新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

インフルエンザウイルスの細胞表面移動の話:新しい発見は素晴らしい

2017-03-29 22:28:35 | 医学系

こんばんは

 

今日は体調不良で、一日仕事になりませんでした(仕事してますけど)。朝から帰宅してしばらくするまでずっと下痢していて、7〜8回くらい(汗

 

医者なので「まぁ、そのうち治るか」と思って、水分を多めにとりながら様子を見ていましたが、ようやく落ち着いてきました。

 

さて、今日は少しネットを見ていたら、「ヘェ〜」と思った記事があったので、紹介します。時間があったら論文そのものも見たいのですが、週末にでも・・・。

 

インフルウイルスに運動能力 岡山・川崎医科大グループが発見

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170328-00010000-sanyo-sctch

山陽新聞デジタル 3/27(月) 23:51配信

 

 川崎医科大(倉敷市松島)の堺立也講師、齊藤峰輝教授(ともにウイルス学)らのグループは、インフルエンザウイルスが細胞の表面で運動する能力を持つことを発見し、その仕組みを明らかにした。今後、運動パターンを解析することで流行の予測や新しい予防・治療法の開発につながると期待される。27日付の英電子科学誌サイエンティフィック・リポーツに論文が掲載された。

 

 

 インフルエンザウイルスは細胞表面にある突起(受容体)に結合し細胞内に侵入。細胞に寄生することで増殖する。ウイルスは細菌よりも小さく単純な構造をしており、自ら運動することはないとされていた。

 グループは、A型インフルエンザウイルスの表面にあるヘマグルチニン、ノイラミニダーゼという2種類のタンパク質に着目。ヘマグルチニンは受容体に結合する性質があり、ノイラミニダーゼは結合を切り離す役割を持ち、2種類が同時に働いていることを突き止めた。ノイラミニダーゼが結合を切ることで、ヘマグルチニンと受容体の組み合わせが次々と変わり、細胞の表面を動いていた

 ウイルスが動くことで細胞内に侵入しやすくなっていると考えられ、ノイラミニダーゼの働きを阻害すると運動できなくなり、細胞のウイルス感染率は4分の1程度に低下した。

 インフルエンザはA型だけでも100種類以上あり、動物からヒトへの感染も懸念される。堺講師は「それぞれのタイプの運動パターンが分かれば、ヒトへの感染しやすさを調べる指標にできる可能性もある」と話している。

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最初に一言

 

「インフルウイルス」って勝手に略さないように(笑

 

さて、ノイラミニダーゼと言われてもピンとこないと思いますが、インフルエンザの薬が阻害しているものになります。今まではノイラミニダーゼをタミフルなどが抑えることで、インフルエンザウイルスが「細胞内」から外に出て行くことができなくなり、感染する細胞が少なくなり「早く治る」と言われています。

 

確かに内服した場合は「細胞内」に入ったインフルエンザウイルス以外は効果がないはずなのでその通りだと思います。

吸入薬の場合はどうなのだろうか?

 

予防効果があるのだろうか?

 

タミフルの予防内服は血液疾患などでは行います。この場合も狙いは感染した細胞を減らすことで発症を抑えるという考え方ですが、ウイルスそのものに感染する前に作用させれば「感染率」もへるのであればいいですよね。

 

もっとも、そういう「抵抗力が弱っている」人を除けば・・・予防のためにタミフルなどの内服をするよりは「手洗い」や「うがい」をきちんと行い、人ごみではマスクをする・・・。この方が費用対効果がよほど良いとは思いますが。

 

ただ、記事にもありますが「ウイルスが移動」するというのは誰も考えていなかったことだと思いますので、それを示せたのは素晴らしいです。新しいことを発見するというのは素晴らしいと思います。

 

僕もアカデミックなところに戻りたいものです。

 

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白血病遺伝子検査の件:数値は低く出ているようです

2017-03-27 22:11:57 | 医療

こんばんは

 

もう直ぐ3月も終わりますね。

今日は比較的暖かかったので、Tシャツと上着の2枚で出歩いていましたが、よく考えると関東ではありえない行動ですね(汗

この気温だったら普通は3枚は欲しいぞ・・・と。

 

さて、例のSRLの件は学会からもメールで連絡がきました。どうも値が低く出ているようです。

 

http://www.srl-group.co.jp/information/doc/20170324.pdf

 

先日の記事にも書きましたが、あまり動揺しすぎずに主治医の先生とよく相談なさっていただければと思っております。

白血病遺伝子検査の不備事案:治療方針に対する影響は限られていると思われます

 

今日はネットを見ていても書きたいことは出てきませんでした。

 

ということで・・・話は変わりますが、本の出版準備も進んでおり、予定通り内科学会には間に合いそうな状況です。

 

僕個人は良い本に仕上がったと思っていますので、購入した方を介して多くの人の役に立てばと思っています。

 

ちょっと疲れ気味のようなので、今日はこのくらいで・・・。

 

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乳がん検知犬:なんとも言えないですが、複数の患者で検証が必要ですね

2017-03-26 09:11:40 | 医療

追加でもう一つ書きます。

 

ちょっと気になりましたが、色々検証が必要ですね。

 

