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訪日外国人の消費が過去最高でもマイナス成長、観光政策でも「次元の低い」安倍政権 - 円安依存の病弊

2015-08-03 | いとすぎから見るこの社会-対アジア・世界
残念ながら中国人観光客の「爆買」は日本経済を成長させていない。
訪日外国人観光客の消費額が過去最高に達したにも関わらず、
4~6月期の日本経済はマイナス成長が確定している。

これは愚劣な安倍政権の円安誘導、言わば「自国窮乏化政策」の必然の結果であり、
経済政策や安全保障政策ばかりではなく観光政策でも「次元が低い」という
情けない実力の乏しさがまた発覚してしまった訳だ。
所詮はこれが「口だけアベノミクス」の正体なので自業自得ではあるが。

スペインやイギリスのように観光収入において日本より遥かに優れている
「観光先進国」と比較すると、自国を大幅に安売りしてもタイや韓国にすら及ばない
日本の観光政策の劣後は明白である。

今日の事態を正しく予見していたのが元ゴールドマンのアトキンソン氏で、
中国人訪日観光客の「爆買」は効果が限定的であると見抜いていた。

氏は日本経済への貢献度の低い輸入品を買い漁る中国人よりも、
自然や文化に関心が強く長期滞在する豪州や欧州の訪日客を増やすべきと提唱している。

▽ こちらに詳述されている

『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』(東洋経済新報社)


当ウェブログと同様に、アトキンソン氏は日本の観光分野の問題が
マーケティングにあると指摘しており、いかに日本の観光収入が
諸外国と比べて「次元の低い」ものなのかを上掲書で客観的に明らかにしている。

▽ スペインはフランスよりも観光収入で勝っており、日本よりも「先進国」である

『人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか――スペイン サン・セバスチャンの奇跡』(高城剛,祥伝社)


当ウェブログは以前より海外富裕層の訪日促進を主張してきた。

「現在、親日的なアセアンをはじめ訪日観光客が順調に増えており、
 「隠れた輸出産業」として威力を発揮しつつある。
 (福島原発事故がなければもっと伸びていたであろう)」

「御用メディアは「日本政府のプロモーションの成果」としているが、
 とんでもない間違いである。訪日観光客に調査してみるがいい。
 口コミで日本に興味を持ったり、ソフトパワーの影響で好印象を持っているケースが多く、
 他の観光先進国に比べて政策的に卓越した面は殆どないに等しい」

「真相は円安で日本観光がディスカウントされていること、
 新興アジアの成長率が高く、停滞している日本が「お買い得」になっているためだ。
 アジアの経済成長という「神風」の恩恵に過ぎない」

「ただ問題は、日本の観光政策のレベルがいまだ低く、
 マーケティングもまるでなっていないことだ」

「日本の観光政策ではセグメント別の分析が決定的に欠けており、
 毎年のマーケティングやブランディング戦略が全く見えない。
 大きな潜在力を活かしていないのである」

「日本はもっと海外富裕層を迎え入れることが上手にならなければならない。
 無料で通訳や観光案内をつけても良い位である。それでも充分にペイできる」

「日本の観光にはまだポテンシャルがあり、充分に発揮できていない。
 他国の観光政策やマーケティング、ブランディングから謙虚に学ぶことが必要だ」

マイナス成長の現実が、当ウェブログの主張を裏付けている。

 ↓ 参考

「韓国人は日本が死ぬほど好き」- 安倍政権の次元の低い観光政策、「19世紀の発想」と痛烈批判
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/60e2a0b17fb4f7482a2e98961439e2b7‎

日本はポルトガルに劣る、海外投資家の長期滞在促進を - カナダの教訓に学び英語限定と国籍条項を忘れず
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/714bfa8fbc264627321d47145afa06c2‎

日本に必要なのは「海外の金持ち優遇」、国内富裕層への利益誘導ではない - シンガポールは大の日本好き
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/0facd0770c1b7fb9e502d35c6f5e5234

▽ 中国と違って親日的なインドネシアには、日本ファンが多い

『経済大国インドネシア - 21世紀の成長条件』(佐藤百合,中央公論新社)


▽ シンガポールの富裕層も日本好きが多い(自国が息苦しい管理社会だから)

『物語 シンガポールの歴史』(岩崎育夫,中央公論新社)


訪日外国人:消費、過去最高の8887億円 4~6月(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20150801k0000m040086000c.html
観光庁が31日に公表した訪日外国人の消費動向調査によると、今年4~6月の外国人による消費額(推計)は前年同期比82.5%増の8887億円となり、四半期として過去最高を記録した。1人当たりでも約17万7400円と過去最高だった。
〔中略〕
 円安やビザ要件の緩和などで、日本を訪れる外国人は増え続けている。今年1~6月は同46%増の914万人で、過去最高を記録した。4~6月の消費額は6四半期連続で過去最高を更新。2014年10月に外国人旅行者向けの消費税免税の対象が家電や装飾品から食料品や医薬品などにも拡大されたため、日本を訪れた人たちが使うお金は、訪れる人数の増え方よりも高い率で伸びている。
 国籍・地域別の消費額は、中国が3581億円で全体の40%を占め1位。台湾が1470億円(17%)、韓国が645億円(7%)と続いた。
 1人当たり消費額も同23%増えた。国籍・地域別で最も多かったのは中国人の28万円で同35%増。2位豪州(24万円)、3位米国(18万円)と続いた。
 外国人に人気が高いのは日本の家電製品だ。大手家電販売「ノジマ」では、東京・浅草の店舗などで外国人向け免税品の売り上げが多い。免税手続きを始めた昨年11月に比べ、今年7月は売り上げが7倍程度に増えた。炊飯器や魔法瓶などが人気で、10万円ほどする炊飯器を3~4台まとめ買いする人も珍しくない。
 傘下に大丸と松坂屋を持つJ・フロントリテイリングは、3~5月の免税品売り上げが前年同期比4.5倍に増えた。海外ブランドの高級時計や日本の化粧品が人気を集めている。

