北海道美術ネット別館

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■MOVE (2月16日まで)

2008年02月14日 00時21分28秒 | 展覧会の紹介-写真
 このグループ名では、初の展覧会。
 他のグループ展などでも活躍している写真家と、これまであまり発表したことのないフレッシュな顔ぶれとの組み合わせで、なかなかおもしろい写真展になっています。

 案内状には
山岸せいじ、藤川弘毅、竹田あやこ、爲岡進、置田貴代美、廣島経明、足立成亮、高井稜(綾は誤記)
の8氏の名前が印刷されていますが、宇津木圭さんと久保ヒデキさんが飛び入りで参加しています。
 宇津木さんは、4プラホールでひらかれていた「広告写真家の写真展」の作品をそのままもってきました。


 藤川さんは、黄緑色のかつらをかぶった女性モデルの顔を斜めからとらえた連作。
 最後の2枚、彼女はなぜか「be」と書かれた紙片をくわえています。
 モデルの微妙な表情のうつろいがみどころでしょうか。


 山岸さんは、この10年余り、写真や、写真を用いた美術作品などを精力的に発表しています。
 この1年半ほどは、正方形にトリミングしたデジタル写真のプリントを何十枚も壁に散らして貼り付ける一種の平面インスタレーションにとりくんでおり、そこに登場するさりげない風景や光が感動をよんできました。
 今回は、一歩進んで、それらの光景を、1枚の巨大なプリントに合成しています。「瞬」という題です。
 「インクジェットがいやだったんで、ラムダプリントにしました」
と山岸さん。
(ラムダプリントのわりには、下の画像は光沢で光が反射しています。申し訳ありません)

  

 ひとつひとつの画像はごく平凡ですが、いや、ふつうだったらわざわざ写真には撮らないくらい平凡な映像であるからこそ、多くがまとまると、なにかいとおしく、なつかしい感じがします。そして、それらの風景を横断するように随所で光る緑やオレンジの光跡が、全体を神々しい雰囲気に包んでいるかのようです。



 部分拡大図です。こちらは、ひどい手ぶれで申し訳ありません。


 足立さんは、自主ギャラリーcacoi.(カコイ)を山鼻地区で運営するかたわら、活発に写真を発表していますが、会場のキャプションによると、ことしは新作を出さずに旧作のみ発表するということです。
 今回は「WOΛヨ」と題し、モノクロ6点(下の画像には5点しかありませんが)。



 被写体は原野・疎林のある風景と、そこに放置された廃車。
 構図に安定感があります。
 それにしても暗い世界だと思います。
 これがいまの足立さんの心象なのでしょうか。

 とっくに生産中止になった印画紙「月光」を用いたプリントです。
 わずかに、外側の白い部分が、感光して灰色を帯びています。
 山岸さんによると、プリントのさいに鉄粉などをまぜているそうですが、それによる効果は、画面からは感じられません。
 いずれにせよ、全体から受ける陰鬱な調子に、強い印象を受けました。


 廣島さんは、いつもの銀塩カラーによる、抽象画のような世界。



 「暮れ泥む」「フラメンコ」「ステンドグラス」など9点です。
 CGなどを用いず幻想的な画面をつくりだすのは、お手の物のようです。




 一昨年あたりから、それまでの星景写真にとどまらない、独自の「心象写真」ともいうべき作品で、進境いちじるしい置田さん。
 今回は、先ごろivoryギャラリーでひらいた個展の出品作と共通する世界。
 茫漠として繊細な映像は、作者の心をしずかに語っているようです。





 竹田さんの写真ははじめて見ました。
 カラーのネガフィルムで、雪や、雲に隠れた太陽、木や花などを撮っています。
 一見、どうということのないような、なにげないショットですが、興味深く見ました。
 ご本人は「初心者用のカメラがほしい-と店で言って、買ったカメラで、きれいだなと思ったものを撮っているだけ。あんまりくわしくないんです」と謙遜しておられましたが、反対に、それがいいのでは-と思いました。
 というのは、写真が好きな人の作品って、どうしても誰かのに似てきちゃうんですよね。森山大道調だったり川内倫子ふうだったり。でも、竹田さんの写真は、誰のにも似ていない。画面の切り取り方も独特で、たとえば、左端の太陽の写真ですが、こんなに下の方に太陽をもってくる人はあまりいないでしょう。でも構図がまずいというのではないのです。
 この調子で今後もどんどん撮ってもらいたいと思いました。




 高井さんの作品もはじめて拝見しました。
 カラーポジフィルムをつかっています。
 多重露光やスローシャッター、ポジを2枚重ねてのプリントなどの技法で、見慣れた風景を、斬新なものに仕立てています。枯れ葉と水面の画像を重ねあわせた作品には、四季を思う作者の感性が生き生きと響いているようです。




 最後は「たぴお」のグループ展でおなじみの爲岡さんです。
 爲岡さんといえば、檜山管内江差町の姥神大神宮渡御祭の写真が思い浮かびますが、江差だけでなく、ずいぶんあちこちの祭りの現場に出かけているんですね。
 今回は、夕張神社、琴平神社(後志管内古平町)、三吉神社(札幌)、上川神社(旭川)、北海道神宮、4番街祭り(札幌)、仙法志(せんぽうし)神社(宗谷管内利尻町)、姥神大神宮、新十津川神社(空知管内)、今金八幡(檜山管内)、福島大神宮(渡島管内)、諏訪神社(檜山管内乙部町)の12のまつりで、みこしをかついでいる写真を3点ずつ紹介しています。
 過疎地の道路を少人数でみこしかつぎをしている光景はややさびしいものがありますが、それでも伝統の祭祀は絶やすまいという地元の人々の意気がつたわってきます。


08年2月11日(月)-16日(土)11:00-19:00
ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館 地図A)


□置田さんのサイト「hiyo_star_skyphoto」 http://home.att.ne.jp/omega/hiyo4/
□足立さんのブログ「sam's photo」 http://dogsam.seesaa.net/

たぴお記念25th + 13th 異形小空間(07年12月-08年1月)=山岸、藤川、為岡各氏が出品
OPERA Exhibition vol.2 (07年11月)=山岸、置田、廣島、足立各氏が出品
OPERA Exhibition vol.2 続き=足立さんの過去の展覧会へのリンクあり
足立成亮写真展「事の終わり」・micro.の記録展(07年4月)=廣島、置田、山岸各氏も出品
スネークアート展(07年3月)=廣島、置田、山岸各氏も出品
山岸さんの個展「景」 (07年3月)=くわしいプロフィルと、過去の展覧会へのリンクあり
廣島さんの07年4月の個展の予告記事=くわしいプロフィルと、過去の展覧会へのリンクあり

置田貴代美写真展「ISHIKI-意識」(06年11月)
東川町フォトフェスタ(06年7月)

多面的空間展 vol.9(07年4月)=藤川さん出品
ぼんち展4 食べる前に、撮る!(07年2月)=藤川さん出品
小樽鉄路写真展(06年8-9月)=藤川さん出品
多面的空間展 vol.8(06年)=藤川さん出品


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