電脳筆写『 心超臨界 』

一般に信じられていることと全く逆のことに
真実があることがしばしばある
( ブリュイエール )

小さな蝶との別れを悲しむ――紀野菊枝

2024-04-03 | 06-愛・家族・幸福
電脳筆写『心超臨界』へようこそ!
日本の歴史、伝統、文化を正しく学び次世代へつなぎたいと願っています。
20年間で約9千の記事を収めたブログは私の「人生ノート」になりました。
そのノートから少しずつ反芻学習することを日課にしています。
生涯学習にお付き合いいただき、ありがとうございます。

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東京裁判史観の虚妄を打ち砕き誇りある日本を取り戻そう!
そう願う心が臨界質量を超えるとき、思いは実現する
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■超拡散『南京問題終結宣言がYouTubeより削除されました』
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梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』に、魔女と呼ばれるおばあちゃんが、孫である主人公の“まい”をそれとなくほめる場面が登場します。

「まいはセンスがありますね。これなんか本当にきれいね。組み合わせる色の配色もよく計算されているのね」

そう言ってまいの頭をなでながら、

「感性の豊かな私の自慢の孫」

と、独り言のように呟いたので、まいは大いに照れてしまった。

なにげないおばあちゃんと孫の会話ではあるけれど、ここには既に人生を経験した者がこれからいろいろな人生を歩もうとする者に対する、温かい励ましの心が感じられます。作者の梨木香歩さんはその様子を、まるで植物に水を遣るかのように、と表現します。

このことは、人間同士の間に限りません。紀野一義さんの奥さんである紀野菊枝さんは、この家族の愛をモンシロチョウの幼虫に対してまでも惜しげもなくそそいでいます。


◆わが家の菊枝さん

『致知』2003年2月号【特集・信念の力】
「『日本婦道記』に学ぶもの」 真如会主幹/正短期大学副学長・紀野一義

ここを読むといつも私は、わが家の菊枝さんのことを考える。彼女は花を愛し、小鳥を愛し、蝶(ちょう)を愛する心やさしいひとである。去年、紋白蝶の幼虫を庭先の花の壁に見つけた時、たちまち彼女はこの小さな幼虫の母親に変身した。一日中、ひまさえあればこの幼虫のそばに行って話しかけ、そっと水を与えたりする。おどろいたことにこの幼虫は、うちの菊枝さんの体臭、声のいろ、身じろぎ、そのすべてを自分の感覚器官にインプットしてしまったらしい。私や息子がそばを通ると、死んだまねをして動かなくなり、ひっくり返ったりするくせに、うちの菊枝さんが現れて、「あらあら、どうしたの、死んだまねなんかしちゃって、いやねえ、きのうはどうしたの、どこへ行ってたの、心配したわよ、いちんち、心配してたのよ、いやな子ねえ、だめよ、だまっていったりしちゃあ」。おどろくべし、この幼虫さんは、うちの菊枝さんのことばにあわせて、体を反らしたり、くねくねとしてみせたり、顔をながめたりするではないか。彼女のことばが全部分かっているのだ。私はふしぎなひとをみるようにうちの菊枝さんを眺め、もしかするとこのひとは、「不断草」の菊枝さんの同類なのかもしれないなと思い、周五郎さん、うちにも菊枝さんがご逗留(とうりゅう)ですよ、といったりするのである。

そして、何日かたったある日、幼虫さんはまっ白の美しい紋白蝶と化して天空へ帰っていった。天空へ飛ぶ前、彼女は何度も何度も玄関のまわりを飛び、うちの菊枝さんに別れのごあいさつををするように舞いあるいて私たちの心を揺りうごかし、やがて、名残をおしみながら天空へと消えていったのである。うちの菊枝さんは、その日いちにち、もの静かであった。小さい蝶との別れの悲しみは、人と別れるとき以上に彼女の心の上に影をおとしているようで、私たちぶこつな男共は、息を殺すようにしてその日一日を送ったのであった。
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