ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

トールキン展に行ってきた話

2018年09月19日 | 指輪物語&トールキン


この記事はTolkien Writing Dayに参加しています。

8月にオックスフォードで開かれているトールキン展Tolkien:Maker of Middle-earthに行ってきました。
第一報を聞いたのは昨年のいつ頃だったかな?オックスフォードのボドリアン図書館でトールキンの原稿を展示する展覧会があると聞いて、軽い気持ちで「じゃあ来年の夏はイギリス行くか~」と決めました。
ボドリアン図書館の本館には小さな展示スペースがあって、そこでの展示を見たことがあったので、その程度の地味なものなのでは、と思っていたのですが、具体的な話が見えてきたら思ったよりも大規模なのでびっくりしてしまいました…ウェストンライブラリーなんて立派なものができてたんですね…(2015年オープンのようです。私が最後にオックスフォード行ったの2014年1月でした)余談ですがカフェのところのトイレが誰でも入れるので、オックスフォードの真ん中にいいトイレスポットができましたね~(海外旅行ではトイレスポット確保大事です…)
トールキンの原稿と言えば、以前シアトルのファンタジー展で数点展示されているのを見たことがあったのですが、とっても読みづらい教授の手書き原稿が主で、こういうのがメインだったら大分マニアックで地味だなあ、と思っていたのです(^^;)
(ちなみにシアトルで展示されていた原稿のうち1枚は今回同じものが展示されていました。登場人物ごとの表になった時系列表です)

ウェストンライブラリーの展示室は思ったよりはこじんまりした一室でしたが、そこに十分な展示物がありました。
原稿がちゃんと見やすく立てられていて、シアトルの展示はよろしくなかったなあと…(ガラスケースの棚に平らに展示されていたのです…)
手書き原稿だけではなく、挿絵の原画や地図の下書き(数年前に発見されたものですよね)などがむしろメインで、ケースに貼りついて必死に解読しなければならないようなことにならず、マニア以外でも興味深く見られる展示だなあと思いました。(そういう手書き原稿ももちろんありましたが(^^;)
おそらく、新しく見つかった地図の下書きの展示は今回の目玉だったのではないでしょうか。
挿絵や地図、スケッチなどの展示が多く、トールキンのクリエイターとしての側面を強調した展示のように感じました。この展示を見ていると、言語学者で大学教授である学者が片手間に物語を書いた、などというものではなく、もともとトールキンの中には深い想像とイマジネーションの源泉があって、根っからのクリエイターだったのだな、ということをまざまざと実感させられました。

以下、これから展示をご覧になる方にはネタバレになるかもしれませんが、個別の展示の感想を。

ホビットの挿画の原画には、素人と称しつつ、トールキンの画力に改めて唸りました。ジョン・ハウ展の時にも、印刷で見慣れた絵が原画だとどれだけ美しいか、というのを思い知りましたが、まさか教授の絵にも同じ感想を抱くことになるとは思っていませんでした。教授ごめんなさい(^^;)
ペン画の細かいタッチにも驚きましたし、水彩の色使いの美しさは息をのむようでした。本当に原画だと全然違うのですよ…!
グワイヒアの絵の空と雲の水色と白の美しさも素晴らしかったし、個人的には裂け谷の野原と野の花の色使いが一番好きでした。
スマウグと黄金の赤と金の細かい描写も美しかったなあ。
実は地図がらみ?で、ポーリン・ペインズさんの絵の原画も展示されていてラッキーだったのですが、(あの地図の文字、全部レタリングだったんですね…!)やはりプロの力量は違うなあと思いつつも、教授の絵にも独特の魅力があって素晴らしいなあ、と思いました。画家としてのトールキンの評価が俄然上がりました!
学生時代に書いたオックスフォードの街並みののペン画も上手いんですよね。以前から「サンタクロースからの手紙」に描かれたオックスフォードのモノクロの風景が美しいなあと思っていたのですが。
「サンタクロースからの手紙」の原画も展示されていました。最初の頃の手紙の宛先がダーンリー通り2番地になっていて、リーズのあの家にいた頃から始めたんだなあと、直前にリーズで家を見てきていたので感慨深く思ったり。

そして、なんといっても地図ですね。指輪物語を書き進めながら、地図を自分で描いて照合していた様子がわかって、ものすごい緻密な作業だなあと…。細かい地形を手書きで書いて、紙が足りなくなって継ぎ足したり、夢中になって書き進める姿が目に浮かぶようでした。

それと、「なんだこれ!?」と思ったのは、指輪物語の原稿の下書きを、なぜかカリグラフィで、英語とテングワールで清書したものがあったことです。何のために!?…趣味で、としか言いようがありませんよね(汗)HoMEに収録されている幻のエピローグに出てくるアラゴルンからサムへの手紙(これも展示されてました!)の共通語とエルフ語の併記も、このあたりの発想から来ていたんだなあと思ったり。

教授がマザルブルの書のページの焼け焦げまで再現したものを作った現物も展示してありました。このページの話を初めて知った時は笑ってしまったのですが、まさか本物を見る日が来るなんて、と感慨深い以上になんだか笑えてしまいました。

原稿や創作物以外にも、家族写真や教授が実際に使っていた遺品など、よく展示させてくれたなあ、というようなものがありました。おそらく戦時中に教授が持ち歩いていたエディス夫人の写真入れなんてあって、よく残ってたな!と思うと同時にちょっとグッと来ました。実際に毎日この写真を眺めていたのかなあと…
幼少期に父親に書いた手紙や、戦地で亡くなった友からの最後の手紙など、涙腺が緩む展示も…

トールキンにあてたファンレターも展示されていましたが、中には著名人のファンレターもあり、デンマークのマルグレーテ女王(当時は王女だったそうですが)の手紙には女王のイラストが同封されていたようで、こんなところでデンマーク女王の直筆原画まで見ることになろうとは!と(笑)

他にも興味深い展示がたくさんありますが、すべての感想を書いている時間もないので、特に心に残ったものについて書いてみました。

無料ということもあり、マニアばかりではなくちょっと興味がある、程度の人もたくさん見に来ていたと思います。
あ、印象に残ったファミリーが。スペインから来たらしき家族で、ベビーカーの子と幼児を連れた一家だったのですが、立体地図を見て幼児がいきなり「モリアはどこ?」と聞くと、お父さんがすかさず「ここだよ」と指さしていたという…(ちょっと違っていたけどだいたい合ってた)こんな幼児のうちから英才教育している束一家なのか!と(笑)

展覧会は10月下旬までやっていますので、イギリスに行く予定のある方、行ってみても良いかなという方、ぜひ足を運んでみてください。
入場は無料ですが、入場が時間指定になっているので時間の予約は必要です。先にあげたHPからも予約できます。(予約手数料1回1英ポンドかかります)平日であればまず当日でも予約できるかとは思いますが。
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