中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,010話 70歳?まで存在感を発揮して働くためには

2021年03月31日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

2021年4月1日より、改正高年齢者雇用安定法が施行されます。これにより企業は希望する70歳までの社員に対して、就職機会を設ける必要が出てきます。

今回の改正のメリットとしては、少子高齢化にともなう人手不足の解消や、年金などの社会保障制度の支え手を増やすということがあげられます。

一方デメリットとしては、仕事の量は大きく変わらなくても給料が下がることでシルバー社員の仕事へのモチベーションの低下が懸念されるなどが挙げられます。また、年下の上司からすると、「年上の部下」に対するマネジメントの難しさも、かねてより問題として指摘されているところです。

今後、様々な組織や職場においてシルバー社員の割合が増加していく中で、皆が気持ちよく、生産性の向上につながるような働き方をするためにどうすればよいのか。ますます課題になっていくことは間違いないと考えられます。

これに関して、最近私が知り合いから聞いた話がとても参考になりそうですので、以下にご紹介します。

知り合いの会社では、今春勤続52年のシルバー社員が退職することになったそうです。彼(A氏)は高校卒業後18歳で入社し、70歳に至る今日まで同じ組織で働き続け、この度惜しまれて退職することになったそうです。この会社の退職年齢は多くの組織と同様に60歳で、再雇用により65歳までは勤務することが可能だそうです。しかし、経営者が「A氏にはどうしても残ってほしい」と考え、特別に請われてその後も70歳まで勤めることになったのだそうです。

では、この会社はどのような理由で引き続きA氏を必要としていたのでしょうか?

それには3つの理由があるそうです。まず1つ目の理由としてA氏が彼ならではの特別の技術・技量を持っているとのことです。もちろん組織の中には近いレベルの技術を持つ人もいるようですが、彼ほどのレベルになることはなかなか難しく、後進もまだそこまでは育っていないのだそうです。

2つ目の理由としては、A氏が後進の育成に非常に熱心だということです。A氏は自身の技術力を後進に伝授することを自らの使命と考えていたそうです。丁寧に説明したりお手本を示したり、やらせてみたり、うまくできたら褒めたり、挑戦させたりと、日々積極的に後進の育成に努めていたとのことです。

そして3つ目の理由としては、A氏はフォロワーシップも存分に発揮していたとのことです。かつてはA氏の部下であり現在は上司になった管理職の仕事をさりげなくフォローしたり、上司と一般職の間に入って双方の意見を調整したりということも、継続的に行っていたそうです。

こうした理由で存在感を十分に発揮して生き生きと働いていたために、A氏は組織や職場にとってかけがえのない人材であったのです。知り合いが話すには、A氏の52年の経験と貢献は職場のどのようなマニュアルなどよりもずっと重いものだったとのことです。

高年齢者雇用安定法の改正により、今後、職場ではシルバー人材の割合がどんどん増えていくことになるわけです。将来自分がその立場になったときに組織や職場から必要とされ、かつ自身が生き生きと働いていくためにはどうすればよいのかをしっかりイメージして、早い段階から準備をしておくことが必要になるのではないでしょうか。

さて、あなたはどのような人材として70歳?まで働きたいですか?

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第1,009話 で、結局統計学って役に立つの?

2021年03月28日 | 研修

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企業規模の大小にかかわらず、多くの経営者の方々からよく言われるセリフがあります。「で、うちの会社でその研修をやるとどのくらい儲かるの?」です。私が「いや、すぐにどうのということではなく、従業員のスキルが上がれば将来の利益というかたちで・・・」と話し始めると、遮るように「で、研修に使ったお金はいつ戻ってくるの?で、投資した以上の利益を保証してくれるの?」と質問されることがあります。

先日、ある会社の社長さんに統計学の研修をお勧めしていときに、この「で、」が出ました。「で、結局統計学って役に立つの?」

私は反射的に「はい。役に立ちます。」と答えました。すると「で、具体的にはどうやって?」と聞かれました。実はこの質問、「いくら儲かる?」や「利益はどうなる?」とは決定的に異なっているのです。

企業が投資をするのはリターンを求めてのことですから「儲かるか儲からない」はもっとも重要なポイントです。しかし、「どうやって利益が生み出されるのか」について関心がないとしたら、そもそも経営に対する考え方が浅いとしか言いようがありません。まともな経営者なら利益の有無もさることながら、利益をもたらす方法に関心があるはずです。

