藤沢数希氏にせよ池田信夫教授にせよ、よく調べないで
迂闊にエネルギー政策にコメントして原発を擁護するのは
自身の信用度を下げるだけなのでやめた方がいいと思う。
いかなる理由があろうとも、原発を擁護することは即ち
ピーク電力を口実に過剰投資を正当化し
原発で厚い利幅を享受してきた電力会社の利権を擁護することになる。
電力会社があれだけ原発のCMを流していた理由はただ一つ、
カネになるからである。
私のエネルギー政策についての知見の少なくとも3分の1は
田中優氏の著作から得ており、電力会社の広告費で「汚染」されていない
貴重な情報源として多くを学んでいる。
その田中優氏が「福島みずほのどきどき日記」に登場されている。
日本のエネルギー政策の歪みについて詳細に言明されているので、
藤沢氏や池田教授の原発擁護論がいかに粗雑であるか
白日の下に晒されてしまった。
両者とも社民党党首オフィシャルブログに惨敗である。
こういうことがあるからネットは面白い。
以下、簡単に概要を紹介。
○日本の原発には累計25兆円もの税金が投入されている
○電力会社はピーク電力に合わせて過剰な設備投資を行っている
○そのピーク電力は年間わずか10時間ほどしかない
○ピーク時間帯は真夏の午後のみ
○この時間帯の電力消費の91%が家庭以外の需要
○従って家庭で節電してもほとんど無意味
○事業者向けにピークロードプライシングを実施すべき。
○エアコンの電力供給だけ自動的に遮断する契約も有効
偶然かもしれませんが
学習院大学の鈴木亘教授の主張と極めてよく似ています。
▽ 原発は電力ピークに対応できない不便なエネルギー
▽ エネルギー政策を論じる際に必読書
風力発電の不都合な真実―風力発電は本当に環境に優しいのか? 武田恵世(金融日記)
http://news.livedoor.com/article/detail/5486206/
”日本のエネルギー政策は"FUKUSHIMA" 以前は原発を主軸に置いていました。もち
ろん原発は"FUKUSHIMA"以前でもイメージはよくないので、政策担当者は再生可能
エネルギーの方を強調しながらCO2を減らすことをうたっていたかもしれませんが、
本音では原発の方だったでしょう。再生可能エネルギーは高いので、電気代が上が
ってしまっては日本の産業の競争力を削いでしまうからです。
しかし"FUKUSHIMA"以降は日本で原発を主軸に置くことは難しくなりました。とは
いえ、今ある原発は使い続けるでしょう。すでに3分の1の電力をまかなう原発を
止めるのは現実的ではないからです。また、すでに原発を受け入れている地方自治
体は雇用などの経済的なメリットと、万が一の時のリスクを天秤にかければ、やは
り原発を止めるようなことには積極的にはならないと思います。週末の地方知事選
を見ても、原発に関しては安全対策を万全にして現状維持をするといっていた現職
知事がそろって当選しています。今後、日本は人口も減り、経済も縮小していくの
で、今ある原発を維持していくだけで長期的な電力は十分なのかもしれません。
また、世界的な地球環境問題やエネルギー安全保障の観点から火力発電所を積極的
に増やしていくわけにもいきません。そうなると太陽光発電や風力発電などの新し
い再生可能エネルギーに注目が集まるわけです。これらの新エネルギーはここ数年
盛んに議論され、大まかな1kwh当たりのコストが見積もられています。そこで風力
発電はかなりコストが安そうなので、僕は期待していました。
風力発電というと、ずっと昔、大前研一がどこかのテレビで「あれは近くで見ると
切り刻まれた鳥の死骸が散乱しててひどい」とか言っていたのを思い出しますが、
その時は特に深くは考えていませんでした。そこで最近は新エネルギーが流行りな
ので、僕もいろいろ勉強しているのですが、この本を読んで、風力ってかなりやば
いんじゃないかと思うに至りました。くわしくは自分で読んでもらいたいのですが、
野鳥愛好家の著者が10年間日本の風力発電の観察をしてわかったことをまとめて
います。以下に僕なりにポイントをまとめておきます。
1.風力発電はうるさいし、低周波やストロボ効果による健康被害がある
〔中略〕
2.大きな鳥がたくさん突っ込んで羽に真っ二つに切り刻まれる
〔中略〕
3.そもそも全く電力にもCO2削減にも貢献していない
風力発電はもともと風まかせの発電なので電力が安定しません。日本は既存の電力
