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読売新聞も認めた貧相なTPP効果、たったGDP0.05%増 - 女性就労率引き上げの10分の1以下

2013-02-25 | いとすぎから見るこの社会-全般
政府がTPPによる経済効果を3兆円と発表するようだ。
余りにも額が少ないなので「雀の涙」と言うべきであろう。

富士経済の見通しによれば、日本国内の再生可能エネルギー市場が
2020年までに(=ほぼ8年で)3兆円に拡大するとのことなので、
TPP効果は再生可能エネルギー市場の成長にさえ負ける可能性があるということだ。
コージェネ等の省エネ市場を再生可能エネに併せればTPPは確実に負けるだろう。
(コージェネもヒートポンプも兆円単位の成長市場だからだ)

また、OECD等が以前より指摘しているように、日本の女性就業率は先進国比で低い。
北欧並みの数値になればGDPが10%以上増えるとされている。
つまり女性就業率引き上げで
50兆円以上の効果である。

数字を見ればTPPよりも女性就労率向上の方が遥かに経済効果が大きく、
省エネ・再生可能エネ分野もTPP効果を上回る可能性があるのは小学生でも分かる。
TPPを切り札のように考えている愚か者は、小学生にも劣るということだ。

↓ 参考

経団連の限界、人口問題をTPP推進にすり替える - シンクタンクの処方箋は「女性就労率の向上」
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/d16e581b00a2370e1b84dcfde7836f2e

女性就労率も省エネ再生可能エネも確かに予算投入が必要だが
TPPも国内農業の保護が必要になるので結論は同じである。

また、イデオロギーに凝り固まったTPP推進派が頑として認めないことだが、
野口悠紀雄氏が早くから指摘しているように、アメリカの工業製品関税は既に低い。
関税率を下げたいならEUとのFTAの方が明らかに恩恵が大きい。
わざわざコメを例外品目にしようとする面倒もない。

更に、彼らはRCEP(アジア広域FTA)の方が域内人口が格段に大きく、
成長率も高いという事実を全く理解していない。
しかもFTAであるRCEPの方がTPPより政治問題が少なく締結し易いのは明らかだ。
RCEPには中国を牽制しアセアンと個別にFTAを結んで囲い込む事態を予防する効果もある。

まともな経済リテラシーがあればTPPだけでなくRCEPと対EUのFTAを同時進行で検討・協議し、
より国益に資する協定を優先するのが当然ではないか。
外交巧者なら他の協定を武器に使って交渉を有利に進めることも可能である。

▽ 推進派の研究者ですら貧弱な数字しか出せないというTPP単純賛成派の惨状

『日本経済の底力 - 臥龍が目覚めるとき』(戸堂康之,中央公論新社)


当ウェブログが以前取り上げたように、
TPP効果は年にたかがかGDPで0.05%増、輸出0.4%増程度。
TPPの最大の問題は国単位で見れば殆ど「効果がない」ことだ。

↓ 参考

TPP最大の問題は「効果がない」ことである - JAを罵倒する経団連「大企業のためとは言いがかり」?
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/c80c6ddb5d5a17fb4b68e255fc8ed33d

↓ 大国インドも含まれるRCEPの域内人口は34億人、TPPなど比較にならない

米WSJ紙「日本のどの政党も説得力がない」- 人口減少や電力会社による地域独占等の問題を指摘
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/ed4950525eb8bd2845151004e263ef73

渡辺惣樹氏は下掲書で、自由貿易時代のイギリスよりも
保護貿易時代のアメリカの経済成長率の方が高かったという史実を明らかにしている。

▽ TPP単純推進派の主張がいかにお粗末か分かる

『TPP 知財戦争の始まり』(渡辺惣樹,草思社)


TPP参加なら…GDP3兆円増の政府試算原案(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130223-OYT1T01188.htm
”TPPに日本が参加した場合の日本経済への影響について、政府試算の原案が分かった。
 国内の農産品が輸入の増加で圧迫されるマイナスの影響よりも、多くの分野で輸出が増えるプラス効果が大きく、実質国内総生産(GDP)は約3兆円(0.5%程度)押し上げられるとの統一見解で最終調整している。
 政府は、早ければ月内にも発表する。安倍首相はこれに基づき、TPP参加のメリットを国民に訴え、正式に交渉参加を表明する見通しだ。
 試算は、域内の関税が完全に撤廃されたうえに政府がなんら国内対策を講じないという、最大限に厳しい仮定を置いた。
 コメなど高い関税で輸入品との価格競争から守られている農産品は、細かい前提の置き方によって生産額の減少幅を〈1〉約3・4兆円〈2〉約3兆円――のいずれかと見積もった。〔以下略〕”

まともなリテラシーがあればこの報道が重要な事実を伏せていることが分かる。
「10年で3兆円」なのであって、暫く前の内閣府の試算と大差ない。
執筆者が分かっていないか、世論操作する意図か、どちらかであろう。


円安で実質GDP増えるため円安のメリットはデメリット上回る(Postseven)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130215-00000020-pseven-soci
”アベノミクス効果によって急速に円安が進んでいるが、これは日本経済にとってどのようなメリット、デメリットがあるのか、早稲田大学政治経済学術院教授の若田部昌澄氏が解説する。
 * * *
 円安には輸入価格が上がるというリスクが伴う。しかし、過去においては円安によって貿易の利益が増え日本の実質GDP(国内総生産)は増えたから、円安のメリットはデメリットを上回る。日本人トータルの所得は増えるのだ。
 またTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)で日本の関税が下がれば、輸入価格上昇を一部相殺する効果を持つ。
 TPP参加については各種の試算があるが、強いて挙げるなら内閣府の試算が参考になる。内閣府はTPPへの参加によって日本の実質GDPが10年後に0.54%(金額ベースで2.7兆円)押し上げられると試算している。10年後というのは関税撤廃にかかる時間を想定しているからだ。関税撤廃だけを考えて計算したものだが、ルール作り次第で新市場を開拓できればさらに大きな数字となる
 また、農業分野などでTPP脅威論が強いが、TPPにおける関税撤廃は、あくまでも「原則」だ。日本は現在、コメに778%の関税をかけているが、他国も日本同様に保護したい農作物を抱えている。
 関税がすべてゼロになることは考えにくいし、TPPが発効しても国が補助金などで特定の産業を支援する制度を設けることは可能だ。国全体としても、他業界の発展による税収増で、農業のマイナスは十分カバーできる。
 安倍政権は農業団体の反発を恐れて参院選まではTPPへの態度を明確にできないかもしれないが、今年中には政治決着に動くことになるだろう。安倍氏は「自由貿易は日本に必要」と公言してきた。
 地ならしとしてTPPに参加した際の農林水産物の生産額減少の試算をやり直すよう農水省に指示を出した。どの程度の補償で農業界が納得するか見定めるつもりだろう。〔以下略〕”

これが従前の試算。元々の額が少ないのだから、10%増えて3兆円になっても五十歩百歩だ。
TPP単純推進派はどうしてこのように杜撰な議論をしてしまうのか、理解不能である。

▽ はっきり言って韓国政府の方が賢い

『現代(ヒュンダイ)がトヨタを越えるとき: 韓国に駆逐される日本企業』(小林英夫,筑摩書房)

財閥に入れ知恵された韓国政府は自国の自動車輸出が増える地域を狙って
FTAを推進してきた。だからTPPが不要と言っているのである。

TPPを単純推進する日本国内の衆愚論者が韓国政府に遠く及ばないのは
日本人として実に情けない話ではあるが、明白な事実だ。
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