モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

アンデルセン挿絵6

2017-05-06 00:24:17 | 小学生 絵画

『絵のない絵本』アンデルセン - 上段左から 匠汰 慶徳 こなみ 貴史

第三十一夜

『あれはある小さな田舎町での出来事でした。』
と月は言いました。
『実は去年の晩、びっくりするようなことがあったんです。あれは、町外れの居酒屋でした。下の食堂でクマ使いの男が夕飯を食べていました。クマはつみあげた薪の束の後ろでつながれていました。見かけはおそろしいが、らんぼうなことをしないのに、かわいそうだと思いました。上の屋根裏部屋では、私(月)の光をあびて、クマ使いの小さな息子たちが三人遊んでいました。一番上の子は6才ぐらい、一番下の子は1才か2才でしょう。
“バタン、バタン”
階段を上ってくる足音がしました。だれでしょう。パッとドアが開きました。それは毛むくじゃらの大きなクマでした。きっと庭でじっと待っているのにあきてしまったのです。そこで、階段を上っていく道を見つけたのでした。私(月)は、それをしっかり見ていました。』
と月は言いました。
『子どもたちは、毛むくじゃらの大きなケモノを見て、たまげてしまいました。部屋のすみっこにもぐりこみましたが、クマは三人とも見つけてしまいました。そうして鼻でくんくん嗅ぎまわりました。でも、別に悪いことは何にもしませんでした。
“これはきっと大きい犬だ。”
子どもたちはそう思ったものですから、クマをなでてやりました。クマはゴロンと床の上に寝そべりました。一番小さな子が、そのうえをころげまわって遊びました。その子のちぢれた金髪の頭は、クマの濃い黒い毛皮の中に隠れました。今度は一番大きな子が太鼓を持ち出してドンドン叩きました。すると、クマは立ち上がり踊り始めました。本当におもしろい様子でした。今度は、子どもたちが、鉄砲を持ち出してきました。子どもたちが鉄砲をかつぐようにクマも鉄砲をかつぎました。
「いっち、にっ、いっち、にっ」
と、みんな行進し始めました。
すると、またドアが開きました。それは子どもたちの母親でした。そのときの母親の顔といったら、ほんとうに見せてあげたいものでした。母親は、青白い顔をして、ポカンと口を半分開けたまま、じっと見つめていました。ところが、それを見た一番下の男の子は、コックリと楽しそうにうなずきながら、大声をはりあげて言いました。
「僕達、兵隊さんごっこ、ちているだけだよ!」
そこへ、クマ使いがやってきました。』

コメント
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