網に風力発電所を組み込んでいますが、風向きによって激しく電力が変化してしま
うため、その電力が非常に小さく(全体から見れば誤差の範囲)既存の電力網に何
の影響も与えない時だけ風力発電所からの電力を受け入れています。風が強くなっ
て発電量が大きくなると、既存の電力網を不安定にするので、その時は風力発電所
からの電力は全てカットするそうです。ぶっちゃけた話、日本の風力発電所は全く
意味がなく、地方自治体や業者が国からの補助金を貰えたりするので、発電してい
るフリをしているだけなのです。要するにただの補助金ゲームです。
また風力発電が成功しているといわれているヨーロッパにおいても、風まかせの風
力発電はいつ止まるかわからないので、アイドリング状態の火力発電所を常にスタ
ンバイさせておく必要があり、風力発電のための火力発電所をどんどん増設した結
果、かえってCO2の排出量が増えたようです。
以上のトホホな問題を解決するには高性能で安価な蓄電池の開発が待たれますが、
現実はなかなか難しいようです。ビル・ゲーツのプレゼンテーションによれば地球
上の全ての電池を集めても、世界で必要な電気を10分間しか供給できないそうで
す。蓄電というのは思いのほか難しいのです。
もちろん、健康被害など議論の余地はあると思いますが、この本を読んで僕は自分
の家の裏に風力発電所と原発のどっちかを作れかといわれたら、間違いなく原発を
作るだろうなと思いました。”
→ これは典型的な「古い議論」です。
よく調べないで本の受け売りをするから恥をかくことになる。
↓ 以下参照
○洋上風力発電には健康被害の問題はほぼない
○洋上風力発電なら比較的安定した風量を期待できる
○欧州北海沿岸で急速に洋上風力への投資が進んでいる
○風力発電の出力は設置数を増やせば安定してゆく
○北海道・青森・岩手では自治体が風車を建てたがっている
○茨城県神栖の風力発電所は震災でも無傷でフル操業
○蓄電池のイノベーションが急速に進んでいる
バードストライクをはじめ様々な問題も改善可能である。
今まで風力発電は不可能を可能にしてきたのだから。
▽ 日本における洋上風力発電はかなり期待できる
▽ 風車を増設したい自治体は多い
田中優さん「原発に頼らない社会へ」(福島みずほのどきどき日記)
http://news.livedoor.com/article/detail/5489775/
”現在日本が輸入している石油・天然ガス・ウラン・石炭、これらに対して支出して
いる金額は毎年23兆円に及んでいます。それが地域の自然エネルギーに切り替わっ
たとしたら、毎年23兆円を地域の中に流すことができる。そうすると、雇用がない
なんてことはもう考えられなくなる。しかも自然エネルギーの場合には雇用者数が
多い、にもかかわらずコストが安い、ということが特徴ですから、この社会を思い
きり雇用を増やしながら、しかも電気料金を安くしていくことが可能になる。
〔中略〕
実は広告宣伝費を調べてみたんですけれど、広告宣伝費の中で東京電力は非常に大
きな位置にいて、しかも日本には10社の電力会社があり、さらに電気事業連合会が
あり、さらに政府広報があり、ついでにいうとACの中の非常に重要な位置を占めて
いるのが電力会社になっている。すなわち、メディアにとって一番重要な広告宣伝
費の最大の支出をしているのが、トヨタ自動車を抜いて実は電力会社なんです。
そのおかげで、電力会社の不都合になる情報がメディアに流れない。しかも日本の
場合には、そのメディアが、テレビ・ラジオ・新聞が同じ系列で動くという形にな
っている。これは諸外国では情報を制限してしまうことになるので禁止されていた
りするんですが、日本では、テレビ・ラジオ・新聞が同じ資本でやっていて、そこ
の最大の広告宣伝費のオーナーになっているのが電力会社、そのおかげでまともな
情報が流れないわけです。日本の中でメディアを握ってしまっているのは、はっき
り言ってエネルギー、しかも電力会社という構図になってしまっている。
〔中略〕
そしてその政府の出している資金というのも、政府の支出に対するパーセンテージ
で調べてみると、なんとこの50年間ずっと一貫して同じなんですよ。現時点で言う
と約5千億円が毎年出されているわけですけれど、仮に5千億円を現在の価値で調べ
てみると、それが 50年ですから25兆円に及ぶわけです。原子力発電は1基3千億と