私は、社員が統計学を学ぶことで(1)何ができるようになり、(2)その結果どうなるかをお話ししました。その間、社長さんから何度も鋭い突っ込みが入りましたが、研修の有用性についてご理解をいただきました。特に営業部門でのデータの有効活用について大変興味を示され、Excelの使い方まで話題が及びました※。

人に対する投資は確かにリスキーです。リターンを保証することもできないばかりか、余計な知恵を付けて(ある経営者の言葉です)さっさと転職してしまうかもしれません。それでも人に投資しなければ、将来企業の存続すら危ぶまれます。

企業研修については、まず「具体的にどのように役に立つのか」をお聞きください。儲かるかどうかの判断はそれを聞いた後にお願いします。

※生産性新聞(日本生産性本部)の連載記事「ビジネスに必須の統計スキル入門」の動画解説の一部を公開しています。ご参照ください。⇒

ビジネスに必須の統計スキル入門(2)

 

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第1,008話 スライドの枚数が多すぎると、伝えたいことがぼやけてしまう

2021年03月24日 | 研修

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「パワーポイントのスライドの適正枚数はどのように決めればよいですか?」

これは、弊社がプレゼンテーション研修を担当させていただく際に受講者から定期的に受ける質問の一つです。皆さんはこの点についてどのように考えられていますか?

もちろんこれはプレゼンテーションのテーマや目的、与えられた時間、さらにそのプレゼンテーションを聞く人数や会場の広さなどによっても異なりますので、一概に何枚がよいと言えるものではありません。

さらにコロナ禍の現在では、対面のみならずオンラインによるプレゼンテーションが圧倒的に多くなりましたので、対面かオンラインかによっても異なるだろうと思います。

これに関して、実は私自身がこの1か月ほどの間に対面セミナーとオンラインセミナーそれぞれを受講する機会があったのですが、いずれのセミナーも共通してスライドの枚数が非常に多かったのです。具体的にはどちらも2時間でのセミナーでしたが、配付されたスライドは80枚で、それ以外に配付はされなかったものの投影されたスライドが30枚ほどもありました。

プレゼンテーターの気持ちを想像するに、伝えたいことがたくさんあり、つい枚数が増えてしまったのだろうと思います。そう考えればサービス精神が旺盛だったとも言えるでしょう。

しかし、聞く側の立場で考えると、これは必ずしも有難いことではないようにも感じました。なぜならばプレゼンターがスライドを最後まで消化することが目的化して進めてしまっていたように感じられたからです。途中で「残り時間が少なくなってきましたので、急いで進めます」などと言いながらスライドを読み続け、1分の間に何枚ものスライドが忙しく切り替えられていきました。

あまりにスライドの枚数が多すぎたため、セミナー終了後にプレゼンターの伝えたいことが少々ぼやけてしてしまったような印象を持ちました。同時にスライドの文字を読み進めるだけなら、敢えてセミナーに出席しなくても資料だけでもこと足りたのではないかとも感じました。

対面にしろオンラインにしろ、プレゼンテーション(研修やセミナーを含む)でのメインはスライドなどの資料ではなく、あくまで伝え手(プレゼンテーター)のはずです。伝え手が自身の経験談や事例を語ったり、強調したいことは繰り返したり、ときには身振り手振りを入れたり表情豊かに伝えることによって、聞き手にしっかりと話が伝わるはずです。

しかし、スライドの枚数があまりにも多くなると、伝え手がスライドの説明に縛られてしまいます。結果として予定調和で進めることにならざるを得なく、前述のような対応ができなくなりることは本末転倒だと言えます。

私にとってもプレゼンテーションをする際は、対面・オンラインを問わず、与えられた制約条件の中で聞き手に最大限伝えるためには、スライドに頼り過ぎてはいけないということを改めて考えさせられたセミナーでした。

さて、年度末そして新年度を迎えるこの時期、プレゼンテーションの機会が増える人も多いでしょう。「自分の話をしっかり伝えるためには、スライドに頼り過ぎない」を、ぜひ参考にしてみてください。

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第1,007話 一番大切なスキルは学ぶ力

2021年03月21日 | 研修

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「名選手、必ずしも名監督に非ず」とはスポーツの世界ではたまに耳にする言葉です。それはビジネスの世界においても言えることでしょうか?