布をクンクン、乳がん検知 犬使った画期的診断法、仏で発表

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170325-00000004-jij_afp-int

AFP=時事 3/25(土) 7:58配信

 

【AFP=時事】犬は乳がんを患う女性の乳房に触れた布を正確に嗅ぎ分けられることを示した診断試験の結果が24日、発表された。奇抜だが将来性のある研究結果だ。



 試験を行ったフランスのチーム「Kドッグ(KDog)」によると、ジャーマンシェパード2匹が、わずか半年間の訓練で乳がんを100%探知できるようになったという。この方法は簡単で体への影響もなく、安価に実施できることから、マンモグラフィー(乳房X線撮影)利用が困難な国々での乳がん診断に革命をもたらす可能性がある。

 試験は、優れた嗅覚を持つ犬は乳がん細胞が持つ独特のにおいを嗅ぎ分けられるとの仮定の下で行われた。チームは、31人の乳がん患者から、がんを患う乳房に当てた包帯のサンプルを収集。犬専門家の協力の下、ジャーマンシェパード2匹に、がん患者の乳房に当てられた包帯とそうでない包帯を嗅ぎ分けるよう訓練した。

 6か月間にわたる訓練の後、2匹は今年1月と2月に行われた試験に臨んだ。試験では、訓練で使用したものとは別の乳がん患者から集められた包帯31枚を使用。1度の実験につき乳がん患者の包帯1枚と、非患者女性の包帯3枚が用意された。1回目の実験で2匹はがん患者の包帯31枚中28枚を検知し、成功率は90%だった。だが成功率は2回目の実験で100%に上昇した。

 研究チームは次に、より多くの患者と別の犬2匹による臨床試験を行う予定だが、資金が不足している状態だという。【翻訳編集】 AFPBB News

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乳がん患者さんを30名くらい集めているならいいのですが、多分同じ患者さんの包帯31枚なんですよね。そこに限界がありそうですが、面白いとは思います。少なくとも犬に診断させようと考えたことなかったので

 

記事ではあくまで匂い・・・としていますので、

1、乳腺組織内にあるがん細胞の匂いが体表面まで出て来ており(乳がん組織特有の匂い)、犬はそれを識別できる

2、がん患者さん特有の匂いがあるので、犬はそれを識別できる

3、乳がんと特定しているので、乳腺から何かの乳がん分泌物が出ているのを識別できる

4、1人の患者さんから複数の包帯を使用したため、犬が他の何かの匂いを覚えている(少なくとも2人の乳がん患者さんには共通した何か・・・。薬とか何かが共通しているなど)

 

と言うところでしょうか。

 

犬は変えなくても良いので、

A、実際の患者さん(かなり多くの患者)でどうなのか (4は否定できる)

B、発見するために未治療のボランティア女性(乳がん検診をする)を集めて、犬に匂いをかがせて、検診結果と照らし合わせる(実際に検診の効果があり、被曝する可能性のあるマンモグラフィと同等以上であれば意味がある)

ことは検証が必要かなと思います。

 

まぁ、面白いとは思います。

 

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姫路こども園問題から:医療問題も似ていますね

2017-03-26 08:11:42 | 医療

おはようございます

 

昨日、ドラマの「そして誰もいなくなった」を見てしまいました。渡瀬恒彦さんが出られるみたい(CMで見て)だったので、遺作かもしれないと見ておりました。ドラマは基本的に見ないのですが、面白かったので続きも今夜みようと思います。

 

あとは最近、7〜8kmほど走るようにしています。朝、もう少し暖かくなったら朝走るでも良いかなと思っております。

 

さて、子供を持つ親としてはやはりきになるのはこの話題ですが、医療も似たようなものだしなと思ったりしています。

 

<姫路・こども園>運営ずさん、隠蔽周到…30項目違反

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170325-00000075-mai-soci

毎日新聞 3/25(土) 21:10配信

 定員の1.5倍の園児を受け入れていた兵庫県姫路市の私立認定こども園「わんずまざー保育園」(小幡育子園長)について、県は今月中にこども園の認定を取り消す方針だ。2015年4月の子ども・子育て支援の新制度導入後の取り消し例はないが、同園では約30項目に及ぶ違反が行われていた。ずさんな運営は、国が音頭を取る「待機児童ゼロ」のかけ声にまぎれて認定当初から2年間続いていたとみられる。【幸長由子、井上元宏】



 ◇監査日、私的契約児を休ませ/保育士勤務表、提出用に偽装

 市を通さず私的に契約した園児が22人、保育士の水増しは3人、狭い保育室と少な過ぎる給食発注数、食中毒予防の検食不実施--。2月23日と3月13日に市と県が行った抜き打ちの特別監査で、次々と問題が明るみに出た。暖房は送迎の保護者がいる時だけ。トイレットペーパーは園が負担すべきなのに保護者に持参を求めていた。

 ずさんな運営の隠蔽(いんぺい)は念入りに行われていた。小幡園長は市が事前通知した2月2日の定期監査前、私的契約した園児の保護者に監査日は登園させないよう頼んでいた。入園案内のしおりは、正規入園者用▽私的契約者用▽市提出用と3種類用意し、保育士の勤務表も市提出用を別に作っていた。