推進派の方が言っていて、これまでに55基あったわけですから、その55基×3千億円
と 50年×5千億円とどちらが大きいか、明らかに助成金の方が大きい。つまり現在
までの原発は実は電力会社が作ったわけではなく、人々の税金から作られたもので
す。それが良くなかったのだから、税金の側から止めて、もうやめていくというこ
とを決心すべきだと思います。そのお金の流れ方は非常におかしいと思います。
〔中略〕
まず人々が誤解しているのは、人々のライフスタイルの問題だと思い込んでしまっ
ていることです。電気消費の3/4は家庭以外で消費しています。しかも電気は貯め
ることができないので、ピーク電力の消費の時に発電所が足りなくなるから、一番
消費の多いところが問題なんです。そのピークは実は毎日は出ません。一年8,760
時間ありますが、その中で10時間以下しか出ません。しかも日本最大の東京電力の
ピークは、これは定式があります。
ピークが出ているのは、夏場・平日・日中、午後2時から3時にかけて気温が31度
を超えたときです。ですからそのときにだけ、ピークの時に消費の多い事業者に対
して料金を高くして制限をしますとか、31度を超える平日はあらかじめわかります
から、いついつの日には計画停電したいのだが御社は協力してもらえるかというよ
うな相談をしていけば、これは事業者にとって突然に需要を落とせと言われて切る
よりも、よほど楽に対応できるのです。ですから東京電力のピークは、まず、夏場
・平日・日中、午後2時から3時にかけて気温が31度を超えたときだけしか出ないと
いうことをきちんと把握して対処すれば解決できる問題だということができる。
そしてもう一つ、そのピークですが、実は家庭の消費は今言った夏場・平日・日中、
午後2時から3時にかけて気温が31度を超えたとき、このとき家庭は最も消費しない
時間帯に当たっています。なんとピーク時の91%の消費が家庭以外の事業者によっ
てのものです。だから、家庭の電気料金など上げても対応はできないんです。家庭
はもともとたった9%しかピークには消費していませんから、そこにいくら値段を
上げても変わりようがないんです。じゃ、事業者はなぜそのピークにどんどん消費
してしまうかというと、実に簡単です。事業者の電気料金は使えば使うほど単価が
安くなるようにできている。一方で家庭の電気料金は途中まで安くなるんですけれ
ど、途中からは使えば使うほど高くなるように作られているんです。だから、これ
は簡単に解決できます。使えば使うほど高くなる電気料金を事業者の電気料金に入
れることです。そうすると事業者はただちに3割程度省エネします。
〔中略〕
今、企業はたった3年でもとがとれる省エネ製品を導入していないんです。なぜな
らば、導入しても金がかかるだけで結局もとがとれるのに3年かかるわけですよね。
使えば使うほど安くなる電気料金のもとでは省エネ製品を入れる意味がないんです
ね。ところが使えば使うほど高くなるように組まれたら、企業はあっという間に省
エネ製品に入れ替えます。そうするとピークの消費は3割くらい下げられるから何
の事はない、計画停電なんて何一つなくてもじゅうぶんに解決することが可能だと
いうことができると思います。ですからそういったデータに基づいて仕組みを考え
てみると、実は需要と供給を考えて、この需要がありきのうえで供給をふやすには
原子力が必要だとついついみな考えがちなんですけれど、需要は減らすことができ
ます。需要を減らした上で考えたなら、実は原子力に頼る必要すらないのです。な
ぜなら日本の電気消費は実は発電所の稼働率、正しくは負荷率ですが、1年平均で
57から60%程度しかありません。
ドイツと北欧では70%から80%近くあります。これは何かというと、1年間で平均し
てヨーロッパでは3/4動いている、でも、日本では半分しか動いてないという、こ
の差なんです。日本がドイツ・北欧並みにしたら、発電所は直ちに25%止めることが
できます。原子力の設備率は 20%ですから1基もなくても困りません。
どうやったらその負荷率、稼働率をヨーロッパ並みに70%強まであげることができ
るか。簡単です。
上下の激しかった波、夜少なくて昼間大きくて、この激しかった波をなだらかに変
えればいいのです。電気はためられないからピークにあわせて発電せざるを得ない
のですが、なだらかにするとピークが下がる。なだらかにする方法ですが、フラン
