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ピッキング・コットン 二人が出会うまでの話

2014年10月31日 | 
ピッキング・コットン 二人が出会うまでの話
 
前号の大山千恵子氏が書いた『とらわれた二人 無実の囚人と誤った目撃証人の物語』の続き、ないし補足を述べたい。
 
実は何の予備知識もなく読み始め、出来の悪い強姦小説なのかと思い込んでいた。ところが冤罪だということが分かって俄然熱を入れて読み進め、これは実話だと気付く。
 
本書は強姦被害者のジェニファーと、彼女の証言で冤罪を被せられたロナルド、それにノンフィクションライターの三人の共著である。
 
この作品の終盤の四分の一は、ロナルドの冤罪が判明した後の話。やってもいない犯罪に懊悩し、苦悶したロナルドは、いきなり釈放を言い渡される。ところが遠方の刑務所から地元に移送される間は手錠を嵌められたまま。また、いわゆる「再審」の裁判所でも手錠は外されない。裁判長の指示「彼の手錠を外すよう、直接命令を下します」で、ようやく外される。規則がそうなっているからだという。肝心の「再審」はあっという間に終わり、ロナルドは釈放される。
 
ジェニファーはロナルド釈放に強い衝撃を受ける。自分がロナルドを真犯人だと証言してしまったのだから。報復されるのではないかと不安になり子どもたちの通う学校にまで配慮するよう要請したほどだったが、一方ロナルドはマスコミが押しかけ、インタビュー攻勢に合っていた。
 
本書の読みどころとなるのが、ロナルドとジェニファーの出会いである。ジェニファーは緊張の極で「私を許していただけますか」。それに対しロナルドは穏やかに「許します」と。このとき二人は互いの、これまでの苦痛を感じ取る。
 
ノースカロライナ州には刑事補償金の制度がない。だがこの事件がその制度を作らせ11万ドルを受け取り、また再発防止のため、さまざまな改良も加えられた。
 
ちなみに、ジェニファーとロナルドはマスコミに語るとともに講演も行ない、今日でもユーチューブなどインターネットで語っている様子を見ることができる。そして二人は親友となったのである。
 
原題は『ピッキング・コットン』。英語では綿摘みの意味。ロナルドの苗字がコットンのため、「コットンを選んで」と二重の意味が込められている。一般に綿摘みは黒人奴隷の労働だった。ロナルド・コットンの冤罪の原因の一つに黒人差別もあったということだ。こういった重層的な内容も込められた本書。是非とも本書を読み、性犯罪の被害者と冤罪で処罰される重さを吟味するためにも、必読の書だ。
 
とらわれた二人 無実の囚人と誤った目撃証人の物語」 ジェニファー・トンプソン-カニーノ,ロナルド・コットン,エリン・トーニオ 指宿信,岩川直子 訳 岩波書店

クリエイティブ・コモンズにて、転載。救援連絡センター発行「救援」紙の、2面の連載コラムより
 
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 取り調べの録音録画や検察官の手持ち証拠の全面開示、目撃証言の採取手続きの制定など画期的な改革
 
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