個人の能力が高く、仕事でも優れた業績を達成しているビジネスパーソンを仮に「名選手」とします。いくつかの企業で働いてきた私の経験から言えば、名選手が名監督(名経営者)になる確率はかなり高いと思います。オーナーではなく「雇われ経営者」だけに限ればほぼ100%に近いのではないでしょうか。

よく「一般社員と管理職では全く異なるスキルが必要」だから「できる社員ができる管理職なるとは限らない」という論調の記事を目にします。もちろん「限らない」のですが、「大体はそうなる」と言えます。なぜなら、リーダーとしてのスキルの基本にあるのは「一般社員としてのスキル」に他ならないからです。結局のところビジネススキルというのはほとんどが決まりきったものなのです。

さて、よく目にするリーダーの条件を挙げてみましょう。

1. コミュニケーション能力
2. 業務遂行能力
3. 行動力 
4. 責任感 
5. 学習力  
6. 統率力
7.部下育成力
8. 決断力

といったところでしょうか。

お分かりかと思いますが、これら全てを完璧に満たしている人はいません。もしいたら宇宙人、もしくはあなたのレベルが低いからそう見えるだけです。そして1〜8の能力は一般社員であっても不必要なものは何ひとつありません。

リーダーになったからと言って「違う人間」になる必要はありません。リーダーシップは特殊能力ではありません。新人から経営者まで、全ての社員が身に付けておくべきスキルです。そういう意味では「5.学習力」つまり学び続ける力が一番大切なものかもしれません。

経営者の皆さん、「リーダーのスキルは一般社員のそれとまるで違います」という書籍や研修会社が現れたらまずは疑ってみてください。

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第1,006話 担当者によって判断が異なると、外部の信用にも影響する

2021年03月17日 | 研修

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先日、異動や退職に伴う仕事の引継ぎの重要性について本ブログで取り上げたところ、(第1,002話 異動時の引継ぎに慌てないようにするには)多くの方から感想をいただき、また中には自身の体験談を寄せてくださった方もいました。大半は引継ぎの難しさや、引継ぎがうまくいかないことによる問題点についてでしたが、一部は外部の立場からの感想をいただきました。

体験談を寄せてくれた知り合いの話では、数年前よりA顧客から仕事を依頼されるようになったとのことです。この度、当初からの担当者が異動になり後任に代わったそうですが、その途端にそれまで認められていた書類の受け渡し等の方法が、説明もなくいきなりダメ出しされるようになってしまったとのことです。

具体的には、これまで書類にはパスワードをかけた上でメールで送付していたために今回も同様に送付したところ、「解除するのが面倒なので、パスワードはかけないように」と言われた。また、アンケート結果も「一部しか開示できない」と言われた。領収書をメールに添付して送付したところ、「原本を郵送するように」と指示されたなどだそうです。

一連の話を聞いて、担当者が若い人からデジタルツールに不慣れな年配者へ変更になったことが理由なのかなと想像しましたが、実際にはその逆で、年齢が上の人から下の人へ代わったとのことです。

「パスワードをかけてはいけない、書類は郵送で」といった指示は少々時代錯誤とも感じ取れます。また対応が説明もなく急に変わったことに対して、知り合いはA顧客に対するこれまでの信頼が一気に崩れたとも言っていました。

以上が知り合いから聞いた内容ですが、これは前任者から後任者への引継ぎがスムーズにいかなかったことが問題なのではなく、そもそもA企業の業務が属人化していて「仕組み」になっていないことが問題なのではないかと考えられます。

本ブログでもこれまでに何度も取り上げていますが、属人化とは仕事が人に属している状態です。業務を特定の人だけが担当し、その結果その人にしかやり方がわからない状態になっていることを言います。

属人化に陥る要因としては、属人化によるデメリットが共有されていない。特定の人間にしか詳しい中身がわからないことにより、本人にとっては優位性が感じられる。特定の人間が特定の業務を長期間担当することへの違和感がない。同じ業務を何度も繰り返すことにより習熟度は高まるため、効率的に進められると感じる。そもそも属人化している意識がない。などが考えられますが、その人にしかやり方がわからない状態はやはり問題です。

それでは属人化を解消するには、どうすればよいのでしょうか。

実はこれも「仕組みにする」ことが最も有効と考えています。組織として「これはこのようにする、別のそれはこうする」といったようにルールにしておけば、異動や退職などで担当が代わることがあっても効率的に仕事が継続できます。前述の例のように外部と業務の提携をする際にも担当者の交替によるマイナス面を極力抑えることができるわけです。