スは夏場・平日・日中の電気料金を11倍高くしている。そしてイギリスやカリフォル
ニアでは株式市場でそれぞれの時間帯の電力を売り買いする。
一時期は200倍値上がりしたことがあって、200倍高い電気なんか誰が買うかという
ことでみな売り払ってくれたので、ピークの電気消費がぐっと下がりました。アメ
リカでは電力会社が電気料金を安くしてくれる仕組みがあって、その時は家の送電
線が1本だったものを2本に分けます。そのうちの1本にエアコンをつなぎ、もう1本
にそれ以外の全ての電化製品をつなぐ。そして電気消費が増えてきて、このままで
はピークを迎えて電気が足りない、停電するということになると、電力会社がリモ
コンで他人の家のエアコンをばちっと消してしまいます。ただし、これは合理主義
の国アメリカですから5分しか消しません。5分消されるとどうなるか、僕の友人が
実際に営業中の鹿児島の喫茶店でやりました。30分で5分消すそうです。しかも
リモコンを使って送風に変えるだけなんですが、それをやったらどうなったか、
従業員、お客さん、誰一人気づかなかった。
〔中略〕
それだけでも効果が出るので、それをやることでピークの消費を、エアコンが一番
大きい部分ですからエアコンをカットしてもらうことでピークを乗り越える、発電
所を新たに作る必要がなくなったから電力会社は皆さんに電気料金を安くする、と
いう仕組みで対応するんです。これ、今から装置を入れていけば夏場に間に合うん
ですよ。それをやりさえすれば簡単にピークなんて下げられるのに、電力会社はピ
ークを延ばすことで限りなく発電所を作ることに利権を見出していた。それを逆に
すべきなんです。需要ありきではなく、需要は下げられます。需要を下げれば、今
ほとんどの人が原発は必要悪だと思っている。
〔中略〕
需要は変えることができる、だから供給側から考えるのではなく、需要を下げる側
を先に考えるべきなんです。実はこっちの方が全然コストも安い。家庭の中で太陽
光発電を入れるよりも、実は省エネしたほうがずっと安いんですよ。まず省エネを
先にして、そのあとに自然エネルギーを入れる、これが順序です。これを進めてい
くことがとても必要です。そう考えてみると、未来は可能性を作ることができるし、
可能性に満ちているんです。その可能性を見出すことができなかったから、みな希
望を失ってしまって「必要悪」と呼ばれるようなものにしがみつかざるを得なかっ
た。解決は可能です。ですから、解決できるということを信じながら進めていくこ
とが大事だし、それを具体的に実現していくことが大事です。評論家になるのはや
めたほうがいい。
学者もほとんどの場合、評論家です。僕が必要だと思うのは活動家なんです。僕自
身は活動家のつもりです。ですから僕はまだ学術的に認められていなくたって、そ
れが何といわれようと、希望が作れるものだったらトライしてみる。トライしてだ
めだったらあきらめましょう。でもそれ以前に我々にはできることがある。そので
きることを進めていくことがまず重要だと僕は強く思っています。
〔中略〕
今回もうひとつすごく重要なのは、とてもラッキーなことがあったんです。福島第
一原発は日本の東の端っこにあったんですね。日本は偏西風地帯だから西から東に
常に風が吹くんですよ。だからほとんどの放射能は太平洋に流れたんだけど、それ
で考えてみてください。佐賀県にある玄海原発、島根原発、福井県の若狭湾にずら
っと並んでいる原発。あそこで地震が起こったら、日本を縦断して放射能が流れた
んですよ。今回の原発が東の端っこだったから太平洋に流れてよかったけど、もし
も西側の事故が起こったらどうなるのか。しかももう東海地震が起こることは決ま
っているのに、そこの震源地の真上に立っている浜岡原発、ここで事故が起こった
ら東京にそのまま来てしまいますからね。〔以下略〕”
重要な箇所は太字にしておきました。
全文を熟読されることを強くお薦めします。
原発擁護派の議論がいかに粗雑でいい加減かよく分かります。
彼ら評論家は電力会社のプロパガンダを信じその利権を守っているのです。
政治的にも安全保障上においても致命的な欠点を持つ原発を縮小させ、
経済波及効果の高い省エネ・再生可能エネルギー投資へ舵を切るべきだ。
迂闊にエネルギー政策にコメントして原発を擁護するのは
自身の信用度を下げるだけなのでやめた方がいいと思う。
いかなる理由があろうとも、原発を擁護することは即ち
ピーク電力を口実に過剰投資を正当化し
原発で厚い利幅を享受してきた電力会社の利権を擁護することになる。
電力会社があれだけ原発のCMを流していた理由はただ一つ、
カネになるからである。
私のエネルギー政策についての知見の少なくとも3分の1は
田中優氏の著作から得ており、電力会社の広告費で「汚染」されていない
貴重な情報源として多くを学んでいる。
その田中優氏が「福島みずほのどきどき日記」に登場されている。
日本のエネルギー政策の歪みについて詳細に言明されているので、
藤沢氏や池田教授の原発擁護論がいかに粗雑であるか
白日の下に晒されてしまった。
両者とも社民党党首オフィシャルブログに惨敗である。
こういうことがあるからネットは面白い。
以下、簡単に概要を紹介。
○日本の原発には累計25兆円もの税金が投入されている
○電力会社はピーク電力に合わせて過剰な設備投資を行っている
○そのピーク電力は年間わずか10時間ほどしかない
○ピーク時間帯は真夏の午後のみ
○この時間帯の電力消費の91%が家庭以外の需要
○従って家庭で節電してもほとんど無意味
○事業者向けにピークロードプライシングを実施すべき。
○エアコンの電力供給だけ自動的に遮断する契約も有効
偶然かもしれませんが
学習院大学の鈴木亘教授の主張と極めてよく似ています。
▽ 原発は電力ピークに対応できない不便なエネルギー
『低炭素社会』(小宮山宏,幻冬舎) | |
▽ エネルギー政策を論じる際に必読書
『日本版グリーン革命で経済・雇用を立て直す』(飯田哲也/筒井信隆/田中優/吉田文和,洋泉社) | |
風力発電の不都合な真実―風力発電は本当に環境に優しいのか? 武田恵世(金融日記)
http://news.livedoor.com/article/detail/5486206/
”日本のエネルギー政策は"FUKUSHIMA" 以前は原発を主軸に置いていました。もち
ろん原発は"FUKUSHIMA"以前でもイメージはよくないので、政策担当者は再生可能
エネルギーの方を強調しながらCO2を減らすことをうたっていたかもしれませんが、
本音では原発の方だったでしょう。再生可能エネルギーは高いので、電気代が上が
ってしまっては日本の産業の競争力を削いでしまうからです。
しかし"FUKUSHIMA"以降は日本で原発を主軸に置くことは難しくなりました。とは
いえ、今ある原発は使い続けるでしょう。すでに3分の1の電力をまかなう原発を
止めるのは現実的ではないからです。また、すでに原発を受け入れている地方自治
体は雇用などの経済的なメリットと、万が一の時のリスクを天秤にかければ、やは
り原発を止めるようなことには積極的にはならないと思います。週末の地方知事選
を見ても、原発に関しては安全対策を万全にして現状維持をするといっていた現職
知事がそろって当選しています。今後、日本は人口も減り、経済も縮小していくの
で、今ある原発を維持していくだけで長期的な電力は十分なのかもしれません。
また、世界的な地球環境問題やエネルギー安全保障の観点から火力発電所を積極的
に増やしていくわけにもいきません。そうなると太陽光発電や風力発電などの新し
い再生可能エネルギーに注目が集まるわけです。これらの新エネルギーはここ数年
盛んに議論され、大まかな1kwh当たりのコストが見積もられています。そこで風力
発電はかなりコストが安そうなので、僕は期待していました。
風力発電というと、ずっと昔、大前研一がどこかのテレビで「あれは近くで見ると
切り刻まれた鳥の死骸が散乱しててひどい」とか言っていたのを思い出しますが、
その時は特に深くは考えていませんでした。そこで最近は新エネルギーが流行りな
ので、僕もいろいろ勉強しているのですが、この本を読んで、風力ってかなりやば
いんじゃないかと思うに至りました。くわしくは自分で読んでもらいたいのですが、
野鳥愛好家の著者が10年間日本の風力発電の観察をしてわかったことをまとめて
います。以下に僕なりにポイントをまとめておきます。
1.風力発電はうるさいし、低周波やストロボ効果による健康被害がある
〔中略〕
2.大きな鳥がたくさん突っ込んで羽に真っ二つに切り刻まれる
〔中略〕
3.そもそも全く電力にもCO2削減にも貢献していない
風力発電はもともと風まかせの発電なので電力が安定しません。日本は既存の電力