 小幡園長は遅刻すると罰金1万円を科し、月給制なのに日割り計算で祝日分を給与から減額していた。園内では絶対的な存在だったとみられ、保育士たちは問題を園外で相談できない状況だった。不正発覚後の今月21日の保護者説明会でも、保育士7人は園長退室後に初めて「逆らうことができなかった」などと打ち明けたという。

 保育士たちは「意見を言ったら園長から無視され、病気で倒れた」「辞めた保育士の自宅で、園長が(翻意を求めて)30分ごとにピンポンを鳴らしたと聞いた」「園児が裸足で寒そうでも、園長が来たらエアコンを消さなければならなかった」と明かしたという。

(中略)

 ◇「待機児童」遠因か

 劣悪な施設が生じた背景には、各自治体の待機児童数が比較されるなかで保育施設が渇望された事情があったとみられる。

 (以下略)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

園長先生・・・こわっ(笑

 

まぁ・・・その話は置いておいて・・・この記事を見ながら思ったことは

1、医師の名義貸し問題が「医師不足」の名の下に10年ちょっと前にありましたが、保育士の水増しも起きているのだな

2、足りていない施設は「劣悪」なものであっても「淘汰」されない(医師もそういう意味では淘汰されません)

3、そうすると利用者側が気をつけなくてはならない(医師も自分たちでいうのもなんですが、時々とんでもない医師がいます。ただ、多くの医師はまともで、聖人君子でなくても・・・自らと家族を犠牲にして患者さんや患者さんの家族に対応している方が大勢います。ただ、医療の進歩に医師のアップデートが追いつかないこともあります)

 

この数が足りなくて「自浄能力」や「自然淘汰」されない施設や職業というのは問題だと思っています。しかし、自然淘汰させるために「保育所の数を増やそう」と言ったところで、素晴らしい保育所を作り上げるための「保育士」さんの数が急増するわけでもないと思います。医師もそうですが、増やそうと思って増やしたものの「質」が低下してしまっては意味がないわけです。

 

こういうところは時間をかけて改善する必要があると思うのですが(医師不足もそうです。僕は基本的に残業時間は月に100時間まで・・・とか言っている(医師の残業規制:最初にやるべきなのは大学病院の待遇改善だと思う)時点で医師は足りているのか・・・と思う)、始めるのが早くなくては「質と量」の両方を揃えることは難しいのではないかと思っています。

 

医師も保育所も似たようなものかもしれませんが、増やしすぎたくない理由というのもあると思います。医師は患者さんの数が、保育士は児童数が問題になりますので。医師も将来医師が余るのではないかと言われています。

少なくとも僕はしばらくは医師不足はないと思います。「80歳以上の救急患者さんは緩和医療の対象とする」とでもしない限りは高齢者の患者さんがこれから増えて、ますます大変になると僕は思ってます。高齢者の方が合併症が多いために、手術なども大変、抗がん剤治療も大変、管理(治療後の入院診療)も大変・・・。

 

僕はそう思っていますが、医師を増やしたら患者数が減った時に、医師が余るので増やすべきではない・・・という話が出ちゃうわけですね(特に上の方から)

 

ただ、これは「医師の側」からの意見であって、「患者さんからの視点」ではないと思っています。10年前に札幌の居酒屋で聞いた話をまだ覚えていますが「医師不足というけど、医者が増えたら患者さんの取り合いになってしまう。歯科医師のように仕事に就けない医師が出る可能性があるから今のままで良いのではないか」・・・というような話をしていました。

確かに医師は「医師」としての仕事以外はできませんので、医業から落ちこぼれると何もできないただの人になるかもしれません。それでも「医療の進歩」についていけなくなり、最前線で勤務するのが難しくなった場合は身を引くことができる体制を作る必要があると思っています。

 

官僚の天下りではないのですが、優秀な頭脳と経験を持った医師が、患者を見なくても世間にその能力を還元できる再就職先を作れば良いと思うのです(給与は増やせないかもしれませんね。仕事内容によるでしょうから)。昔も書きましたが、産休・育休で現場から離れていた医療従事者の再教育施設の教官とか・・・。そもそも大学病院は「研究」「教育」「臨床」とあるわけですから、そのどれかに特化するのも自然かもしれませんし(特化といっても少しずつは絡み合う必要はあります。そうでなければ日本の医療のメリットを活かせませんし)。

 

色々書きましたが・・・医療は進歩しすぎて、細かくなりすぎました。僕も時間のあるときに「救急及び内科全般」の勉強もするようにしていますが、それでも「実際に使ったことがないから、診てみないとわからないな」と思ったりすることは多々あります(自分で言うのもなんですが、ピンと来たりすることはあります)。総合内科・総合診療医というものが注目されていますが、どうしてもある程度のレベルという話になってしまいます。

先ほどのコメントにも書きましたが「某研修施設(総合内科が有名な施設)」での診療が専門施設から見ると少し遅れた治療(数年前)をしていて、それでうまくいかなくなってから紹介されてくるのがどうにかならないか・・・というような話が出たそうです。おそらく、総合内科が得意な病院は「医局の垣根」を超えて集まっているので、直接はあまり関わっていない診療科もあるのだと思います。

