OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

久々にと思いきや

2005-11-23 17:59:40 | Weblog

久々に孤独な休日になりましたが、やることは山積みで、まずは庭の枯葉の大掃除です。赴任地で借りている家は、木立に囲まれているので、これがなかなかに凄いものが……。

で、午後からはサイトの更新作業と思いきや、ジャズが好きな若い者2人がやってきて、急遽ジャズ喫茶を開業♪ ただし仕事の話や愚痴はたれるなよっ、とクギを刺しての楽しい一時も悪くないですね。そこで私のイチオシだったのが――

The Message / J.R.Monterose (Jaro)

ジャズはいつの時代もアングラなので、その多くがインディーズでの録音・発売になっています。ですから優れた作品でもロクに流通せずに幻化していくのですが、この作品もそのひとつです。

主役のJRは伝統派でありながら、とても個性的なスタイルを持った白人のテナーサックス奏者ですが、その実力に比して録音は少なく、この作品は1959年に吹き込まれた2枚目のリーダー盤です。

ちなみに、ここまでのJRの活動では、まず1955年に頑固おやじのベース奏者、チャールズ・ミンガスのバンドに入って「直立猿人」という畢生名盤吹き込みに参加したという輝かしい実績がありますが、そのキャリアの中でミンガスと喧嘩してバンドを飛び出し、続いてケニー・ドーハム(tp) がジャズ・メッセンジャーズから独立して旗揚げしたバンドであるジャズ・プロフェッツに入りますが、これも空中分解して後は仕事に恵まれない日々を送っていたようです。

で、このアルパムは久々リーダー作品ということで、メンバーは名盤請負人のトミー・フラナガン(p)、後にコルトレーンのバンドに入るジミー・ギャリソン(b)、小型エルビン・ジョーンズのピート・ラロッカ(ds) という、所謂ジャズの醍醐味が満喫できるワン・ホーン物になっています。

それはA面ド頭の「Straight Ahead」でのタイトルに偽りなしの名演から全開で、ディープな音色のJRのテナーが、いささか不吉な雰囲気を漂わせるテーマを豪快に吹き綴り、アドリブパートもハードなノリで疾走していきます。そしてそれを煽る黒人リズム隊も快調そのもので、特にラロッカのドラムスはJRと激しく対峙していて最高です。もちろんトミー・フラナガンのピアノも繊細かつ歯切れ良いフレーズを連発しています。

そして続くスタンダード曲の「コートにすみれを」は、前曲と一転して優しさと男気に満ち溢れたJRのテナーがたっぷりというスローバラード演奏が♪ この曲はコルトレーンやズート・シムズの名演が有名ですが、このバージョンも勝るとも劣らない出来だと思います。3分に満たない演奏なのですが、それが多くは語らない本当愛情表現という雰囲気で素敵なのです。

しかし3曲目の「Green Street Scene」では、ジワジワと粘液質のフレーズを積み重ねて山場をつくるJRのハードバップ魂がじっくりと味わえますし、A面ラストのワルツ曲「Chafic」では愛らしいテーマから起伏あるアドリブ・メロディが泉のように溢れ出て安らぎます。またここではトミー・フラナガンの演奏も秀逸です。

B面に入っては、まず冒頭の「You Know That」が強靭なリズム隊の煽りを受けて複雑な構成のテーマ曲を見事なアドリブに変換していくJRの吹奏が見事です。

さらにB面2曲目にはモダンジャズの人気名曲「I Remember Clifford」が! これをJRはテナー・サックス本来の持ち味であるフススススス~というサブ・トーンを活かして、ジンワリと演奏してくれますので、もう辛抱たまらん状態になります。魅惑のテーマからアドリブでの元メロディーくずしも見事で、泣きのフレーズもイヤミなく、ストレートにその良さに浸れる演奏だと思います。

そしてオーラスは事ある度にJRが演奏しているオリジナルの「Short Bridge」です。流石十八番だけあって、スタッカートを多様したブツ切れフレーズとリズムへのノリ、一転してレガートスタイルで延々と吹きまくるパートの対比が素晴らしく、既に作ってあったと思われるストックフレーズ的なキメも鮮やかな快演になっています。

ということでJRの基本スタイルはダイナミックなノリと優しいバラード演奏が得意という、ジャズ・テナーのお手本のような人ですが、その個性は一聴瞭然、唯一無二のものがあります。しかし残念ながら、あまり世渡り上手い人ではなかったようで、アメリカではローカルな活動でしたし、1968年に渡欧してからはますますマイナーな存在になってしまいました。しかし近年、様々な発掘音源が出回り始めたのは嬉しいところです。

肝心のこのアルバムは完全なる幻の名盤として、ジャズ喫茶では店の看板にもなっていたお宝でしたが、1970年代後半にジャケット違いのアナログ復刻輸入盤が登場してバカ売れし、後に日本盤も出ています。もちろんCD化もされており、私が愛聴しているのは7年ほど前に日本のヴィーナス・レコードから発売されたものですが、それが今回、紙ジャケット盤として久々に再発されるようです。

白状すると、私はこのアルバムが大好きで、復刻される度に買っているので、紙ジャケット盤も予約している始末です。まあ、それほどに魅力がある作品だと……♪ 例によってジャケ写をクリックするとネタ元に繋がりますので、機会があれば聴いてみて下さい。ジャズの基本を大切にした1枚だと思います。

コメント (2)
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