網に風力発電所を組み込んでいますが、風向きによって激しく電力が変化してしま
うため、その電力が非常に小さく(全体から見れば誤差の範囲)既存の電力網に何
の影響も与えない時だけ風力発電所からの電力を受け入れています。風が強くなっ
て発電量が大きくなると、既存の電力網を不安定にするので、その時は風力発電所
からの電力は全てカットするそうです。ぶっちゃけた話、日本の風力発電所は全く
意味がなく、地方自治体や業者が国からの補助金を貰えたりするので、発電してい
るフリをしているだけなのです。要するにただの補助金ゲームです。
また風力発電が成功しているといわれているヨーロッパにおいても、風まかせの風
力発電はいつ止まるかわからないので、アイドリング状態の火力発電所を常にスタ
ンバイさせておく必要があり、風力発電のための火力発電所をどんどん増設した結
果、かえってCO2の排出量が増えたようです。
以上のトホホな問題を解決するには高性能で安価な蓄電池の開発が待たれますが、
現実はなかなか難しいようです。ビル・ゲーツのプレゼンテーションによれば地球
上の全ての電池を集めても、世界で必要な電気を10分間しか供給できないそうで
す。蓄電というのは思いのほか難しいのです。
もちろん、健康被害など議論の余地はあると思いますが、この本を読んで僕は自分
の家の裏に風力発電所と原発のどっちかを作れかといわれたら、間違いなく原発を
作るだろうなと思いました。”
→ これは典型的な「古い議論」です。
よく調べないで本の受け売りをするから恥をかくことになる。
↓ 以下参照
○洋上風力発電には健康被害の問題はほぼない
○洋上風力発電なら比較的安定した風量を期待できる
○欧州北海沿岸で急速に洋上風力への投資が進んでいる
○風力発電の出力は設置数を増やせば安定してゆく
○北海道・青森・岩手では自治体が風車を建てたがっている
○茨城県神栖の風力発電所は震災でも無傷でフル操業
○蓄電池のイノベーションが急速に進んでいる
バードストライクをはじめ様々な問題も改善可能である。
今まで風力発電は不可能を可能にしてきたのだから。
▽ 日本における洋上風力発電はかなり期待できる
『日本は世界4位の海洋大国』(山田吉彦,講談社) | |
▽ 風車を増設したい自治体は多い
『エコ・ウオーズ 低炭素社会への挑戦』(朝日新聞特別取材班) | |
田中優さん「原発に頼らない社会へ」(福島みずほのどきどき日記)
http://news.livedoor.com/article/detail/5489775/
”現在日本が輸入している石油・天然ガス・ウラン・石炭、これらに対して支出して
いる金額は毎年23兆円に及んでいます。それが地域の自然エネルギーに切り替わっ
たとしたら、毎年23兆円を地域の中に流すことができる。そうすると、雇用がない
なんてことはもう考えられなくなる。しかも自然エネルギーの場合には雇用者数が
多い、にもかかわらずコストが安い、ということが特徴ですから、この社会を思い
きり雇用を増やしながら、しかも電気料金を安くしていくことが可能になる。
〔中略〕
実は広告宣伝費を調べてみたんですけれど、広告宣伝費の中で東京電力は非常に大
きな位置にいて、しかも日本には10社の電力会社があり、さらに電気事業連合会が
あり、さらに政府広報があり、ついでにいうとACの中の非常に重要な位置を占めて
いるのが電力会社になっている。すなわち、メディアにとって一番重要な広告宣伝
費の最大の支出をしているのが、トヨタ自動車を抜いて実は電力会社なんです。
そのおかげで、電力会社の不都合になる情報がメディアに流れない。しかも日本の
場合には、そのメディアが、テレビ・ラジオ・新聞が同じ系列で動くという形にな
っている。これは諸外国では情報を制限してしまうことになるので禁止されていた
りするんですが、日本では、テレビ・ラジオ・新聞が同じ資本でやっていて、そこ
の最大の広告宣伝費のオーナーになっているのが電力会社、そのおかげでまともな
情報が流れないわけです。日本の中でメディアを握ってしまっているのは、はっき
り言ってエネルギー、しかも電力会社という構図になってしまっている。
〔中略〕
そしてその政府の出している資金というのも、政府の支出に対するパーセンテージ
で調べてみると、なんとこの50年間ずっと一貫して同じなんですよ。現時点で言う
と約5千億円が毎年出されているわけですけれど、仮に5千億円を現在の価値で調べ
