こんばんは
今日はすごく寒いですね。実は結構冷え症で研究室でパソコンでデータをまとめているだけでかなり手足が冷たくなりました(今もですが)。
先程「出版するのは良いのだけど・・・:近藤誠医師へお願い」へコメントを返信いたしましたが、多くの患者さんや家族が「がん」というものに向き合う際に、最良の治療を受けたいと思われるのは当たり前のことです。
ただ、エビデンスと言われているものは「こういう患者さんたち」を集めた結果、こういう結果になりました・・・というものです。以前コメントにもいただきましたが90%の患者さんで治るとされていても、残りの10%に入ったら何にもならないとも言えます。
ですので、個人個人にすべてを適応することはできません。最良と思われるエビデンスを背景に患者さんに合わせて治療を行う。これが医師が行うことだと思います。
最良の治療を受けようと模索され、その結果がよい結果にしても、悪い結果にしても「たら、れば」がないのが人生であり、医療だと思っています。よって、治療を受けるという選択をするために必要な情報を医師からもらい、自分で調べ、納得ができたのであればその治療を信じて受けていただくことが一番だと思います。
悪い結果だったときに「あの治療を受けていたら」とか「なぜこんなことになったのだろう」というのではなく、納得したうえでベストを尽くすのが一番だと思います。いい結果だったのに「あの治療は不要な治療だった」といっても、誰にも何のメリットもないです。(がんだと思って手術したら、がんではなかったというのは医療側が謝罪する内容ですが、「がんもどき」だったからどうのこうのというのはあり得ない話です)
奇跡みたいなことも時折おきたりします。多くの患者さんを診ている側としては信じられないようなこともおきます。僕の患者さんでも急性骨髄性白血病の患者さんが標準治療は受けたくないし、その体力に自信がない、普通の抗癌剤治療は受けたくないと言っていた患者さんのうち二人だけですが、内服の抗癌剤で完全寛解に入り、一時的にでも輸血フリーになり1年ちょっとと2年ちょっと生きていらっしゃった方もいます。
ただ、基本的には何もしなければ1か月、治療関連死もあり得るので治療を受けて短命になるかもしれないし、うまくいって70歳以上でも5年以上経過して経過観察もやめた患者さんもいます。最初の治療はうまくいきましたが再発した患者さんもいます。結果に関してはわかりません。
その奇跡みたいなことがおきると信じて、めったにない選択肢を取ることはお勧めはできませんし、医師としてはあくまで標準的と言われている、現在の一般的な医療をまず進めると思います。
ですので「納得」して治療を受けられ、その治療にベストを尽くす。もし、結果が悪いものだったとしても、その中でさらにベストを尽くす。状況によっては引き際を考える。
ともかく、納得の上で患者さんや家族が望む治療を受けられるようにすることが医療従事者の務めであり、そのためにエビデンスはあるのだと思います。
ここからは話が変わります。僕は学生時代から「がんは僕が生きているうちに駆逐される可能性が高いけど、感染症はなくならないだろうから、がんを相手に研究や治療を行いたい」と言っておりました。
がんは常に体の中でできていますが、いつのまにか免疫から逃げて広がっていきます。ですので、キーになるのは免疫です。敵の数が多いときに免疫で…といっても、そのうち逃げていく連中が増えてくると思いますが、最終的に免疫療法が終着駅になるだろうと思っています。
慢性骨髄性白血病のように「bcr-abl」という必ず持つ異常があり、そのタンパク質をターゲットにすることができればよいのですが、なかなか共通する抗原(たんぱく質など)というのはないから困ったものです。
で、少し記事を紹介します。
iPS使い白血病治療
2016年1月11日 19時01分
白血病患者の細胞から作製した人工多能性幹細胞(iPS細胞)を利用し、がんを攻撃する免疫細胞を大量に作って治療に役立てようとする研究を、京都大の河本宏教授(免疫学)らのチームが今春から始めることが11日、分かった。
チームによると、2019年度にも臨床試験(治験)を始め、数年後に実用化につなげるのが目標。実現すれば、iPS細胞を使ってがんを治療する初のケースとなる。
河本教授は「これまでの治療法では効果がなかった白血病患者を救えるかもしれない。他のがんにも応用できる可能性がある」と話している。
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夢のある話ですよね。上で慢性骨髄性白血病を上げましたが、これはGVL効果があると言われている、すなわち免疫療法の有用性がしめされているという意味で上げました。他の癌腫ではなかなか「移植免疫」の確実な有用性を挙げられていませんが(一部はあるのですよ、移植をすることで成績が上がっているので。目的はそこにもありますし。ただ、再発してからとなると多勢に無勢で有効ではないのかもしれません。それゆえに抗癌剤で減らしてDLI(ドナーリンパ球輸注)というのも行われていますが)、特異免疫を使用してがんを駆逐できるようになれば合わせ技でよい効果が得られそうですよね。
今後もいろいろと医療は発展していくのだと思いますが、それに少しでも寄与できればよいと思います。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。