千恵子@詠む...................

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「根っからの悪人って?」 十代少年たちと坂上香と

2024年03月27日 | 

「根っからの悪人って?」十代少年たちと坂上香と

監獄に郵送するときの封筒。二五グラムまで送れるからと、少年ジャンプの付録の漫画シールを同封してみた。

わざわざ大阪拘置所から返送されてきたのさ。冷たいワープロ文書で「要するに駄目」ってことかいな。意地悪。

むっとしたので、通知の裏に手書きで緑色の横罫線を十五行位。そ、便箋にしてみた。近況報告つらつら。ワープロ印刷封筒の宛名を横二本線で消して、宛名を「力を込めて」手書き再利用。

そして封筒裏の締め部分に、当該シールを貼り付けて投函。当初に送った宛先に届けと念力を込めた。

  ★  ★  ★

日本の刑務所の内部を初めて長期撮影した映画、受刑者が互いの体験に耳を傾け語りあう更生プログラムの記録「プリズン・サークル」は四年前の作品。

その坂上香監督、先秋に出版された最新本。十代以上を対象とした「あいだで考える シリーズ」のなかの一冊。

映画を手がかりに、香さん十代の若者たちが円座になって自らを語りあう対話の記録だ。

映画に登場する元受刑者の真人さん。子どもの頃から万引を繰り返し、十九歳から一年ごとに捕まり四回めで強盗致傷。それだけ聞くと極悪人に感じるけど、違う。加害者になる前に、被害者の過去が続いてる。

壊れたサンクチュアリを回復するって何だろう。感情の筋肉を鍛えるって何だろう。

二人目のゲスト、翔さん。傷害致死って、人を殴って殺したと。ぎゃああ。裁判、回復共同体で学んだこと。出所後の生活など。

三人めのゲストは、犯罪被害者の由美子さん。十七歳の少年のバスジャック事件で友人を亡くし、自らも大怪我をした。

自分の流した血を見ながら不思議と痛くなかった。切られた傷だけ感じながら、「少年の心はこんなにしなければいけないくらい傷ついているんだ」と。

そして「死んだらいけない。死んだら彼を殺人者にしてしまう」と傷の浅かった右手で体を支え、たくさん傷を受けていた左手は心臓より高く、座席の肘掛けに置いていた。

うわあ、なんなのこのひと。偽善者かと思ったけど、その後の行動を知ると違う。
少年と会い、何度も会い、迷い、不登校の子の親の会を始める。なまなかのことでは、できないなあ。

★ 「根っからの悪人っているの? 被害と加害のあいだ」 

坂上香 創元社 1760円

 

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