それこそ、本来は医局の垣根を超えて指導しにいけば良いのでしょう(医療連携:縦と横と心)けど、そういうシステムになっていない(笑

 

本当に患者さんのためを考えるならば、システムはいくらでも変更できるだろうと思っています。

 

うちの職場も10年前に僕が思い描いた医療教育(運用)システムが・・・10年経った今でも最良のような気がするのですが・・・タイミングを外したかなと思っています(今やるのであれば、あの頃よりも労力がかなり必要でしょうね)。

 

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白血病遺伝子検査の不備事案:治療方針に対する影響は限られていると思われます

2017-03-25 19:25:31 | 医療

こんばんは

 

今、池上さんの番組を見ながらネットも見ています。ネットを見ていたら、こんなニュースが出ていました。

 

「白血病検査の結果に不備」 検査会社「エスアール」が発表

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170324-00000597-san-hlth

産経新聞 3/24(金) 18:51配信

 臨床検査会社エスアールエル(東京都)は24日、医療機関から依頼を受けて行う白血病の遺伝子検査の結果に誤りがあったことを公表した。検査の基準となる物質の不具合が原因で、医療機関が治療法や治療効果を正しく判断できなかった可能性がある。

 検査は平成14年以降に10万件以上行われたが、影響を受けた患者数は不明。東俊一社長は「第三者による調査を行っており、早急に確定したい」と話した。

 同社によると、不備があったのは患者の骨髄液から遺伝子を調べて白血病の類型を調べる検査と、遺伝子の量を測定して治療効果を確かめる検査の2種。白血病かどうかの診断には通常、用いられないという。

 昨年10月、医療機関から「院内で行った検査との値に開きがある」と指摘を受けたことから今年3月に不備が発覚。24日に厚生労働省に報告し、公表した。

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この検査に関しては「白血病キメラスクリーニング」「白血病の特定の遺伝子の定量検査」と言われているものだと思われます。今、医療施設にいないのでそういう情報が入ってこないのですが、状況からはそうだと思われます。

 

白血病キメラスクリーニングは「急性白血病」と診断した後(実際は同時)、この検査で特定の遺伝子の異常があるかどうかを見ます。

 

例えばPML-RARAという遺伝子が検出されると「急性前骨髄球性白血病」と昔言われていましたが、その中でもATRAという特効薬があり、予後が最も改善したPML-RARAを伴う急性骨髄性白血病と診断されます。

この遺伝子は通常検出されませんので、検出されたということは「異常がある」ことがわかります。初診時は最悪「検出されるかどうか」が分かれば、治療方針に影響は出ません。

 

今回問題になっているのは定量検査で「正常な人間が持っている遺伝子」を比較対象にしています。比較する遺伝子がこの程度に対して、白血病が持つ異常な遺伝子がどの程度か判断しています。比較する正常な遺伝子が10000検出されて、白血病の遺伝子が検出されなければ相当良い状況なのだろうと判断できるわけです。

この異常な遺伝子がどのくらい治療によって下がったか・・・ということが分かれば「良く効いている」「あまり効いていない」などがわかるので、重要になります。

 

今回、「検査結果が高めに出ていた」のであれば・・・不必要に強い治療を行なった患者さんがいる可能性があることになります。例えば治療が終わる時期になっても白血病の遺伝子が残っていたら、骨髄移植などを検討していると思います。

逆に「検査結果が低めに出ていた」のであれば、本来行うべき強い治療が行われなかったという可能性もあります。

ただ、治療が終わった患者さんたちが慌てる必要はないと思います。検査結果が高めに出ていたとしても、0ではなかったことがわかったのであれば治療強度は上げるべきだと思います。低めに出ていた・・・というのは判断が難しいのですが、この白血病遺伝子検査の多くは「異常があると移植」という遺伝子も多く、治療経過によって判断が変わるものは限られています。その限られたものはごく一部を除いて「再発時の移植」が基本になりますので、最終的に0になったのであれば治療経過は変わらないのではないかと思います。

 

ですので、このニュースで患者さんが動揺する必要はないと僕は思います。まず、心配な患者さんは主治医の先生とよく相談された上で、経過の見方をどうするか決めれば良いと思います(1年以内の再発は予後不良ということがわかっていますので、1年までは慎重に経過を見るなど。1年以上経っているのであれば慌てなくても良いかもしれません)。

 

ただ、個人的にはもう一つになることがあります。この検査結果を使って、様々な研究がされていたと思うのですけど・・・その結果って白紙になるのかしら?

