永田町、霞が関界隈に出没する人種に「廊下トンビ」がいる。官庁の廊下を走り回る役柄からついた俗称だ。本来の意味は、吉原芸者の用語と聞くが、転じて、何かないかとウロウロしている輩を指し、決して良い意味で使用されない。
しかし、時間軸で捉えると「ウチナータイム」と対照的で、社員教育の指針ともなる。他の部局へ資料を取りに行く時には、歩かず走って行けと鍛えられた。机の並びが一つ下でも、地位が違うと叩きこまれたし、課長から「君は首から上は要らない、体力を使え」と罵倒されたこともある。
今ならそれだけでセクハラ問題に発展しそうだが、当時はそれが当然との空気があった。その後、部下を持つようになって、私は、部下を呼び捨てにしたり、提案を頭ごなしに否定しなかった。それらは、「ウチナータイム」と「廊下トンビ」両方の悲哀を味わったことの反面教師として表出したものだ。
時間を超越する「時悠人」となった今は、「ウチナータイム」がいとおしく、貴重に思えるようになった。人生のひだを刻んだからかも知れない。が、豊かな自然に身を置くと、時間がゆっくり流れていく不思議な錯覚にひたれる。