もちろん、こうした「仕組み」も万全ではありません。一度決めたと言って未来永劫使えるものではありませんので、定期的に見直すことが必要です。それこそ担当者が代わった際に、それをきっかけとして新たな視点で見直すことも有効です。

仕事の属人化を脱し、業務を仕組みにすることのメリットは組織の内部の人だけでなく、外部の人への信用にもかかわる大切なことだということを、今回の事例を通して改めて感じたところです。

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第1,005話 新人研修ともう1つの大事な研修

2021年03月14日 | 研修

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昨年から今年にかけて、コロナ禍の影響で収益力が低下し、財政的に苦しい会社が多くなってきました。とはいえ会社は人で成り立っていますから、採用は必要です。かくして4月になると職場に新入社員がやってきます。

そして4月は新人研修が日本中で行われ、当社も繁忙期を迎えます。言うまでもなく、新人教育の大切さは多くの経営者が理解しています。しかし、もう一つの大事な教育に気づいている経営者はほとんどいません。それは「上司・先輩」に対する教育です。

新入社員研修を受けた新人が職場に配属されたとき、上司・先輩が正しく新人を指導できるかどうか、実はとても大きな問題なのです。まず職場の先輩が、新人研修の内容と矛盾するような行為を行ってはいけません。たとえば朝の挨拶ですが、仮にテレワークであっても「大きな声で、はっきりと」しなければなりません。

また、配属された新人については職場の上司・先輩が教育・指導を行うわけですが、指導が「正しく」できるかどうか、経営者は確認しておく必要があります。私の経験から言わせていただくならば、しっかりと新人を指導できる上司・先輩はめったにいません。

「いや、うちの社員は、新人の指導くらいはしっかりできるよ!」と思われた経営者の方は、要注意です。試しに次の質問を職場のOJT担当者(あるいはそれに該当する人)に投げかけてみてください。

(問題)職場に新入社員が配属されてきました。あなたは上司から「新人に仕事を教えてやってくれ」と言われました。次の選択肢のうち、あなたから見て正しくないと思われるものに×を付けなさい。

(1) 新人のうちは、具体的に仕事のやり方だけを教えればよい。
(2) いきなり無理な仕事をやらせてみて、仕事の辛さを味わってもらう。
(3) 細かい点を伝える時以外は、特にメモを取らせる必要はない。
(4) 新人のミスはその場で指摘せず、後でOJT担当者に知らせる。
(5) 他部署の新人を育てるのは他部署の責任であり、口を出すべきではない。

・・・以上、答えは言うまでもなく、全て×です。ところが私の知る限り、(1)~(5)を「実践で」行うことができる社員はほとんど見たことがありません。

新入社員研修が終わったら、後は上司・先輩が日々の仕事のなかで教育・指導することになります。それまでには(1)~(5)のような間違いを犯さない上司・先輩」になっていなければなりません。

それを実現するためには「上司・先輩」だけでなく、すべての社員が部下育成研修を受けることです。それが新入社員研修を無駄にせず、将来の人材を育成するために必要なことです。

今からでも遅くありません。とりあえずは「上司・先輩」に該当する社員を対象に、部下育成研修を実施してみませんか? 

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第1,004話 入社式は対面?オンライン?それとも中止?

2021年03月10日 | 仕事

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「今年度は20名弱が入社する予定ですが、入社式は実施しません。」

これは、先日ある企業の経営者からお聞きした言葉です。もう少し詳しく知りたいと思い、さらに伺ったところ、この経営者は「入社式は、本来はオンラインではなく対面で行うことが望ましい。しかし、一堂に集まることは感染リスクにつながるため中止にする」と判断したとのことでした。

さて、あなたの会社では今年の入社式は実施する予定でしょうか?

株式会社ディスコが2月に行った調査によると、今年の入社式を実施予定の企業は全体の8割強(84,2%)。入社式の形式は「リアル・会場型のみ」が7割強(76,2%)、オンラインのみでの実施は1割未満(6,9%)とのことです。コロナ禍での入社式の実施に関しては、いろいろな考え方があると思いますので、一概にどういう選択が良い・悪いと判断できるものではありません。

しかし、私は入社式の実施の有無にかかわらず、経営者として新入社員に何らかのメッセージを届けることがとても大切だと考えています。

そこで、一つ思い出す事例があります。昨年報道された時から印象に残っているのが、伊藤忠商事の新入社員の初出社日に、会長CEO自らが社屋の1階で120名の新入社員一人ずつを出迎えたというものです。