 

治療を受けられた患者さんは非常に気になるニュースだと思いますが、主治医の先生を信じて動揺しすぎないのが重要だと思います。

確かに治療経過で判断が分かれることはあります(一番はPML-RARA陽性の急性骨髄性白血病は再発で自家移植をすることがありますが、その移植する細胞の中に異常遺伝子がないことを確認するので、そこだけ気になるところです)が、とんでもない影響というのは少ないのではないかと思います。

 

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医師の残業規制:最初にやるべきなのは大学病院の待遇改善だと思う

2017-03-23 20:04:22 | 医療

こんばんは

 

3月ももうすぐ終わり、新しい年度が始まろうとしております。それに合わせて送別会や歓迎会が色々予定されております。そうでなくてもかなり飲み会が多いのですが・・・

 

このblogはもともと医師不足や医療制度の問題に関して書いていたものです。今から10年前に最初のblogを立ち上げ、そちらは月に14、5万人来てくださるほどになっていました。

 

その頃はこういった内容に関して色々突っ込んで書いていたものですが、こんな話が出てきました。

 

医師の残業 法施行5年後に規制へ

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20170323-00000220-fnn-pol

フジテレビ系(FNN) 3/23(木) 4:54配信

「働き方改革」をめぐって、政府が、医師の残業時間の上限について、法律を施行して5年後に規制をかける方向で検討していることがわかった。
政府は、残業時間の上限を年間「720時間以内」とし、忙しい月は「100時間未満」とすることを盛り込んだ法案を提出したい考え。
しかし、医師については、患者の求めがあれば、診察や治療を行う義務があるため、法律施行後5年間は「猶予期間」とし、その後、残業時間の規制を設ける方向で検討していることがわかった。
医師を増やすためには、医学部の定員を増やすなど、時間がかかることも背景にある。

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う〜ん、今はもう無理だと思いますが、30歳頃は1年で1日しか病院にいなかった日がなかったり、翌年も年末年始、夏季休暇合わせて10日くらいしか病院にいない日がありませんでした。

 

まぁ、医師ってそんなもんだと思っていましたが、この2年間で体重が65kgから53kgまで落ちたのを覚えています。うちの嫁さん(当時は結婚してませんが)から「休めばいいのに。けど、休むと患者さんに不利益だよね」と言われていました。

 

そういうところではすごく理解がある妻です。

 

まぁ、それは良いのですが、朝7時に出勤して、夜12時頃帰るという日常だと・・・16時間くらい働いていることになります。血液内科だと夜中呼び出される回数がかなり多いので、さらに働いている時間は長くなったりします。

 

僕が30歳前後の時はともかく「上司の負担を減らす」というつもりで、全ての患者さんを把握し、全ての急変に対応するようにしていたので、こんな風になっていました・・・。当たり前ですが、残業代なんてありません(笑

 

ということで、残業というのは本当に認識されているのか・・・という話になりますが、ついにこんな話が出てきたのだなと思います

 

ただ、ここで一つ。「医師国家試験の結果発表:うちの大学も成績が落ちるばかりなり」というこの1つ前の記事にも書きましたが、良い学生を育てるためには「良い教官」が「質の良い教育」をしなくてはいけません。学生の数を増やすなら、教官の数も増やすべきです。教官の数が増えても教育する時間がなくてはいけません。

しかし、教官の数を増やすといっても医師は全体的に足りていませんので、無理やり集めればどこかに歪みが生じます。

 

教官の数が増やせないならば、大学病院の医師の待遇を改善して教官らが教育や研究、臨床に専念できる環境づくりを早急に行うべきだと思います。

 

今の大学病院はそういうシステムになっていないです。少なくとも「教師」としての給与しかもらっていないため、一般の医師と比較してかなり大学病院の医師の給与は低い。そのため「他の病院」でアルバイトをして、他の医師より少し少なめの収入を得ている状況です。

 

かといって、アルバイトを禁止にして「教育」「臨床」「研究」に没頭しなさい・・・といっても、今度は収入が仕事に見合わないため、良い医師が集まりません。質の良い教育を行える医師が集まらないならば本末転倒です。

 

今までも書き続けていますが、最初に行うべきことは大学病院の待遇改善です。それをやらなくては「医学生の質」、ひいては医師の質の改善が見込めない。

医学教育の質の改善が必要:教育提供体制の改革が必要・・・全く同意見です

医学部定員国管理見直し論:いずれにせよ、医局改革が先だと思う

医師教育制度はどうするべきか?

大学病院の待遇改善が最重要だと思う

医学部新設問題:医学教育の質の問題

医局の役割は?

 

10年前から同じことを書いているのですが、まずは「大学病院の質の改善」「教官数の確保」から始まり、大学病院の医師が大学病院での「臨床」「研究」「教育」に集中できる環境を作ります。そうでなくては医学教育の質は低下するに決まっています。仕事量が増えるだけなんですから。

 

そう僕は考えています。どうしてそういう話が出ないのかが僕は不思議です(まぁ、大学病院の医師のアルバイトで成り立っているところもあるからなのかもしれませんが・・・。ますますよくわからない)。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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医師国家試験の結果発表:うちの大学も成績が落ちるばかりなり

2017-03-20 19:23:40 | Weblog

こんばんは

 

昨日、今日と久しぶりに走ってきました。冬場は雪と腰痛(椎間板ヘルニアで左足にしびれ+痛みが出ます)で少し走らなかったのですが、ようやく走れる状況になりました。

 

走り初めということで6kmちょっとくらいをゆっくり走りました。

 

ただ、7m/sの風が吹いていて体感温度はなかなか寒かったです(笑

さて、Yahooに医師国家試験がらみの記事が載っていました。このアイドルさんは既卒の合格率が60%であることを考えると本当に頑張られたのだと思います。良い医師になってもらいたいですね。

