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文科省が認可した大学でも、続々と定員割れになっている - 問題の本質は田中真紀子大臣の不認可ではない

2012-11-12 | いとすぎから見るこの社会-全般
相変わらず官僚の使い方が下手な田中文科相が例によって墓穴を掘り、
与党批判の材料が欲しい自民党とネタの欲しいメディアを喜ばせる茶番が起きた。

日本では教育問題の議論が常に目先のことばかりで
利害関係者の方では必死に姑息な情報操作を行い、
しかもメディアや国民がそれを見抜けないという情けない状況にある。

(例えば「大学生の学力低下」「日本の教育予算は少ない」等は見え透いた情報操作)

今回問題になった中で看護系は確実にニーズがあるから別として
他の2大学はもとは地方の短大であり、四大になれるかどうかに
組織と職員の雇用の存亡がかかっている。

秋田と愛知で強硬な反発があった理由はそこにある。
どうしてメディアは地方短大の不人気や経営難を報じないのか。

特に秋田は90年代に公立美術短大を設置するという賭けに出たために
頑として誤りを認めない自治体の常として、何としても四大にし
自己の政治責任を問われないようにしたいのである。

秋田公立美短の実質倍率や就職率を見れば、
秋田県の抱く危機感は手に取るように分かる。

文科省や審議会をうまく抱き込んで面子を保てる筈だったのに、
最後に引っくり返されたからあれほど居丈高な怒りを見せたのだ。

文科省の審議会や認可が大学の質向上において
殆ど無意味に近いのは、議論の余地のない明白な事実である。

田中文科相の指摘する通り、審議会は教育界関係者に牛耳られており
原子力ムラと同様、ほぼ関係者の思惑通りに進行するのが常である。

だから文科省が認可した大学でも次々と定員割れと経営危機を起こしている。
最近では法科大学院の惨状は100%間違いなく文科省の制度設計に原因がある。

アメリカの大学の経営管理に詳しい諸星裕氏は、
これから日本では次々に大学が破綻する時代になると予言されている。

▽ 既得権にしがみつき現状を打開できない大学界の現状を厳しく批判

『大学破綻 合併、身売り、倒産の内幕』(諸星裕,角川書店)


▽ 日本では大学進学を希望する生徒の割合が完全に頭打ちになっている

『学歴分断社会』(吉川徹,筑摩書房)


文科省はそもそも大学教育の質や大学運営の質を評価する指標を持たないし、
指標に基づいて政策調整しなければならないとの意識が全くない。

計量経済学や計量社会学の専門家を雇い、
若年人口の変動が大学経営に与える影響を測定し、
労働市場の変化と人材需要に基づいて政策決定をしなければ
日本の大学は悲惨な状況に追い込まれてゆくだろう。

日本より授業時間が少ない欧米と比較して日本の大学生の勉強時間が少ないとして
愚劣な責任転嫁を平然と行う中教審の議論の「猫の目ぶり」を見れば
文教政策が頭の悪い「モグラ叩き」でしかないことは明白だ。

 ↓ 参考

大学生に責任転嫁する中央教育審議会、自らの分析不足を認識せず -「勉強時間」しか判断基準がない貧弱さ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/62943717b497b8613c43f5d980ed62b1

東大が海外留学生に蹴られ、欧米有力大学への劣後が明確に - 秋入学効果を盲信する愚かな論者に警鐘
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/326d77615f6ee0bfbc1f72f8f9c0c145


