新書2022年)の中で語っている言葉です。この本の中で林さんは、成熟について「昨日のままの自分だと、少しつまらないよ」「ちょっとしたことでもいいから何か新しいことをして、昨日とは少し違った自分になってみる。」また、「成熟にはキリがありません。毎日新しいスイッチを入れながら、自分の変化を楽しむことができたら、なんて素敵な人生でしょう。」と言っています。

林さんの活躍はここで改めて紹介するまでもありませんが、作家として様々な賞を受賞するだけでなく、それ以外にも次々と新たなポジションに就いています。それは本人が欲したものばかりではないのでしょうが、一方で欲しいと考えたものは必ず手に入れているようにも見えます。そして、そのための努力は惜しまない、ゴールを設定しない林さんの生き方に私は一読者としていつも刺激を受けています。

さて、最近は「リスキリング」の重要性が大きく叫ばれるようになり、政府も具体的な支援に力を入れることを明言しています。そのために、「人への投資」に5年間で1兆円を投じ、従業員にリスキリングをさせた企業や働き手への助成金も強化する方針とのことです。個人も学び直しをしたいと思えば、その機会を得られる環境が整いつつあるわけです。

しかし、こうした報道を見聞きする度に私がいつも思うのは、はたして今度こそ日本に「学び直し」という考え方が根付くのだろうか?ということです。なぜなら、わが国ではこれまでにも「リカレント」、「生涯学習」など多少意味合いは異なるものの、「学び」をキーワードとする言葉が30年位前から何度も取りあげられてきていますが、どれも今ひとつ根付いていないように感じるからなのです。実際、「学びなおし」への参加率は35%とOECDの平均よりも5ポイント低いのが実情で、諸外国と比べリスキリングへの関心が薄いことが問題視されているのです。

それでは、今後組織や個人が「リスキリング」に対してどうすれば積極的に取り組むことができるようになるのか、そのためにはどうすればよいのでしょうか。この答えはなかなか簡単には出ないように思います。それは、日本人の国民性から言って林さんのように変化を楽しむことができる人は限られているように思えるからなのです。

しかし、このまま立ち止まっているわけにはいきません。ありきたりのことかもしれませんが、まずは「ありたい自分」、つまり自分が手に入れたいものを少しでも具体的にイメージしてみるところから始めることなのではないかと思います。そして、林さんのように何か新しいことを少しずつでも始め、昨日とは異なる自分になっていく、その変化を楽しむことなのだと思います。

私自身、年の初めの今だからこそ新しいスイッチを入れることから始めてみたいと考えています。

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