「LinQ」秋山ありす 医師国家試験の合格とグループ卒業を発表

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170320-00000006-tospoweb-ent

東スポWeb 3/20(月) 11:30配信

 
福岡市を拠点に活動するアイドルグループ「LinQ」のメンバー・秋山ありす(27)が医師国家試験に合格。これを機にグループを卒業することが分かった。19日の2部公演で発表した。
(以下省略)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ということで、医師国家試験の結果です

TECOMのページへのリンクを貼っておきます。

https://www.tecomgroup.jp/igaku/topics/110.asp
 
学 校 名総 数新 卒既 卒
出願者数受験者数合格者数合格率出願者数受験者数合格者数合格率出願者数受験者数合格者数合格率
 国立 計  5203  5129  4702  91.7%  4796  4749  4485  94.4%  407  380  217  57.1%
 公立 計  819  810  773  95.4%  777  771  748  97.0%  42  39  25  64.1%
 私立 計  3615  3377  3092  91.6%  3300  3071  2894  94.2%  315  306  198  64.7%
 認定及び予備試験  122  118  63  53.4%  70  69  38  55.1%  52  49  25  51.0%
 その他 計  122  118  63  53.4%  70  69  38  55.1%  52  49  25  51.0%
 総 合 計  9759  9434  8630  91.5%  8943  8660  8165  94.3%  816  774  465  60.1% 
 
枠があっていませんが、許してください(笑
 
ということで、今年は91.5%の合格率です。偏差値はいつも同様40くらいですね。僕が大学の頃は偏差値が40切りであること、試験の出題傾向などを説明して、学生で対策を練っていたものです・・・。僕らは試験も作ってましたし。僕の出す問題は完全に自作(笑
 
そんなことをしていて・・・うちの大学も僕らが卒業した頃は上位だったんですが、最近はあまり振るわないですね。

学生の数を増やしたのだから、教官の数も増やすなりなんなりしないと「学生の自助努力」だけでは対応できないところもあるのではないかと思っています。
 
僕みたいに勉強しない同級生に「付箋を貼ったところ以外勉強しなくて良いから」とかいいながら面倒見るような人間がいれば別ですが(汗
 
まぁ、そんなことをしたせいか、「お前のせいであんな奴が医師になった」と言われることもあるので、きちんと勉強を教えて合格してもらうのが重要だと思います・・・・。僕も医師になってきちんとやれば大丈夫だろうと思ったら、そこまでやらないと合格しない人間は医師になっても勉強しないということに気づかなかった・・・・orz
 
そう。一緒に勉強してコツを掴んでくれる方はすぐに点数を取れるようになるから、ちょっとしたコツを教えれば良いのだと思うのだけど。
 
まぁ、僕は母校からはもう離れる方向なので、どこか拾ってくれる大学病院があればありがたいなぁと思う今日この頃です。
 
平成16年度の某医大国家試験対策委員長で、結構勉強教えるのが好きな血液内科医・・いりませんか(笑
 
 

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医師脅迫され、常勤医不在問題:これを機に非常勤にしたほうが良いのではないか?

2017-03-19 10:02:56 | 医療

続けて書きます

 

久しぶりな感じですね。このフレーズ。

昔はよく書いていた(笑

 

離島の事件ですが、離島でなくても僻地医療という意味ではどこでもありえるかなと思います。

島で唯一の医者が脅迫され避難 沖縄・北大東島 常勤医が不在に

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170318-00089168-okinawat-oki

沖縄タイムス 3/18(土) 16:50配信

 沖縄県北大東村(人口約600人)の県立北大東診療所の常勤医師が2月上旬から1カ月以上、不在となっていることが17日までに分かった。常勤の女性医師が村内で男に脅迫される事件が起き、村外へ避難したのが理由。診療所は現在、本島の県立病院からの代診派遣でやりくりしているが、県病院事業局の伊江朝次局長は「やる気のある医師がこんな形で島を離れざるを得なかったことを、もっと重く受け止めてほしい」と村に要望する。村は役場や駐在所と連携した医師の安全確保策などに取り組むとし、常勤配置を求めている。


 那覇署によると事件は2月7日夜に発生。男が酒気帯び状態で運転する車が対向車線に進入し、医師の乗る車と正面衝突した。男は「通報したらどうなるか分かるよな」などと医師を脅し、後に脅迫の疑いで逮捕された。「示談にしたかった」と供述したが、医師は事件翌日に村外へ避難し、その後に離任が決定した。

 現在は県立南部医療センター・こども医療センターや中部病院の医師らが数日ずつ代診を務めている。航空機の手配や医師確保が間に合わない日があり、患者の経過を継続して診られないなどの影響も出ている。

 病院事業局は事件後、村が村民に対し、常勤医師不在の理由について十分な情報を提供せず、危機感が薄いことなどを指摘。後任を4月から配置する方向で調整中だが「赴任後の安全が担保できなければ、延期もあり得る」とする。

 (略)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

600名という村民の数を考えると「常勤医」が不在になっても仕方がないのではないかと思います。

 

村が村民に対して常勤医不在の理由を説明しなかったのは「狭い社会」であるため、村八分にされかねないと思ったからかもしれませんが、酒気帯び運転+脅迫の罪を犯している人間ですので、それも仕方がなかろうかと思います。

