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電力会社や原子力ムラの体質は、東電以外も皆同じ -「決して非を認めようとしない専門家たちの無反省」

2011-04-27 | いとすぎの見るこの社会-コミュニティ関連
あるメディアは今回の原発事故に東電の人事上の特殊事情が
あるように書いているが、それは間違っていると思う。

電力会社や所謂「原子力ムラ」の体質はどこも変わらない。
原子力は電力会社にとって地域独占を守る格好の手段になっており、
(原発推進は電力自由化を阻止する格好の口実である)
これまで原子力の研究しかしておらず、原子力を否定されると
自らの存在意義が危うい原子力ムラの人々と完全に利害が一致する。

この事情は原発に関わっている全ての電力会社に共通する。

従って原子力ムラの行動原理は一般的な官僚機構と全く同じで、
「自分の仕事と組織、権限を拡大させようとする」
「公共性より自らの存在を正当化する政治活動を優先する」

という顕著な二つの特徴を持つようになる。
だからこそ原子力を専攻した人々の中から「離反」が生じるのである。

何度も書いているが、原子力はクリーンエネルギーなどではない。
「政治的に汚染されている」のである。


▽ 原子力推進勢力が「合理的な議論を許容しない」と書いてある。

『日本版グリーン革命で経済・雇用を立て直す』(飯田哲也/筒井信隆/田中優/吉田文和,洋泉社)


▽ 電力の「中央集権体制」は原子力と表裏一体

『天然ガスが日本を救う 知られざる資源の政治経済学』(石井彰,日経BP社)


▽ 風力発電(製造業への波及効果が高い)の普及を妨害する電気事業者

『エコ・ウオーズ 低炭素社会への挑戦』(朝日新聞特別取材班)



記者の目:「原子力ムラ」の閉鎖的体質=日野行介(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20110421k0000m070156000c.html

”東京電力福島第1原発の事故の取材応援で、東電や経済産業省原子力安全・保安院、
 内閣府原子力安全委員会の記者会見に何度も出席した。そこで強く疑問に感じたの
 は、「想定外の事態」や「未曽有の天災」という決まり文句を盾に、決して非を認
 めようとしない専門家たちの無反省ぶり
だ。これまで不都合な警告や批判を封じ込
 め、「安全」を自明のものとして押し付けてきた業界の独善的体質が今回の事故の
 背景にあると思える。
  ◇言葉は丁寧だが決して非認めず
 「大変なご心配をおかけして申し訳ありません」。東電の記者会見は必ずと言って
 いいほど謝罪の言葉が出る。だが、「多重防護」を誇ってきたはずの原発の安全性
 自体に疑問が及ぶと、会見する幹部の態度は途端に硬くなる。言葉は丁寧だが、非
 は決して認めず、自分たちの言い分だけを強調する。
都合の悪い質問には、記者を
 にらみつけながら木で鼻をくくったような対応をする幹部もいる。
 こうした会見の模様はテレビやインターネット動画でそのまま報道され、政府の対
 応への不信とも相まって、国民は「本当に大丈夫なのか」「うそをついているので
 はないか」と疑念を募らせている。
 私は02年から3年間、若狭湾に原発15基が林立する福井県敦賀市に勤務した。
 「原発銀座」と称される地域で、取材の最重要テーマが原発だった。
 取材で接した原子力の技術者・研究者たちの印象は決して芳しいものではない。
 都合の悪い問いにまともに答えず、批判的な意見に耳を貸さない尊大ぶりが印象に
 残った。

 高速増殖原型炉「もんじゅ」(敦賀市)の設置許可を無効とした名古屋高裁金沢支
 部判決(03年1月)の際には、電力会社や研究者が業界を挙げて判決を攻撃した。
 判決に関する討論会で、推進派の大学教授が専門用語を駆使して野党の国会議員を
 やり込めた後、会場の片隅で「素人のくせに」と仲間内で笑い合っているのを見た。

 ある地方テレビ局が数年前、原子力に批判的な研究者をドキュメンタリー番組で取
 り上げたところ、地元電力会社が「原子力を理解していない」と猛烈に抗議した
 番組はこの電力会社を直接批判する内容ではなかったが、テレビ局は広告主の抗議
 を無視できず、記者による定期的な原発見学を約束した。
 この件について取材した私に、電力会社の役員は「(原発が)いかに安全か理解し
 ていない。『反省しろ』ということだ」と言い放った。その傲慢な態度は、今回の
 事故を巡る会見で見た東電幹部と重なり合う。