てみると、それが 50年ですから25兆円に及ぶわけです。原子力発電は1基3千億と
推進派の方が言っていて、これまでに55基あったわけですから、その55基×3千億円
と 50年×5千億円とどちらが大きいか、明らかに助成金の方が大きい。つまり現在
までの原発は実は電力会社が作ったわけではなく、人々の税金から作られたもので
す。それが良くなかったのだから、税金の側から止めて、もうやめていくというこ
とを決心すべきだと思います。そのお金の流れ方は非常におかしいと思います。
〔中略〕
まず人々が誤解しているのは、人々のライフスタイルの問題だと思い込んでしまっ
ていることです。電気消費の3/4は家庭以外で消費しています。しかも電気は貯め
ることができないので、ピーク電力の消費の時に発電所が足りなくなるから、一番
消費の多いところが問題なんです。そのピークは実は毎日は出ません。一年8,760
時間ありますが、その中で10時間以下しか出ません。しかも日本最大の東京電力の
ピークは、これは定式があります。
ピークが出ているのは、夏場・平日・日中、午後2時から3時にかけて気温が31度
を超えたときです。ですからそのときにだけ、ピークの時に消費の多い事業者に対
して料金を高くして制限をしますとか、31度を超える平日はあらかじめわかります
から、いついつの日には計画停電したいのだが御社は協力してもらえるかというよ
うな相談をしていけば、これは事業者にとって突然に需要を落とせと言われて切る
よりも、よほど楽に対応できるのです。ですから東京電力のピークは、まず、夏場
・平日・日中、午後2時から3時にかけて気温が31度を超えたときだけしか出ないと
いうことをきちんと把握して対処すれば解決できる問題だということができる。
そしてもう一つ、そのピークですが、実は家庭の消費は今言った夏場・平日・日中、
午後2時から3時にかけて気温が31度を超えたとき、このとき家庭は最も消費しない
時間帯に当たっています。なんとピーク時の91%の消費が家庭以外の事業者によっ
てのものです。だから、家庭の電気料金など上げても対応はできないんです。家庭
はもともとたった9%しかピークには消費していませんから、そこにいくら値段を
上げても変わりようがないんです。じゃ、事業者はなぜそのピークにどんどん消費
してしまうかというと、実に簡単です。事業者の電気料金は使えば使うほど単価が
安くなるようにできている。一方で家庭の電気料金は途中まで安くなるんですけれ
ど、途中からは使えば使うほど高くなるように作られているんです。だから、これ
は簡単に解決できます。使えば使うほど高くなる電気料金を事業者の電気料金に入
れることです。そうすると事業者はただちに3割程度省エネします。
〔中略〕
今、企業はたった3年でもとがとれる省エネ製品を導入していないんです。なぜな
らば、導入しても金がかかるだけで結局もとがとれるのに3年かかるわけですよね。
使えば使うほど安くなる電気料金のもとでは省エネ製品を入れる意味がないんです
ね。ところが使えば使うほど高くなるように組まれたら、企業はあっという間に省
エネ製品に入れ替えます。そうするとピークの消費は3割くらい下げられるから何
の事はない、計画停電なんて何一つなくてもじゅうぶんに解決することが可能だと
いうことができると思います。ですからそういったデータに基づいて仕組みを考え
てみると、実は需要と供給を考えて、この需要がありきのうえで供給をふやすには
原子力が必要だとついついみな考えがちなんですけれど、需要は減らすことができ
ます。需要を減らした上で考えたなら、実は原子力に頼る必要すらないのです。な
ぜなら日本の電気消費は実は発電所の稼働率、正しくは負荷率ですが、1年平均で
57から60%程度しかありません。
ドイツと北欧では70%から80%近くあります。これは何かというと、1年間で平均し
てヨーロッパでは3/4動いている、でも、日本では半分しか動いてないという、こ
の差なんです。日本がドイツ・北欧並みにしたら、発電所は直ちに25%止めることが
できます。原子力の設備率は 20%ですから1基もなくても困りません。
どうやったらその負荷率、稼働率をヨーロッパ並みに70%強まであげることができ
るか。簡単です。
上下の激しかった波、夜少なくて昼間大きくて、この激しかった波をなだらかに変
