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第21回北の日本画展(5月21日まで)

2006年05月20日 23時43分38秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 3月に道立近代美術館で大がかりな第20回記念展を開いたばかりだというのに、毎年のスカイホールでの展覧会は休まないんですね。勤勉というか、なんというか…。さすがに小品が多いです。そのぶん、破綻なくまとまった絵が多いのも確かです。あと、個人的には、3月の記念展で「おもしろい」と思った人の多くが出品していないところに不満が残ったりします。

 道展に出品していない日本画家から、今回あらたに伊藤洋子さんがメンバーに加わりました。伊藤さんの「夜のショーウィンドー」は、ドイツかどこかで見た光景がモティーフになっているようです。CDの広告ポスターの繰り返しがリズムを生んでいますが、ただ、三つならんだマネキンの描写はなぜかぎこちなさがのこり、伊藤さんがどうしてこんな題材を選んだのか、どうもよくわからないのです。

 ひときわ大きな作品を出していた小島和夫さんと伴百合野さんも、道展に所属していない作家です。
 小島さん「廻廊」は、髭に白いものの混じった男の上半身がモティーフですが、その背後にある廻廊が題になっています。アーチの基底部が2本に分かれているのは、めずらしい構造だと思われます。
 伴さん「コルドバにて’06」は、海外の印象を併置した作品で、ガーゼや布がコラージュされています。

 上の写真で、楕円形の支持体を使っているのは平向功一さん「サーカスタウン」です。モティーフになっている鳥籠の形に合わせているようです。この絵の下部には、洗面台にあるような台と、階段のような形が取り付けられています。いわゆる絵画の枠をはみ出る試みとしておもしろいです。



 上の画像の右側、谷地元麗子さん「時の間に間に」は、真上から猫8匹を描いた作品。箔足のようなものが描かれていますが、これはわざわざ筆で描いたもののようです。いつも達者な人ですが、それだけでなく、いわゆる「日本画らしさ」というものに対する批評性が、この人の絵には感じられるのです。
 その隣は、横川優さん「過背金龍」。5匹の鯉をリアルに描写しています。個人的には、いつもの少女の絵よりずっといいと思いました。
 奥に見えるのが、若手のホープ朝地信介さんの「ヤワラカナ要塞」です。花のなかに建物が組み込まれているという奇妙な風景を、色数をしぼって描いています。とてもユニークな絵だと思いますが、ただ、この路線でいくと、いわゆるシュルレアリスムの枠内におさまってしまうのではないかという気もします(生意気言ってすいません)。
 やはり若手のホープ駒澤千波さんもうまい人です。今回の「どこへ」は、大きな角を持つ野牛(?)のすぐ前を歩いていくタンクトップ姿の若い女性を正面から描いた縦長の絵で、どこか不安げな女性の表情といい、若々しさにあふれたこれまでの絵とはやや異なる憂いのようなものを漂わせているように感じました。

 植物を描いた作品が多い中で、熊崎みどりさん「彩」に注目しました。ツタがモティーフなのですが、色調はかなり暗め。支持体も、絹本というよりは、キャンバスのように見えます。
 もう1点、中島さつきさん「おん・春」は、フキノトウやツクシの間に、太い刷毛のような筆跡が生々しく残っているところがユニークです。

 最後に、羽生輝(ひかる)さん「祈る」。パリのノートルダム寺院を、墨をメーンに描いており、いつもの道東の漁村風景とは違った魅力があります。というか、小品ではありますが、羽生さんが、力をこめているのが、わかります。
 このカテドラルは、いわば西洋の象徴として、高村光太郎や、札幌の画家伊藤正が、全力で対峙してきました。最近は、昔にくらべて気軽に海外旅行できるようになって、このカテドラルを描いた絵も気軽なものが多くなっているだけに、正面から向き合っているこの羽生さんの作品は、うれしかったです。

5月16日(火)-21日(日)10:00-19:00(最終日-18:00)、スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B)

7月19日(水)-26日(水)10:00-20:00、24日休み、千歳市民ギャラリー(千歳市千代田町5)に巡回します。

■第20回記念北の日本画展(3月)


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