ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

スタンドアップ

2006年01月26日 | 映画
昨日見てきました。ショーン・ビーンが出てるので。いつもショーン・ビーンが出ている映画を見に行く時に「そんなにショーン・ビーン好きか?」と自問する私・・・(笑)でも見に行っちゃうんですけどね。
いつもだと、タイトルでネタバレ警告しておいて、伏字なしで感想書くのですが、この映画に関しては、「ショーン・ビーン出てるけど内容がなあ・・・」と思っている人が結構いるのではないかなあと思うので、そんな方たちの参考になればと、ある程度ネタバレだなあと思うところは伏字にしつつ書いてみようと思います。
それでも、これから観るつもりの方は読まない方が楽しめるかもしれません。

まずはネタバレなし感想から。
この映画は、実際にあった、アメリカでの鉱山女性労働者たちがセクハラを受けたことに対して集団訴訟を起こした実話に基づいて作られたものです。
というと、フェミニズムバリバリの話なのでは・・・と引いてしまう人も多いのでは。
でも一方で、「クジラの島の少女」のニキ・カーロ監督、というところで「どんな映画なんだろう?」とも思うと思いますが。
私も、最初ショーン・ビーンが出ると教えていただいた時は行かないつもりだったのですが、なんとなく「やっぱり行こうかな」という気になって行ったのでした。
前半は確かに過酷な話が続き、暗い気分になりますが、その分後半カタルシスが訪れます・・・まあカタルシスになるかどうかは人によるかもしれませんが・・・
この映画の基になった訴訟は女性たちの勝訴になった、という話が前提にあるので、結果はわかっている物語ではあるのですが、そこにいたる過程での主人公や周囲の人々の人物描写が良かったなあと思いました。
主人公以外の描写はさほど深くはないのですが、短いシーンでそれぞれの人間性が感じられるように思いました。グローリーとシェリー以外は詳しいことは語られない、主人公ジョージーの同僚の女性たちにも。
あらすじだけ説明すると、多分陳腐なありがちなストーリーに思えてしまうと思います。けれど、不思議とそんな風には思えませんでした。多分、演出のせいなんでしょう。静かに刻々と進む映像と、過酷な描写が、後半のカタルシスを静かなものに抑えていたようにも思います。
まあ、このあたりは人によって感想は違うかもしれませんが・・・
そうそう、ショーン・ビーンは主人公ジョージーの同僚、グローリーの夫役です。とってもいい役で、出番も結構多いです。ファンは必見でしょう(笑)
ちなみに原題はNorth Countryで、邦題がなぜか「スタンド・アップ」。CMのキャッチコピーを見ていても、「頑張れば夢はかなう。女性よがんばれ」みたいな雰囲気で違和感を感じたのですが、Stand Upという言葉は映画の中でもちゃんと台詞として印象的な場面で出てきます。だからタイトルとしてはそんなにハズしてないんだと思います。
ノース・カントリーでは日本では確かに地味すぎるでしょうが、英語圏ではStand Upではベタすぎたのかもしれませんねえ。
でも、日本のキャッチコピー、絶対ハズしていると思う・・・(汗)