失った信頼を村民のために働いて取り戻すのが、この方のやるべきことだと思います。

 

さて、常勤医の話ですが、離島勤務をしてメリットはあまりないと思っています。医師もに行政にも。

そもそも患者さんの数が多くなるわけでもなく、行うことも「生活習慣病」などの対応や「緊急性の乏しい疾患」の対応がほとんどで、大きな疾患は搬送することになるだろうと思います。

そうすると常勤医を配置するメリットは少なく、定期的な支援で十分ではないかと思います。僕が行政担当ならそうしますね。今回のことをきっかけとして。

 

僕も2ヶ月に1回巡回診療をしています。薬などもそれに合わせて取り寄せているだけですので、なかなか対応が難しいところがあります。それでもタイミングを合わせれば診療ができているので、2週に1回とかの非常勤医師でもできるのではないかと思ったりします。

 

常勤医を配置して「給与」「住居」その他にかかる費用(今回、防犯カメラ設置とか書いているのですが)と2週に1回とかの非常勤医師の移動費、診療費でメリットがあるのか検討しても良いのではないかと思いました。

 

もし、これを行う場合は緊急時の搬送方法などを色々構築する必要はありますが。

 

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医師が慌てない理由:時間が勝負ではなかったからです

2017-03-19 09:08:39 | 医療

おはようございます

 

先週から急に海外に行くことがなくなり、少し心身の休養を取っている状況です。まぁ、僕に関しては他にもやることがあります(帯広にいる間にやっておきたかったこと)し、せっかくだから帯広地区で釣りでも楽しもうかと思っています。

 

と行っても、半年で海外へ行く予定で帰国したらすぐに異動(というより退職して良い)という話もあり、車も何も持って来ていない。どうやって釣りに行こうかと思っていたら、他にも釣りをしそうな方が大勢いらっしゃるので便乗させていただこうかとか思っています。

 

魚をさばく包丁とかも買い揃えようかしら。

 

さて、先ほどネットを見ていたら木になる記事が2つばかりありました。

少し紹介させていただきます。

 

患者にとっては重大事でも、医師が慌てない理由

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170314-00050028-yomidr-sctch&pos=2

読売新聞(ヨミドクター) 3/16(木) 5:31配信

 

 「新幹線で移動中に、急に片目が暗くなり、数分で改善してきたが、よくネットなどで見かける緑内障のような視野異常が残っている。どうしたらよいか」というメールが60歳代の知り合いの評論家の方から入りました。

 それはおそらく緑内障ではなく、網膜の血管障害が疑われるから、最寄りの眼科をすぐ受診したほうがよい旨返信しました。

 メールを見たのは、彼が発信してから約半日たっていましたが、その間に彼も私が勧めたのと同じ行動をとり、「網膜中心動脈枝閉塞」の診断を得ていました。

 数日後、彼の要望でもう一度私が拝見することになりました。診断は正しく、病変はすでに完成していて、これ以上よくも悪くもならない状況でした。

 ただ、その方は、高血圧、高脂血症や糖尿病などの循環障害を起こしやすい因子はないとのことでしたが、心臓などを含めた全身検索を総合病院等で行っておくべきだとアドバイスしました。

 本人は、この視覚障害は何かの治療で改善できるものと思っていたようですが、すでに病気は後遺症を残して固定、治癒した状態だと説明しました。

 すると、「最初の医師は少しも慌てていなかったので、回復するものだと思っていた」と言います。

 「医師が慌てないのは、病気や症状が大したことがない場合もありますが、何ら有効な治療法がない場合も、落ち着いているものですよ。あなたの場合は、後者だったのだと思います」と私は話しました。

 つまり網膜の動脈が詰まった発症当初には、いろいろ手だてをする必要がありますが、その医師が診た時点で病変はすでに完成し、不可逆的になったものと考えられるのです。

 彼はやや驚いた表情でしたが、やがて「なるほどね」と苦笑し、納得していました。

 患者さんの多くは、医師に絶対的信頼を置いているものです。

 その信頼とはいったい何なのか、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。

 医師は、患者である自分に対し、正確無比な診断をし、最適な治療を迅速にしてくれるに違いないという前提が、その信頼の根幹でありましょう。

 今回の場合はどうでしょう。確かに正確な診断でしたが、患者さんが一番してほしい迅速な治療はなされませんでした。できなかったのです。

医師の側から見ると、そのような臨床医学の限界点を見ることは日常茶飯事ですから、大した問題ではありません。

 ですが、患者側から見れば重大事ですから、信頼している医師はもっと慌て、深刻にならないはずはないと考えるのです。

 「慌てていなかった」という患者さんの言葉が、図らずも医師・患者間の温度差を表現することになった一場面でした。(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さて、中略としたかったのですが、気になった部分がたくさんあったので、そのまま載せてしまいました。

 

確かに「患者さん」からの信頼は「正確無比な診断をし、最適な治療を行なってくれる」という思いから生じてくるのだと思います。僕もそう行いたいと思っていますし、患者さんの不利益をできるだけなくすように努力するのが医師を含めた医療従事者の責務です。

