
今週はウィークデイがなにかといそがしく、あまりギャラリー回りができなかったため、1日(土)に9カ所まとめて見ました。
会期末ぎりぎりで、しかも簡単な紹介になってしまって申し訳ないです。
(写真は、市民ギャラリーの近くで見かけた花です)
斜里窯親子展 雪解けの風に乗せて
網走管内斜里町知床の峰浜に登り窯と穴窯を持ち、陶芸には向かないとされる道内産の土による作陶を続けている中村二夫さん(1950年福島県生まれ)と、長男のしんさん(73年生まれ)、次男の良太さん(80年生まれ)による陶芸展。
灰釉によるシンプルなうつわが中心です。しかも、比較的安い。
二夫さんの粉引碗や井戸碗がずらりと並んでいるのを見ると、(これは筆者の想像なのですが)1点1点芸術家のように作るのではなく、たくさんありふれたものを作った中に、ほんとうに良いものがあるという、千利休から民藝運動までを貫く価値観のようなものが感じられてきます。
もちろん、藁灰釉の花入れなど、窯変による色の移ろいが美しい作品もあるのですが。
しんさんは、鉄絵片口鉢など、父親とはちょっとちがった作風のうつわも手がけているようです。
良太さんの「灰釉アイヌ紋様マキリ鞘掛花入れ」は、アイヌ民族の刀鞘に着想を得た、壁掛け型の花入れという、ユニークなシリーズです。
3月28日-4月2日 10:30-19:00(最終日-17:00)
さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B)
はこだて工芸舎会員作品展
道南と津軽地方の工芸家(書家、版画家含む)が共同で運営しているギャラリーが、札幌まで出張しての作品展。
石川久美子、恵波ひでお、佐藤留利子、堂前邦子、堂前守人、野呂千佳子、武者千夏子、渡辺三重、和知篤司(ガラス)、相馬由紀子、長谷川房代(金工)、村上曜子、テキスタイル村上、田中正輝、佐藤国男(木版画)、長谷川青穂の16作家が出品しています。
作品の過半数は、陶芸のうつわ。食卓をうつくしく彩る個性的な器が多く、ファンは見逃せないと思います。
3月28日-4月2日 10:00-19:00(最終日-16:00)
スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階) 地図B)
□はこだて工芸舎ウエブ
栂嶺レイ写真展 知床 忘れられた遺産
知床五湖の手前にあった戦後開拓の痕跡を撮影した写真展。栂嶺さんは札幌の医師・写真家。
以前、五湖に行ったときに、途中の道路沿いに廃屋が見えたので、この周辺が開拓農地であったことは知っていました。
写真展では、或る農家が保管していた当時の貴重なモノクロ写真もまじえ、現存している家屋や、馬頭観音の碑、森の中で錆びたり朽ちたりしている道具などをとらえたカラー写真がならんでいます。
ただし、キャプションで、食卓には酒もあり、テレビも見ており、開拓農家としては意外と豊かな生活をしていた-などとあるのには、正直なところ違和感を覚えました。明治の開拓と、戦後とが、ごっちゃになっているのではないでしょうか。
3月27日-4月7日 9:00-19:00(最終日-17:00)。2日休み
クリエイトフォトギャラリー(中央区南1西9 札幌トラストビル 地図C)
北星学園大学写真部校外展
先日、藤女子大写真部展のエントリで、「藤女子風というのはあるけど、北星風というのはない」と書いたばかりですが、実際見てみると、似たような作風の写真が多いのでびっくりしました。
身のまわりの(あるいは旅先でも、あまり旅先っぽくない)、あまり人気のない風景などを、淡々と撮っている人が半数以上なのです。
もうひとつ特徴を挙げると、どうしてだかプリントのサイズがみんな小さめ。おなじネガでも大きく焼くとうまく見える-というのは一般的によくいわれることなので、これはもったいないと思いました。
モノクロ、カラースライドプリント、デジタル、携帯カメラ…と、いろんな種類がありました。
古田佑介さんのカラー6点は、ピンホールカメラでしょうか。逆光とはいえ、これほど周辺減光の強いレンズで、緑に変色した風景は、幻想的ともいえるふしぎなものです。南大橋(9条橋)の上で撮った1枚なんか、ロックみたいで、カッコイイですね。
鳴海優香さんのモノクロ「雨のあと」。とても長崎に行ったとは思えない、ささやかでしずかな感じ。ビルの窓が3枚あいている1枚がおもしろい。
ウヂイエサチエさんも、バスの車体を利用したソフトクリーム屋などは沖縄で撮ったと思われるのですが、まったく沖縄らしさのない、日常的なところがおもしろいと思いました。
原田絵里加さんは、写真をしばらくやめるそうで、これが最後の発表。
足立成亮さんの作品は、先日のPHOTOGRAPHIC SYNDOROMEで発表済みのもの。
ほかに、武田Kすけさんなども出品しています。
3月27日-4月2日
札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G)
会期末ぎりぎりで、しかも簡単な紹介になってしまって申し訳ないです。
