■恋のメキシカン・ロック / 橋幸夫 (日本ビクター)
小学校高学年~中学生の頃のサイケおやじは、なにか妙にメキシコに憧れていたんですが、その要因のひとつが本日掲載のシングル盤A面曲「恋のメキシカン・ロック」だと自己分析しています。
もちろん皆様ご推察のとおり、昭和42(1967)年夏に大ヒットしたこの歌は、翌年に開催されるメキシコオリンピックを意識していたのでしょう。
しかしそんな大人の事情(?)は抜きにして、メキシコの持つ陽性のイメージが高度成長期の日本の勢いにジャストミートしていた気がするんですよねぇ~~♪
実際、洋楽でもメキシコ音楽とジャズロックを上手く融合させたハープ・アルパートの諸作がヒットしていましたし、それ以外にもベンチャーズ等々のインストバンドが極めて自然にメキシコ風味の演奏をやっていましたから、意識せずとも、それらは刷り込まれていたわけで、だからこそ橋幸夫が「メキシカン・ロック」なぁ~んていう新ジャンル(?)を歌っても違和感が無かったのでしょう。
と書いたのは、リアルタイムの我国芸能界はエレキ~GSブームの真っ只中、つまりは今日でも超えることが叶わないロック全盛期であり、既成の歌謡スタアであっても、それなりのアプローチが求められていたのです。
例えば女王の美空ひばりにしても、ブルー・コメッツをバックに「真赤な太陽」を歌っていた事は、あまりにも有名でしょう。
しかし若手男性歌手の御三家筆頭格だった橋幸夫が、安易に「不良のエレキ」に染まるという暴挙は許されるはずもなく、もちろんそれらしい歌は幾つも作られていましたが、どうにも煮え切らなかったという思いはサイケおやじだけではないでしょう。
ところが、「恋のメキシカン・ロック」は作詞:佐伯孝夫、作編曲:吉田正という、歌謡界保守本流ガチガチの大御所ソングライターコンビが書いていながら、決して時代の中で古びていないフィーリングが強く、GS組が標榜していたロックなんてものは、所詮はガキのなんとやら!?!
等々、思わずそんな不遜な事を痛感させられるほどのインパクトがあったんですよっ!
だからこそ、今日でも事ある毎に各方面で聞こえてくるわけでしょう。
また、もうひとつサイケおやじに強い印象を残しているのは、もちろん橋幸夫本人が出ている同年の松竹映画「恋と夢と冒険(松井秀雄監督)」で、メインの舞台がグアム島という、なかなか美しい海の風景がテンコ盛りの作品です。
そして当然ながら、「恋のメキシカン・ロック」がテーマソング扱いになっている歌謡映画でありまして、なんとっ! 島娘役の由美かおるが、この歌をバックにモダンなゴーゴーを踊ってしまうという、いやはやなんとも、素敵なシーンが忘れ難いんですよ♪♪~♪
しかも橋幸夫本人が例によって角刈りのヘアスタイルという、なんともロック&ポップスには馴染まない佇まいという、狙ったとしたら、最高のミスマッチが憎らしいばかり!
あぁ、これが昭和元禄の底力ってやつなんでしょうねぇ~♪
ということで、最後になりましたが、橋幸夫が実演やテレビで「恋のメキシカン・ロック」を歌う時は、軽快なダンスステップがお約束でした。
うむ、橋幸夫は永遠のおぼっちゃんムードが持ち味のひとつであるとすれば、幅広い歌の実力の中にリズム感の素晴らしさもありますからねぇ~♪
その存在感の強さは、他の芸能人には絶対に超えられないものと、あらためて本日は確信させられています。