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■第22回北の日本画展(同時開催 第1回企画展「北の息吹」)=3月3日で終了

2007年03月20日 23時15分15秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 エントリがおそくなってもうしわけありません。

 これまでの会場のスカイホールを離れ、ことしから札幌時計台ギャラリーへと移りました。
 スカイホールでは壁面が手狭になったためでしょう。
 とはいえ、中仕切りの可動壁を使えば、まだ壁の面積は増えたのではないかと思いますが…。

 また、あたらしい試みとして、「企画展」というのをひらいています。
 会員のHさんをつかまえて事情を聞きました。これは、吉田豪介さんのような美術評論家に委嘱したものなどではなく、じぶんたちでテーマを決め、3年間で全員が1度出品することにしたものだそうです。
 ちなみに、来年は「日本画、日本画、日本画」(仮)で、伝統的な絵から、いわゆる日本画の枠にとらわれない作品までを集め、最終年は「白と黒」(仮)で、墨が持ち味の作品を描く作家らが出品するということだそうです。正式には、これから決まるのでしょうが。

 会場を見渡すと、C室以降が、いつもの年のように30-50号ぐらいの作品がメーンなのに対し、企画展のA、B両室は100号クラスがならび、壮観です。
 もっとも、これは、多くのメンバーにとって、年1回の道展以外に、あらたな負担が増えることも意味しています。メンバーが、そのしんどさをふきとばすような勢いで健筆をふるわれんことを、願っています。
 というのは、伴百合野さんと谷地元麗子さんが出てないからなんだよなあ。

 それでは、気になった作品について。

A室
陳曦「岬」
 おもな画題を、アジアの少数民族から、道内風景へと移して、しばらくたった陳さん。描写に安定感があります。今回は、積丹の岬が、すこしさびしそうな感じがします。

中野邦昭「天の川」
 精緻で写実的な描写力が持ち味の中野さん。今回も、手前に植物を配し、中景に古い板張りの民家、上空に満天の星…と、舞台装置はばっちりです。また、夜だからあたりまえといわれそうですが、墨を効果的に使っているなあと感服します。

B室
小林文夫「白地緑映」
 日本画に伝統的な画題だけではなく、北海道らしい植物にとりくむ人も多くみられます。小林さんはオオウバユリでしょうか。粘り強い描写は、まさに、北の風土を感じさせます。 

C室
熊崎みどり「ほのか」
 今回もキャンバスに描いているようです。岩絵の具との相性は…というと、うーん・・・という感じは否めませんが、試行は評価したいと思います。

吉川聡子「抱(イダク)」
 始祖鳥のようなふしぎな動物のひなが透けて見える巨大な卵をいとおしそうに抱える女性。背景は、青と金箔(きんぱく)で表現された鳥の群れのシルエット。
 あいかわらず、達者な描写力です。
 
 いつも書いていることですが、吉川さんの絵は、空や飛行への単なるあこがれを描くにとどまらず、ついに人間は空を飛べないという失意と断念、さらには、それでも平凡な日常を生きていくという決意みたいなものをはらんでいるのではないか、と、見るたびに思うのです。
 そういうことを思えば、この絵もいろんな物語をはらんでいるように見えます。
 背景が抽象的な処理なのも、おもしろいです。

DEF室
 佐藤綾子「32歳の自画像」
 筆者が彼女に初めて会ったのは、まだ彼女が教育大の学生のときでした。しばらくお会いしていませんが、この題名には、月日の移り変わりの速さを感じて、ショックです。
 それはともかく、背景の抽象的な図形、さまざまな色を反復するセーターの模様などには、佐藤さんの実験精神の健在を感じます。が、それは90年代末の水準にもどっていないのも確かです。でも、まあ、それはしかたないでしょう。そのうち、子育てがひと段落すれば、パワーアップして問題作を発表してくれるものと期待しています。

 伊藤洋子「リマト川の秋」
 この会では少数派の、道展に所属していないメンバー。
 いろいろモティーフの回り道をへて、やっと、写実的な、この人らしい落ち着きと気品のある風景画に帰還してきたようです。
 緑の木の描き方が、洋画家の白鳥信之さんそっくり。

 笠嶋咲好「宵寝(よいね)」
 ジェソ?をつかったマティエール。輪郭線を描いたところと、没線のところの違い。なにかありそうな作品。

 ほかに、田村直子さんのマンガ的表現、朝地信介さんの、風景と文様の合成などがおもしろかったです。

 若手女性の多くは、学生時代の問題意識を十全に展開できていないような気がします。就職して、生活に追われているんだろうな、と推察します。がんばってください。


 ここまで書いたところで、こんなたのしいページを発見。
 筆者のつまらん文章よりも、ずっとわかりやすくおもしろい「北の日本画展」会場訪問記が読めます。オススメ。

http://homepage3.nifty.com/udomaru/index.htm


出品作は次のとおり。
◆企画展・北の息吹(A室)
大塚さつき「季響き」
川井坦  「融I」「融II」
斎藤美佳 「まどろむひかり」「月あかりに咲きそよぐ」
鈴木恭子 「浅春」
陳曦   「岬」
中野邦昭 「天の川」「千の風」
袴田睦美 「悠」
平野久美子「風にのって」

(B室)
池田さやか「深雪」
内崎さき子「青い岩」
河内厚子 「初夏」
小林文夫 「白花緑映」
高木久仁子「雪が降るころ」
千葉繁  「飛翔」
富山真祐 「波の波動」
馬場静子 「彩」
舟山敦子 「花・わたる」
山内郁子 「薊」
山本孝子 「季の音」

◆通常展(C室)
岡恵子  「終宴」「秋陽」
北口さつき「はだかI」「はだかII」
熊崎みどり「ほのか」
小島和夫 「川辺の家(烏鎮)」「薔薇窓」
高橋潤  「逆光」
竹澤桂子 「CONTENTS」
千葉晃世 「雪」
樋口雪子 「コスモス」
横川優  「おしどり」
吉川聡子 「抱(イダク)」

(DEF室)
今橋香奈子「明日(あす)」「風薫る」
佐藤綾子 「32歳の自画像」
百野道子 「ゆらぎ」「chieIII」
古瀬真弓 「想ふ」
大塚博子 「輪舞(ロンド)」
駒澤千波 「空の庭」
野口絹代 「現在」「至る」
福井美奈子「ぬくぬく」
村木愛  「とうだい」
伊藤洋子 「リマト川の秋」
野口裕司 「white skin under」(同題2点)
宮町舞子 「しましま」
朝地信介 「揺らぐ種」「無機質なふくらみ」
笠嶋咲好 「宵寝(よいね)」
田村直子 「早く!」「エクステ」
中島さつき「あいだ」「待つ」「ナキドリ」
平向功一 「ランドマーク」「末裔たちの午後」


2月26日(月)-3月3日(土)10:00-18:00
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A

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