先日(3月8日)の日経新聞には、まさにこの会長CEO自らの言葉が紹介されていました。「せっかく希望をもってわが社に来てくれた若者たちに、『やっぱり伊藤忠に入ってよかったな』と思ってもらえるようなことが何かできないかと考えた」とのこと。

これを読んで感じたのが、入社式が対面型かオンライン型かという形式にこだわるよりも、経営者が入社式で新入社員に何を伝えたいのかがとても大切だということです。

たとえば、会社の理念を伝えたいと考えるのか、中長期のビジョンなのか、自社が存在する意義なのか、また新入社員に何を期待しているのか、どのような社員になってほしいのか、将来どのように活躍してほしいと考えているのか、などメッセージとして何を伝えたいのかを明らかにし、それを自らの言葉で伝えることこそが大切であり、必要だと思うのです。

冒頭に紹介した会社のように、もし入社式は行わないとするのであれば、伊藤忠商事の例のように社長が新入社員一人一人と向き合う時間を別途設けるのもよいでしょうし、また文章でメッセージを送る方法もあるかもしれません。

どのような形でも構いませんので、ぜひトップが自らの言葉でメッセージを送っていただきたいと思います。そうすることで新入社員がこの会社で頑張ろうと前向きな気持ちを持つことにつながっていくはずです。

因みに、伊藤忠商事のCEOは今年の新入社員をどのように迎えるかについては、「昨年と同じことをやっていたのでは進歩がない。(途中省略)今年はどんな演出で彼ら彼女らを迎えようか、今から思案している」とのことです。

4月1日以降に報道されることと思いますが、一体どういう演出をするのか外部の者としても今から楽しみにしています。

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第1,003話 日本という大きなオフィス

2021年03月07日 | 研修

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少し前(2018年)ですが「オフィスが『オープン』な設計だと、生産性が低下する」という記事がありました※1。一部を紹介します。「学術論文誌『Philosophical Transactions of the Royal Society B』に発表された研究で、物理的な障壁をなくすとコミュニケーションや集合知が生まれにくくなることが示されたという。・・・中略・・・オフィスを従来型のレイアウトからオープンプランに変更したところ、従業員同士の直接のやりとりは時間換算で70パーセント減った一方で、電子メールの量は22〜56パーセント増加した。また生産性も落ち込んでいる。」

日本の企業にとってオフィスがオープン型というのはごく当たり前のことです。それに対して一般的な欧米の企業は個人のスペースがクローズ型になっています(もちろん全てがそうであるわけではなく、概ねどちらが優勢かという話です)。この記事で取り上げられている論文が仮に正しいとすれば、日本は欧米に比べて生産性が低いということになります。・・・冗談じゃない!と言いたいところですが、日本は1970年代からずっと先進国中最下位です。※2

さて、「どうしてオフィスがクローズからオープンになったら生産性が下がった」のでしょうか。

(論文でによれば)今まで社員が個別の仕切りを持つスペースで仕事をしていたのを、仕切りを取り払ってオープン型にレイアウトを変更しました。その結果、「オープンになったことによって監視されているような感覚について不満の声が上がっている。さらに、仕切りのないレイアウトでは従業員の病欠率が高くなる」と述べています。研究対象となったのは(社名は明らかにされていませんが)欧米の会社です。

私はこれを読んで、日本の会社がオフィスのレイアウトをクローズ型に変更して、同じような実験をしたらどうなるだろうと考えました。で、考えてみた結果「多分あまり変わらないのでは」という結論に至りました。

もともと生産性が低いのだからどんな形になってもそれほど変化はないだろうという思いと、働く場がどんな形になってもなんとかやり遂げるのが日本人ではないかという思いが交錯しました。

したがって、日本の会社にとってこの論文はあまり意味がないと言えそうです。

では、テレワークのようにオフィスそのものが物理的に無くなってしまったらどうなるのでしょう。欧米のように「個別の空間」で仕事をすることが一般的な社会では、あまり影響はないかもしれません。一方、日本は物理的な空間を共有することが全くできなくなることによって、生産性は下がってしまう企業が多いかもしれません。事実「テレワークでコミュニケーションが少なくなって生産性が低下した」という話を聞いたことがあります。