というわけでここから伏字つきのネタバレ感想になります。
ジョージーが故郷に戻ってくると、あたりは一面の雪景色。その後もずっと雪が残る殺風景な風景が映し出され、憂鬱な雰囲気を映像でも見事に表現していたと思います。心に染みとおるような寒さとわびしさ、とでも言うか。
その景色が最後にはわずかに緑が萌え出た風景に変わり、しかも最初にジョージーが町に戻ってきた時と全く同じ道を行く車を、全く同じカメラワークで映しているのはちょっとありがちかな、とは思いましたが、それでも静かに心に染みました。
前半はとにかく過酷な状況が描かれます。暴力夫から逃げて来た故郷の町では白い目で見られ、父親には理解されず、鉱山では嫌がらせを受け・・・心無い仕打ちのため、息子の心も離れてしまいます。
鉱山でのセクハラ&嫌がらせの数々がまたすごくて。本当に、前半は観に来たことを後悔しかけました(汗)
ただでさえキツイ仕事なのに、そこまでの仕打ちを受けて、それでも鉱山で働こうという女性たちには、「稼がなくてはならない」という切実な事情があるのだということも描かれていました。そうでもなかったら、あんなとこ逃げ出してるよ普通・・・実際にその事情が描かれていたのは、主人公のジョージーと、若いシェリー(リヴ・タイラー似のミシェル・モナハン(笑))だけでしたが、それぞれに何らかの事情があるのでしょう。ジョージーと一緒に原告になるように促されても、「職を失いたくない」と頑なに拒んでいた姿だけでもそのあたりは察せられます。
セクハラをする方の心理も少しですが描かれていて・・・いや描かれていはいないのですが、想像できるというか。単に腹いせで嫌がらせをしていた男たちも多かったと思いますが、その中でもジョージーに執拗に嫌がらせを続ける、高校時代のボーイフレンドだったボビー・シャープの存在が面白いというと変ですが(汗)興味深かったです。
話が最後まで進むと、彼の執拗な嫌がらせはかつてジョージーを手に入れることができなかった屈折した思いから来ていたということが察せられます。
ただ、私には法廷で「卑怯者か」と攻められて、真実を語る気になったボビーの気持ちはよくわからなかったのですが・・・(汗)このあたりは男性なら理解できるんでしょうか? また弁護士(名前忘れた(汗))がホッケーに例えて迫ったりしてたのでちょっと引いてしまった(汗)アメリカンスポーツあんまり好きじゃないんだよなあ・・・
そういえば、ジョージーをレイプした高校教師が法廷に証人として現れたのは不思議でした。レイプじゃなくて合意の上だった、という証人だとは言え、よく人前に出られたよなあと・・・会社が金か脅しで呼び出したのでしょうか。
しかし、合意だって未成年相手ってのは罪じゃないのか?(汗)
鉱山の男性の中でも、全員がセクハラに加担していたわけではなく、彼らの行為に嫌悪を感じる男性もいたのもちょっと救いでした。ただし、何もできないのですが・・・

前半執拗に過酷な状況が描かれる中、後半に少しずつカタルシスが訪れます。父親との和解、息子との和解(ここでショーン・ビーンの見せ場が!)などはありがちな展開かもしれないけれど、この映画の中では素直に胸に染みました。
父親が組合の会合?でジョージーのために発言するところなども、一つ間違うと本当にクサイと思うし、実際最後に拍手が起こるところなどはちょっと微妙でしたが(汗)でも、発言の内容自体はそこそこ説得力のあるものでした。
自分の妻や娘が同じ目にあっても君たちは平気なのかという言葉は、差別について考える時の基本的な考え方ですよね・・・
父親の気持ちの変化はなかなか良かったですが、母親の家出のエピソードはなくても良かったような気も(汗)「主婦の仕事がタダだと思っているの」くらいの反撃で良かったのではと思いましたが。
会社側の女性弁護士が、裁判では仕事なのでジョージーを傷つけて不利になるような話ばかりをするけれど、内心では会社側に反感を持っているようだと感じさせる社長とのやりとりも面白かったです。でも決して法廷では集団訴訟できるだけの原告が名乗り出たことに嬉しそうな表情を見せたり、なんてことがなかったのには良かった・・・というかホッとしました。
グローリーがALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病だったという設定も、陳腐かなとも思えるのですが、病気が進行してどんどん動けなくなるグローリーの真摯な姿には説得力がありました。またここで妻を優しく支えるショーン・ビーンが好演!(笑)
そのグローリーが、話すこともできない状態で法廷に来て、原告として名乗りを上げるというのもあざとい設定とも言えなくはないのですが、私は素直に感動できました。また、グローリーの代わりにグローリーの声明?を読み上げるショーン・ビーンが感動でございますよ(笑)
でも一番感動したのは、グローリーに見つめられ、職を失わないために沈黙を続けていた女性の同僚たちが原告として立ち上がった場面でした。特にシェリーと、最後まで立たなかった大柄な女性が立ち上がった時に・・・
これも、本当に話だけ聞いていると陳腐だと思うんですが(汗)なんだか静かに感動できたんですよね。主人公のジョージーよりも、私は同僚の女性たちに共感を覚えるようです。彼女たちの決意に素直に感動して、ちょっと泣いてしまいましたよ。
ただ、ジョージーの両親や、他の男性たちまで立ち上がったのはやりすがかなと思いましたが・・・(汗)
最後に主人公ジョージーのことですが、彼女の人物造形もよくできていたと思います。高校教師にレイプされたことは、忘れてしまいたいと誰にも訴えられなかったのに、子供たちのためには会社を告発する勇気が持てたというあたりに、ジョージーの成長が伺えます。
男性に虐待され続けていたという過去も、「自分の力で子供たちを養って、家を持って、生活して行けることが幸せ」というジョージーの気持ちにとても説得力を与えていたと思います。
原告が立ったところで裁判のシーンは終わり、勝訴になるまでの過程は一切描かれていません。そのあたりもすっきりしていていいなあと思いました。大事なのは裁判の結果よりも、そこに至るまでの過程、ジョージーが皆に理解されるまでなのですからね。
最後のほのぼのシーンは、裁判のシーンを描かずに裁判の結果をさりけなく示すという点では上手いやり方だとは思いましたが、ちょっと余分だったような気も・・・
でも、緑が萌え出した風景はやはり静かに心に染みました。