 マレーシアやインドネシアなどから来日するイスラム教徒も増えており、豚肉を口にしないなどの戒律に沿った「ハラル」食品への対応も進む。東急百貨店の本店は7月16~22日、初めてハラル対応の食品を販売する催しを開いた。ラーメンやカレーが好評で、売り上げは計画を2割上回った。「母国より日本の食品の方がおいしい」という客が多かったという。
 上海株式市場の株価下落で中国人の消費が減る可能性も指摘されるが、観光庁や各企業は「今のところ影響がない」と話す。このペースが続くと、15年は年間として初めて3兆円を上回りそうだ。【山口知】”

丁寧な毎日新聞の報道は、急激に訪日外国人による消費が増加していることを伝えている。
但し、観光客数においてまだまだ相対的に見て数値が低いこと、
何より重要な観光収入において低水準であることを指摘して欲しいものだ。

そしてこの観光客急増の最大の要因が円安であり、
従って事実上の「自国の安売り」でしかないことも言及すべきではないだろうか。


4~6月マイナス成長に GDP民間見通し1.9%減(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS31H4R_R30C15A7EE8000/
”緩やかに回復してきた景気の足取りが重くなっている。6月までの消費や生産などの指標をもとに民間調査機関が4~6月期の実質国内総生産(GDP)を試算したところ、17社平均で前期比年率1.9%減となった。個人消費や輸出が振るわず、3四半期ぶりのマイナス成長となる見込みだ。7~9月期以降はプラス成長に戻るとの見方が大勢だが、海外経済の動向がカギを握りそうだ。
 内閣府は8月17日に4~6月期のGDPを発表…〔以下略〕”

これは観光政策ばかりに原因がある訳ではなく、
経済政策リテラシーが欠如した安倍政権の「次元の低さ」が最大要因ではあるものの、
少なくとも中国人の「爆買」の経済効果が限定的であることは確認できる。


円安で景気は良くなるのか 日本のバーゲンで外国人喜ぶだけ(ポストセブン)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150720-00000010-pseven-bus_all
”「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」を「3本の矢」とした第2次安倍政権がすすめたアベノミクスは、うまくいっているとばかり喧伝されがちだ。そのうちのひとつに、円安で景気が良くなるという言い方があるが、本当だろうか。経済学者で投資家でもある小幡績氏が、円安で景気がよくなるという言説のからくりと真相を解説する。
 * * *
 安倍政権成立が確実視された2012年の衆議院解散時(11月16日)の1ドル=80円の水準から、今年6月5日の一時125円台まで、円の価値は40%程度下落しました。
 円安で「日本企業が復活」と政府や新聞・テレビは歓喜しています。本当に喜んでいいのでしょうか?
 円安で一部の企業の利益は増えました。しかし、これは米国に輸出して3万ドルで売っていた自動車が、1ドル=80円なら240万円、120円なら360万円、と円ベースで見た価格が上昇したことによって円ベースの売り上げが増えただけです。輸出「台数」が増えなければ、国内生産も、国内雇用も増えないので、実質的には意味がありません。
 一方、海外子会社の利益の円換算額も増えています。10億ドルの利益は1ドル=80円なら800億円ですが、120円なら1200億円です。この分、利益が膨らんでいるように見えるのです。
 しかし、国内の生産も雇用も増えていませんから、円建ての企業収益が改善しても、それほどプラスの効果はありません。
 一方、円安により生活コストは急騰します。原油も小麦もドルで国際的に価格が決まっていますから、円での価格は1.4倍になり、輸入物価が上昇してしまいます。必需品が値上がりして生活は苦しくなります

 この輸出と輸入のプラスマイナスでどちらの影響が大きいかというと、トータルでは必ず輸入価格上昇の損の方が大きいと経済学上わかっています。
 さらに、私たちの資産はほとんどが円建てですから明らかな損失で、国富総額(国の資産総額)も一人あたりの国民所得も、40%目減りしてしまったのです。
 政府は観光業収入が増えたと胸を張っていますが、それは「4割引きの大バーゲンセール」をどう考えるかによります。
 1泊1万2000円のホテルは、海外から見ればかつて150ドルだったのが、今は90ドル台です。お土産もすべてそう。4割引きなら行かなきゃ損、買わなきゃ損、ということで「爆買い」が至るところで見られます。
〔中略〕
 つまり、国内消費者の私たちに商品は回らず、観光客だけがおいしいもの、良い商品を安く買っていくのです。日本ファンは増えるでしょうが、日本人は確実に貧しくなっています
 象徴的なのが不動産です。香港やシンガポール、台湾の個人が、1億円のマンションを5戸も10戸も買い、一番良い間取りの3億~5億円の部屋も彼らが全部買います。
〔中略〕
 温泉もスキーリゾートも、水資源も同じです。喜ばしいこととはいえません。

●小幡績(おばた・せき)1967年生まれ。1992年東京大学経済学部卒、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2003年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授。『円高・デフレが日本を救う』など著書多数。”

小幡氏が簡潔明瞭に円安効果について説明している。
当ウェブログは小幡氏のような「円高派」では全くなく、一時的な効果は認めるものの、
頭のおかしい異常な円安誘導により「日本人は確実に貧しくなっている」のが現状。

中国人の「爆買」を喜ぶ「売国的」な論者は、根本的に経済リテラシーがない。
我が国の経済成長率が(次元の低過ぎる)アベノミクスで全く改善していない現状を見るがいい。
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