1988年(日本語翻訳1993年)
著者は統一教会の元信者で、学生であったころに信者となり、アメリカ統一教会の副会長にまでなった教団のエリートである。
ただし入信から脱会までわずか2年数カ月のことで、両親の献身的なサポートと脱洗脳プログラムにより社会復帰出来たというレアなケースだ。
著者は自身の体験を元に、カルト教団の勧誘の方法、マインド・コントロールの手法、カルト教団の活動、マインド・コントロールを解く方法などを丁寧に解説している。特にマインド・コントロールを解く方法については「救出カウンセリング」、「援助の仕方」、「カルトのマインド・コントロールを解く」、「回復への方策」、のステップで解説している。
カルト集団といえども企業と同じく、組織の発展を目指して活動している。
いわゆる、人、物、金を獲得する算段である。
人に関して要となるのは、有能な人材の獲得である。社会的地位のあるもの、頭脳明晰なものは特に重要で、いわば将来の幹部候補となる人材だ。
次に資産のあるものが狙われる。いわゆる手っ取り早い資金源の獲得だ。一般の信者(労働者)もタダで働き、金を献上してくれる岩盤層なので大切だ。(特に政治活動を標榜する団体では重要だ。)
なんらかの方法で標的との接点が得られたら、スパイ活動よろしく、相手にぐいぐい食い込んでいく。次のステップからは、周到に用意されたマインド・コントロールプログラムが待っている。
まじめな人ほどハマっていく仕組みのようだ。手法は極めて洗練されているので、宗教の他にも様々な場面で使われている。自己啓発セミナー、政治活動、マルチ商法などでも盛んに同じような手法が取り入れられている。
それで統一教会でも国際勝共連合(政治活動組織)や原理研究会という大学サークルなど、多くの関連組織を有している。
組織が拡大すると、いわゆる圧力団体化することが出来る。
有力な政治家の票田となれば、自分達の組織の安泰化を図ることが出来る。
ひと昔前までの企業と総会屋との関係のようなものだ。
安倍元総理が統一教会の関連団体にビデオメッセージを寄せているのは、そういうことだ。
このレベルまでいけば、当局の介入も容易に出来なくなる。
オウム真理教事件が発覚したのは、この本の発行後、2,3年後のことだった。
世の中にそういった危機感が漂っていたことは確かだろう。
今は危機が薄れたかというと、けしてそういうわけではないので、医学部の学生や理系の学生は特に、この本を読んでワクチン接種のように免疫をつけてもらいたい。理系の人達がマインド・コントロールに陥ると、とんでもない事件が起きる可能性があるからだ。