OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

レッドスネークはもう出ない……

2005-11-27 17:15:19 | Weblog

「レッド・スネーク、カモ~ン」で楽しませてくれたショパン猪狩が亡くなられましたねぇ。この人は日本で最初に女子プロレスの興行団体を旗揚げした人でもありました。

衷心よりご冥福をお祈り致します。合掌。

ということで、本日の1枚もギタリスト特集を継続し、悲しみはぶっ飛ばせという――

Pat Martino Live ! (Muse)

ジャズ界きっての硬派ギタリストが、パット・マルティーノです。もちろんスタイルは王道の正統派で、1967年に名門レーベルのプレスティッジと契約し、初リーダー盤を出した時は20歳だったという天才です。そして1970年までに5枚のアルバムを同レーべルから発表していいます。

それは当然、その時代ですから、演奏はモードを使い、ロックビートはもちろんのこと、サイケ色に染まった演奏まで披露していますが、特徴的なのは、とにかく妥協をせずにバリバリと弾きまくるスタイルです。そこにはウェス・モンゴメリーとタル・ファーロウという2人の偉大な先輩ギタリストの影響が大きいのですが、同時期に脚光を浴び始めたジョージ・ベンソンとの比較では、よりクールな部分が魅力になっています。しかもその隙の無いスタイルは、スケール練習の垂れ流しと紙一重の部分が確かにありますが、その危険な香りを含んだアドリブ・メロディはスリル満点なのです。

ちなみにこの2人は同郷らしく、共にジャック・マクダフ(org) のバンドに相前後して雇われていたそうで、ライバルというよりも親友だったそうです。

で、このアルバムはレーベル移籍後の1972年に、ニューヨークのクラブで録音されたライブ盤です。メンバーは Pat Martino(g)、Ron Thomas(key)、Tyron Brown(b)、Sheman Ferguson(ds) という4人組みで、徹頭徹尾、ハードな演奏が繰り広げられています。

まず初っ端の「Special Door」からアルバムのA面全部を使い切った長尺演奏ですが、流れるように演奏をスタートさせるパット・マルティーノのギターは、その運指、ピッキング共に完璧の一言です。おそらくこの人は、かなり太い弦を使っていたはずで、なんとそれを大理石のピックで弾くという剛の者なのです。

で、演奏はフリーなインタープレイを挟みつつも、4ビートを基調としてスピード感満点に全力疾走するバンドのグルーヴが最高です。もちろん全く淀み無く刺激的なフレーズを綴っていくパット・マルティーノは、本当に神業ですし、そこに執拗に絡んでくるタイロン・ブラウンのエレキ・ベース、とロン・トーマスのエレピ、激しく切り込んでくるドラムスのシャマーン・ファーガソンが強烈です。しかもバンドとしての纏まりが、これ以上無いほどです! メンバーそれぞのパートに青春の迸りにような情熱が感じられる演奏です。

それはB面も同様で、まず「The Great Stream」もメチャ、カッコ良いテーマから高速4ビートで演じられますが、そこにはロックビートが内包され、キメのフレーズも鮮やかにアドリブに入るあたりは、いきなり興奮させられます。バンド全体としてのノリも最高ですし、こういうハードなものを聴いていると、身も心もジャズ者としての幸せを感じてしまいます。本当に山場がいたるところに現れては消えていくという名演なのでした。

そしてクライマックスが有名R&Bを取上げた「Sunny」です。当然、演奏はボサ・ロックビートで、テーマはパット・マルティーノがオクターブ奏法で素直に弾いているので和みますが、アドリブ・パートでは妥協せずにハードに弾きまくります。しかし、ここではテーマのメロディとコード進行の美味しい部分を随所に活かしてくれるので、泣きそうになるほど素敵なフレーズが連発されます。しかも3分20秒目あたりからは、メンバー全員の絶妙のサポートで、得意の高速弾きまくりからキメ技的な泣きのフレーズに繋げるので、ライブの観客も感極まって3分50秒目あたりでは拍手が♪ もちろんスピーカーの前の私も同時に感動しているのです。

このあたりは同じギタリストのグラント・グリーン風のアプローチですが、それはソウル味というよりはロック的な展開で、これは黒人と白人の違いかもしれません。ちなみに書き遅れましたが、パット・マルティーノはアラブ人とイタリア人のハーフというのが定説です。

あと、どうしてもリーダーの神業ギターばかりが印象に残ってしまう作品ではありますが、他のバンドメンバーも日本では無名ながら、なかなか素晴らしい演奏を披露しています。特に「Sunny」での大技・小技のサポートは、それだけ聴いていても楽しくなります。

ということで、このアルバムはジャズ喫茶の人気盤です。もちろんリクエストは「Sunny」が入っているB面です。そしてレコードに刻まれた観客の拍手・歓声と一緒になって、イェ~ィ! と叫び、盛上がるのが1970年代のジャズ喫茶でした。もちろん店のマスターも黙認していましたねぇ♪ 当然、アルバム自体のセールスも良かったと思います。

しかし残念ながら、現在CDは廃盤状態らしく……。ですから、ジャズ喫茶でリクエストして聴いてください。もちろんB面がオススメです。必ず熱くなりますよ、イェ~ィ! そして見つけたら、即、ゲットして下さい。けっして後悔はしない名盤です。

コメント
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