クローズアップ2012:文科相、3大学再審査へ 猛反発で一転「決断」 「問題提起」手法に疑義(毎日新聞)
http://mainichi.jp/opinion/news/20121107ddm003040066000c.html
”大学設置・学校法人審議会の答申を覆し、3大学の開設を不認可とした田中真紀子文部科学相の「政治判断」は、来春開学の準備を進めていた大学側から猛反発を受けている。田中文科相は6日、新基準で再審査する考えを示し、事実上救済する方針に転換した。文科省は早急に具体的な手続きを検討するが、従来の手続きを無視する強引な田中文科相の手法に各方面から批判の声が上がっている。【石丸整、田原翔一、福田隆、駒木智一】
 田中文科相は6日、記者会見を終えた後、再び会見場に姿を見せ、一転して3大学の再審査に言及した。文科省幹部によると、同省12階の会見場からエレベーターで移動したところで森口泰孝次官から「言い忘れたことはありませんか」と問われ、思い返して会見場に向かったという。
 田中文科相が3大学の不認可を表明したのは11月2日。省内では3大学の不認可を回避するため複数の案を作成し、5日に森口次官が大臣室に入ったという。混乱する事態の収拾を図ろうとしたとみられる。
 同省幹部によると、新たな検討会は、今週中に財界人など幅広い分野からメンバーを人選。田中文科相の了承を得た上で今月中に発足させ、財務状況や学生の募集状況の見込み、地域から要請があるかなど、現行より厳しい基準を設ける。その後、田中文科相が認可を最終判断する。年内の判断なら、来春開学に間に合う目算だ。
 だが、金子元久・筑波大教授(高等教育論)は「3大学を再審査するというが、認可されない可能性もある」と指摘する。
      ◇
 田中文科相の「問題提起」は、大学数の多さや審議会の在り方だ。この日の記者会見でも「乱立に歯止めをかける」と述べた。「方法に問題はあるが、問題提起は正しい」という声もある。
 規制緩和の流れを受け、03年度から文科省が大学新設の抑制方針を撤廃したこともあり、大学数は増加。00年に649校だった4年制大学は12年で2割(134校)増の783校となった。
同省は今年度から財務情報や学生の就職情報を公開していない大学・短大への助成金を減額しており、定員割れなど経営難に陥っている大学の統廃合を促している。
 検討会では来年度以降の大学設置・学校法人審議会の在り方についても検討。田中文科相が「メンバーのほとんどが大学の学長、教授で数カ月に1回しか開かれていない」と問題視したからだ。
 同審議会の委員29人のうち、22人が大学関係者で占められ、秋田公立美術大など3大学についての審査は4~10月に計9回開催している。だが、同審議会委員でジャーナリストの柴崎信三(しばさきしんぞう)氏は「審議会は設置基準に適合しているかを審議する場。校舎を建設中でも、準備が間に合わないようなら認可を出さないケースも多い」と説明する。
 今回の一連の動きに金子教授は「小規模な新規の大学を不認可とするより、既存の大学の教育の質を上げる方が大切で正当な方法だ」と、田中文科相の対応を批判する。〔以下略〕”

毎日新聞の記事が最も鋭い。
大学乱立は自民党政権時の愚かな規制緩和の必然の結果である。

進学先がなくなるかもしれない生徒の抗議の声ばかり取り上げて、
そもそも地方短大や地方美大の深刻な就職状況を無視するメディアも
教育政策のリテラシーが低過ぎると言わざるを得ない。

「既存の大学の教育の質を上げる方が大切」との主張は結構なことだが
そうすると大学の教職員の既得権をある程度破壊せざるを得ないのを
分かっているのだろうか。

▽ 北欧の大学は社会のニーズを見て大胆な再編を行い、教職員の解雇も日常茶飯事

『スウェーデン・パラドックス』(日本経済新聞出版社)


私大の46%が定員割れ 東北では入学者1割減(朝日新聞)
http://www.asahi.com/national/update/0827/TKY201208270399.html
今春、入学者が定員を下回る「定員割れ」となった4年制私立大学は全体の45.8%にあたる264校で、前年より6.8ポイント増えた。東北地方では、入学者が約1割減った。日本私立学校振興・共済事業団が調べ、27日発表した。
 5月1日現在で、通信制などを除く577校が対象。全体の入学定員計45万5790人に対し、入学者は前年度比1.5%減の計47万4892人。定員に対する入学者数の割合を示す定員充足率は、過去最低の104.2%だった。
 特に東北地方は、入学者が9.3%減の1万3313人と、落ち込みが目立った。同事業団は「東日本大震災の影響も考えられるが、明確な要因は分からない」としている。〔以下略〕”

これが周知のように定員割れ私大の悲惨な状況。
勿論、全て文科省が認可を出した大学である。

「既存の大学の教育の質を上げ」ても間に合う筈がない。誰にでも分かる話である。
法科大学院の次には教職大学院でも問題が発生するだろう。

今回認可が出された3大学にしても、喜ぶのは早計である。
10年後、20年後には悲惨な経営難に陥る可能性がある。
ただ秋田の美大だけは公立なので近隣の私立美大が生徒を奪われ潰れる可能性がある。
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