(写真は、市民ギャラリーの近くで見かけた花です)
斜里窯親子展 雪解けの風に乗せて
網走管内斜里町知床の峰浜に登り窯と穴窯を持ち、陶芸には向かないとされる道内産の土による作陶を続けている中村二夫さん(1950年福島県生まれ)と、長男のしんさん(73年生まれ)、次男の良太さん(80年生まれ)による陶芸展。
灰釉によるシンプルなうつわが中心です。しかも、比較的安い。
二夫さんの粉引碗や井戸碗がずらりと並んでいるのを見ると、(これは筆者の想像なのですが)1点1点芸術家のように作るのではなく、たくさんありふれたものを作った中に、ほんとうに良いものがあるという、千利休から民藝運動までを貫く価値観のようなものが感じられてきます。
もちろん、藁灰釉の花入れなど、窯変による色の移ろいが美しい作品もあるのですが。
しんさんは、鉄絵片口鉢など、父親とはちょっとちがった作風のうつわも手がけているようです。
良太さんの「灰釉アイヌ紋様マキリ鞘掛花入れ」は、アイヌ民族の刀鞘に着想を得た、壁掛け型の花入れという、ユニークなシリーズです。
3月28日-4月2日 10:30-19:00(最終日-17:00)
さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B)
はこだて工芸舎会員作品展
道南と津軽地方の工芸家(書家、版画家含む)が共同で運営しているギャラリーが、札幌まで出張しての作品展。
石川久美子、恵波ひでお、佐藤留利子、堂前邦子、堂前守人、野呂千佳子、武者千夏子、渡辺三重、和知篤司(ガラス)、相馬由紀子、長谷川房代(金工)、村上曜子、テキスタイル村上、田中正輝、佐藤国男(木版画)、長谷川青穂の16作家が出品しています。
作品の過半数は、陶芸のうつわ。食卓をうつくしく彩る個性的な器が多く、ファンは見逃せないと思います。
3月28日-4月2日 10:00-19:00(最終日-16:00)
スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階) 地図B)
□はこだて工芸舎ウエブ
栂嶺レイ写真展 知床 忘れられた遺産
知床五湖の手前にあった戦後開拓の痕跡を撮影した写真展。栂嶺さんは札幌の医師・写真家。
以前、五湖に行ったときに、途中の道路沿いに廃屋が見えたので、この周辺が開拓農地であったことは知っていました。
写真展では、或る農家が保管していた当時の貴重なモノクロ写真もまじえ、現存している家屋や、馬頭観音の碑、森の中で錆びたり朽ちたりしている道具などをとらえたカラー写真がならんでいます。
ただし、キャプションで、食卓には酒もあり、テレビも見ており、開拓農家としては意外と豊かな生活をしていた-などとあるのには、正直なところ違和感を覚えました。明治の開拓と、戦後とが、ごっちゃになっているのではないでしょうか。
3月27日-4月7日 9:00-19:00(最終日-17:00)。2日休み
クリエイトフォトギャラリー(中央区南1西9 札幌トラストビル 地図C)
北星学園大学写真部校外展
先日、藤女子大写真部展のエントリで、「藤女子風というのはあるけど、北星風というのはない」と書いたばかりですが、実際見てみると、似たような作風の写真が多いのでびっくりしました。
身のまわりの(あるいは旅先でも、あまり旅先っぽくない)、あまり人気のない風景などを、淡々と撮っている人が半数以上なのです。
もうひとつ特徴を挙げると、どうしてだかプリントのサイズがみんな小さめ。おなじネガでも大きく焼くとうまく見える-というのは一般的によくいわれることなので、これはもったいないと思いました。
モノクロ、カラースライドプリント、デジタル、携帯カメラ…と、いろんな種類がありました。
古田佑介さんのカラー6点は、ピンホールカメラでしょうか。逆光とはいえ、これほど周辺減光の強いレンズで、緑に変色した風景は、幻想的ともいえるふしぎなものです。南大橋(9条橋)の上で撮った1枚なんか、ロックみたいで、カッコイイですね。
鳴海優香さんのモノクロ「雨のあと」。とても長崎に行ったとは思えない、ささやかでしずかな感じ。ビルの窓が3枚あいている1枚がおもしろい。
ウヂイエサチエさんも、バスの車体を利用したソフトクリーム屋などは沖縄で撮ったと思われるのですが、まったく沖縄らしさのない、日常的なところがおもしろいと思いました。
原田絵里加さんは、写真をしばらくやめるそうで、これが最後の発表。
足立成亮さんの作品は、先日のPHOTOGRAPHIC SYNDOROMEで発表済みのもの。
ほかに、武田Kすけさんなども出品しています。
3月27日-4月2日
札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G)
→アートマン→琴似の三角山と、久し振りに
アートを堪能しました。
アートマンにはヤナイさんの名前もありましたね。