というわけでなんだかとりとめもなく長くなってしまったんですが(汗)予想外になかなか良かったです。ショーン・ビーンのおかげでいい映画みられました。

最後に、これから映画の感想を書いたら、今年見た映画の順位を書き留めておくことにします。年末に映画の総括をする時楽かなーと(笑)
というわけで2005年の今の時点での映画の順位。
1.ロード・オブ・ウォー / 2.スタンド・アップ / 3.キングコング / 4.ハリーポッターと炎のゴブレット
今年もう4本も見てるんだなあ(汗)まだ1月なんですが・・・
ハリポタ以外皆泣いている私(汗)あ、ハリポタも「僕を連れて帰って」でちょっとうるっと来たんだった・・・単に涙腺弱いだけか?(笑)
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ラジオドラマ聞き返し中その12

2006年01月26日 | 指輪物語&トールキン
またラジオドラマの話です。ちょうど「二つの塔」の中でも好きな話が続いたので、短いシーンですが感想書きたくなって。
エントの行進の次は、セオデンの再生?です。
ここ、原作では「二つの塔」の中ではベスト3に入る好きな場面なので、とてもこだわりがある私。映画はあまりにも原作と変えられちゃってショックだったものです。
ラジオドラマは一応原作どおりなのですが、あまりに原作にこだわりがありすぎるためか、手放しで満足とは行きません。考えてみたら、「二つの塔」の好きなシーン3つともそうだなあ。思い入れが強すぎなのかな。
ちなみにベスト3とは、セオデンの再生、アイゼンガルドでのメリピピとアラゴルンたちの再会、キリス・ウンゴルの階段で眠っているフロドにそっと触れるゴラム、です。
まあ、映画ではこの3つのシーンがどうだったかというと、セオデンの再生は魔法対決にされちゃったし、キリス・ウンゴルの階段はシーン自体がカット! という悲しい結果でしたが・・・
唯一、アイゼンガルドでの再会は、ギムリの怒りっぷりはラジオドラマよりはいいですが、でもセオデンとホビットのやりとりないもんなあ・・・
まあ思い入れがあると色々不満も出てきてしまうという話ですね。
話を戻しますが、ラジオドラマのセオデンは低くて素敵なお声なのですが、やっぱちょっと熱すぎ(汗)
でも、黄金館から出て「ここはそう暗くはない」というあたりの静かな声はいいです。
この黄金館から出て草原を見渡すシーンでは、風が吹き渡る音が流れて、かなり雰囲気は出ています。
でも、このシーンでの、雲間から光が現れ、草原に降る驟雨を照らすという美しい情景描写が大好きなもので、音しか聞こえないラジオドラマはちょっと残念です。
映画ではフルにこの場面再現できたはずなのに・・・(溜息)まあ、そもそも映画のローハン、全然草原の国じゃないもんなあ・・・
で、このあたりで話はフロド・サムルートに戻ります。
時系列順だとこの順番でいいのかなあ? いつか年表で確認してみようと思いつつやってなかったりします・・・
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