  ◇官民にまたがる狭い人脈社会
 なぜ、こんな体質が醸成されるのだろうか。
 原子力の技術者だった飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長は、業界の実態を
 「原子力村(ムラ)」と名付けた。大学や大学院で原子力を学んだ学生は、電力会
 社やメーカーに就職したり、国や立地自治体の技官になる。就職先は担当教官の意
 向で決まることが多い人脈社会で、彼らは官民に分かれても「ムラ」の一員として
 育っていく。
 原発関係の事故はメディアで大きく報じられる。市民団体などの批判にさらされる
 ことも多い。〝被害者意識〟から、彼らは批判を「素人の意見」だと一方的に決め
 つけ、独善的な専門家意識を強めていくのだろう。
 〔中略〕
 組織の名称にしても、米国は「原子力規制委員会(NRC)」なのに、日本の機関
 には「規制」ではなく「安全」が使われている。「原子力は安全」という宣伝を優
 先するあまり、規制や監視という視点が欠落していた
としか思えない。
 今回の事故を受け、保安院を経産省から分離する組織改革がようやく検討される見
 通しとなった。必要なことだとは思うが、組織いじりだけでは専門家たちの体質を
 変えていくことはできない

 これまで私たちは原子力の問題を「専門家の世界だから」と、直視することを避け、
 「ムラ」に委ねすぎてきた。だが今回の事故で、放射能への不安から電力不足問題
 に至るまで、原子力が一人一人の生活に密接にかかわることが明白になった。もう
 無関心は許されない。(大阪社会部)”

 → 私が知る限りで、最も実情を如実に伝える記事である。
   勇敢な記者に敬意を表したい。
   巨額広告費によって口封じされてきたメディアは反省すべきだ。

   確かに「組織いじりだけで専門家の体質を変えることはできない」。
   少なくとも戦前の傲慢な軍部のように、
   絶対的な敗北体験が必要だったのである。


福島原発で危険作業志願 高齢エンジニアたち「決死の覚悟」(j-cast)
http://www.j-cast.com/2011/04/25094120.html

”72歳になるエンジニアが、福島第一原子力発電所の暴発を阻止しようと立ち上が
 った。福島原発は高温状態の原子炉を冷やす作業が続いているが、一方で作業員
 の劣悪な生活環境が伝えられている。そうした中で、かつての「敏腕」エンジニ
 アたちが「自分たちがもっている技術を役立ててほしい」と訴えている。
 原則、現場での作業に耐えられる体力と経験のある60歳以上が対象。2011年4月6
 日から500通のメールと2000通の封書で呼びかけを開始したところ、エンジニア
 の「決死の覚悟」としてブログやツイッターで取り上げられ、約2週間で米国や
 フランス、ドイツ、そして原発事故から25年経ったチェルノブイリへも広がって
 いる。
 「未来のある若者に任せてはいけない」
 「福島原発暴発阻止行動隊」を呼びかけた山田恭暉(72)さんは、住友金属工業
 に技術者として30年勤め、製鉄や環境・廃棄物処理、プラント建設などを手がけ
 てきた。原発についても「新事業の研究で構造や問題点、安全性などを勉強して
 きた」経験をもつ。
 現在、原発の事故現場には下請けや孫請け企業を含め、知識や経験もない人が、
 ハローワークなどで集められては投入されている。東京電力の、そんな場当たり
 的な対応に危機感を募らせた。
 もし原発が暴発すれば、首都圏をも含めた広範な汚染が発生する可能性がある。
 それを防ぐには、ホースによる散水のような一時的な処置ではなく、10年間安定
 して作動する冷却設備を設置して、これを故障することなく保守、運転し続けな
 ければならない。しかも、この冷却設備の建設や保守、運転はすでに高度の放射
 線物質に「決死の覚悟」で行わざるを得ないのだ。
 暴発という最悪のシナリオを避けるため、どのような設備をつくることが必要か、
 放射線汚染を減らすためにどうしたらよいのか、「国家プロジェクトとして考え
 るべき」と山田さんはいう。
 その中で、実際の作業にあたる作業員について「被曝しないで作業にあたること
 が現実としてむずかしいことは明らかで、だからこそしっかりとした知識や経験
 のある技術者が作業すべき」と訴えた。
 〔中略〕
 山田恭暉さんは「現場の作業や技術の蓄積のある退役者たちが、次世代のために
 働くべきだ。こういうことは未来のある若者には任せてはいけない」
と話してい
 る。
 呼びかけには、2011年4月22日までに30人超が「行動隊」への参加を表明。また、
 「行動隊」の必要性を政府や国会に働きかける「応援団」(賛同者)も130人超
 が集まっている。”

この日本の特徴だと思うが、上層部や専門家が甘い見通しに縋って
非常時の機能不全を露呈している一方で、
最前線に出ている現場経験の長い人々の士気は高い。

的確な先見性と冷静果断な判断力を持ち、
最前線の人々を理解しまた信頼される指導層を育ててこなかった。
これは今浮かび上がっている我々の問題でもある。
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