 

しかし、100%というものはありえないため(医療は確率の学問ですので、100%という数字はないです)、できることとできないことが生じて来ます。そこは医師と患者・患者家族の間でコミュニケーションの失敗が起きる理由の1つかもしれません。医師の前提は「100%はない、不確かなものが医療」で、患者さんの前提は「100%正しいことをしてくれる」ですので。

 

まぁ、これは期待してもらわなかったら話が進まないので「基本的に正しいことをしようとしている」ことに変わりはないと患者さんやご家族には信じていただく他ないとも思っています。患者さんの体の中で何がおきているかわかる「神様の目」のようなものがあれば、さらに対応レベルは上がると思いますが、人間である医師は推測しかできません。より高い推測レベルを持つ医師が「名医」なのだと思います。

 

その他にどうしようもないものがいくつかあります。そのうちの1つ、この場合は時間経過ということになります。

 

例えば脳梗塞では一定レベル以上の重症患者が4.5時間以内に適切な検査を実施した上で「血栓溶解」療法を行います。それ以上の時間経過は現時点では不利益(ダメージを受けて弱った血管に血流が再開すると脳出血がおきます。脳出血のリスクは3倍程度に増えることがわかっています)だからです。

今回も既に完成されてリスクを冒しても仕方がない状況だったという話をされています。

 

そういった様々な情報からできることとできないことを分けて、できることがあればそれを実施することになります。

 

慌てている医師が良いかどうかはわかりませんし、急変ですぐに対応が必要なもの以外で慌てることは普通はないと思います。慌てるとすれば「時間が勝負」の時間が説明によって減ってしまう場合だけだと思います。

そういうことで、この記事では「慌てていなかった」という話になります。

 

まぁ、時折慌てるべきところで慌てていない医師(状況を理解していない医師)もいますが・・・

 

Na 114 mEq/Lで「血液検査では異常はありません」と言っている医師とか、Ca 13 mg/dlで普通に外来に紹介してくる医師とか・・・。

 

ただ、基本的に医師が慌てていないのは「時間が勝負」ではないと判断している時だと思います。

 

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自費出版でないと本の値段はかなり高い?:けど、情報量に価値があれば買う人は買うはず(笑

2017-03-14 22:43:16 | Weblog

こんばんは

 

今、出版社と最終調整に入りつつあります。編集の方が最後に気になったことをメールで質問され、それに返答したところです。ページ数は400ページ近くで6600円で売り出したいということでした。

 

6600円・・・

 

少し高いかもしれませんが、情報量は十分あると僕は思っていますので、値段についてはお任せしました。

 

多分、5000円未満だったらかなり買ってもらえるのだろうと思います。6600円でも中身を読んでいただければ、今までのどの本とも違うとわかっていただけると思います。

 

ただ、たまたまこんな記事を見つけてしまいました。

 

 
認知行動療法の第一人者、精神科医・大野裕さんに聞く

 認知行動療法の第一人者として知られる精神科医の大野裕さんが、今年1月末、専門家向けの著書「 簡易型認知行動療法実践マニュアル 」を自費出版した。大野さんと言えば、有名出版社から数多くの本を出していることでも知られ、講談社現代新書の「はじめての認知療法」は、出版から6年近くたった今も着実に販売数を伸ばしている。同じく講談社現代新書から本を出したことがある私としては、羨ましくてたまらない。そんな大野さんがなぜ、自費出版なのか。その背景には、認知行動療法を提供する医療者に「なんちゃって専門家」が増えていることへの危機感があった。インタビュー形式でお伝えする。

  佐藤  今回の本は専門家向けとはいえ、大野先生の著書ですから、出せば手堅く売れるのではないですか。なぜ自費出版に。

  大野  定価を安く抑えたかったのです。この本を出版社から出すと4000円になると言われました。本が売れないこの時代に、それでは保健や医療、福祉のスタッフにはとうてい買ってもらえない。そこで自費出版にして、1800円に抑えました。

  佐藤  赤字覚悟ですか。何部売れたら元が取れるのですか。

  大野  2000部ですね。おかげさまで、もう1000部売れました。これは異例なことのようです。

  佐藤  本を多くの人に読んでほしいというお気持ちはよく分かります。でもなぜ、そこまでして売れることにこだわったのですか。

(以下、略)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

なるほど。確かに利益を出すためには値段は高め設定になってしまいます。僕ももう少し安い方が売れるとは思います。

 

ただ、今回は有名な医師が「より多くの人に正しい知識を」と思って書いているわけではなく、現場の医師の一人として現場に役立つ本を書いたつもりです。情報量は多い方だと思います。

あまり普通の教科書では入っていないようなデータを多数盛り込んでいるつもり(僕は使えると思っていますし、大事だと思うのですが、あまり教科書にはかかれていない)なので、設定金額が高めなんですがお任せしました。僕の書いた本に価値があると認めていただければ、多少の値段設定の高さもなんとかできるだろうと。

 

もともと250ページで4000円くらいと言われていたので、妥当な気がしますし・・・

 

発売が決まりましたら、また記事にします(笑

 

内科学会の頃には出せるということなので、もしよろしければ買ってください(笑

 

 

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