庶民にとって厳しい局面となっている。
円安に、物不足では、当然物価は上がる。
それで実質的な労働者の所得は減少となる。
「日本人は貧乏になった。」最近トレンドの言葉が実感される。
短期的にはコロナによる供給網の混乱やウクライナ戦争の影響で石油などの資源、穀物価格が高騰したことがインフレの直接的原因だが、構造的にはリーマンショック以降、日本の産業の構造改革が思うように進んでいないことが本質的な原因だ。
日本の国際競争力は低下している。
かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われたような企業群がさっぱり生まれてこないことが真の原因だと思う。
遠因の一つは、アベノミクスの負の要素だ。
安易な財政出動や極端な金融緩和、強力な日銀の市場介入を長年続けたことで、多くの企業経営者達は、たいした努力もせず、それなりの利益を確保することができた。それで大胆な業務改革にはあまり関心を示さず、(失敗するリスクを避けた。)むしろ内向きな、社内の権力争いに関心が向いてしまうような企業も目についた。
利益が出ていたと言っても、経営努力によって生産性が向上したわけではないので、労働者の賃金は増えなかった。
今、金融を引き締めると、日本の企業は持ちこたえられなくなる。
日銀も身動きが取れない。
結局従来の安易な政策に頼るばかりで、次へのステップが見えてこない。
この先、短期間のうちに限界がくるのが目に見えているのだが。
岸田内閣のスローガン「新しい資本主義の実現」は、私もそれなりに正しい考え方と思うのだが、せめて今より5年ぐらい前には動き出していてほしかった。
具体的な成果が今実現しているようでなければ、時流に追いつかない。
遅すぎたの感はあるが、今は時間稼ぎをしてでも結果が出せるよう、政策を具体化し、社会の賛同を得て、効率的に動く方法を模索する必要があるだろう。
安倍政権の負の要素にはもう一つ、官僚の誇りを奪ってしまったことがある。
私はやってます的なポーズだけの官僚を多く作り、真剣に国民の事を考える人材を排除してしまった。レベルの低い不祥事が多発するのはそのせいだと思われる。
人を育てるのには一朝一夕にはいかない、5年6年の期間が必要だ。
5年前に始めてほしかったというのは、そういう意味もある。