えればいいのです。電気はためられないからピークにあわせて発電せざるを得ない
のですが、なだらかにするとピークが下がる。なだらかにする方法ですが、フラン
スは夏場・平日・日中の電気料金を11倍高くしている。そしてイギリスやカリフォル
ニアでは株式市場でそれぞれの時間帯の電力を売り買いする。
一時期は200倍値上がりしたことがあって、200倍高い電気なんか誰が買うかという
ことでみな売り払ってくれたので、ピークの電気消費がぐっと下がりました。アメ
リカでは電力会社が電気料金を安くしてくれる仕組みがあって、その時は家の送電
線が1本だったものを2本に分けます。そのうちの1本にエアコンをつなぎ、もう1本
にそれ以外の全ての電化製品をつなぐ。そして電気消費が増えてきて、このままで
はピークを迎えて電気が足りない、停電するということになると、電力会社がリモ
コンで他人の家のエアコンをばちっと消してしまいます。ただし、これは合理主義
の国アメリカですから5分しか消しません。5分消されるとどうなるか、僕の友人が
実際に営業中の鹿児島の喫茶店でやりました。30分で5分消すそうです。しかも
リモコンを使って送風に変えるだけなんですが、それをやったらどうなったか、
従業員、お客さん、誰一人気づかなかった。
〔中略〕
それだけでも効果が出るので、それをやることでピークの消費を、エアコンが一番
大きい部分ですからエアコンをカットしてもらうことでピークを乗り越える、発電
所を新たに作る必要がなくなったから電力会社は皆さんに電気料金を安くする、と
いう仕組みで対応するんです。これ、今から装置を入れていけば夏場に間に合うん
ですよ。それをやりさえすれば簡単にピークなんて下げられるのに、電力会社はピ
ークを延ばすことで限りなく発電所を作ることに利権を見出していた。それを逆に
すべきなんです。需要ありきではなく、需要は下げられます。需要を下げれば、今
ほとんどの人が原発は必要悪だと思っている。
〔中略〕
需要は変えることができる、だから供給側から考えるのではなく、需要を下げる側
を先に考えるべきなんです。実はこっちの方が全然コストも安い。家庭の中で太陽
光発電を入れるよりも、実は省エネしたほうがずっと安いんですよ。まず省エネを
先にして、そのあとに自然エネルギーを入れる、これが順序です。これを進めてい
くことがとても必要です。そう考えてみると、未来は可能性を作ることができるし、
可能性に満ちているんです。その可能性を見出すことができなかったから、みな希
望を失ってしまって「必要悪」と呼ばれるようなものにしがみつかざるを得なかっ
た。解決は可能です。ですから、解決できるということを信じながら進めていくこ
とが大事だし、それを具体的に実現していくことが大事です。評論家になるのはや
めたほうがいい。
学者もほとんどの場合、評論家です。僕が必要だと思うのは活動家なんです。僕自
身は活動家のつもりです。ですから僕はまだ学術的に認められていなくたって、そ
れが何といわれようと、希望が作れるものだったらトライしてみる。トライしてだ
めだったらあきらめましょう。でもそれ以前に我々にはできることがある。そので
きることを進めていくことがまず重要だと僕は強く思っています。
〔中略〕
今回もうひとつすごく重要なのは、とてもラッキーなことがあったんです。福島第
一原発は日本の東の端っこにあったんですね。日本は偏西風地帯だから西から東に
常に風が吹くんですよ。だからほとんどの放射能は太平洋に流れたんだけど、それ
で考えてみてください。佐賀県にある玄海原発、島根原発、福井県の若狭湾にずら
っと並んでいる原発。あそこで地震が起こったら、日本を縦断して放射能が流れた
んですよ。今回の原発が東の端っこだったから太平洋に流れてよかったけど、もし
も西側の事故が起こったらどうなるのか。しかももう東海地震が起こることは決ま
っているのに、そこの震源地の真上に立っている浜岡原発、ここで事故が起こった
ら東京にそのまま来てしまいますからね。〔以下略〕”
重要な箇所は太字にしておきました。
全文を熟読されることを強くお薦めします。
原発擁護派の議論がいかに粗雑でいい加減かよく分かります。
彼ら評論家は電力会社のプロパガンダを信じその利権を守っているのです。
政治的にも安全保障上においても致命的な欠点を持つ原発を縮小させ、
経済波及効果の高い省エネ・再生可能エネルギー投資へ舵を切るべきだ。