カモメのジョナサンはもう読んだでしょうね
僕はあと書きを先に読みました
疑う事しか出来なくなっていて
とても恐いような気がします
(M氏への手紙 杉本真人)
かもめのジョナサンは、当時歌の中にも出てくるくらい話題になった。
私も古本を買って読んだのだが、難解な物語だった。
どうしてこの本が世界的な超ベストセラーとなったのか、私には分からなかった。
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「なぜなの、ジョン、一体どうして?」母親は息子にたずねた。
「なぜあんたは群れの皆さんと同じようにふるまえないの?
低空飛行なんて、そんなことペリカンやアホウドリたちにまかせておいたらどう?それにどうして餌を食べないの?
あんたったら、まるで骨と羽根だけじゃないの」
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飛ぶという行為を極めようとするジョナサン。
それは、東洋的な求道者の姿かもしれないが、当時の私にはあまり響かなかった。
同じ求道者を扱ったものなら、中島敦の「名人伝」の方がよほど心に残った。
天下一の弓の名人を目指す紀昌という若者。
当代の弓の名人に弟子入りし、苦難の修行の末、師匠の技を体得する。
師匠の技を体得した紀昌は、師匠から世に別格とも言える弓の大家が他にいることを告げられ、弟子になるべく新しい師のもとへと向かう。
新しい師は、殺気など微塵もない穏やかな老師であった。
極めれば弓などという道具にこだわることも無意味。
老師のもとで修行を積むこと9年。
紀昌の顔からやがて殺気は消え、穏やかな悟りの境地へとたどり着く。
もはや弓の存在からも超越し、弓を射ることさえも意中になくなった。
やがて紀昌は老い、煙のごとく静かに世を去ったというのだが、実にその道を極めることへの東洋的な哲学を感じる。