もともと生産性が低いうえにこれでは踏んだり蹴ったりです。それでは困るので(悔しいので)、逆に「テレワークになったら生産性が上がった」と言いたいものです。

そのためにひとつの提言をしたいと思います。それは「日本列島がひとつの大きなオープンオフィス」であるという考え方です。オフィスに全員が寄り集まるのではなく、日本中のどこにいても「同じ空間を共有している」という気持ちを全員が持つことです。

北海道から沖縄まで、どの町にいても日本語が通じ、見慣れたコンビニがあり、お互いに顔を合わせようと思えば新幹線や飛行機で気軽に移動できる、しかも「外国」とは海を隔てている。まさにとても便利な「巨大なオフィス」です。

それに比べて、違う言葉を話し、生活習慣が異なり、宗教や考え方が違う人たちが道1本隔てたところに住んでいる欧米のなんと不便なことでしょう。オフィスをクローズ型にするのも止むを得ませんね。

ちょっとひねくれた見方かもしれませんが、テレワークをせざるを得ないときはそれくらい大らかな気持ちで臨んではいかがでしょうか。

※1 https://wired.jp/2018/07/19/open-offices-less-productive/  

※2 https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2019/04/post-69.php

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第1,002話 異動時の引継ぎに慌てないようにするには

2021年03月03日 | コンサルティング

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「そういう経緯だったのですね。引継ぎを受けていなかったものですから、状況がわからなくてすみません」

これは、入社したての人や異動してから日が浅く、まだ担当業務に慣れていない人からよく聞く言葉です。また、弊社に研修の依頼をいただいた企業等で担当者と打ち合わせをしているときなどに、こちらが過去の経緯を説明した後に発せられることも多いです。

今年も年度末まであと僅かです。担当者から「異動が決まりました」とご連絡をいただいたり、打ち合わせの中で「来週末に異動が発表されるのですが、もしかしたら異動することになってしてしまうかもしれません」というような話を聞く時期になりました。

この異動に関してはデメリットがある反面、メリットもたくさんありますので、それ自体には何ら異論はありません。しかし、様々な組織とお付き合いをさせていただく中で定期的に感じるのは、規模の大小を問わず担当者が変わる際に、きちんと引継ぎができているところが圧倒的に少ないということです。

2019年にサイボウズチームワーク総研が、ビジネスパーソン400人に対して行った「仕事の引き継ぎ」に関する意識調査では、67%の人が「引継ぎがスムーズだった」と答えているようです。これは私が想像していたよりもずっと高い数値です。

一方で、「引継ぎがスムーズでなかった」とした人の理由としては「十分な時間がなかった」、「前任者の離任直前に自分が担当になり、心の準備がなかった」、「仕事の全体像や過去の履歴がわからないまま引き継がれた」がトップ3になっています。

それでは、引き継ぐ方および引き継がれる方の双方にとってスムーズな引継ぎをするためには、どのようにすればよいのでしょうか?

それには様々な方法があるかとは思いますが、弊社では「引継ぎを当事者任せにするのではなく、組織として引継ぎのルールを決めてしまう」ことを、まずお勧めしています。たとえば、引継ぎ書のフォーマットを共通にするなどの方法があります。しかし、これまで様々な企業の状況を伺っていると、統一フォーマットを決めていたとしても人によって記載内容に濃淡があり、細かく作成する人がいる一方で、大雑把な人もいるようです。

では、さらに効率よく引継ぎをするためには、どうすればよいのでしょうか?

実は異動時は、引き継ぐ方・引き継がれる方のどちらにも時間の余裕がないことが多いのです。そこで、異動時にあわてて引継ぎ書を作成するのではなく、日ごろから各自が担当業務を「見える化」しておき、引継ぎの際にはそれを引き継ぎ書としてスムーズに調えられるようにしておくことがお勧めです。

なぜならば、私たちも人間である以上、異動以外にも急に病気なってしまったりすることもないとは言えません。担当者が突然休んだり、長期の休暇を取得したりしなければならないようなことが発生する場合があります。その際にどのように対応するのか、日ごろから各々がどういう仕事を担当しているのか、そうした情報を日ごろから組織内で共有することができていれば、万が一のことがあったときにもリスクを最小限に抑えることができるわけです。

企業などの組織においては、隣の席の人であってもどういう仕事を担当していて、どのように進めているのか案外わからなかったりするものです。異動の引継ぎのときだけでなく、日ごろからお互いの仕事の内容を共有することを意識しておくことも大切なのではないでしょうか。

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