参加者の氏名は以下のとおり。宮下麻衣子・秋元麻美・足立成亮・武田Kすけ・石黒芙久美・引地さやか・氏家さちこ・鳴海優香・伊藤ももこ・寺脇悠太郎・斉藤暢宏・三上尚子・井手藍子・五十嵐香織・翁緒磯・古田祐介・原田絵里加の17人。
足立君がモノクロームの横位置の作品を6点。被写体は全てぶれて写っている。人物の影が2点、電線のように見える線状のものが3点、最後の1点は四角な建物のような影。これは近作ではないとの断り書き。始めて見る作品であるが気持ちのいい作品である。存在の輪郭線がぶれているおかげで、存在の運動感・流動感があらわれている。背景は真っ白い空白(空虚)でみたされている。この何もない空虚感の気分はとてもいい。
古田君という人が横位置のハイコントラストのカラー作品を6点だしている。逆光で浮かび上がった高層建築物のシルエットの背後にある空の色がふかいエメラルドグリーンの世界に変色している。太陽がオレンジ色に滲んでいる。シルエットの影のモチーフは他に橋の上の人体であり、クレーンの鉄のアームであり、それらの世界はハイコントラストの明暗に分かれているが、その境界は明と暗とが拮抗しあって滲んでいる。その明と暗とが滲んでいる境界線(?)のあたりに吉田君の主観的ポジションが棲息しているのであろうか。その逆光の光景の明るい部分がこの世のものではないあやしいグリーンの色で染まり、その明るさの粒子を侵食するように漆黒の底知れぬ闇の粒子が深々と包囲している。1点だけ、地下鉄の車両の影とその前の人体の影が写っている作品だけは、全体が妖しいレッド(暗室の赤色灯の色なのか)に浸された世界に変色されていて、その色への感情移入の仕方がはっとさせる。
原田絵里加さんのモノクロームの作品(白い雪の上に大の字に寝転がっているちいさな人体が写っている)にはキャプションがつけられている。「まったり/ゆったり/ふんわりすすんで/ちゃっかり/しっかり/きっちりできてる/そんな余裕のある人を/成人(おとな)というのだろうか」この人の切ないまでの青々とした感情視線の微細なふるえに息を詰めてながめている私がそこにいる。その作品のどこを見つめてもこの世代固有のナルシシズムの影すら見つからない。どこかつきぬけた悲しい視線を感じるのだ。
意外とだぶってないですね。同じ日に行ったのは、ギャラリーART-MAN(中央区南4東4)だけですか。
>T.nakamuraさん
しかし原田さんの作品全体は、なんだか閉じたものを感じさせたのですけど、どうでしょう。
脳内イメージ」の感覚的入力の場面を見るならば、世界にむけて開かれている。また「脳内イメージ」の感覚的出力のプロセスを見るならば、そこでも、世界に向けて開かれている。感覚的入力のプロセスと、感覚的出力のプロセスの両方において、個人の「脳内イメージ」の装置とプロセスはつねに世界に開かれている。
したがっていかに個人がおのれの「脳内イメージ」が「独我論的に」閉じていると思っていたところでそれは致命的な精神上の錯誤に過ぎないであろう。
原田君の表現世界が「閉じている」と言う風に見えるのは、たぶん、やないさんの感受性の固有の性質に関与していると思う。なぜなら個人の「感受性の装置」の微細な差異を見分けることは至難のわざである。
原田君の表現があの会場の中で異彩をはなって見えるのはなぜなのか。
もしも精神分裂病のように完全に「閉じている」世界であるなら、やないさんの言うように、「閉じている」と言う強い印象を受けとるに違いない。そこには「共感の回路」が人間的に成立しがたいのだから。
原田君の表現世界は「共感の回路」が開かれていると感じる。だから、個々人はその前に立って個々の感想を持つことができる。
彼の表現が異彩をはなっているのは、かれがよく世界と自己との疎外された関係性を感受しているその感度の強さによると思う。世界と自己との関係性を表現する、その色彩感覚に私は脱帽する。
わたしは、「古田君」の作品はとてもおもしろく見ました。
ふたりが同じ壁面に並んで展示されていたからごちゃまぜになりました。失礼しました。そのふたりの壁面にちょうど直角になる位置の壁面に足立君の作品が展示されています。
この三者の関係は何かを暗示している。足立君の作品が先の二人の作品に対して90度だけポジションが違っているという風に。
二人は地続きの関係、同じ地平に位置していて、同じ水平の視点で世界を切り取っている。それに対して、同じ地平に位置しながらも、足立君は90度だけ違う視点で世界を垂直に切り取っている。水平の視点からだけではなく、垂直の視点をも加味してという風に。
視点におけるX軸とY軸からなる座標を仮定するなら、足立君の座標はどこにあるのか。そのベクトルは何処に向かっているのか。
原田さんのキャプションのついたモノクロームの写真が「閉じている」とやないさんが感じたとしたなら、それでいいと思います。
なるほど、おもしろい見方もあるもんですね。
ところで、最近は本の装丁にも写真を使ったものが多くなりました。
>T.nakamuraさん
原田さんの写真のうち、カラーのは好きでした。もっとサイズが大きかったらもっと良かったと思いました。