OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

中村晃子のあばずれな純情歌

2010-06-19 16:34:52 | 歌謡曲

涙の森の物語 / 中村晃子 (キング)

我国の歌謡曲が一番輝いていた時期は昭和42~46年頃というは、全くのサイケおやじの自論に過ぎませんが、しかし従来の朝鮮半島モードの歌謡曲から洋楽の影響が色濃いGS、そして両者の折衷スタイルの結晶とも言える歌謡ポップスや後のニューミュージックに直結する歌謡フォーク等々が咲き乱れた、実に良い時代でした。

もちろんこれは、この時期の歌が大好きなサイケおやじの偏食主義からすれば、特別に言い訳をするには値しません。むしろ堂々と自分の好みを貫き通すことこそ、潔いと言うべきでしょう。

そこで本日の1枚は、まさにそうした時期でなければ誕生しえなかった中村晃子のヒット曲♪♪~♪ 発売が昭和44(1969)年の元日というところにも、当時のアッパーな世相が象徴されているように思います。

ちなみにこれは彼女にとって、おそらく10枚目のシングル盤だと思われますが、以前にも書いたように、歌手としての中村晃子がブレイクしたのは昭和42(1967)年秋に出した「虹色の湖」以降ですから、そこから数えて4作目となる「涙の森の物語」は、微妙な分岐点の意味合いが強いのかもしれません。

まず、どうにも「白鳥の湖」なスローでクラシカルなイントロから一転、ドカドカ煩いドラムスとワウワウなエレキギターの炸裂に導かれて歌い出す中村晃子のエグ味の強いコブシが、たまりません。

このドライヴ感満点の歌いっぷりは、同系の楽曲を後に出す大信田礼子でも賀川雪絵でも、池玲子でも、失礼ながら絶対に無理でしょう。

極言すればズベ公歌唱の決定版!

やさぐれた白鳥に仮託した恋の迷い道を綴った作詞は横井弘、捨て鉢フィーリングに溢れたメロディを書いたのは小川寛興、さらにノーザンピートを基調にハリウッドポップスとサイケデリックロックの巧みな折衷アレンジは森岡賢一郎という黄金のトリオですから、中村晃子の歌唱もグイノリとウネリが全開です。

とにかく聴いて下さいませっ!

しかし残念ながら、このシングル曲以降の中村晃子は徐々に落ち目の三度笠……。

不思議にも楽曲は充実の極みで、彼女の歌唱も絶頂期にありながら、人気だけが下降線というあたりが芸能界の厳しさなんでしょうねぇ……。

ですから、この時期に残された歌は近年になって再評価も著しい「裸足のブルース」を除いては、今でも忘れられているのがサイケおやじには残念でなりません。

まあ、反面、自分だけの中村晃子♪♪~♪

という正直な気持も確かにあるんですが、今こそ彼女には往年のヒット曲をすっきりと歌って欲しいと切望している次第です。

そして「もしも」が許されるなら、この時期の中村晃子には本来が女優という資質を活かした「ズベ公&女番長(スケバン)映画」に出て欲しかったと思うほどです。前述の「裸足のブルース」の頃には起死回生を狙ってセミヌードを披露したり、また後年にはロマンポルノに出演したり、ヘアヌード写真集までも出した彼女であれば、決してそれは無理ではなかったと思うのですが……。

なかなか思うように進まないのが人生ということで、そんなこんなを想う時、この「涙の森の物語」が尚更に輝いて屹立するのでした。

コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする